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カルーラで年明け~春まで⑮
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私達が話している間にも、子供達の楽しそうな声が響く。それを聞きながら少し込み入った話になっていく。
呪い持ちに関する保護法と罰則を含んだ法案を支持した時、ジャスパーさんとモーヴさんが家族の危機を考えなかったとは思えなかった。それに修道院建設の事もね。
「私達も子供の頃はまだ両親の思いに気が付きませんでした」
バーナーさんが思い出すように話す。
きっかけは知り合いの家族の末っ子が、呪い持ちだと思われて、全員殺害されてしまった事だ。
「確かに、私とコーディも彼らと交流がありました。子供ながらに憤りました。なぜ、そこまでされなければならないのかと」
その末っ子がひどい人見知りだからと勝手な憶測でそうなった。きちんとした診断基準がなかったから、誰かが言い出したら、周りが染まってしまったと。
ユリアレーナで外交から帰ってすぐに向かったのに、その知り合いの家族の家は放火までされていたと。
「私とコーディは、まだ幼かったので、馬車からおりず、すぐにメイド達に目と耳を塞がれました」
「見てはいませんが、何が起きていたのか子供ながらに分かりました」
コーディさんも続ける。
内容は思った以上に辛いもの。
ジャスパーさんもモーヴさんは焼け跡から必死にその家族の遺体を探しだした。その姿を見た、町の人達から忌まわしき呪い持ちの味方だと、ひどい理由で投石を受けた。
結果、当時のジャスパーさんとモーヴさんの怒りが伝わる。
ジャスパーさんとモーヴさんは庇う護衛騎士を退け、投石をわざと受けた。当然痛かったはずなのに、黙ったまま受けた。それが、投石していた人達に変な印象を与えたのか、恐怖を与えたのか、理不尽な怒りを与えたのか。投石は止まなかった。そして、突然、ジャスパーさんが叫んだ。
「無礼者っ、我はアスラ王国、第二外交官、モーガン伯爵当主ジャスパー・モーガンであるぞっ。我と我が妻に対する許しがたき無礼、騎士よっ、すべて捕らえよっ。子供とて容赦するなっ」
ユリアレーナは比較的に貴族と平民の接点は近い。ハルスフォン公爵やイコスティ辺境伯とか、領を統治しているような人達は別だけどね。アスラ王国はしっかり身分階級がある。つまり、貴族に平民が正当防衛以外の理由で怪我をさせたら、厳しい罰がある。
そう、ジャスパーさんとモーヴさんは、投石してきた人達に罪を重ねようとしたのだ。罪に問えば、当然友人一家の殺害・放火にまで繋がるからと。
上は八十過ぎから下は二歳まで総勢38人が拘束。そして友人一家の殺害・放火の実行犯と、末っ子が呪い持ちだと無責任に言った人物まで探し当てた。
勝手な憶測で呪い持ちと言われる事例は、アスラ王国では珍しくはない。成長したら、払拭されるからだ。ただ、末っ子がちゃんとした診断すらされずに、一家殺害・放火という悲惨な結果を招いた事件は、アスラ王国でも国内を駆け抜けた。
投石した中にはよく分からず親のまねをした子供もいたし、理解したのか必死に許しを得ようとした者もいた。
「両親は、一切聞き入れませんでした」
殺害・放火の実行犯、憶測を言った者は、過酷な鉱山で無期労働の犯罪奴隷となった。それ以外の投石したものは鞭打ちの後に、国営農場で年齢に応じた労働をかせられた、と。中には子供の鞭打ちは自分が受けると言った親もいたが、ジャスパーさんは首を縦に振らなかった。彼らがその後どうなったか、当時幼かったバーナーさんとコーディさんにはわからないと。
「しかし、そんな事があっても、アスラ王国における呪い持ちへの意識は変わりません。ただ、少し慎重になったくらいだったと思います」
バーナーさんが当時を振り返る。
「事件は大々的に報道されました。しかし、時間が立てば人は忘れるもの。私とコーディは十代になった頃は、ひどい嫌がらせを受けていました。呪い持ちの人達の為に奔走する両親を理解してくれる人達もまだすくなかったですからね。若かった我々は徐々に反感を覚えましたよ。ただ、両親の想いがやっと分かる時が来ました。ケイシーが産まれたからです。こんなにもいとおしい存在があるのだろうかと思いました。そして子供達を守るように殺害された親の無念がどれだけのものだったかと」
バーナーの話に同意するように頷くコーディさん。
「実の子ではないのに、私にも分かりました。あの時の両親の気持ちが、どれだけ苦しく憤りを感じたか。それから私と兄は両親のサポートに回るようになりました。後悔はしていません。あの件は大々的に報道されましたが、似たような事例がどこかで、未だに人知れず起きているはずです。我々が行動を起こして、一人でも救えるのであればと思っています」
なんだか、凄い壮大な話を聞いた。やけど、バーナーさんとコーディさん、イキイキしている。
「法案が可決されて、ずいぶん経ちますし、呪い持ちに関する意識も当時に比べればましになってきています。これで修道院建設と研究が進めば、きっとアスラ王国は良い方向に進むと信じています。我々兄弟はそれまで両親と家族を守るために働こうと思っています。ケイシー達には恐い思いをさせましたし、窮屈な思いをさせてしまい、申し訳ないと思っています。しかし、ミズサワ様のおかげでいい方に向かっています」
