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カルーラで年越し~春まで③
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パーティーハウスに戻ると、直ぐにチュアンさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいユイさん」
まずは倉庫に向かい、ノワールをルームの厩舎に誘導する。
「ユイさん、実は先ほど来客がありまして」
「どなたが?」
マフラーを外し、コートを脱ぎながら聞く。
「アスラ王国大使の使者の方です。ユイさんが出掛けていることはお伝えしましたが、ケイコさんが対応してくれて」
母がダイニングキッチンから顔を出す。
「何回も来てもらうのもあれやしね。午後3時時過ぎならよかろうと思って返事ばしとるよ。4時~5時の間に来ますって」
確かに何度もご足労いただくのもあれだしね。まだ午前中だし、いいかな。
「ありがとうお母さん」
「よかよ、寒かったろ、お茶淹れようね」
アレスや仔達がいないので比較的静かだが、シルフィ達がわちゃわちゃと遊んでいる。
『ねえ、ユイ、しばらくはルーティには行かないの?』
寒がりのルージュが聞いてくる。
「うん、そうやけど。ダンジョン?」
現在、サブ・ドアは3つ。
魔境のウルフの巣、王冠山の集落跡地、パーティーハウスの奥の寝室。今、晃太のマッピング能力のレベルアップの為に、あのフィールド型ダンジョンの作図をしている。なので、パーティーハウスのサブ・ドアを解除して、フィールド型ダンジョン内をあちこち周りながら、登録・解除しようと思っていたが。
『違うわ。ルーティのあの青いエビが食べ頃じゃないかしら?』
「ああ、ターコイズシュリンプね」
確かに、寒い時期に獲れるって聞いたなあ。ターコイズオイスターも美味しかったなあ。ターコイズシュリンプは尾頭付きで母がフライにしてくれて大好評だった。大きいから固くて大味かなって思ったが、全然そんなことなかった。
「あれ、美味しかったもんね」
『そうでしょ、ね?』
きゅるん。
「何が、ね? なん?」
なんや、妙に勘ぐる。ルージュの赤い目がきゅるん。
『食べたいわ、買ってきて』
きゅるん。
「暖房の真下に陣取ってなんば言いようと、今、雪なんやけど」
『アレスを連れていけばいいわ~』
「ルージュは来んの?」
『私は寒いの苦手だもの』
「あんたね」
もう。ルージュのエビエビわっしょいが始まる。
「苦手って言っても去年もこの時期で魔境で元気達の修行したやん」
『あれはあれ、これはこれ』
「あんたね」
もう。
でもなあ、言われたら、あのターコイズシュリンプとターコイズオイスター食べたくなってきた。ただ、時期が時期だしなあ。
ルーティかあ。もうリィマさんとアルスさんの父親が経営する商会はおらんよね。うーん、なんや、急にターコイズシリーズ食べたくなってきた。
悶々と悩む。
確か、カルーラとルーティは冬場でも馬車の便数は少ないがある。つまり、冬場でも往復できるって事だ。
ノワールなら、行けるね。除雪車がわりのアレスもおるし。
よし、ホークさんと相談して、日程組もうかな。
お昼御飯の後に、チュアンさんが修道院にシスターアモルとの面会予約に向かい、そのまま弟さんのお墓参りに行った。
それから、冒険者の皆さんが移動することになった。ギルド経営の大型パーティーハウスが空いているので、そちらに移ると。こっちにいてもらってもいいのに。
「いつまでもお世話になってばかりはいられませんからね。長々とお世話になってしまいました。本来の形になるだけです。ミズサワ殿に側にいるとあまりにも心地良いのですが、これからの事を思えば、そろそろ絞めなおさなくてはなりません」
と、代表してケルンさんがご挨拶してきた。本来の冒険者パーティーって、ダンジョン内とかでは衣食住は最低だ。食べ物は美味しくない、パサパサ保存食。飲み物だって潤沢に手に入れない。お風呂もトイレなんてもってのほか。私のルームの設備があまりにも心地良くて、それを忘れてしまうと。私達と別れた後で、支障をきたす恐れがあるって。
皆さん、ちゃんとした冒険者やから、そのメリハリ的な事はきちんとできると思うんやけど。
パーティーハウスを借りるのには、色々条件がある。私の場合はリティアさんが配慮してくれただけ。
その条件はある程度の冒険者パーティーランクがあることと、ギルドからの依頼を一定数こなすこと。ケルンさんやフェリクスさんのようにギルドで講師をすること。
今回はケルンさん、フェリクスさん、ヒェリさん、エリアンさんがそれぞれ得意分野の講師の仕事を引き受けたみたい。実戦訓練講師として、ツヴァイクさんとエドワルドさんも受けたと。私がレディ・ロストークと赤ちゃん、シルフィリアに会いに行っている間に手続きしたと。
「俺達はお零れに預かっただけだ。もちろん、迷惑でなければ、ケイコさんの手伝いには来るぞ」
と、ファングさん。アルスさんはぷー、と不満そうにしている。
「部屋があるからって、誘ってもらったんです。俺達もケイコさんのお手伝いに来ますから」
と、ロッシュさん。マアデン君とハジェル君が、きゅーん、と鳴きそうな顔。
それから、もしかしたらルーティにターコイズシュリンプやターコイズオイスターを買いに行くと言うと、山風が同行を願い出た。絶対買い物だけで終わるわけない。
「コウタさんの支援魔法の件があるでしょう? 俺達で良ければお手伝いしますよ」
