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カルーラで年明け~春まで⑩
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うんうん悩んでジェフリーさんが決断する。
「ミズサワ様、お願いいたします」
「はい。いつでもいらしてください」
それからちょっとだけ、建設最中の修道院について話す。私が寄贈した宝飾品や鰐部屋のナイフ等で、かなり予算に余裕ができて、現在建設準備と平行しスタッフ教育が前倒しで始められたそうだ。スタッフの為の寮もクラスアップした設備できると。もともとの寮は複数人で一部屋使用し、トイレは共同。まるで学生寮。キッチンは食堂、社員食堂を一軒、お風呂は共同浴場を一つ建てる予定だった。それをグレードアップすると。今は何人かの建築士が設計図を立ち上げている段階だと。
スタッフの寮か。そういえば、父もマーファの孤児院の設計に携わったなあ。詰めるシスターさんの部屋。あの頃、書斎にこもって熱心に図面を引いてた。基本的な構造を聞くと、最有力の構図は部屋を大きめにした四人部屋で、大きなクローゼットが一つ。二階建で各階に洗面所とトイレ完備、一階にはミニキッチン。四人部屋って。あくまでこれが単身者の寮。日本の学校の寮でも個室なのに。私はちょっといびきかくから気を遣う。
「あの差し出がましいのですが、この設計に参加するのは決められた人達だけですか?」
「まあ、そうですね。経験者を優先しています。どなたかおすすめの建築士が?」
「はい。父がマーファの孤児院再建に携わりまして」
「ミズサワ様のご家族の皆様は、多彩でいらっしゃいますね。勿論、孤児院再建に携わった実績があるのでしたら、是非にご参加ください。しかし、これは協議にかけられ採用されるかは、分かりませんが」
「はい、それは分かっています」
実際に寮の予定サイズ、建てた時の日の光がどんなふうになるか、どちらから光が入るかなど。寮も一つや二つではないから、いくつものタイプがある。単身寮、家族寮がある。
「左様でございますか、では、寮の簡略した基礎図面をお渡ししておきましょう。こちらにお父上にお渡しください。期限は申し訳ございません、三週間しかございません」
「わざわざありがとうございます。父に渡してみます。モーガンさん、三週間後にいらっしゃいますか?」
「よろしいのですか?」
「はい」
話がトントン拍子に進む。私は基礎図面の書類を預かる。寝る場所がしっかりしていれば、疲れた体をゆっくり休ませる事ができる。休息、必要や。
ここで私達はお暇することになる。なんだかんだと話し込んでしまった。
来た時よりかなり打ち解けてくれたケイシーちゃん達が、ビアンカとルージュにバイバイしている。
「ミズサワ様、本日はありがとうございます。デリックの事ではご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、気にしてませんよ。では三週間後に、いらっしゃる前にくらいに連絡いただけると」
「承知しました」
私の後ろで、げふっ、と言ってるビアンカとルージュ。ノワールを預かってくれていた担当者さんは、最後までノワールを惚れ惚れと見上げている。
モーガンさん一家に見送られて、私達はパーティーハウスに戻った。
その日の夕御飯。
ぶるぶる震えているビアンカとルージュ。たっぷりサラダに、ウサギの蒸した胸肉がちょっぴり乗ってる。
『す、少ないのですっ』
『少ないわっ、肉が少ないわっ』
「んー?」
にっこり笑う母。
「今日、ずいぶんモーガンさんのお家でお菓子食べたんやって?」
『『……………ユイッ、裏切り者ーっ』』
「私、結局、お菓子食べとらんのよ」
そう、ケイシーちゃん達がわいわいと全部ビアンカとルージュに食べさせていた。あまりにも平和的で、のほほん、と眺めていたら、準備してくれていたお菓子がなくなっていた。それを聞いた母が何かしないわけない。
「なんね、この肉は?」
ビアンカとルージュの肩を、もにっ、と掴む母は、有無を言わせない迫力。ひーん、となる魔の森の守護者フォレストガーディアンウルフと通った後は血の道となるクリムゾンジャガー。
形無し。うちの母にかかれば形無しなのよ。
私はモーガンさん一家の現状、特に子供達がストレスかかっていそうな事、修道院のスタッフ寮の件を両親に報告。
母は二つ返事でオッケー。父には基礎図面を見せる。
「四人部屋予定なんやって。でもさ、学生でもないのに、相部屋はないかなって」
「そうやな、せめて二人部屋やなあ。そうなると、かなり手狭になるかなあ。優衣、これいつまで?」
「三週間」
「分かった、ちょっと考えようかね」
父が思案顔になる。
『ユイ~、せめてチーズ乗せてなのです~』
『エビ~』
「お母さんに聞き」
『そんななのです』
