12 / 51
披露宴は出したくない⑦
しおりを挟む
ベルド伯爵の三人。
血縁上の父親、エルゴス・ベルド。確か、自分と同い年。金髪と茶色の目。自分と同い年の男の元に、支度金欲しさに娘の釣書を送った男。そして、妻がいながら、別の女と通じて子供をこさえた男。一昔なら、男の甲斐性とか言われるが、今では後ろ指さされる不倫だ。妻が亡くなった後に、喪が明けてから迎えるのであれば、また周囲の反応も変わったのだろうが。妻との間にいる娘と、同い年の娘がいる時点で避けられる対象だ。既に酒に酔っているのか、顔が真っ赤だ。おいおい、娘の披露宴で酔っているのか? 前回も好感はなかったが、現在はマイナスを通りすぎている。
エミリアの花嫁衣裳を準備するといって、ぼろぼろの花嫁衣裳を準備しやがって。結局、こいつにとってエミリアはそんな存在なんだろう。
そして、後妻の女は、どこかの子爵家の娘。名前はナンシー、家名は思い出せない。エルゴスと不倫して、フランシスを産み、今、堂々と立っている。やや赤みのあるブロンズ色の髪を巻き上げ、飾り立てている。ドレスも派手な赤で、肩と背中が大胆に出ている。化粧も派手だが、着なれているのか、顔の造りがいいのか不思議と似合う。似合うが、一応、義理の娘の披露宴ならば、親は控えた格好をするべきである。新郎新婦より目立たないように、な。どうやら、貴族の娘だが、常識を親から授からなかったようだ。自分の場合は、必死に周りが教えてくれようとしてくれたが、自分がバカなせいでからぶっていた。
この女が、エミリアを陰湿にいじめ、始めは娘だからと、乗り気ではなかったエミリアの父親を焚き付けて、一緒に責め立てた。この女もいまここで、くびり殺してやりたいが我慢。腕の中にはエミリアがいるのだ。
そして、フランシス。金髪をピンクのリボンでツインテールにして、ドレスはピンクを基調にしてリボンやフリルでごてごてと飾りつけている。顔は母親のように、幼いながらに派手だ。こいつは、色んなものをエミリアから奪った。ドレスやぬいぐるみ、お菓子に始まり、母親の形見のブローチ、エミリアの部屋、最後に命と尊厳を。
今は、まだなにもしていないが、いずれ事を起こす。父親の金髪に、母親の茶色の目で、笑顔を浮かべているが、エミリアに対する軽蔑の色を隠しもしてない。ガキだな。
こいつら、いつ、始末するか、どうやって始末するか。
「ベルド伯爵」
小さくエミリアに大丈夫だと呟いてから、大きく答えてやる。
「こんな不出来な娘ですが、気に入っていただいて本当に良かったっ。なんせ、この子は何をやらしても愚図ですから、辺境伯夫人など勤まらないと案じておりまして」
繰り返すが、今は、エミリア、つまり、エルゴス・ベルドの娘、エミリアの披露宴なわけだ。
それをアルコールで真っ赤にして、ディスり出しやがった。
「ええっ、本当に何を教えてもやる気はないし、ボーッとしておりますのよ。親として、心配で心配で」
継母が続くが、内容は嘘っぱちだ。心配? 嘲っているだけだ。
「おねえさまはぁっ、本当に、いじわるなんですよぉ」
バカ丸出しの話し方のフランシス。耳障りだ。
目出度い披露宴で、花嫁をディスりだす花嫁の家族は、派手に着飾り、品格も欠片もない。
エミリアが、腕の中で震えている。
すう、と息をつく。
「それは我が妻、エミリアに対するベルド伯爵からの侮辱と受け取ろう」
さあ、と凍り付いたのは、エルゴスとナンシー夫婦だけだった。
血縁上の父親、エルゴス・ベルド。確か、自分と同い年。金髪と茶色の目。自分と同い年の男の元に、支度金欲しさに娘の釣書を送った男。そして、妻がいながら、別の女と通じて子供をこさえた男。一昔なら、男の甲斐性とか言われるが、今では後ろ指さされる不倫だ。妻が亡くなった後に、喪が明けてから迎えるのであれば、また周囲の反応も変わったのだろうが。妻との間にいる娘と、同い年の娘がいる時点で避けられる対象だ。既に酒に酔っているのか、顔が真っ赤だ。おいおい、娘の披露宴で酔っているのか? 前回も好感はなかったが、現在はマイナスを通りすぎている。
エミリアの花嫁衣裳を準備するといって、ぼろぼろの花嫁衣裳を準備しやがって。結局、こいつにとってエミリアはそんな存在なんだろう。
