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カルーラで年越し~春まで⑪
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「この法案は、モーガンさん達を排したくらいでどうにかなるんですか?」
だって、国会で過半数得てからの可決でしょ?
「無理でしょうね。これは単なる嫌がらせでしょう」
「悪質過ぎません?」
毒矢まで使って、悪質を通りすぎてる。
「そうですね。私も悪質だと思いますが、これがアスラ王国の現実です。我々も覚悟の上で法案の支持を致しました」
なんや、引っ掛かる表情やな。
しかし、ファングさんから聞いてはいたが、呪い持ちに関する法案が、今でも尾を引いているとは。
「どうにかならないのに狙われるのは、本当に嫌がらせの理由ですか?」
私の質問に沈黙するモーガン夫妻。数秒の沈黙後、重い口を開いたのはジャスパーさん。
「確かに我々をどうにかしたくらいでは、この法案は覆りません。実は、現在、アスラ王国である修道院の建設企画が立ち上がっております。それを廃案にしたいのでしょう」
「修道院?」
「はい、ユリアレーナにある『呪い持ち』を保護する修道院です」
あ、父の話しにあったやつね。
「この建設は随分前からありましたが、その色々事情があり進んでいません」
「予算ですね」
ずばあ、と言ったが、どうやらストライクやったみたい。
「はい、そうです」
肩を落とす夫妻。
「この法案は、『呪い持ち』だと言う理由で排した者に、罪は罪だとはっきり示したものです」
「私には当たり前に聞こえますが」
「ミズサワ様の様に受け入れてくれる者もアスラ王国にも当然います。ただ、厄介なのは発言力と権力を持つ者達の存在です。中にはこの法案を可決に入れてやったのだから、これ以上『呪い持ち』に肩入れするな、国税を使い保護する修道院など持っての他、世話なぞその家族がすればいいだけと何度も脅しを受けました。その家族に負担がかかるなら、せめて、減税対策等出しましたが通りません」
深くため息を出すジャスパーさん。
未だに『呪い持ち』だからと、その家族への偏見が蔓延っている。就労先も嫌がられるのも実情だ。そうなれば、収入源が少ないからね。だからの減税対策なんだけど、そこまで協力してやるものかと、反対されているって。
「ただ、最近まとまった額が入りまして。とあるバカガキが割ったルビーを形を整え、正規ルートで売りさばき多少の建設費になったので」
ジャスパーさんの口から、かなり不敬な言葉が飛び出した。
「修道院建設が現実味を帯びた時です。私の長男が襲撃されまして」
「えっ?」
「長男は無事でした、襲撃と言われても、階段から突き落とされた程度で」
「いやいや、十分傷害でしょう?」
「軽い打撲で済みましたが、次に次男が狙われました。ナイフを持った雇われた破落戸です。護衛騎士が切り捨てました」
どんどん内容がひどくなってる。
「自宅にも怪文書が幾度となく放り込まれ、ボヤ騒ぎを起き、とうとうイヴリン王太子妃殿下より、一旦国外に家族共に避難するようにとお達しがあったのです。名目はミズサワ様に、非公式に献上していただいたルビーのお礼を伝える事を、大使としての役割を担いました。そして大使としての期間は三年。この三年でイヴリン王太子妃殿下が、修道院建設をどうにか推し進めると」
この修道院建設に関してはイヴリン王太子妃殿下が発起人、モーガン夫妻は支援している立場にある。まだミッシェル王太后がバリバリに社交や外交していた頃に、外交の為に訪れたイヴリン妃殿下を自らあちこちにご案内したそうで、一番印象に残ったのが、その『呪い持ち』を保護する修道院だったそうだ。
「今回の襲撃は、この修道院建設の妨害でしょう。私達モーガン伯爵は、イヴリン妃殿下を支援し、取り纏めもしております。ここで倒れたら、修道院建設はまた遠退くでしょう」
現在、モーガン夫妻は大使館にて長男一家、次男一家と過ごしている。
「我々はイヴリン妃殿下のご配慮でここにいます。それなのに、わが身一つもまともに守ることができず、歯がゆい思いです」
それは致し方ない事よね。向こうは毒矢まで使って襲って来ている。
「まあ。でも今回、ミズサワ様のおかげで襲撃犯も捕らえられ、黒幕も分かっています。後はアスラ王国がどう動くかです」
黙っていたパーヴェル様が話しに加わる。
「いや、もう既に動いているはずです。後は結果待ちですね」
どうやら、パーヴェル様はコネを使い、アスラ王国王家に襲撃事件の内容と黒幕の情報を既に提供している。
それなら、いずれは解決するかな。しばらくはイコスティ辺境伯の騎士団も周囲を警戒するって。
よし、次や、気になったいること。
「予算はそのルビーで足ります?」
「はい、何とか」
『嘘なのです』
『嘘ダナ』
やっぱり。国からの予算が難しいなら、その割れたルビーだけでどうにかなるん? おそらく規模も大きいはず。それに専門スタッフを雇い教育しなきゃでしょ。それに必要なのは、家具やカーテンもろもろあるはず。
よし、ならば、今こそあれば使うときや。
だって、国会で過半数得てからの可決でしょ?
