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カルーラで年越し~春まで⑦
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イシスが先頭で進むと、暗い中に、灯りが灯された馬車が浮かぶ。
あ、地面に転がるのは、荒くれ風の格好をした男達。アレスがじーっと見ている。し、死んでないよね。
駆け付けると、チュアンさんがルージュと護衛騎士の一人の手当てをしていた。
「ルージュ、チュアンさんっ」
『ユイ、イシスも来たのね。殺意があったのはすべて拘束したわ』
「ユイさん。手当てはほぼ済みました。大使は馬車内です」
「ありがとうございます。ルージュ、ありがとう」
『これくらいいいのよ』
護衛騎士、中年くらいの騎士は座ったままペコリ。どうやら肩に矢を受けたみたい。地面に矢じりに血がついた矢が転がっている。大変なお仕事やな。他の二名も手当て済んでいるようや。一番若い騎士は座り込んでいたが立ち上がり、もう一人はベテラン感のある騎士は、周囲を警戒している。
ホークさんは馬車を引いていた馬を宥めている。馭者さんも真っ青だけど、無事のようや。
そこにマデリーンさんと共に警備の方が数人走ってきた。
暗闇からビアンカが姿を表す。
『ユイ、殺意があった連中は気絶させてあるのでる。そこにまとめているのです』
薪やないやろうに。やけど、結構な数やな。何事? 大使って、そんなに危ない役職なんなね。
「ありがとうビアンカ」
さて。
私は馬車に向かって声をかける。
「モーガン大使、ミズサワです。もう大丈夫ですよ」
中から少し顔を出したのは、侍従の方だ。
「ミズサワ様、ご助力感謝致します。大使夫妻はご無事です。安全を期して、このまま大使館に戻りますが、後日改めて御礼のご挨拶に参ります」
まあ、そうだわな。いくらビアンカやルージュ達がいても避難せんとね。
「分かりました。イシス、心配やけん着いてってくれる」
『ウム、ヨカロウ』
「このイシスが大使館まで同行しますので、ご安心ください」
「重ね重ねありがとうございます」
侍従さんは、中年の騎士の方に事情説明の為に残るように伝え、馬車は去っていった。
さあ、後片付けやね。こん人達、どうしようかね。
私の事情聴取は直ぐに終わった。
「テイマー様はお帰りになってかまいません」
いいのかな?
「ユイさん、俺とチュアンは残ります」
「姉ちゃんはマデリーンさんと帰り、わいが通訳で残るけん」
襲撃者を実際撃退したのは、ビアンカとルージュなので、通訳として残ってくれる。
アレスが暇になったのか、気絶した襲撃者をツンツンし始めた。やめて、単なるツンツンでもアレスみたいにデッカイのがやるのは恐い。アレスを連れて先に帰ることに。
「ほら、アレス帰るよ」
『分かったのだ』
ツンツン。やめて。
私はマデリーンさんとアレスでパーティーハウスに戻る。
父も既に帰宅していたみたい。
「優衣、モーガンさん達は?」
足元にお帰りローリングを披露する花を撫で回す。母が心配そうに聞いてくる。
「大丈夫よ、安全策のために大使館に先に帰ったよ。晃太とホークさんは事情聴取ね」
「そうね」
話を聞いて、ほっとしたような母。
「やけど怖かね。大使が襲われるなんて」
母がローリングから戻って来た花に、こわかね、と語りかける。確かに、これが日本なら大問題やない? いや、外国でもそのはず、国際問題や。
「国際問題になりますよ。おそらく領主様が直々にうごかれますよ」
と、マデリーンさんが教えてくれる。
「え? イコスティ辺境伯が? そうなります?」
「そうなります。アスラ王国の大使が、自分の管轄内で襲撃を受けて何も動かなければ、無能の烙印を押されますからね。これが大使や負傷したり、命をおとしたりしていたら、前代未聞ですよ」
あ、やっぱり。
「後は襲撃者達の意図ですね。それ次第で事態が変わりますけどね」
「そうですか」
襲撃者達の意図ね。護衛騎士を引き連れた馬車を襲ったのだ、単なる破落戸とは思えないし、数が多い気がする。素人の私もそう考えてしまう。
「晃太とホークさんは遅くなるかね? ご飯どうしようかね?」
母が悩んでいるが、何時になるか分からないから、とりあえず準備して、私のアイテムボックスにいれておくことにする。
