17 / 51
今、排するべきか?①
しおりを挟む
エミリアを控え室に戻し、ベルド伯爵家がいなくなり、ひそひそ話が続くが、母が巧みに話を盛り上げてくれる。父とも仲睦まじい姿を見せて、場を繋いでくれる。自分にはできない芸当だ。こういった社交の場を苦手として、録にやっていなかったツケだ。
苦手だが、何とか話を繋ぐ。
前回めんどくさく感じたが、招待客の中にも色々あるんだなと実感。
高圧的なやつに、それに強く言えずにうつむいているもの。ひたすら食うやつ、飲むやつ、何やらこちらに言いたげなやつ。
そして、元辺境伯夫妻の両親に、王太子夫妻に蟻のように群がる連中が多いが、これが、縮図なんだろう。
ああ、エミリアはちゃんと休めたろうか?
「ご主人様、ヤノマ将軍です」
モーリスの声にピクリと反応。
振り返ると、白髪混じりの黒髪の父と同年代の男性。いかつい顔にいかつい体、ミュンヘナー王国将軍ヤノマだ。確か、叩き上げで将軍職に着いた武人だ。
きちっとしたヤノマ将軍は、一礼する姿は、まさに実直な歴戦の猛者だ。
「バルド・フォン辺境伯殿に、此度の婚礼のお祝いを」
自分とエミリアの祝いの言葉に嘘はないように思えるが、どうしても壁を作ってしまう。
ヤノマ将軍の嫡男が、いずれエミリアの死因にどっぷり関わっているからだ。その嫡男が、おそらくヤノマ将軍の夫人と共に緊張した顔で立っている。まだまだあどけない顔だが、数年後、父親譲りの体格を有したバカに成り下がる。
いま、ここで、殺そうか?
「伯? 何か、後気分を害しましたか?」
さすが叩き上げの武人、自分のこらえきれない殺気に気が付いた。
「ああ、失礼、なんでもありません。わざわざ、ご丁寧な挨拶ありがとうございます」
視界の中で、怯えた顔になる嫡男、名前は、ダメだ、思い出せない。ただ、この父親そっくりのバカだった。
よく見たら、夫人は知的な雰囲気がある。この夫人と実直な将軍との子供なのに、なぜ、あんな短絡的になったのか。
疑問が湧くが、いまここで、この嫡男を殺しても、騒ぎになるだけ、奔走してくれた両親と使用人達の苦労が水の泡だ。
どうにかやり過ごし、ヤノマ将軍一家は離れていく。
ヤノマ将軍一家は全員で五人で来ている。ヤノマ将軍と夫人、娘が二人、そして嫡男。自分が狂ったあの日、バカに成り下がった嫡男を、一撃で頭をかちわった。その時、ヤノマ将軍は、遠方にいたはず。その後、ヤノマ将軍一家がどのような結末となったか、わからない。
エミリアの主な死因は、外傷だ。
その外傷を加えたのが、五人。
ビスマルク王太子殿下の弟、カシアン。ヤノマ将軍の嫡男。そして、今、両親に挨拶している宰相バルマ侯爵一家の息子、次男だったはず。
後二人はこの場にいない。
一人はマグル王国人、もう一人はミュンヘナー王国でも大きな商会の息子。
全員、あの時、斬り殺したのは、間違いなく自分だ。
なら、今でもいいじゃないか? そう思うが、やはり、この場ではまずいと思い返して、にじみ出そうになる殺気を押さえ続けた。
苦手だが、何とか話を繋ぐ。
前回めんどくさく感じたが、招待客の中にも色々あるんだなと実感。
高圧的なやつに、それに強く言えずにうつむいているもの。ひたすら食うやつ、飲むやつ、何やらこちらに言いたげなやつ。
そして、元辺境伯夫妻の両親に、王太子夫妻に蟻のように群がる連中が多いが、これが、縮図なんだろう。
ああ、エミリアはちゃんと休めたろうか?
「ご主人様、ヤノマ将軍です」
モーリスの声にピクリと反応。
振り返ると、白髪混じりの黒髪の父と同年代の男性。いかつい顔にいかつい体、ミュンヘナー王国将軍ヤノマだ。確か、叩き上げで将軍職に着いた武人だ。
きちっとしたヤノマ将軍は、一礼する姿は、まさに実直な歴戦の猛者だ。
「バルド・フォン辺境伯殿に、此度の婚礼のお祝いを」
自分とエミリアの祝いの言葉に嘘はないように思えるが、どうしても壁を作ってしまう。
ヤノマ将軍の嫡男が、いずれエミリアの死因にどっぷり関わっているからだ。その嫡男が、おそらくヤノマ将軍の夫人と共に緊張した顔で立っている。まだまだあどけない顔だが、数年後、父親譲りの体格を有したバカに成り下がる。
いま、ここで、殺そうか?
「伯? 何か、後気分を害しましたか?」
さすが叩き上げの武人、自分のこらえきれない殺気に気が付いた。
「ああ、失礼、なんでもありません。わざわざ、ご丁寧な挨拶ありがとうございます」
視界の中で、怯えた顔になる嫡男、名前は、ダメだ、思い出せない。ただ、この父親そっくりのバカだった。
よく見たら、夫人は知的な雰囲気がある。この夫人と実直な将軍との子供なのに、なぜ、あんな短絡的になったのか。
疑問が湧くが、いまここで、この嫡男を殺しても、騒ぎになるだけ、奔走してくれた両親と使用人達の苦労が水の泡だ。
どうにかやり過ごし、ヤノマ将軍一家は離れていく。
ヤノマ将軍一家は全員で五人で来ている。ヤノマ将軍と夫人、娘が二人、そして嫡男。自分が狂ったあの日、バカに成り下がった嫡男を、一撃で頭をかちわった。その時、ヤノマ将軍は、遠方にいたはず。その後、ヤノマ将軍一家がどのような結末となったか、わからない。
エミリアの主な死因は、外傷だ。
その外傷を加えたのが、五人。
ビスマルク王太子殿下の弟、カシアン。ヤノマ将軍の嫡男。そして、今、両親に挨拶している宰相バルマ侯爵一家の息子、次男だったはず。
後二人はこの場にいない。
一人はマグル王国人、もう一人はミュンヘナー王国でも大きな商会の息子。
全員、あの時、斬り殺したのは、間違いなく自分だ。
なら、今でもいいじゃないか? そう思うが、やはり、この場ではまずいと思い返して、にじみ出そうになる殺気を押さえ続けた。
215
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説

夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください
今川幸乃
恋愛
アスカム公爵家の跡継ぎ、ベンの元に嫁入りしたアンナは、アスカム公爵から「息子を助けてやって欲しい」と頼まれていた。幼いころから政務についての教育を受けていたアンナはベンの手が回らないことや失敗をサポートするために様々な手助けを行っていた。
しかしベンは自分が何か失敗するたびにそれをアンナのせいだと思い込み、ついに「余計なことをするな」とアンナに宣言する。
ベンは周りの人がアンナばかりを称賛することにコンプレックスを抱えており、だんだん彼女を疎ましく思ってきていた。そしてアンナと違って何もしないクラリスという令嬢を愛するようになっていく。
しかしこれまでアンナがしていたことが全部ベンに回ってくると、次第にベンは首が回らなくなってくる。
最初は「これは何かの間違えだ」と思うベンだったが、次第にアンナのありがたみに気づき始めるのだった。
一方のアンナは空いた時間を楽しんでいたが、そこである出会いをする。

婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。

【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。

上辺だけの王太子妃はもうたくさん!
ネコ
恋愛
侯爵令嬢ヴァネッサは、王太子から「外聞のためだけに隣にいろ」と言われ続け、婚約者でありながらただの体面担当にされる。周囲は別の令嬢との密会を知りつつ口を噤むばかり。そんな扱いに愛想を尽かしたヴァネッサは「それなら私も好きにさせていただきます」と王宮を去る。意外にも国王は彼女の価値を知っていて……?

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。

あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる