上 下
23 / 51

今、排するべきか?⑦

しおりを挟む
 結局、なんの解決策もなく朝が開ける。
 短絡的にフランシスを始末さえしてしまえばいいように思えたが、それで丸く収まる気がしない。もしかしたら、フランシスは誰かの手駒にされたんじゃないかと思うと、フランシスを始末しても別の令嬢が手駒にされるはず。エミリアは救えても、レイナ・ベルギッタ侯爵令嬢達を救えない。結果は、変わらない。
 
 なら、どうすべきかと悩んだが、まったく思い付かない。
 悩んでも仕方ないと、夜が白みだしたので、軽く仮眠した。
 一時間過ぎた頃に、起床時間だ。
 エミリアと朝食の約束をしたのだ、いつものボサボサ頭ではいけないと、朝も早くからセバスがやってきて支度された。

「本日は気候もよう御座います、御朝食はテラスで取られてはいかがでしょう」

「そうだな」

 自分は成すがままに髪を梳かされる。

「それから、御朝食後、仕立て屋と靴の職人が参ります」

「仕立て屋?」

「大奥様の後指示です。エミリア様のお持ちのドレスがあまりにもあまりだと、マギーがもうしておりまして」

 確かに、あんなぼろぼろの花嫁衣裳だったし、ベルド伯爵家のあの様子だと、録なのを持たせてなかったのだろう。マギーが嫁入り翌日に仕立て屋を願うほどだったのだから。
 一応、こちらでも部屋着や寝間着等多少は用意していたが。あくまで多少だ。

「分かった。仕立て屋の件はマギーがエミリアに?」

「いいえ、ぼっちゃまの口から、エミリア様におっしゃった方が喜ばれるかと思いまして」

「分かった」

 いつもより入念に梳かされた。あまり、威圧的に見えないようにと、ゆったりとしたシャツに、グレイのズボンだ。これでいいだろうか?

「エミリアは怖がらないだろうか?」

 ちょっと不安になる。改めて言うが、小さなエミリアにしたら、自分は見上げるような大男なのだ。

「どうぞ大切になさってくださいませ、このセバス、昨日から幸せの行ったり来たりです」

 と、白いハンカチで目元を拭っている。
 自分が普段からどれだけ回りに無関心だったかひしひしと伝わる。

「後最低十年は現役を貫きましょう。大旦那様と大奥様もきっと楽しみにされています」

「ナニガ?」

「言わずもがなですよ、ささ、エミリア様がお待ちです」

 セバスに言われて、エミリアの迎えに行く。
 エミリアの部屋は近いのですぐだ。数人のメイドがお辞儀をする。
 少し緊張する。

 優しく、コンコン、とノック。

『はい』

 エミリアの声だ、良かった、怖がるような声じゃない。

「おはようエミリア、朝食の誘いに来たのだが」

 年甲斐もなく、ドキドキ。

『はいっ』

 弾んだエミリアの声。直ぐに扉が開く、そこにはマギー。

「おはようございますご主人様、エミリア様の支度は整っております」

「ありがとうマギー」

 キラッ、と輝くマギーの目は、気のせいか? 昨日からキラキラしているが。

「おはようございます、バルド様」

 マギーの後ろから、エミリアが姿を表す。
 薄いピンク色のシンプルなワンピースだ。髪は一部後ろ頭で結んであり、細いリボンが飾ってある。
 派手な飾りはなくても、エミリアが嬉しそうに笑っている。誰よりも、愛しくて、かわいい、私のエミリアだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

夫には愛人がいたみたいです

杉本凪咲
恋愛
彼女は開口一番に言った。 私の夫の愛人だと。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

転生おばさんは有能な侍女

吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀? 転生おばさんは忙しい そして、新しい恋の予感…… てへ 豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!

処理中です...