「無理でしょうね。これは単なる嫌がらせでしょう」
「悪質過ぎません?」
毒矢まで使って、悪質を通りすぎてる。
「そうですね。私も悪質だと思いますが、これがアスラ王国の現実です。我々も覚悟の上で法案の支持を致しました」
なんや、引っ掛かる表情やな。
しかし、ファングさんから聞いてはいたが、呪い持ちに関する法案が、今でも尾を引いているとは。
「どうにかならないのに狙われるのは、本当に嫌がらせの理由ですか?」
私の質問に沈黙するモーガン夫妻。数秒の沈黙後、重い口を開いたのはジャスパーさん。
「確かに我々をどうにかしたくらいでは、この法案は覆りません。実は、現在、アスラ王国である修道院の建設企画が立ち上がっております。それを廃案にしたいのでしょう」
「修道院?」
「はい、ユリアレーナにある『呪い持ち』を保護する修道院です」
あ、父の話しにあったやつね。
「この建設は随分前からありましたが、その色々事情があり進んでいません」
「予算ですね」
ずばあ、と言ったが、どうやらストライクやったみたい。
「はい、そうです」
肩を落とす夫妻。
「この法案は、『呪い持ち』だと言う理由で排した者に、罪は罪だとはっきり示したものです」
「私には当たり前に聞こえますが」
「ミズサワ様の様に受け入れてくれる者もアスラ王国にも当然います。ただ、厄介なのは発言力と権力を持つ者達の存在です。中にはこの法案を可決に入れてやったのだから、これ以上『呪い持ち』に肩入れするな、国税を使い保護する修道院など持っての他、世話なぞその家族がすればいいだけと何度も脅しを受けました。その家族に負担がかかるなら、せめて、減税対策等出しましたが通りません」
深くため息を出すジャスパーさん。
未だに『呪い持ち』だからと、その家族への偏見が蔓延っている。就労先も嫌がられるのも実情だ。そうなれば、収入源が少ないからね。だからの減税対策なんだけど、そこまで協力してやるものかと、反対されているって。
「ただ、最近まとまった額が入りまして。とあるバカガキが割ったルビーを形を整え、正規ルートで売りさばき多少の建設費になったので」
ジャスパーさんの口から、かなり不敬な言葉が飛び出した。
「修道院建設が現実味を帯びた時です。私の長男が襲撃されまして」
「えっ?」
「長男は無事でした、襲撃と言われても、階段から突き落とされた程度で」
「いやいや、十分傷害でしょう?」
「軽い打撲で済みましたが、次に次男が狙われました。ナイフを持った雇われた破落戸です。護衛騎士が切り捨てました」
どんどん内容がひどくなってる。
「自宅にも怪文書が幾度となく放り込まれ、ボヤ騒ぎを起き、とうとうイヴリン王太子妃殿下より、一旦国外に家族共に避難するようにとお達しがあったのです。名目はミズサワ様に、非公式に献上していただいたルビーのお礼を伝える事を、大使としての役割を担いました。そして大使としての期間は三年。この三年でイヴリン王太子妃殿下が、修道院建設をどうにか推し進めると」
この修道院建設に関してはイヴリン王太子妃殿下が発起人、モーガン夫妻は支援している立場にある。まだミッシェル王太后がバリバリに社交や外交していた頃に、外交の為に訪れたイヴリン妃殿下を自らあちこちにご案内したそうで、一番印象に残ったのが、その『呪い持ち』を保護する修道院だったそうだ。
「今回の襲撃は、この修道院建設の妨害でしょう。私達モーガン伯爵は、イヴリン妃殿下を支援し、取り纏めもしております。ここで倒れたら、修道院建設はまた遠退くでしょう」
現在、モーガン夫妻は大使館にて長男一家、次男一家と過ごしている。
「我々はイヴリン妃殿下のご配慮でここにいます。それなのに、わが身一つもまともに守ることができず、歯がゆい思いです」
それは致し方ない事よね。向こうは毒矢まで使って襲って来ている。
「まあ。でも今回、ミズサワ様のおかげで襲撃犯も捕らえられ、黒幕も分かっています。後はアスラ王国がどう動くかです」
黙っていたパーヴェル様が話しに加わる。
「いや、もう既に動いているはずです。後は結果待ちですね」
どうやら、パーヴェル様はコネを使い、アスラ王国王家に襲撃事件の内容と黒幕の情報を既に提供している。
それなら、いずれは解決するかな。しばらくはイコスティ辺境伯の騎士団も周囲を警戒するって。
よし、次や、気になったいること。
「予算はそのルビーで足ります?」
「はい、何とか」
『嘘なのです』
『嘘ダナ』
やっぱり。国からの予算が難しいなら、その割れたルビーだけでどうにかなるん? おそらく規模も大きいはず。それに専門スタッフを雇い教育しなきゃでしょ。それに必要なのは、家具やカーテンもろもろあるはず。
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