819 / 851
連載
騒ぎの後④
しおりを挟む
結局、晃太は別室に案内される。薪とか砂糖とかは全て晃太のアイテムボックス内だからね。エマちゃんと、ツヴァイクさんが付いてくれる。
私はそのままモドルさんとお話。
「以前も多額にご寄付頂いたのに、ありがとうございます。子供達にお腹いっぱい食べさせてあげれます」
「良かったです」
全てうちのバトルジャンキー達のおかげなんやけどね。
首都故に人口は多く、比例して孤児院にいる子供達の数は多いし、修道院に保護されている人達も当然多い。下層住民への炊き出しも、マーファの倍の規模だ。薪は元気達の木魔法の訓練で大量に出来たから、活用できたらいいしね。しかもダンジョン内の木なので、薪にしても、そのうちしれっと生えてるしね。
前回来た時も寄付したが、あの時のものはガタが来た家具の買い替えや、危ない窓枠、抜けそうな廊下、そして一部崩落しかけた屋根の修繕に使われた。結構な大改修だったそうだ。子供達が怪我する前で良かった。グーテオークションの寄付金でちょっとずつ改修していたが、私の寄付金で一気に行ったそうだ。残りは食費で飛んだそうだ。孤児院にも、多少の畑はあるが、とても全員のお腹を毎日満たせるわけない。
今回の寄付で、多少の改善になるといいけど。
お茶まで出してもらった。ふー、としているとノックが。以前小児用の抗生剤で接触した悪人ヅラさんだった。顔は怖いが、孤児院の子供達の為に一生懸命なのはわかっている。丁寧にお礼を貰う。
「テイマー様、今日、もう少しお時間を頂けないでしょうか?」
と、悪人ヅラさん、アルジャルフさんね、確認するように聞いてくる。どうしたんやろ?
「実は、シスター・ガルニャよりお伝えしたい事があるそうで、そう長くはならないと思いますが」
「全然大丈夫です」
きっとあの女の子の事や。
知りたかった事やしね。
アルジャルフさんが退室し、ソワソワしながら待つ。晃太達とほぼ同時にシスター・ガルニャがやって来た。
「申し訳ありません、お時間頂いて」
シスター・ガルニャが深くお辞儀をする。
「いえ、私もお話を聞きたいと思っていました」
早速お話をする。シスター・ガルニャがお断りしてから着席される。
「昨日保護した少女の事ですが」
「はい」
隣に座る晃太も、反応する。
「傷の確認後に頂いたポーションで治療しました。傷自体はいいのですが」
言い淀むシスター・ガルニャ。もしかして、精神的なものがいかんのかな?
「その、あれだけ傷を受けて、ガリガリに痩せていたのですが、落ち着いています」
「落ち着いている?」
悪い事?
「はい。なんだか、悟っていると言うか、騒ぐことも怯える事もなく。私どもも少女の精神面のフォローをと、構えていたのですが杞憂に終わりました。ただ、不思議な事も言っていて」
「不思議な事?」
「はい」
シスター・ガルニャはちょっと迷う顔。
「目覚めると言ったんです、お母さんと会ったと」
あ。
「もう、お母さんはいないけど、最後にたくさんお話した、と」
私は、お腹の底から、一気に息が吐き出されるように安心する。始祖神様がきっと夢の中であの女の子とお母さんを会わせてくれたんや。
ありがとうございます、始祖神様。
「混乱しないか心配していたのですが、逆にあんなに落ち着くと思いませんでした」
「きっと神様が、あの女の子とお母さんをあわせてくれたんですよ。それでいいじゃないですか」
私の言葉に、何かに気がついたようなシスター・ガルニャ。そして祈りの姿勢となる。
「そうですね。始祖神様の愛が、あの子に奇跡を起こしたのですね」
シスター・ガルニャは納得したように言う。それもあるけど、何より、あの女の子のお母さんの愛やと思う。
「それで、女の子は今は?」
「眠っています。たまたま目が覚めた時に私が居合わせて」
朝方に目が覚めて、水を飲ませたり、痛みがないか確認したり、体を拭いたりとお世話をしている最中に、聞いたそうだ。
「落ち着いているとはいえ、まずは静養です。詳しい事情と、あの子がこれからどうしたいかの確認出来るようになってからです。あの、もしあの子が望めば、そちらでも受け入れ可能と伺っていますが」
