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短期の滞在予定?⑤

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 次の日からバタバタとなる。
 午前中、私はホークさん、ノワールで騎士団所有の牧場に向かう。マロンとブランに会いに行くためだ。
 晃太とチュアンさん、ルージュとギルドにドロップ品を卸しに行っている。山風のロッシュさんにも伝言を残してもらう。母は短期間滞在とは言え、孤児院と教会の戦闘部隊に差し入れに行きたいと。家族会議でマーファの給食センターにも、現物で寄付をすることになり、内容は母に一任した。孤児院と教会の後に、役場に向かい、繋ぎをお願いするって。ミゲル君とビアンカが着いてくれる。
 心配だけど、即席パーティーを組んで冷蔵庫ダンジョンに挑むことになったエマちゃんとテオ君。やっぱり不安そうやった。母も私達と一緒にいるのに、わざわざ危ない目に合わせなくても、と言う考えだ。だが、もし、という事がある。もし、一人だけになった時の生き抜く手段を身をもって学ぶために必要な事だ。考えたくないが、その空間移動の罠にひっかかって、遠くに飛ばされてしまえば、その時の判断一つで、生死を分ける。その判断力を鍛えるためでもある。しぶしぶ母が納得していた。
 今頃、フェリクスさんが即席パーティーメンバーに、冷蔵庫ダンジョンに限らず、ダンジョンに潜る際に必要な講義をしてくれているはず。
 まずは、己の実力を過信しない、仲間がいる場合、小さなミスで仲間の命を危機に晒す事、それをどうやって回避するか、どう判断するかと、いくつものパターンを示し、それぞれの見習い意見を聞きながら、それぞれの意見を出し合わせていたと。そうすることで、誰がどんな考えかを理解することが出きるし、他人と違う考えがあると実感できる。それをどうやって付き合わせていくかだ。エマちゃん達は午前中はフェリクスさんの講義を受けて、それぞれのメンバーで考えを出し合う。今回の冷蔵庫ダンジョンに挑むにしても、目標を立てるって。心配だけど、私はホークさんとお出かけの時間になってしまった。マデリーンさんは留守をお願いした。
 父は持ち運びできるシャワーヘッドの進まない開発に、書斎にこもりきりだ。
 残ったバトルジャンキー達には、エドワルドさん達が対応してくれている。あるだけのマジックバッグを渡してある。
 さて、まずは牧場だ。
 伺うと、直ぐに気が付いてくれて、厩舎に案内してくれる。
 何頭も馬がゆっくりしているが、半分以上は空だ。
 お母さん馬とまだらちゃんは奥の方で、隣り合ったスペースゆっくりしている。あ、赤ちゃんがっ。
「ぶひひんっ」
 ノワールがさっそく顔を出す。ちゅっ、ちゅっ、くっ、見せつけて。
 どれどれ、赤ちゃんは、と。
「ふゆふゆ」
 わぁっ、出てきてくれたのは、お母さん馬の赤ちゃん、マロンだ。興味津々に見に来てくれる。わぁ、お母さん馬そっくり。触りたいけど、いくらなつっこそうだけど、初対面だし、我慢我慢。ホークさんは、マロンの顔を見て、優しい手付きで撫でている。うーん、触りたいー。
「ホークさん、触っても大丈夫ですかね?」
「そうですね。このあたりを優しく触ってください」
「はい」
 ホークさんの指示に従い、そっと、撫でる。すべすべだ。
「初めましてマロン」
「ふゆふゆ」
 か、かわいかっ。
 そっと、撫でていると、首を軽く振られてしまったので、手を引っ込める。
 マロンはそっとお母さん馬の影に。うーん、かわいかあ。あんまりやると、嫌われたら嫌やしなあ、今日はこれまでやなあ。
 よし、次々、まだらちゃんと赤ちゃんは?
 隣のスペースを覗くと、まだらちゃんがいた、その奥に赤ちゃんは影に隠れているが、黒毛だ。ちら、と顔が見えたが、確かに額に白い細い菱形の模様がある。黒毛だが、しっかり顔立ちはまだらちゃんだ。まだらちゃんの赤ちゃん、ブランは、こちらには近付いて来なかった。仕方ない、私達は初めましての他人やしね。ノワールとまだらちゃんが、ちゅっ、ちゅっ、していたが、ブランは結局出てこなかった。これは仕方ないと諦める。またね、ブラン。
 触りたかったが、嫌われたくないので、飼育員さんに挨拶して、牧場を後にする。
 ホークさんとノワールでパーティーハウスに帰る途中、ばったりロッシュさんとマアデン君とハジェル君と会う。
 どうやら晃太がギルドに行ったときに、たまたま掲示板のチェックに来ていたシュタインさんと鉢合わせ。見習いだけの即席パーティーの件を聞いたと。
「俺も二人の良い経験になると思って」
 やはり、誰かと行動し、色々考えをかち合わせたり、擦り合わせたり、妥協したりさせたいって。
「それになかなかない機会ですから」
「なら、すぐにパーティーハウスに行きましょう。今ならまだフェリクスさんの講義やってますよ」
 それから急いでパーティーハウスに戻る。ロッシュさんはフェリクスさん、ファングさん、ホークさんと話して帰って行った。
 それからの動きが速かった。
 あれよあれよと言う間に話が進み、冷蔵庫ダンジョンに挑む準備が整う。
「明日より目標は15階。期限は10日間。目標額はそれぞれ分けるとして、各20万になるように目標としましょう。さあ、明日朝イチに出発できるように」
 フェリクスさんの号令でエマちゃん達が動く。各20万はパーティー単位ね。アルスさんの取り分が高く思えるが、見習いの中でもアルスさんが頭一つ戦闘力が抜きん出ているからね。額も一般的な見習い抜けた頃の冒険者パーティーが、冷蔵庫ダンジョンで得られる平均価格だって。
 食糧は硬いパン、ビスケット、ドライフルーツ、毛布やポーションやらエマちゃん達は予算と持てる量を考えながらリストアップ。
 本来の冒険者は予算と持てる範囲が決まっている。そう思えば、私達はいままでが本当に規格外やったんやなあ。
 魔法の水筒は一本。今回はマジックバッグは持たせない。本当に背中にリュック背負っての移動だ。エマちゃんとテオ君にはアイテムボックスがあるから、それは使用はオッケー。ただ、容量は晃太のように大きくないため、ギリギリまで選別している。心配な私はエリクサーを一本だけ、持たせる許可を得る。大丈夫だとおもうけど。
 バタバタと買い物に出掛けていく姿を見送っていると、なんだか、感慨深いなあ。隠れてフリンダさんが、涙を拭っているのを見てしまうと余計にそう思ってしまった。
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