イシスが早々と帰って来たが、やはり晃太達の帰りは遅かった。
あ、地面に転がるのは、荒くれ風の格好をした男達。アレスがじーっと見ている。し、死んでないよね。
駆け付けると、チュアンさんがルージュと護衛騎士の一人の手当てをしていた。
「ルージュ、チュアンさんっ」
『ユイ、イシスも来たのね。殺意があったのはすべて拘束したわ』
「ユイさん。手当てはほぼ済みました。大使は馬車内です」
「ありがとうございます。ルージュ、ありがとう」
『これくらいいいのよ』
護衛騎士、中年くらいの騎士は座ったままペコリ。どうやら肩に矢を受けたみたい。地面に矢じりに血がついた矢が転がっている。大変なお仕事やな。他の二名も手当て済んでいるようや。一番若い騎士は座り込んでいたが立ち上がり、もう一人はベテラン感のある騎士は、周囲を警戒している。
ホークさんは馬車を引いていた馬を宥めている。馭者さんも真っ青だけど、無事のようや。
そこにマデリーンさんと共に警備の方が数人走ってきた。
暗闇からビアンカが姿を表す。
『ユイ、殺意があった連中は気絶させてあるのでる。そこにまとめているのです』
薪やないやろうに。やけど、結構な数やな。何事? 大使って、そんなに危ない役職なんなね。
「ありがとうビアンカ」
さて。
私は馬車に向かって声をかける。
「モーガン大使、ミズサワです。もう大丈夫ですよ」
中から少し顔を出したのは、侍従の方だ。
「ミズサワ様、ご助力感謝致します。大使夫妻はご無事です。安全を期して、このまま大使館に戻りますが、後日改めて御礼のご挨拶に参ります」
まあ、そうだわな。いくらビアンカやルージュ達がいても避難せんとね。
「分かりました。イシス、心配やけん着いてってくれる」
『ウム、ヨカロウ』
「このイシスが大使館まで同行しますので、ご安心ください」
「重ね重ねありがとうございます」
侍従さんは、中年の騎士の方に事情説明の為に残るように伝え、馬車は去っていった。
さあ、後片付けやね。こん人達、どうしようかね。
私の事情聴取は直ぐに終わった。
「テイマー様はお帰りになってかまいません」
いいのかな?
「ユイさん、俺とチュアンは残ります」
「姉ちゃんはマデリーンさんと帰り、わいが通訳で残るけん」
襲撃者を実際撃退したのは、ビアンカとルージュなので、通訳として残ってくれる。
アレスが暇になったのか、気絶した襲撃者をツンツンし始めた。やめて、単なるツンツンでもアレスみたいにデッカイのがやるのは恐い。アレスを連れて先に帰ることに。
「ほら、アレス帰るよ」
『分かったのだ』
ツンツン。やめて。
私はマデリーンさんとアレスでパーティーハウスに戻る。
父も既に帰宅していたみたい。
「優衣、モーガンさん達は?」
足元にお帰りローリングを披露する花を撫で回す。母が心配そうに聞いてくる。
「大丈夫よ、安全策のために大使館に先に帰ったよ。晃太とホークさんは事情聴取ね」
「そうね」
話を聞いて、ほっとしたような母。
「やけど怖かね。大使が襲われるなんて」
母がローリングから戻って来た花に、こわかね、と語りかける。確かに、これが日本なら大問題やない? いや、外国でもそのはず、国際問題や。
「国際問題になりますよ。おそらく領主様が直々にうごかれますよ」
と、マデリーンさんが教えてくれる。
「え? イコスティ辺境伯が? そうなります?」
「そうなります。アスラ王国の大使が、自分の管轄内で襲撃を受けて何も動かなければ、無能の烙印を押されますからね。これが大使や負傷したり、命をおとしたりしていたら、前代未聞ですよ」
あ、やっぱり。
「後は襲撃者達の意図ですね。それ次第で事態が変わりますけどね」
「そうですか」
襲撃者達の意図ね。護衛騎士を引き連れた馬車を襲ったのだ、単なる破落戸とは思えないし、数が多い気がする。素人の私もそう考えてしまう。
「晃太とホークさんは遅くなるかね? ご飯どうしようかね?」
母が悩んでいるが、何時になるか分からないから、とりあえず準備して、私のアイテムボックスにいれておくことにする。
イシスが早々と帰って来たが、やはり晃太達の帰りは遅かった。
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