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披露宴は出したくない④
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癖のない、ストレートの色素の薄い金髪は下ろされ、小さな生花で作られた花輪で飾ってある。筒状の青いドレスに帯は白いレース、背中にも白いレースがマントのように下がっている。手にはブーケ。
妖精ではない、可憐に着飾ったエミリアだ。
「おいモーリス、会場にいるそっちの趣味がある連中を調べておけ」
「何をする気で?」
「後で殴って記憶喪失にさせる」
「お止めくださいっ。ほらっ、まずエミリア様を誉めるっ」
こそこそ話していたので、聞こえてないはず。
じっと、不安そうに見上げてくるエミリア。
うん、やっぱりどこかに隠した方がいい気がするんだがなあ。
「エミリア、とても似合うよ。まるで妖精のようだ」
ぱぁっ、と赤くなるエミリア。やっぱり、どこかに隠そう。
マギーを始めとするメイド達の反応がまちまちだ。目を押さえ、頬をつねり、ぽかんと口を開けて、珍獣を見る目になっている。
「ありがとう、ございます…………」
もじもじ。うーん、かわいい。
「ほら、招待客の皆様がお待ちですわよ。バルド、先ほどと同じようにエミリア嬢を抱えなさい」
「はい、母上」
「あっ、あのっ、私歩けますっ」
すると、母は困った顔になる。
「ごめんなさいねエミリア嬢。そのドレス応急措置のドレスだから、歩くとボロが出てしまうわ。だから、バルドに抱っこされない。大丈夫よ、バルドは体力だけは自信があります。バルド、30分は耐えられますね?」
「エミリアなら、1日くらいいけますよ」
「ね、ほら」
ニコニコ笑う母の圧で、反射的にエミリアは頷く。応急措置のドレスの意味が分からないが、確かに、オーバーサイズのドレスのようだ。ぶかぶかだ。
慎重にエミリアを、先ほどと同じように抱える。
「エミリア、どこか苦しくないか?」
自分もそうだが、人の痛みが分からない為に、抱えたエミリアの身体に支障がないかが心配だ。
「はい、大丈夫ですバルド様。あの、私、重くないですか?」
不安そうなエミリア。
「いいや、エミリアは羽のように軽いぞ」
散々読まされた古今東西の恋愛小説にこうあった。
すると、照れたようなエミリア。かわいすぎる、やっぱり、どこかに隠した方がいいのでは?
「さあ、バルド、エミリア嬢行きますよ」
「母上、やはりエミリアを連中の好奇の視線に晒すのは。奥に隠した方が」
「何をのたまうの? ほら、行きますよ。エミリア嬢、30分だけ頑張れますか?」
「はいっ、シルビア様っ、あ、お義母様っ」
言い直している、かわいいなあエミリアは。
「バルド、30分だけです。エミリア嬢を守りなさい」
「はい、母上」
エミリアをしっかり抱えて、先導するモーリスの後に続いた。
妖精ではない、可憐に着飾ったエミリアだ。
「おいモーリス、会場にいるそっちの趣味がある連中を調べておけ」
「何をする気で?」
「後で殴って記憶喪失にさせる」
「お止めくださいっ。ほらっ、まずエミリア様を誉めるっ」
こそこそ話していたので、聞こえてないはず。
じっと、不安そうに見上げてくるエミリア。
うん、やっぱりどこかに隠した方がいい気がするんだがなあ。
「エミリア、とても似合うよ。まるで妖精のようだ」
ぱぁっ、と赤くなるエミリア。やっぱり、どこかに隠そう。
マギーを始めとするメイド達の反応がまちまちだ。目を押さえ、頬をつねり、ぽかんと口を開けて、珍獣を見る目になっている。
「ありがとう、ございます…………」
もじもじ。うーん、かわいい。
「ほら、招待客の皆様がお待ちですわよ。バルド、先ほどと同じようにエミリア嬢を抱えなさい」
「はい、母上」
「あっ、あのっ、私歩けますっ」
すると、母は困った顔になる。
「ごめんなさいねエミリア嬢。そのドレス応急措置のドレスだから、歩くとボロが出てしまうわ。だから、バルドに抱っこされない。大丈夫よ、バルドは体力だけは自信があります。バルド、30分は耐えられますね?」
「エミリアなら、1日くらいいけますよ」
「ね、ほら」
ニコニコ笑う母の圧で、反射的にエミリアは頷く。応急措置のドレスの意味が分からないが、確かに、オーバーサイズのドレスのようだ。ぶかぶかだ。
慎重にエミリアを、先ほどと同じように抱える。
「エミリア、どこか苦しくないか?」
自分もそうだが、人の痛みが分からない為に、抱えたエミリアの身体に支障がないかが心配だ。
「はい、大丈夫ですバルド様。あの、私、重くないですか?」
不安そうなエミリア。
「いいや、エミリアは羽のように軽いぞ」
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すると、照れたようなエミリア。かわいすぎる、やっぱり、どこかに隠した方がいいのでは?
「さあ、バルド、エミリア嬢行きますよ」
「母上、やはりエミリアを連中の好奇の視線に晒すのは。奥に隠した方が」
「何をのたまうの? ほら、行きますよ。エミリア嬢、30分だけ頑張れますか?」
「はいっ、シルビア様っ、あ、お義母様っ」
言い直している、かわいいなあエミリアは。
「バルド、30分だけです。エミリア嬢を守りなさい」
「はい、母上」
エミリアをしっかり抱えて、先導するモーリスの後に続いた。
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