と、ロッシュさんのありがたい申し出。金の虎の皆さんは、さすがに辞退した。おそらくは大丈夫だろうけど、今回までは念のために、ルーティには行かない事に。アルスさんが、ぷー、ぷー、としている。
ラスチャーニエと蒼の麓からも都合が合うメンバーが同行してくれるって。
「お帰りなさいユイさん」
まずは倉庫に向かい、ノワールをルームの厩舎に誘導する。
「ユイさん、実は先ほど来客がありまして」
「どなたが?」
マフラーを外し、コートを脱ぎながら聞く。
「アスラ王国大使の使者の方です。ユイさんが出掛けていることはお伝えしましたが、ケイコさんが対応してくれて」
母がダイニングキッチンから顔を出す。
「何回も来てもらうのもあれやしね。午後3時時過ぎならよかろうと思って返事ばしとるよ。4時~5時の間に来ますって」
確かに何度もご足労いただくのもあれだしね。まだ午前中だし、いいかな。
「ありがとうお母さん」
「よかよ、寒かったろ、お茶淹れようね」
アレスや仔達がいないので比較的静かだが、シルフィ達がわちゃわちゃと遊んでいる。
『ねえ、ユイ、しばらくはルーティには行かないの?』
寒がりのルージュが聞いてくる。
「うん、そうやけど。ダンジョン?」
現在、サブ・ドアは3つ。
魔境のウルフの巣、王冠山の集落跡地、パーティーハウスの奥の寝室。今、晃太のマッピング能力のレベルアップの為に、あのフィールド型ダンジョンの作図をしている。なので、パーティーハウスのサブ・ドアを解除して、フィールド型ダンジョン内をあちこち周りながら、登録・解除しようと思っていたが。
『違うわ。ルーティのあの青いエビが食べ頃じゃないかしら?』
「ああ、ターコイズシュリンプね」
確かに、寒い時期に獲れるって聞いたなあ。ターコイズオイスターも美味しかったなあ。ターコイズシュリンプは尾頭付きで母がフライにしてくれて大好評だった。大きいから固くて大味かなって思ったが、全然そんなことなかった。
「あれ、美味しかったもんね」
『そうでしょ、ね?』
きゅるん。
「何が、ね? なん?」
なんや、妙に勘ぐる。ルージュの赤い目がきゅるん。
『食べたいわ、買ってきて』
きゅるん。
「暖房の真下に陣取ってなんば言いようと、今、雪なんやけど」
『アレスを連れていけばいいわ~』
「ルージュは来んの?」
『私は寒いの苦手だもの』
「あんたね」
もう。ルージュのエビエビわっしょいが始まる。
「苦手って言っても去年もこの時期で魔境で元気達の修行したやん」
『あれはあれ、これはこれ』
「あんたね」
もう。
でもなあ、言われたら、あのターコイズシュリンプとターコイズオイスター食べたくなってきた。ただ、時期が時期だしなあ。
ルーティかあ。もうリィマさんとアルスさんの父親が経営する商会はおらんよね。うーん、なんや、急にターコイズシリーズ食べたくなってきた。
悶々と悩む。
確か、カルーラとルーティは冬場でも馬車の便数は少ないがある。つまり、冬場でも往復できるって事だ。
ノワールなら、行けるね。除雪車がわりのアレスもおるし。
よし、ホークさんと相談して、日程組もうかな。
お昼御飯の後に、チュアンさんが修道院にシスターアモルとの面会予約に向かい、そのまま弟さんのお墓参りに行った。
それから、冒険者の皆さんが移動することになった。ギルド経営の大型パーティーハウスが空いているので、そちらに移ると。こっちにいてもらってもいいのに。
「いつまでもお世話になってばかりはいられませんからね。長々とお世話になってしまいました。本来の形になるだけです。ミズサワ殿に側にいるとあまりにも心地良いのですが、これからの事を思えば、そろそろ絞めなおさなくてはなりません」
と、代表してケルンさんがご挨拶してきた。本来の冒険者パーティーって、ダンジョン内とかでは衣食住は最低だ。食べ物は美味しくない、パサパサ保存食。飲み物だって潤沢に手に入れない。お風呂もトイレなんてもってのほか。私のルームの設備があまりにも心地良くて、それを忘れてしまうと。私達と別れた後で、支障をきたす恐れがあるって。
皆さん、ちゃんとした冒険者やから、そのメリハリ的な事はきちんとできると思うんやけど。
パーティーハウスを借りるのには、色々条件がある。私の場合はリティアさんが配慮してくれただけ。
その条件はある程度の冒険者パーティーランクがあることと、ギルドからの依頼を一定数こなすこと。ケルンさんやフェリクスさんのようにギルドで講師をすること。
今回はケルンさん、フェリクスさん、ヒェリさん、エリアンさんがそれぞれ得意分野の講師の仕事を引き受けたみたい。実戦訓練講師として、ツヴァイクさんとエドワルドさんも受けたと。私がレディ・ロストークと赤ちゃん、シルフィリアに会いに行っている間に手続きしたと。
「俺達はお零れに預かっただけだ。もちろん、迷惑でなければ、ケイコさんの手伝いには来るぞ」
と、ファングさん。アルスさんはぷー、と不満そうにしている。
「部屋があるからって、誘ってもらったんです。俺達もケイコさんのお手伝いに来ますから」
と、ロッシュさん。マアデン君とハジェル君が、きゅーん、と鳴きそうな顔。
それから、もしかしたらルーティにターコイズシュリンプやターコイズオイスターを買いに行くと言うと、山風が同行を願い出た。絶対買い物だけで終わるわけない。
「コウタさんの支援魔法の件があるでしょう? 俺達で良ければお手伝いしますよ」
と、ロッシュさんのありがたい申し出。金の虎の皆さんは、さすがに辞退した。おそらくは大丈夫だろうけど、今回までは念のために、ルーティには行かない事に。アルスさんが、ぷー、ぷー、としている。
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