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披露宴は出したくない 続・ある部屋
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「くすんっ、お母様っ、お腹空きました」
フランシスがシルビアに掴みかかり五時間経過。
すっかり夜になっている。
控え室には、閉じ込められたベルド伯爵家の三人。あれから、お茶の一杯もなく過ごしている。
フランシスは先ほどの事が答えたのはわずかの間だけ。
「さっきのおばさんが悪いのよっ、だってそうでしょうっ、ドレスぐらいでっ、私痛かったのよっ」
再び癇癪を起こすフランシスに、説明するが、簡単に理解するわけない。今まで、フランシスがいたのはベルド伯爵家内の小さな世界。それだから、どんなワガママも通っただけ。
そして、癇癪より空腹が勝り出してやっと大人しくなった。
そうなると、今度はエルゴスとナンシーが、シルビアに対する不満が沸き上がる。
何時間も待たせて、茶の一杯も出さない。
フランシスがシルビアを害する訳ではないのは、わかっていたはずなのに、わざとフランシスを痛め付けた。かわいい娘、フランシスを。
すべて、フォン辺境伯に嫁いだエミリアのせいだ。
フォン辺境伯がエミリアにドレスなんて準備したから、フランシスが欲しがったのだ。
婚姻が決まっても、使用人が代わりに花を送って来るような無関心な男が、これ見よがしにエミリアを腕に抱えていた、だから、教えてやったのに。エミリアがどれだけ愚図で、出来損ないであるかを、親切心で言ってやったのに。
ふつふつ、と不完全燃焼の怒りが沸き上がり出した頃に。
激しいノック音。
びくり、と震えるら。
『失礼、クラウド・フォンだ』
「あ、はいっ」
反射的に返事をしたのはエルゴス。
ドカンッ、と入って来たのは、筋骨隆々のクラウド・フォン。エルゴスの父親世代だが、あまりの迫力に、思わずすくむ。
クラウドはどかり、とソファーに座る。
びくり、と震えるナンシーとフランシス。さっきまでの沸き上がる怒りが恐怖に変わる。
「単刀直入に、こちらが支払った支度金は何に使用した?」
そして、テーブルに、ばさ、と出したのはエミリアが纏っていたドレス。古ぼけたドレスだ。
「ベルド伯爵、貴公は言ったな。エミリアの花嫁衣裳、そして花嫁道具の鏡台。しばらくは大丈夫なように衣服や靴は、ベルド伯爵で持つから、持参金と相殺にしてくれと。で、いつになったら、エミリアの荷物が来るのだ?」
次に出したのは、エミリアが持っていた古びたトランク。
「納得できる説明を求める」
「そ、それは、そ、そう、エミリアが望んだんですっ」
咄嗟に叫ぶエルゴス。フォン辺境伯からの支度金は、ほぼ残っていない。辺境伯に嫁ぐエミリアの為に、花嫁道具なんで、準備できる程残っていない。
「そうですっ。エミリアが、自分から望んだんですっ、ドレスはこれでいいって」
ナンシーも同調する。
必死にいい募る夫妻とは対象的に、無表情のクラウド。
「鏡台はせめてと思いましたが、エミリアはいらないとへそを曲げてしまってっ」
「そうですっ、そうなんですっ」
何れくらいしたか、クラウドかあきれたようにため息をついた。
「では、すべてエミリア嬢の希望だと?」
「そうですっ」
「そうなんですっ」
再び大きなため息を出すクラウド。
「そちらの考えはよくわかった。エミリア嬢に必要なものはすべてフォン辺境伯が揃えよう。なに、我が家の財政なら容易い事だ。ああ、支度金の返却も結構」
とたんに、安堵の色を浮かべるエルゴスとナンシーだが、次の瞬間、凍り付く。
「あの程度端金で、エミリア嬢がバルドの嫁になってくれたのだ、安いものだ。ああ、そうそう。エミリア嬢はすでに我がフォン辺境伯の一員。気軽に会えると思わぬように。そして、我が最愛の妻に働いた無礼、いつ謝罪するのだ?」
しばらくして、フォン辺境伯邸から逃げるように去っていく一行が目撃された。
フランシスがシルビアに掴みかかり五時間経過。
すっかり夜になっている。
控え室には、閉じ込められたベルド伯爵家の三人。あれから、お茶の一杯もなく過ごしている。
フランシスは先ほどの事が答えたのはわずかの間だけ。
「さっきのおばさんが悪いのよっ、だってそうでしょうっ、ドレスぐらいでっ、私痛かったのよっ」
再び癇癪を起こすフランシスに、説明するが、簡単に理解するわけない。今まで、フランシスがいたのはベルド伯爵家内の小さな世界。それだから、どんなワガママも通っただけ。
そして、癇癪より空腹が勝り出してやっと大人しくなった。
そうなると、今度はエルゴスとナンシーが、シルビアに対する不満が沸き上がる。
何時間も待たせて、茶の一杯も出さない。
フランシスがシルビアを害する訳ではないのは、わかっていたはずなのに、わざとフランシスを痛め付けた。かわいい娘、フランシスを。
すべて、フォン辺境伯に嫁いだエミリアのせいだ。
フォン辺境伯がエミリアにドレスなんて準備したから、フランシスが欲しがったのだ。
婚姻が決まっても、使用人が代わりに花を送って来るような無関心な男が、これ見よがしにエミリアを腕に抱えていた、だから、教えてやったのに。エミリアがどれだけ愚図で、出来損ないであるかを、親切心で言ってやったのに。
ふつふつ、と不完全燃焼の怒りが沸き上がり出した頃に。
激しいノック音。
びくり、と震えるら。
『失礼、クラウド・フォンだ』
「あ、はいっ」
反射的に返事をしたのはエルゴス。
ドカンッ、と入って来たのは、筋骨隆々のクラウド・フォン。エルゴスの父親世代だが、あまりの迫力に、思わずすくむ。
クラウドはどかり、とソファーに座る。
びくり、と震えるナンシーとフランシス。さっきまでの沸き上がる怒りが恐怖に変わる。
「単刀直入に、こちらが支払った支度金は何に使用した?」
そして、テーブルに、ばさ、と出したのはエミリアが纏っていたドレス。古ぼけたドレスだ。
「ベルド伯爵、貴公は言ったな。エミリアの花嫁衣裳、そして花嫁道具の鏡台。しばらくは大丈夫なように衣服や靴は、ベルド伯爵で持つから、持参金と相殺にしてくれと。で、いつになったら、エミリアの荷物が来るのだ?」
次に出したのは、エミリアが持っていた古びたトランク。
「納得できる説明を求める」
「そ、それは、そ、そう、エミリアが望んだんですっ」
咄嗟に叫ぶエルゴス。フォン辺境伯からの支度金は、ほぼ残っていない。辺境伯に嫁ぐエミリアの為に、花嫁道具なんで、準備できる程残っていない。
「そうですっ。エミリアが、自分から望んだんですっ、ドレスはこれでいいって」
ナンシーも同調する。
必死にいい募る夫妻とは対象的に、無表情のクラウド。
「鏡台はせめてと思いましたが、エミリアはいらないとへそを曲げてしまってっ」
「そうですっ、そうなんですっ」
何れくらいしたか、クラウドかあきれたようにため息をついた。
「では、すべてエミリア嬢の希望だと?」
「そうですっ」
「そうなんですっ」
再び大きなため息を出すクラウド。
「そちらの考えはよくわかった。エミリア嬢に必要なものはすべてフォン辺境伯が揃えよう。なに、我が家の財政なら容易い事だ。ああ、支度金の返却も結構」
とたんに、安堵の色を浮かべるエルゴスとナンシーだが、次の瞬間、凍り付く。
「あの程度端金で、エミリア嬢がバルドの嫁になってくれたのだ、安いものだ。ああ、そうそう。エミリア嬢はすでに我がフォン辺境伯の一員。気軽に会えると思わぬように。そして、我が最愛の妻に働いた無礼、いつ謝罪するのだ?」
しばらくして、フォン辺境伯邸から逃げるように去っていく一行が目撃された。
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