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三度目の首都⑭
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船長さんの指示で、船はゆっくり岸から離れていく。ビアンカが風魔法を微調整して進む。
『元気、じっとしているのですよ』
「わふんっ」
本日、とってもお利口さんの元気。やはり船上だからかな? 尻尾ぷりぷりしながら、お座りしている。
「本当にミズサワさんとこの従魔は凄いなあ」
ファングさんがアルスさんのパーカーを掴んだまま呟いている。
『ユイ、そろそろ本気出すのです。何かに掴まるのです』
「分かった。手加減してよ。皆さんっ、ビアンカが魔法の出力を上げますよーっ」
「「「「「イエッサーッ」」」」」
船長さん、船員さん達がそれぞれ掴まっている。前回落ちたブエルさんは、ひしっ、と柱に掴まっている。ゲオルグさんも掴まっている。
私は手摺に掴まり、しっかりホークさんがフォローするように腕を回してくれる。嬉か、恥ずか。元気達はロープを咥えている。
ケルンさん達にもあらかじめ、ビアンカの運転は伝えているから、しっかりロープや柱に掴まっている。エマちゃん達もいいみたい。
「ビアンカ、よかよ」
『分かったのです。ルージュ、行くのですよっ』
『任せてっ』
舵を握る船員さんは、前回と同じ船員さん。その後ろにはルージュ。今回も鼻先で、後ろからちょんちょんしながらの指示だ。
『ふぅぅぅぅっ、はぁぁぁぁーっ』
ビアンカの風魔法が炸裂。
ぐっ、と身体に圧がかかる。白い帆が、風魔法を受けて限界ギリギリまで膨らむ。
景色が一気に流れていく。やっぱり、手加減あっても自分を支えるのがやっと。前回元気があり得ない回転を見せていたが、しっかりロープを咥えている。
やはり、前回の事があるので、皆さん落ち着いて対応している。ただ、初回の皆さんは、必死の形相だ。
どれくらいしたか、ずいぶん進んだ頃に、ビアンカは風魔法を止める。
『ふうっ、疲れたのです。ユイ、最初の漁場なのですよ』
「そ、そう、ありがとう」
私はリアルジェットコースターで、恐怖から手摺を離し、ホークさんにしがみついていた。すみません。足腰は大丈夫だ、安心安全のホークさんだね。
「晃太、ビアンカにお茶ば」
「ん」
まずはビアンカに水分補給させる。
『コウタ、私も欲しいわ』
「はいはい」
ルージュもやってきた。すると仔達も欲しがるが、あら、足りない。
「ゲンキ君っ、危ないってっ」
ミゲル君の悲鳴が上がる。
振り返ると、手摺に前足をかけている元気の後ろ姿、サイズアップのおかげか、後ろ足でたつと、ミゲル君より大きい。尻尾ぷりぷりさせているが、沸き上がるのは、嫌な予感。
「元気、ダメよっ」
「わふーんっ」
私の叫びは虚しく、元気は後ろ足を手摺にかけて、はい、ジャンプ。
「「「「「わーっ」」」」」
悲鳴が上がる。
元気は脚をまっすぐ伸ばした状態で、海にダイブ。
「ギャーッ、元気ーっ、ルージュッ、釣り上げてーっ」
『大丈夫よ』
『心配ないのです』
なんとのんきなっ。
私は海面を覗く、そこには元気の姿がない。
数秒後、長く感じたが、数秒後。
海面に渦が巻く。
あっ。
ドドドドドドドドドドドドッ
轟音を上げて水柱が立ち上がる。
呆気に取られていると、ビアンカとルージュがペロリと口をなめなから言ってくる。
『ほら、大丈夫なのです』
『言ったでしょ』
『かーちゃん、わいもやりたいねん』
『コハクはやめなさい。ほらっ、来るわよっ』
『狙うのですっ』
「えっ? はっ、皆さん迎撃をーっ」
冷蔵庫ダンジョンではアレスや元気が水柱を上げたら、いろんな魚のふりした魔物が巻き上がった。
そうなるって事ね。
「「「「イエッサーッ」」」」
へたれていた船員さん達復活。銛を片手に立ち上がる。その速さ。こちらもへたれたファングさんとリィマさん。アルスさんがへたれた様子もなく、剣を抜いているため、あわてて立ち上がる。
「ユイさん、下がってっ」
ホークさんが私を下げて、剣を引き抜く。
元気が心配だが、私は大人しく下がる。
ケルンさんとエドワルドさんは剣を、ヒェリさんは借りた銛を構えている。
「エドッ、ヒェリッ、ブラックツナはエラに一撃っ」
「「イエッサーッ」」
