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短期の滞在予定?⑲

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 フェリアレーナ様はどこまでご存知なんだろう。私の知っている内容をどこまで話したらいいか。
「まあ、そんなこ難しい話より、私、ユイ様のお話をお聞きしたいですわ」
 にこっ、と笑うフェリアレーナ様、ま、まぶしっ。
「そ、そうですね。今回色々ありましたし」
 緊張からの、喉が乾いてお茶を頂く。
 どこから話そうかなあ。
「私達、カルーラに向かったのですが、まず改修されたばかりのルーティのダンジョンに向かってですね」
 私はカルーラに向かってから、王冠山のフィールド型ダンジョンに挑んだ話をする。フィールド型ダンジョンは、ビアンカとルージュ達が発見したと誤魔化した。それに私達でなければ、入り口にもたどり着かない事は本当だからね。
 フィールド型ダンジョンのすべてを話せないので、とにかく広大であること、他のダンジョンの法則が当てはまらない事があったと。
 特にG部屋では肝が冷えた。
「まあ、そんなことが」
「はい。あの時閉じ込められましたが、ルージュや仔達や、同行してくれていた冒険者の皆さんがいてくれました。それに、アレスが扉をこじ開けて来てくれて」
「そのようなこと、出来るのですね」
「はい、出来るとしても、最低でもアリスやオシリス並みのレベルが必要ですけど」
 こんな私の話でも、フェリアレーナ様は楽しそうに聞いてくれる。時々、お茶やケーキを頂きながら、話が進む。
 そして、パーヴェル様の愛馬、レディ・ロストークがノワールの赤ちゃんを生んだ話になる。
「まあ、パーヴェル様の愛馬は、気性が荒いと有名でしたのに」
「波長が合ったようです」
 美少女馬シルフィリアは、いずれゲオルグ殿下に嫁入りするシャルロット様について、首都に行くことになっている。
「あのフェリアレーナ様、ジークフリード様とレティシア様の結婚式はどうでしたか? 私が心配するのもあれなんですが」
 パーヴェル様からは、大丈夫な話は聞いたけど。
「はい、滞ることなく終わりましたわ。お色直しのドレスも素晴らしい意匠で、レティシア様の美しさを引き立てていて。お二人のダンスは、息を飲むほどでしたわ」
 はぅっ、と思い出したようにため息、目の前にいるフェリアレーナ様もお美しいー。
 その時若手達の話にもなった。一時、マーファではその話で持ちきりだったそうです。
「特に、お耳がこう、垂れているウルフは愛らしいと評判でしたわ」
 あ、オフィーリア達、ロック系ウルフね。確かに、ロック系ウルフは、垂れ耳に垂れ目の愛くるしい感じだ。フォレスト系ビアンカと、アーマー系アリスは、立ち耳で凛とした感じがあり。アレスとシヴァはプラス精悍さが加わる。きゅるん、していない時ね。ルリとクリスはまだまだ愛らしいのよ。
 フェリアレーナ様に誉められて、なぜか私が得意げ。
「そうですね。短期間でしたが、みんな可愛かったです」
 しょっちゅう、サブ・ドアを介して会っているけどね。
 なんだ、かんだと話をすると、あっという間に時間がすすむ。
 カルーラでは、ビアンカとアレスが雪かきの依頼で引っ張りだこだったことを話していると、部屋の置時計がなる。あ、もう11時や。
「フェリアレーナ様、楽しいお時間をありがとうございます。私、そろそろ失礼しようと思います」
「まあ、もうそんなお時間? 残念ですわ」
 大人しいビアンカとルージュは、もう一個のホールケーキを平らげ、げふっ、て言ってた。知らんよ、帰ってからどうなっても。
 帰りもフェリアレーナ様に誘導されて、はわはわしながら、玄関に。帰りしなそっとフェリアレーナ様がそっと手を握ってきた、はわはわ。
「ユイ様、お忙しい中来ていただきありがとうございます。シーラまでどうがご無事で、このマーファからユイ様達の安全をお祈りしています」
「効果覿面ですぅ」
 きっと私の目は渦を巻いている。
 直ぐにノワールが引いた馬車が来た。このままいたら、何かおかしな事を口走りそうなので、帰ることになる。
「では、フェリアレーナ様、ごちそう様でした。ハルスフォン侯爵家皆様にもよろしくお伝えください」
「はいユイ様。どうかお気をつけて、ミズサワ家の皆様にもよろしくお伝えください」
「はい」
 馭者台から、ホークさんが降りてくる。
「ホークさん、お待たせしました」
「いいえ、さあ、ユイさん」
 と、手を差し出される。
 名残惜しいが、私はホークさんの手を借りて、馬車に乗る。窓から見ると、フェリアレーナ様、使用人の皆さんがお見送りしてくれる。ぺこり、と頭を下げて答える。
 ノワールの馬車がゆっくり走り出す。フェリアレーナ様達は馬車が見えなくなるまで見送ってくれた。
 緊張したけど、最後の方は私も楽しくお話できた。
 フェリアレーナ様も楽しそうだったと思う、ビアンカとルージュが何も言わなかったし。また、お話できたらいいなあ。あ、気軽になんてできないよね、向こうは生粋のお貴族様だもん。だけど、シーラまでの道中を気にかけてくれて嬉しかったなあ。
「ユイさん、このままギルドに向かいますが、よろしいですか?」
 あ、昨日晃太に言われとった。
「はい、お願いします」
 ノワールの馬車は、ギルドに向かった。
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