それはユリアレーナにモーガンさん一家を避難の決断をしたイヴリン王太子妃殿下の采配と、うちのビアンカとルージュのおかげなんなけどね。
やけど、これでアスラ王国がいい方向に進むといいな。
呪い持ちに関する保護法と罰則を含んだ法案を支持した時、ジャスパーさんとモーヴさんが家族の危機を考えなかったとは思えなかった。それに修道院建設の事もね。
「私達も子供の頃はまだ両親の思いに気が付きませんでした」
バーナーさんが思い出すように話す。
きっかけは知り合いの家族の末っ子が、呪い持ちだと思われて、全員殺害されてしまった事だ。
「確かに、私とコーディも彼らと交流がありました。子供ながらに憤りました。なぜ、そこまでされなければならないのかと」
その末っ子がひどい人見知りだからと勝手な憶測でそうなった。きちんとした診断基準がなかったから、誰かが言い出したら、周りが染まってしまったと。
ユリアレーナで外交から帰ってすぐに向かったのに、その知り合いの家族の家は放火までされていたと。
「私とコーディは、まだ幼かったので、馬車からおりず、すぐにメイド達に目と耳を塞がれました」
「見てはいませんが、何が起きていたのか子供ながらに分かりました」
コーディさんも続ける。
内容は思った以上に辛いもの。
ジャスパーさんもモーヴさんは焼け跡から必死にその家族の遺体を探しだした。その姿を見た、町の人達から忌まわしき呪い持ちの味方だと、ひどい理由で投石を受けた。
結果、当時のジャスパーさんとモーヴさんの怒りが伝わる。
ジャスパーさんとモーヴさんは庇う護衛騎士を退け、投石をわざと受けた。当然痛かったはずなのに、黙ったまま受けた。それが、投石していた人達に変な印象を与えたのか、恐怖を与えたのか、理不尽な怒りを与えたのか。投石は止まなかった。そして、突然、ジャスパーさんが叫んだ。
「無礼者っ、我はアスラ王国、第二外交官、モーガン伯爵当主ジャスパー・モーガンであるぞっ。我と我が妻に対する許しがたき無礼、騎士よっ、すべて捕らえよっ。子供とて容赦するなっ」
ユリアレーナは比較的に貴族と平民の接点は近い。ハルスフォン公爵やイコスティ辺境伯とか、領を統治しているような人達は別だけどね。アスラ王国はしっかり身分階級がある。つまり、貴族に平民が正当防衛以外の理由で怪我をさせたら、厳しい罰がある。
そう、ジャスパーさんとモーヴさんは、投石してきた人達に罪を重ねようとしたのだ。罪に問えば、当然友人一家の殺害・放火にまで繋がるからと。
上は八十過ぎから下は二歳まで総勢38人が拘束。そして友人一家の殺害・放火の実行犯と、末っ子が呪い持ちだと無責任に言った人物まで探し当てた。
勝手な憶測で呪い持ちと言われる事例は、アスラ王国では珍しくはない。成長したら、払拭されるからだ。ただ、末っ子がちゃんとした診断すらされずに、一家殺害・放火という悲惨な結果を招いた事件は、アスラ王国でも国内を駆け抜けた。
投石した中にはよく分からず親のまねをした子供もいたし、理解したのか必死に許しを得ようとした者もいた。
「両親は、一切聞き入れませんでした」
殺害・放火の実行犯、憶測を言った者は、過酷な鉱山で無期労働の犯罪奴隷となった。それ以外の投石したものは鞭打ちの後に、国営農場で年齢に応じた労働をかせられた、と。中には子供の鞭打ちは自分が受けると言った親もいたが、ジャスパーさんは首を縦に振らなかった。彼らがその後どうなったか、当時幼かったバーナーさんとコーディさんにはわからないと。
「しかし、そんな事があっても、アスラ王国における呪い持ちへの意識は変わりません。ただ、少し慎重になったくらいだったと思います」
バーナーさんが当時を振り返る。
「事件は大々的に報道されました。しかし、時間が立てば人は忘れるもの。私とコーディは十代になった頃は、ひどい嫌がらせを受けていました。呪い持ちの人達の為に奔走する両親を理解してくれる人達もまだすくなかったですからね。若かった我々は徐々に反感を覚えましたよ。ただ、両親の想いがやっと分かる時が来ました。ケイシーが産まれたからです。こんなにもいとおしい存在があるのだろうかと思いました。そして子供達を守るように殺害された親の無念がどれだけのものだったかと」
バーナーの話に同意するように頷くコーディさん。
「実の子ではないのに、私にも分かりました。あの時の両親の気持ちが、どれだけ苦しく憤りを感じたか。それから私と兄は両親のサポートに回るようになりました。後悔はしていません。あの件は大々的に報道されましたが、似たような事例がどこかで、未だに人知れず起きているはずです。我々が行動を起こして、一人でも救えるのであればと思っています」
なんだか、凄い壮大な話を聞いた。やけど、バーナーさんとコーディさん、イキイキしている。
「法案が可決されて、ずいぶん経ちますし、呪い持ちに関する意識も当時に比べればましになってきています。これで修道院建設と研究が進めば、きっとアスラ王国は良い方向に進むと信じています。我々兄弟はそれまで両親と家族を守るために働こうと思っています。ケイシー達には恐い思いをさせましたし、窮屈な思いをさせてしまい、申し訳ないと思っています。しかし、ミズサワ様のおかげでいい方に向かっています」
それはユリアレーナにモーガンさん一家を避難の決断をしたイヴリン王太子妃殿下の采配と、うちのビアンカとルージュのおかげなんなけどね。
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