「ケイコ殿が絶品にしてくれますよっ」
「「イエッサーッ」」
海に染まってるっ。
久しぶりの大量合戦になりそうっ。
『元気、じっとしているのですよ』
「わふんっ」
本日、とってもお利口さんの元気。やはり船上だからかな? 尻尾ぷりぷりしながら、お座りしている。
「本当にミズサワさんとこの従魔は凄いなあ」
ファングさんがアルスさんのパーカーを掴んだまま呟いている。
『ユイ、そろそろ本気出すのです。何かに掴まるのです』
「分かった。手加減してよ。皆さんっ、ビアンカが魔法の出力を上げますよーっ」
「「「「「イエッサーッ」」」」」
船長さん、船員さん達がそれぞれ掴まっている。前回落ちたブエルさんは、ひしっ、と柱に掴まっている。ゲオルグさんも掴まっている。
私は手摺に掴まり、しっかりホークさんがフォローするように腕を回してくれる。嬉か、恥ずか。元気達はロープを咥えている。
ケルンさん達にもあらかじめ、ビアンカの運転は伝えているから、しっかりロープや柱に掴まっている。エマちゃん達もいいみたい。
「ビアンカ、よかよ」
『分かったのです。ルージュ、行くのですよっ』
『任せてっ』
舵を握る船員さんは、前回と同じ船員さん。その後ろにはルージュ。今回も鼻先で、後ろからちょんちょんしながらの指示だ。
『ふぅぅぅぅっ、はぁぁぁぁーっ』
ビアンカの風魔法が炸裂。
ぐっ、と身体に圧がかかる。白い帆が、風魔法を受けて限界ギリギリまで膨らむ。
景色が一気に流れていく。やっぱり、手加減あっても自分を支えるのがやっと。前回元気があり得ない回転を見せていたが、しっかりロープを咥えている。
やはり、前回の事があるので、皆さん落ち着いて対応している。ただ、初回の皆さんは、必死の形相だ。
どれくらいしたか、ずいぶん進んだ頃に、ビアンカは風魔法を止める。
『ふうっ、疲れたのです。ユイ、最初の漁場なのですよ』
「そ、そう、ありがとう」
私はリアルジェットコースターで、恐怖から手摺を離し、ホークさんにしがみついていた。すみません。足腰は大丈夫だ、安心安全のホークさんだね。
「晃太、ビアンカにお茶ば」
「ん」
まずはビアンカに水分補給させる。
『コウタ、私も欲しいわ』
「はいはい」
ルージュもやってきた。すると仔達も欲しがるが、あら、足りない。
「ゲンキ君っ、危ないってっ」
ミゲル君の悲鳴が上がる。
振り返ると、手摺に前足をかけている元気の後ろ姿、サイズアップのおかげか、後ろ足でたつと、ミゲル君より大きい。尻尾ぷりぷりさせているが、沸き上がるのは、嫌な予感。
「元気、ダメよっ」
「わふーんっ」
私の叫びは虚しく、元気は後ろ足を手摺にかけて、はい、ジャンプ。
「「「「「わーっ」」」」」
悲鳴が上がる。
元気は脚をまっすぐ伸ばした状態で、海にダイブ。
「ギャーッ、元気ーっ、ルージュッ、釣り上げてーっ」
『大丈夫よ』
『心配ないのです』
なんとのんきなっ。
私は海面を覗く、そこには元気の姿がない。
数秒後、長く感じたが、数秒後。
海面に渦が巻く。
あっ。
ドドドドドドドドドドドドッ
轟音を上げて水柱が立ち上がる。
呆気に取られていると、ビアンカとルージュがペロリと口をなめなから言ってくる。
『ほら、大丈夫なのです』
『言ったでしょ』
『かーちゃん、わいもやりたいねん』
『コハクはやめなさい。ほらっ、来るわよっ』
『狙うのですっ』
「えっ? はっ、皆さん迎撃をーっ」
冷蔵庫ダンジョンではアレスや元気が水柱を上げたら、いろんな魚のふりした魔物が巻き上がった。
そうなるって事ね。
「「「「イエッサーッ」」」」
へたれていた船員さん達復活。銛を片手に立ち上がる。その速さ。こちらもへたれたファングさんとリィマさん。アルスさんがへたれた様子もなく、剣を抜いているため、あわてて立ち上がる。
「ユイさん、下がってっ」
ホークさんが私を下げて、剣を引き抜く。
元気が心配だが、私は大人しく下がる。
ケルンさんとエドワルドさんは剣を、ヒェリさんは借りた銛を構えている。
「エドッ、ヒェリッ、ブラックツナはエラに一撃っ」
「「イエッサーッ」」
「ケイコ殿が絶品にしてくれますよっ」
「「イエッサーッ」」
海に染まってるっ。
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