「はい。両親の了解もあります。ただ、うちは色んな意味で賑やかで、どうしても移動生活になります。それに私達は次にシーラに向かいます。そう何ヶ月も首都にはいられません」
「はい。今日の落ち着き様では、早く移動先の希望先が知れるかもしれません。ただ」
シスター・ガルニャの顔に影が差す。
「革新派が再び彼女を狙うなら、修道院の保護がいいやもしれません」
そっか。そういえば、なんで革新派はあの女の子をどうして拉致したんやろ? あ、そういえば、なんか聞いたな、革新派は方法は分からないが、聖女候補の少女を見つけ出す的な。聖女ってのは異世界から召喚された人しか持たない称号で、こちらの世界での聖女的な位置にあるのは神子だ。これは知られていないので、今でもごちゃまぜに理解されている。こちらで聖女認定される大きな要因は、『再生魔法』だ。あの詐称聖女がこれが使えたし、更に高位支援魔法までつかえたから、そう周りに言っても信じてもらえたろうし、疑われなかったのかも。
それから少しシスター・ガルニャとお話。あの女の子がいる治療院には、ばっちり青騎士団が警備している。革新派は、昨日の騒ぎがあった後、首都にある支部まで捜査の手が伸びて、全員支部内で軟禁状態だって。女の子の行き先が決まれば、連絡してくれるって。隔離区間の北区にいるので、警備している人に伝えて、オスヴァルドさんに伝わり、私に行き着くそうだ。
「では、よろしくお願いします」
私はシスター・ガルニャとモドルさんにご挨拶してから、ゲストハウスに戻ることに。
あ、そうや。
「すみませんオスヴァルドさん。もう一度お祈りしてもいいですか?」
「はい。もちろんですよ」
私達は再び礼拝の並び、お祈りをする。
神様、あの女の子とお母さんを会わせてくれて、ありがとうございます。
私はそのままモドルさんとお話。
「以前も多額にご寄付頂いたのに、ありがとうございます。子供達にお腹いっぱい食べさせてあげれます」
「良かったです」
全てうちのバトルジャンキー達のおかげなんやけどね。
首都故に人口は多く、比例して孤児院にいる子供達の数は多いし、修道院に保護されている人達も当然多い。下層住民への炊き出しも、マーファの倍の規模だ。薪は元気達の木魔法の訓練で大量に出来たから、活用できたらいいしね。しかもダンジョン内の木なので、薪にしても、そのうちしれっと生えてるしね。
前回来た時も寄付したが、あの時のものはガタが来た家具の買い替えや、危ない窓枠、抜けそうな廊下、そして一部崩落しかけた屋根の修繕に使われた。結構な大改修だったそうだ。子供達が怪我する前で良かった。グーテオークションの寄付金でちょっとずつ改修していたが、私の寄付金で一気に行ったそうだ。残りは食費で飛んだそうだ。孤児院にも、多少の畑はあるが、とても全員のお腹を毎日満たせるわけない。
今回の寄付で、多少の改善になるといいけど。
お茶まで出してもらった。ふー、としているとノックが。以前小児用の抗生剤で接触した悪人ヅラさんだった。顔は怖いが、孤児院の子供達の為に一生懸命なのはわかっている。丁寧にお礼を貰う。
「テイマー様、今日、もう少しお時間を頂けないでしょうか?」
と、悪人ヅラさん、アルジャルフさんね、確認するように聞いてくる。どうしたんやろ?
「実は、シスター・ガルニャよりお伝えしたい事があるそうで、そう長くはならないと思いますが」
「全然大丈夫です」
きっとあの女の子の事や。
知りたかった事やしね。
アルジャルフさんが退室し、ソワソワしながら待つ。晃太達とほぼ同時にシスター・ガルニャがやって来た。
「申し訳ありません、お時間頂いて」
シスター・ガルニャが深くお辞儀をする。
「いえ、私もお話を聞きたいと思っていました」
早速お話をする。シスター・ガルニャがお断りしてから着席される。
「昨日保護した少女の事ですが」
「はい」
隣に座る晃太も、反応する。
「傷の確認後に頂いたポーションで治療しました。傷自体はいいのですが」
言い淀むシスター・ガルニャ。もしかして、精神的なものがいかんのかな?
