上 下
722 / 820
連載

約一ヶ月⑤

しおりを挟む
 やっと脱出用魔法陣が修復。
 直ぐに脱出した。その前にもう一度、集落跡に花を供えた。
 さ、帰ろう。
 脱出先は、フィールド型ダンジョンを挑んだ出発点。王冠山は水滴が落ちた時に出きるような形をしている、その窪みの部分だ。くわっ、寒かっ、痛かっ。風が痛かっ。
 慌てて、ルームに避難。避難したが、直ぐに移動開始。すでに眼下に広がる森は緑ではなく、真っ白、雪が降ったのだから当然だけどね。完全防寒でオシリスに騎乗して、移動開始。それでも寒か。カルーラに帰ったら、ホークさんのお休みせんと。かなり、確実にブラックぷんぷんやもん。
 途中でノワールに交代したが、やはり雪に足を取られ、思ったよりスピードが出ない。それでもなんとかかんとか移動する。
 数日かけて移動。森を抜ける前の日に、若手達とお別れ。お別れと言っても、バンダナ外しただけ、従魔契約はそのまま。サブ・ドアがあるから、いつでも会える。皆、母に自己主張している。母はよしよし。私もちゅ、ちゅ、としてサブ・ドアの向こうに見送る。そのうちアレスのへいへいいくぜ行軍すると言われて、鼻水垂れてたけどね。
 ノワールに馬車を繋ぐ。道は、アレスとビアンカが魔法で作ってくれると。
 私とホークさんはしっかり防寒して馭者台に座る。馬車内は鮨詰め状態の冒険者の皆さんと晃太。仔達は並走、シルフィ達も馬車の後ろをアリスと共に走る事に。シルフィ達のすくすく育ち、馬車ないがみっちみちになるからだ。ウィンディだけは乗りたそうだけどね。
 安全運転第一に、馬車が進む。
 車輪を新しくしてよかった。マーファの木材部屋から出た高級木材を使用した車輪には、シーサーペントの骨が覆ってある。
「材料だけなら侯爵様の馬車に負けませんっ」
 と、マーファで加工してくれた馬車職人さんが、隈を作ってどやっ、てしてた。
 ゆっくり馬車が進む。イシス達が先にカルーラの上空を飛び、姿を見せているから気がついているはず。
 アレスとビアンカが除雪車をしてくれて、左右に雪が払われていく。魔法って、便利。そんな中、元気だけが、わふわふわんわんと遊びながら走っている。除雪される雪の下で走り回っている。何時もならコハクも遊びながら行くが、寒がりの為に、ルージュに張り付いている。反対側はヒスイね。母が編んだセーターをしっかり着ている。本来野生ならセーターなんて着ないが、うちはしっかり箱入りジャガーですからね。
 雪道なので、ゆっくりノワールが進む。
「わんわんっ」
 元気が雪まみれで飛び出していく。
「こら、元気っ、あんまり遠くに行かんよ」
「わふんっ」
 大丈夫かね?
 雪まみれの元気は閉まっている門の前に到着して、わんわん言ってる。すると、門が開き出した。
「おそらく、イシスさんと元気君の姿を確認したんだと思います」
 そうか、元気みたいなウルフ系は時々、テイムされているらしいが、イシスのようなグリフォンは存在自体が珍しく、さらにテイムされているなんて、さらに珍しい。
 グリフォンを従魔にしているなんで、私くらいだろうし。気がついて、門を開けてくれたんやね。
 ノワールの馬車がやっと門まで到着。
 ずらっ、と出迎えてくれた警備の皆さんは一様に安心した表情だ。
「よくご無事でっ、テイマーさん、お帰りなさい」
 あ、嬉しか。
「通例で申し訳ありません。確認を」
「はい」
 私は馬車の内側に声をかけると、鮨詰め状態の中身の皆さんが溢れるように出てきた。
「あの、ウルフ達が少ないようですが」
 冒険者ギルドカードを出していると、おずおずと聞かれた。
 若手達の事ね。
「はい、無事に向こうのウルフ達にも受け入れられて、そのまま魔境で別れました」
 もともとの設定だ。
 本来はシヴァ達のウルフの巣がある魔境で、若手達を加えて仔達が修行する事にしたが、一旦マーファに帰るにあたり、諸問題が発生。
 カルーラで仔達を見送り、私達はマーファに帰る。で、サブ・ドアを経由していきなりマーファに仔達や若手達が姿を見せたら、いつ来たの? ってことになる。なので、マーファ近くの魔の森で修行します、そこで若手達をビアンカとルージュがスカウトしました、と言うことにした。若手達はサブ・ドア経由すればいいかなって思ったが、隠すのって疲れる。ただでさえ、ルームを隠すのも気を遣うのにね。
 若手達は体裁上、魔境に連れていくにあたり、嫁婿候補ですと言ってある。こちらのコミュニティの問題がある。例えるなら魔法馬。魔物蔓延る世界で、気軽に遠方に行けない。なので、どうしても近しい血縁で番になる事があり、あまり重ねるとよろしくない。これを例として話し、マーファ近くの魔の森から嫁婿候補のウルフ達を、シヴァがエリアボスを務める魔境に連れていくってね。
「ああ、そうなんですね」
 あらかじめ説明してあるので、直ぐになっとくしてくれた。
「では、皆さん全員ギルドにお願いできますか? 長期に魔の森にいらしたので、確認のために」
「はい」
 私達は4ヶ月ぶりの雪のカルーラの街に入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】虐げられた令嬢の復讐劇 〜聖女より格上の妖精の愛し子で竜王様の番は私です~

大福金
ファンタジー
10歳の時、床掃除をしている時に水で足を滑らせ前世の記憶を思い出した。侯爵家令嬢ルチア 8さいの時、急に現れた義母に義姉。 あれやこれやと気がついたら部屋は義姉に取られ屋根裏に。 侯爵家の娘なのに、使用人扱い。 お母様が生きていた時に大事にしてくれた。使用人たちは皆、義母が辞めさせた。 義母が連れてきた使用人達は私を義母と一緒になってこき使い私を馬鹿にする…… このままじゃ先の人生詰んでる。 私には 前世では25歳まで生きてた記憶がある! 義母や義姉!これからは思い通りにさせないんだから! 義母達にスカッとざまぁしたり 冒険の旅に出たり 主人公が妖精の愛し子だったり。 竜王の番だったり。 色々な無自覚チート能力発揮します。 竜王様との溺愛は後半第二章からになります。 ※完結まで執筆済みです。(*´꒳`*)10万字程度。 ※後半イチャイチャ多めです♡ ※R18描写♡が入るシーンはタイトルに★マークをいれています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。