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披露宴は出したくない⑤
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会場に入ると、様々な視線に晒される。
好奇、祝福、妬み。以前は他人の視線などめんどくさいとしか思わず、歯牙にもかけなかったが。
今は、腕にエミリアがいる。どうにかして、守らなくては。
拍手で迎え入れられたが、どれくらい、エミリアを、フォン辺境伯夫人と認めているか。
自分の肩に掴まっているエミリアの手が強ばる、緊張しているんだ。
「エミリア、大丈夫だ」
小さく、エミリアにだけ聞こえるように言うと、少しだけ安心したような顔だ。
まずは挨拶を、とモーリスに促され前に立つ。
父と合流した母の姿が視界に入る。
「本日は私、バルド・フォン、そしてエミリアとの婚姻式にご参列頂き真に感謝したします」
セバスが考えた挨拶を並べる。
「どうぞ最後までお楽しみください」
よし、終わった。
時間はまだあるが、次々にやってくる招待客に、挨拶を返していく。中にはエミリアの年齢を嫌味に引っ掛けてくるやつがいたが、軽く睨み付けて、モーリスに記憶させる。付き合い、ぶったぎってやる。
一応、フォン辺境伯はミュンヘナー王国内でも大貴族の位置にいる。領地は隣国と接した交易の要所だし、港も管理している。母が主体で行っている海運業も最近順調だ。
この披露宴に呼ばれたのは、基本的にうちと付き合いがあるからだ。それなのに嫁いれしたエミリアに、回りくどく侮辱したのだ、ぶったぎられてもしょうがないやつらだ。
そこに金髪碧眼の王子様風味の男がやってくる。今まで両親と話し込んでいた男。この国の王太子殿下、ビスマルク殿下だ。王家から代表で夫婦で参加だ。妃殿下はマグル王国の元公爵令嬢、イドゥン妃殿下だ。母もマグル王国の侯爵家出身で、イドゥン妃殿下は母の従姉の娘になる。二人とも美男美女で、正装姿に見惚れている招待客がいる。
ああ、思い出した、前回の最後。
ビスマルク殿下は自分の前に土下座して、許しを請おた。
どうか、弟の首だけにしてくれ、これ以上は、やめてくれ、どうか、どうか、やめてください。
そう。
エミリアが死んだ理由の一端を担ったのが、ビスマルク殿下の弟。第三王子のカシアンだった。エミリアを喪い、正気を失った自分は王城を血に染めて、土下座するビスマルク殿下、そして必死に追い付いて、その前に飛び出したモーリスごと、切り殺してしまったのだ。
「やあ。フォン辺境伯殿、目出度い日だな。本当に良かった、これでご両親もさぞかし安心されているだろう。花嫁殿は、まるで妖精のような愛らしさだな」
あの時、地位もプライドも何もかも捨てて、土下座していたビスマルク殿下が、笑っていた。
好奇、祝福、妬み。以前は他人の視線などめんどくさいとしか思わず、歯牙にもかけなかったが。
今は、腕にエミリアがいる。どうにかして、守らなくては。
拍手で迎え入れられたが、どれくらい、エミリアを、フォン辺境伯夫人と認めているか。
自分の肩に掴まっているエミリアの手が強ばる、緊張しているんだ。
「エミリア、大丈夫だ」
小さく、エミリアにだけ聞こえるように言うと、少しだけ安心したような顔だ。
まずは挨拶を、とモーリスに促され前に立つ。
父と合流した母の姿が視界に入る。
「本日は私、バルド・フォン、そしてエミリアとの婚姻式にご参列頂き真に感謝したします」
セバスが考えた挨拶を並べる。
「どうぞ最後までお楽しみください」
よし、終わった。
時間はまだあるが、次々にやってくる招待客に、挨拶を返していく。中にはエミリアの年齢を嫌味に引っ掛けてくるやつがいたが、軽く睨み付けて、モーリスに記憶させる。付き合い、ぶったぎってやる。
一応、フォン辺境伯はミュンヘナー王国内でも大貴族の位置にいる。領地は隣国と接した交易の要所だし、港も管理している。母が主体で行っている海運業も最近順調だ。
この披露宴に呼ばれたのは、基本的にうちと付き合いがあるからだ。それなのに嫁いれしたエミリアに、回りくどく侮辱したのだ、ぶったぎられてもしょうがないやつらだ。
そこに金髪碧眼の王子様風味の男がやってくる。今まで両親と話し込んでいた男。この国の王太子殿下、ビスマルク殿下だ。王家から代表で夫婦で参加だ。妃殿下はマグル王国の元公爵令嬢、イドゥン妃殿下だ。母もマグル王国の侯爵家出身で、イドゥン妃殿下は母の従姉の娘になる。二人とも美男美女で、正装姿に見惚れている招待客がいる。
ああ、思い出した、前回の最後。
ビスマルク殿下は自分の前に土下座して、許しを請おた。
どうか、弟の首だけにしてくれ、これ以上は、やめてくれ、どうか、どうか、やめてください。
そう。
エミリアが死んだ理由の一端を担ったのが、ビスマルク殿下の弟。第三王子のカシアンだった。エミリアを喪い、正気を失った自分は王城を血に染めて、土下座するビスマルク殿下、そして必死に追い付いて、その前に飛び出したモーリスごと、切り殺してしまったのだ。
「やあ。フォン辺境伯殿、目出度い日だな。本当に良かった、これでご両親もさぞかし安心されているだろう。花嫁殿は、まるで妖精のような愛らしさだな」
あの時、地位もプライドも何もかも捨てて、土下座していたビスマルク殿下が、笑っていた。
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