そして、後妻の女は、どこかの子爵家の娘。名前はナンシー、家名は思い出せない。エルゴスと不倫して、フランシスを産み、今、堂々と立っている。やや赤みのあるブロンズ色の髪を巻き上げ、飾り立てている。ドレスも派手な赤で、肩と背中が大胆に出ている。化粧も派手だが、着なれているのか、顔の造りがいいのか不思議と似合う。似合うが、一応、義理の娘の披露宴ならば、親は控えた格好をするべきである。新郎新婦より目立たないように、な。どうやら、貴族の娘だが、常識を親から授からなかったようだ。自分の場合は、必死に周りが教えてくれようとしてくれたが、自分がバカなせいでからぶっていた。
この女が、エミリアを陰湿にいじめ、始めは娘だからと、乗り気ではなかったエミリアの父親を焚き付けて、一緒に責め立てた。この女もいまここで、くびり殺してやりたいが我慢。腕の中にはエミリアがいるのだ。
そして、フランシス。金髪をピンクのリボンでツインテールにして、ドレスはピンクを基調にしてリボンやフリルでごてごてと飾りつけている。顔は母親のように、幼いながらに派手だ。こいつは、色んなものをエミリアから奪った。ドレスやぬいぐるみ、お菓子に始まり、母親の形見のブローチ、エミリアの部屋、最後に命と尊厳を。
今は、まだなにもしていないが、いずれ事を起こす。父親の金髪に、母親の茶色の目で、笑顔を浮かべているが、エミリアに対する軽蔑の色を隠しもしてない。ガキだな。
こいつら、いつ、始末するか、どうやって始末するか。
「ベルド伯爵」
小さくエミリアに大丈夫だと呟いてから、大きく答えてやる。
「こんな不出来な娘ですが、気に入っていただいて本当に良かったっ。なんせ、この子は何をやらしても愚図ですから、辺境伯夫人など勤まらないと案じておりまして」
繰り返すが、今は、エミリア、つまり、エルゴス・ベルドの娘、エミリアの披露宴なわけだ。
それをアルコールで真っ赤にして、ディスり出しやがった。
「ええっ、本当に何を教えてもやる気はないし、ボーッとしておりますのよ。親として、心配で心配で」
継母が続くが、内容は嘘っぱちだ。心配? 嘲っているだけだ。
「おねえさまはぁっ、本当に、いじわるなんですよぉ」
バカ丸出しの話し方のフランシス。耳障りだ。
目出度い披露宴で、花嫁をディスりだす花嫁の家族は、派手に着飾り、品格も欠片もない。
エミリアが、腕の中で震えている。
すう、と息をつく。
「それは我が妻、エミリアに対するベルド伯爵からの侮辱と受け取ろう」
さあ、と凍り付いたのは、エルゴスとナンシー夫婦だけだった。
234
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。
朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。
そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。
だけど、他の生徒は知らないのだ。
スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。
真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。

【完結80万pt感謝】不貞をしても婚約破棄されたくない美男子たちはどうするべきなのか?
宇水涼麻
恋愛
高位貴族令息である三人の美男子たちは学園内で一人の男爵令嬢に侍っている。
そんな彼らが卒業式の前日に家に戻ると父親から衝撃的な話をされた。
婚約者から婚約を破棄され、第一後継者から降ろされるというのだ。
彼らは慌てて学園へ戻り、学生寮の食堂内で各々の婚約者を探す。
婚約者を前に彼らはどうするのだろうか?
短編になる予定です。
たくさんのご感想をいただきましてありがとうございます!
【ネタバレ】マークをつけ忘れているものがあります。
ご感想をお読みになる時にはお気をつけください。すみません。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる