上 下
777 / 820
連載

短期の滞在予定?⑬

しおりを挟む
 次の日。
 フェリアレーナ様のお茶会もあるが、とにかくエマちゃんとテオ君が帰って来るから、準備を怠らない。母が朝から準備に余念がない。朝から掃除を済ませて、唐揚げを早速揚げている。ヘルト君、ドロテアちゃん、アルスさんも帰って来るから、追加で人気のアップルパイの作成開始。
 朝イチで、ノワールを連れて、私はホークさんとまず騎士団の牧場へ。マロンとブランに会いに行く。
 ノワールはお母さん馬とまだらちゃんとちゅっちゅっとやってる。マロンは、ふゆふゆ言いながら顔を出してくれるが、やはりブランは出てきてくれなかった。嫌われたくないので、ずいずいいけない。くうっ、撫でてみたい。
「ふゆふゆ」
「マロン、ありがとう」
 ふふふ、かわいか。なでなで。
 ブランはまだらちゃんの影だけと、ちょろっ、と顔を出してくれた。こっちを伺うような感じだ。だけどもう時間や、また、来るけん、その時は触らせてね。
 帰りながら、ホークさんとお話。
「ホークさん、マロンとブランは魔法馬ですよね?」
「そうですね。シルフィリアとは明らかに目が違います」
 シルフィリアは綺麗な緑だった。
「属性魔法馬ってのは、シルフィリアの様に目や、もしくは鬣に属性の色が出るんです。ただ、色が出る訳じゃないんですよ」
「へー」
「わずかですが、色が出た目や鬣に、魔力を感じる事が出来ますよ」
「へー、私、分からなかったです」
「注意して接しないと分かりませんよ。今度教えますね」
 わあ、楽しみ。
「あ、でもノワールは真っ黒のままですよね。どこにも色が出てない気がします」
「ノワールは珍しい戦車馬チャリオット・ホースですからね。俺自身も、子供の頃に少しだけしか触れ合ってないんです。それに詳しく生態を知っていた飼育員は、ほとんど、あの戦争で亡くなったり、誘拐されたりで、分かってないんですよ。もしノワールが戦車馬チャリオット・ホースでなく、属性魔法馬に進化したら、色が変わっていたかもですね」
 そうなんだ。
「もし、ノワールがペガサスに進化したら、翼も真っ黒になります?」
「そうなるでしょうね。ペガサスの翼の色は、体躯の色になりますから」
 と、言う事はノワールの体躯の色、真っ黒なペガサスかあ。ペガサスって純白なイメージがあるんだけど。
「そう簡単に、進化なんてしませんよね?」
「しないですよ、そう簡単には」
 なんだろう、変な間が空く。
「ぶひひん」
 ノワールがホークさんの顔に、鼻を寄せる。
 確か、ノワールの進化って、ちゅどんドカンの影響よね? 最近毎日アレスと一緒に爆走しているけど。
「ぶひひん」
 ま、ペガサスになろうが、ノワールはノワールやね。
「ペガサスなんて、なったら、せっかくの玄武の装備品、デザイン変更しなくちゃですね」
「そうなりますね」
 なんか、変な間が空く。得体の知れない何かの感覚。
「どうしてですかね、私、いやーな予感がします」
 ぽろりと溢す。
「…………実は俺もなんです」
 白状するように、ため息と共にホークさんが言う。
「ぶひひん、ぶひひん」
 お母さん馬とまだらちゃんに会えて、機嫌の良いノワール。
 私とホークさんの心配、まだ先のはなしとなる。

 パーティーハウスに戻り、エマちゃん達の帰りを待つ。予定通りなら、今日帰って来る予定なんだけど、日程がずれるのはよくあることだけど。
 お昼過ぎて、うーん、心配。
 母も心配そうだ。
 フェリクスさん、蒼の麓の皆さんは落ち着いているが、金の虎の皆さんはソワソワしている。
 心配だけど、帰って来たら、美味しいご飯をたっぷり食べさせたい。母の指示で次々に料理が出来上がる。
『一口なのですー』
『エビエビー』
『ピザヲ所望スル』
 母が華麗にかわしている。
 アレスは朝早くからルーティのダンジョンに仔達と若手数体引き連れて爆走している。
 ちら、ちら、と外が気になってしまう。
 最後のアップルパイが焼き上がった頃に、エアーお手を繰り出していたビアンカとルージュが顔を上げる。
『あ、ユイ、エマ達なのです』
『帰って来たわよ』
 私達はすぐに出迎え体勢に入る。やはり心配だったのだろうホースさん達もすぐに続く。はっ、いかん。
「ミゲル君、蒼の麓と金の虎に知らせてくれる?」
「はいっ」
 パーティーハウスの玄関で待っていると、金の虎の皆さんが、ルームを経由してやってきた。もう、フリンダさん、泣きそうや。フェリクスさん達も来た。あ、帰って来たっ。
「ユイさんっ、ただいま帰りましたっ」
 エマちゃんが私達の姿を見て、駆けてくる。良かった、皆おるし、目立ったケガはない。隣にいた、ホークさんが安堵の息をついている。
「お帰り、エマちゃん、お帰りテオ君」
「はい、ただいま帰りました」
 ニコニコ笑うエマちゃんと、ほっとした顔のテオ君。足元を花のおかえりローリングが炸裂している。
「花ちゃん、ただいま」
「花ちゃん」
 撫で回すと、花のローリングからはみはみに切り替わる。
「お帰りエマちゃん、テオ君。ケガはなかね?」
「あ、ケイコお母さんっ」
「はいっ、大丈夫です」
 元気に返事をする姿に、母はほっとした笑顔を浮かべる。
「アルスちゃんっ」
「うん」
「アルス、けがはないかい?」
「うん、ないよ」
 いつもの様子のアルスさん。フリンダさんはぎゅう、と抱き締めている。リィマさんは心配そうに聞いている。
「アルス、どうだった?」
 ファングさんが心底安心した顔だ。
「うーん、難しかった」
「そうか」
 ガリストさんは何も言わないが、ほっとした顔だ。
「リーダー、ただいま帰りました」
「帰りました」
「お帰り、ヘルト、ドロテア」
 ああ、良かった、皆、無事やな。
 話を聞きたいが、まず、ケガの有無の確認、それから。
「さ、中に入り、お風呂に先にする? ご飯いっぱいあるから、綺麗にして食べるね?」
「「「「はいっ」」」」
「うんっ」
 元気やぁっ。
 ああ、本当に良かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。