もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
810 / 869
連載

騒ぎの後⑪

しおりを挟む
「あ、あのっ」
 あの時、トビアスさんが声をかけてきた。
「私はトッパに在住しています。何もない田舎ですが、静かな場所です。あの子が、これから自分と向き合う必要な時間なはず。うちでも、受け入れたいと」
 と、言葉に詰まりながら言ってくれた。だけど。
「あなたっ、何を考えていますのっ」
 と、後ろから出てきたのは喪服の女性。腕に小さな子供を抱いている。きっとトビアスさんの奥様だね。
「うちにはまだ育てないといけない子供達がいるのですよっ」
 あ、スカートを掴んでいる子供もいる。
 その後ろにも、中学生くらいの女の子、小学生くらいの男の子二人、え、合計五人もお子さん居るの?
「そうやって、可哀想だからと犬や猫まで拾ってきてっ。我が家の台所がどうなっているか分かっているでしょうっ」
 うっ、と詰まるトビアスさん。
 確かに子育てって大変。奥様の腕にいるような小さな子供もいるし、食費諸々かかるしね。まあ、言いたくもなるかな。
 鬼気迫る奥様の気迫に押されつ、ぷしゅー、と縮むトビアスさん。
「まったくっ、すぐに帰って新しいベッドを入れなくてはいけませんっ。家具の移動は旦那様でやってくださいっ。それと晩酌のワインは、週に一回だけですよっ」
 えっ?
「い、いいの?」
 おずおずと聞くトビアスさん。
「一度、男が口に出したのですっ。旦那様はダン男爵の家長でしょう、しっかりなさってっ」
「は、はいっ」
「家族が一人増えるのですっ、たくさんお仕事してくださいませっ」
「は、はいっ」
 うん、尻に敷かれている感じだけど。ここのおうちはこれで成り立っているんやね、って感じた。それからバタバタとして、うやむやのままトビアスさん御一家と別れたが、中学生くらいの女の子が、母親に、自分は学園の寮に帰るからベッドを使って、と言っていたのを拾う。いい子やなあ。
 で、結果、ピアちゃんの希望でトビアスさんのところで静養となった。直ぐにってわけじゃないけどね。で、それを聞いたツヴァイクさんが、端材でベッドを作っている。私はもへじ生活から布団一式を手に入れた。
 数日後にトビアスさん御一家をゲストハウスにご招待してある。サエキ様にもお話してあるし、エドワルドさんにお願いして、ご実家経由してのご招待だ。現在、トビアスさんのお姉さんが嫁いだ先の伯爵家に滞在しているって。数日後にはトッパに帰るがその前にご招待だ。その際に、ベッドや布団一式、他にも色々お渡ししようと思っている。時間停止ではない、マジックバッグがあるからね。マジックバッグ、一杯あるし、時間停止でないので私達はあまり必要としていない。だけど、一般の人からしては高級品だ。もしもの時に売ってもらえば、そこそこの額になるはず。
 私はじゃがいもの皮を剥きながら、壁の手作りカレンダーをチェックした。

「アルスさんの具合はどうです?」
 夕御飯前に私はファングさんに確認。
「昼過ぎにはすっかりよくなってな。ウロウロしている。ご心配かけました」
 ファングさんがぺこり。今日、金の虎はコテージで夕御飯を食べるって。
「いえいえ、回復して良かったですね。あ、これ、夕御飯です」
 念の為にアルスさんには母が作ったフレアタートルを使った雑炊。強烈な香ばしい香りを放つ、アスィミイールの白焼きと蒲焼き、クレイ鱒のちゃんちゃん焼きはファングさん達用ね。ファングさんはお礼を言ってコテージに引き上げていった。
 このアスィミイールを焼く際に、いつものバーベキューコンロで炭火焼きにしたが、流石の母も四苦八苦。シルフィ達まで匂いに釣られて、母にべったり。アリスはバーベキューコンロを挟み、母の真正面を陣取り、じぃーっ、と見ていた。
 やりにくかー、と呟いてました。
 しかし、煙まで美味しそうな香り。ちょっと焦げたりしているが、御愛嬌だ。
 サブ・ドアでちゅどんドカンしていたメンバーも帰って来たし、さ、夕御飯にしましょう。
 まずは功労者のイシスには、山盛りのアスィミイールの白焼きと蒲焼き。山椒やワサビはいらないって。
「さ、イシスどうぞ」
『ヌッ、ウマソウダッ』
 ガツガツッ。
 そして、黄金色の目をかっぴらく。
『コレハ旨イッ、本当二アノ魚カッ』
「そうよ。大変やったんやから」
 母が食べっぷりのいいイシスにニコニコ。
『ウム、母二任セテ正確ダナッ』
 母がニコニコと白焼きを追加している。
 ビアンカとルージュには、白滝混ぜたご飯に白焼きと蒲焼きのハーフ&ハーフの丼だ。
『美味しいのですっ』
『美味しいわっ』
 ガツガツといい食べっぷり。
 アレスはまだ若手達を連れて帰ってきてないが、心配はしてない。若手達の方がへばってないか心配。
 で、私達もアスィミイールとクレイ鱒を頂きましょう。
 うーん、いい香り。
 アルコールはいいかな。
「では、乾杯っ」
「「「「「かんぱーいっ」」」」」
 私は缶のレモンチューハイをぐびっ。そして、船長さんが、必死に交渉してきたアスィミイールの白焼きを一口。
 ……ふわあっ、ふかふかして美味しいっ。確かに鰻だろうけど、ピンクに銀色だったけど、脂が乗り、上品な旨味が口一杯に広がる。私はワサビは苦手なので、ちょっと山椒をふりかけて、パクリ。うわあ、山椒の香りが味を助けている。これは箸が進みますな。蒲焼きも一口、白焼きとは違うけど、これはご飯だね。蒲焼きのタレは、母が醤油とかを混ぜて作っていたが、次回使う時にまた味がかわるだろうって。あれだ、よく鰻屋さんが使っている代々伝わる秘伝のタレ、みたいになるだろうって。
 晃太はN県の辛口大吟醸と、ワサビを乗せた白焼きに、うんうん言ってる。
『母ヨ、オカワリダッ』
『おかわりなのですっ』
『おかわり欲しいわっ』
 まだ、食べ始めたばっかりやけど。
 アリスまでお皿を咥えてアピール。
 仔達まで騒ぎ出してしまった。
 私は母と皆さんに手伝ってもらい、手分けして白焼きと蒲焼きを乗せた。
しおりを挟む
感想 836

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。