『コウタ~』
「お母さんに聞き」
『『そんな~』』
あれだけお菓子食べてよう言うよ。
「ミズサワ様、お願いいたします」
「はい。いつでもいらしてください」
それからちょっとだけ、建設最中の修道院について話す。私が寄贈した宝飾品や鰐部屋のナイフ等で、かなり予算に余裕ができて、現在建設準備と平行しスタッフ教育が前倒しで始められたそうだ。スタッフの為の寮もクラスアップした設備できると。もともとの寮は複数人で一部屋使用し、トイレは共同。まるで学生寮。キッチンは食堂、社員食堂を一軒、お風呂は共同浴場を一つ建てる予定だった。それをグレードアップすると。今は何人かの建築士が設計図を立ち上げている段階だと。
スタッフの寮か。そういえば、父もマーファの孤児院の設計に携わったなあ。詰めるシスターさんの部屋。あの頃、書斎にこもって熱心に図面を引いてた。基本的な構造を聞くと、最有力の構図は部屋を大きめにした四人部屋で、大きなクローゼットが一つ。二階建で各階に洗面所とトイレ完備、一階にはミニキッチン。四人部屋って。あくまでこれが単身者の寮。日本の学校の寮でも個室なのに。私はちょっといびきかくから気を遣う。
「あの差し出がましいのですが、この設計に参加するのは決められた人達だけですか?」
「まあ、そうですね。経験者を優先しています。どなたかおすすめの建築士が?」
「はい。父がマーファの孤児院再建に携わりまして」
「ミズサワ様のご家族の皆様は、多彩でいらっしゃいますね。勿論、孤児院再建に携わった実績があるのでしたら、是非にご参加ください。しかし、これは協議にかけられ採用されるかは、分かりませんが」
「はい、それは分かっています」
実際に寮の予定サイズ、建てた時の日の光がどんなふうになるか、どちらから光が入るかなど。寮も一つや二つではないから、いくつものタイプがある。単身寮、家族寮がある。
「左様でございますか、では、寮の簡略した基礎図面をお渡ししておきましょう。こちらにお父上にお渡しください。期限は申し訳ございません、三週間しかございません」
「わざわざありがとうございます。父に渡してみます。モーガンさん、三週間後にいらっしゃいますか?」
「よろしいのですか?」
「はい」
話がトントン拍子に進む。私は基礎図面の書類を預かる。寝る場所がしっかりしていれば、疲れた体をゆっくり休ませる事ができる。休息、必要や。
ここで私達はお暇することになる。なんだかんだと話し込んでしまった。
来た時よりかなり打ち解けてくれたケイシーちゃん達が、ビアンカとルージュにバイバイしている。
「ミズサワ様、本日はありがとうございます。デリックの事ではご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、気にしてませんよ。では三週間後に、いらっしゃる前にくらいに連絡いただけると」
「承知しました」
私の後ろで、げふっ、と言ってるビアンカとルージュ。ノワールを預かってくれていた担当者さんは、最後までノワールを惚れ惚れと見上げている。
モーガンさん一家に見送られて、私達はパーティーハウスに戻った。
その日の夕御飯。
ぶるぶる震えているビアンカとルージュ。たっぷりサラダに、ウサギの蒸した胸肉がちょっぴり乗ってる。
『す、少ないのですっ』
『少ないわっ、肉が少ないわっ』
「んー?」
にっこり笑う母。
「今日、ずいぶんモーガンさんのお家でお菓子食べたんやって?」
『『……………ユイッ、裏切り者ーっ』』
「私、結局、お菓子食べとらんのよ」
そう、ケイシーちゃん達がわいわいと全部ビアンカとルージュに食べさせていた。あまりにも平和的で、のほほん、と眺めていたら、準備してくれていたお菓子がなくなっていた。それを聞いた母が何かしないわけない。
「なんね、この肉は?」
ビアンカとルージュの肩を、もにっ、と掴む母は、有無を言わせない迫力。ひーん、となる魔の森の守護者フォレストガーディアンウルフと通った後は血の道となるクリムゾンジャガー。
形無し。うちの母にかかれば形無しなのよ。
私はモーガンさん一家の現状、特に子供達がストレスかかっていそうな事、修道院のスタッフ寮の件を両親に報告。
母は二つ返事でオッケー。父には基礎図面を見せる。
「四人部屋予定なんやって。でもさ、学生でもないのに、相部屋はないかなって」
「そうやな、せめて二人部屋やなあ。そうなると、かなり手狭になるかなあ。優衣、これいつまで?」
「三週間」
「分かった、ちょっと考えようかね」
父が思案顔になる。
『ユイ~、せめてチーズ乗せてなのです~』
『エビ~』
「お母さんに聞き」
『そんななのです』
『コウタ~』
「お母さんに聞き」
『『そんな~』』
あれだけお菓子食べてよう言うよ。
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