「その、あれだけ傷を受けて、ガリガリに痩せていたのですが、落ち着いています」
「落ち着いている?」
悪い事?
「はい。なんだか、悟っていると言うか、騒ぐことも怯える事もなく。私どもも少女の精神面のフォローをと、構えていたのですが杞憂に終わりました。ただ、不思議な事も言っていて」
「不思議な事?」
「はい」
シスター・ガルニャはちょっと迷う顔。
「目覚めると言ったんです、お母さんと会ったと」
あ。
「もう、お母さんはいないけど、最後にたくさんお話した、と」
私は、お腹の底から、一気に息が吐き出されるように安心する。始祖神様がきっと夢の中であの女の子とお母さんを会わせてくれたんや。
ありがとうございます、始祖神様。
「混乱しないか心配していたのですが、逆にあんなに落ち着くと思いませんでした」
「きっと神様が、あの女の子とお母さんをあわせてくれたんですよ。それでいいじゃないですか」
私の言葉に、何かに気がついたようなシスター・ガルニャ。そして祈りの姿勢となる。
「そうですね。始祖神様の愛が、あの子に奇跡を起こしたのですね」
シスター・ガルニャは納得したように言う。それもあるけど、何より、あの女の子のお母さんの愛やと思う。
「それで、女の子は今は?」
「眠っています。たまたま目が覚めた時に私が居合わせて」
朝方に目が覚めて、水を飲ませたり、痛みがないか確認したり、体を拭いたりとお世話をしている最中に、聞いたそうだ。
「落ち着いているとはいえ、まずは静養です。詳しい事情と、あの子がこれからどうしたいかの確認出来るようになってからです。あの、もしあの子が望めば、そちらでも受け入れ可能と伺っていますが」
「はい。両親の了解もあります。ただ、うちは色んな意味で賑やかで、どうしても移動生活になります。それに私達は次にシーラに向かいます。そう何ヶ月も首都にはいられません」
「はい。今日の落ち着き様では、早く移動先の希望先が知れるかもしれません。ただ」
シスター・ガルニャの顔に影が差す。
「革新派が再び彼女を狙うなら、修道院の保護がいいやもしれません」
そっか。そういえば、なんで革新派はあの女の子をどうして拉致したんやろ? あ、そういえば、なんか聞いたな、革新派は方法は分からないが、聖女候補の少女を見つけ出す的な。聖女ってのは異世界から召喚された人しか持たない称号で、こちらの世界での聖女的な位置にあるのは神子だ。これは知られていないので、今でもごちゃまぜに理解されている。こちらで聖女認定される大きな要因は、『再生魔法』だ。あの詐称聖女がこれが使えたし、更に高位支援魔法までつかえたから、そう周りに言っても信じてもらえたろうし、疑われなかったのかも。
それから少しシスター・ガルニャとお話。あの女の子がいる治療院には、ばっちり青騎士団が警備している。革新派は、昨日の騒ぎがあった後、首都にある支部まで捜査の手が伸びて、全員支部内で軟禁状態だって。女の子の行き先が決まれば、連絡してくれるって。隔離区間の北区にいるので、警備している人に伝えて、オスヴァルドさんに伝わり、私に行き着くそうだ。
「では、よろしくお願いします」
私はシスター・ガルニャとモドルさんにご挨拶してから、ゲストハウスに戻ることに。
あ、そうや。
「すみませんオスヴァルドさん。もう一度お祈りしてもいいですか?」
「はい。もちろんですよ」
私達は再び礼拝の並び、お祈りをする。
神様、あの女の子とお母さんを会わせてくれて、ありがとうございます。
3,648
お気に入りに追加
7,881
あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

押し付けられた仕事は致しません。
章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。
書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。
『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。