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披露宴は出したくない①

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 屋敷に着いて、これから招待客達が我が家の庭園で行われる披露宴。
 それにエミリアを出す気はない。
 前回の自分は繰り返すかが無関心+無神経な人間。側にいるべき花嫁エミリアをほったらかしにした。前回、更に粗末すぎる花嫁衣裳の為に、エミリアは好奇な視線を浴び、影口をこそこそ叩かれたのだ。それをたった一人で耐え抜いた。途中で母が気を使い、共に奥に引っ込んだが。
 花嫁の控え室に到着すると、マギーを始めとしたメイド達が待ち構えていた。

「ご主人様、エミリア様がお着替えなさいます。どうかご退室を」

 マギーがいつもの冷静さを取り戻し、退室を促してくる。
 披露宴では、お色直しをしてから出るのだが、こんなドレスを持たせたバルド伯爵が、まともなお色直しの衣裳を準備している訳がない。

「いや、披露宴には俺だけが出る。エミリア、疲れたろう? ここで茶でも飲んで休みなさい」

「えっ、でも…………」
 
 戸惑いのエミリア、ああ、なんてかわいいだ。抱き締めて、部屋の奥に隠したい。

「ご主人様、披露宴は夫婦として初の社交でございます。外すわけにはまいりません」

 マギーが正論だ。確かに自分とエミリアは夫婦になったが、婚約者として社交界に出たわけではない。婚約者期間がなく、いきなり結婚式だったし、自分はそういったことには参加するような事はないし、エミリアはデビュタントすらしていない。
 この披露宴が、自分とエミリアとの初の共同作業。響きはいいが、ダメだ。

「ダメだ、エミリアをあんな連中の中を連れて歩けない。変な連中が、エミリアにどんな陰口を叩くか。エミリアには傷ついて欲しくない」

 くっ、となぜかマギーが目頭を押さえる。

「ど、どうした?」

 めまいとかか? なったことないが、きついらしいし。マギーもそこそこ年だしな。

「いいえ、なんでもございません。ご主人様、この披露宴でしっかりエミリア様を大切にしていると印象を与えなくてはなりません。失敗すれば、付け入る隙ありと思われ、釣書が来ますよ」

「釣書? 今、結婚したばかりだぞ」

「ご自分とエミリア様の年齢を考えてくださいっ。手が出せないなら、その関係になる前にあいだに滑り込み、既成事実を成せば、エミリア様を追い出せる、と」

「私はそんなことはしないっ」

「ご主人がそうでも周りはそうは思いませんっ」

「おやめなさいっ」

 ヒートアップする自分とマギーを止めたのは、教会から来た母だ。深い茶色の髪をアップし、濃紺のドレスに身を包んだ母・シルビアだ。見慣れた顔だけど、社交界の薔薇と呼ばれていた面影は健在とモーリスが。鉄製の扇で、叩くような母親なんだけどなあ。

「まったく大人げない。バルド、お前がエミリア嬢を大切にしたい気持ちになってくれて、母としては嬉しいわ、でも、肝心のエミリア嬢が怯えているではないですか」
 
 えっ?
 振り返ると、ブーケを握り締め、小さな肩を震わせているエミリアがいた。
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