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約一ヶ月①
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脱出用の魔法陣が修正するまで、約一ヶ月。
少しゆっくりしよう、なんて事はない。
毎朝毎朝バトルジャンキー達が、ルーティのダンジョンに行くし、時折第八階層を走り回りに行ってる。第八階層に行くにはあの断崖絶壁の海の向こうに行くか、崖の上にもフィールドが広がるので、アレスが氷で足場を作り、たったか登ってちゅどんドカンしている。向こう岸に行くには、最短ルートはオシリスで移動したところがあるが、かなり離れた場所に、崖が迫り出している場所があり、軽く飛べば飛び越えられる。軽くと言っても、三メートルは空いているし、風はあるし、不安定な場所だから、私には絶対無理。
晃太はマッピング能力を上げるために、時折第八階層に同行している。もちろん、イシスやオシリス、仔達に若手達が付いてますよ。
私はと言うと、まず元集落跡地に花を手向けに行き、周囲を散策。なんだや、引っ掛かる風景だからね。心配だからとビアンカとルージュ、ホークさんも来てくれた。
見つけたのは、岩。
そう、あの神子様がまだアナ○ンダサイズの白夜に、語りかけていたあの場所。
藪に覆われていたが、見つけた。
ビアンカが魔法で草を取り払ってくれた。
なんだか、勝手に感慨深くなり、私は岩に腰かけて、山の向こうに日が沈むまで眺めてしまった。
「ユイさん、日が沈みました、もう帰りましょう」
と、黙ったまま付き合ってくれたホークさんがそっと肩に触れる。
「あ、そうですね。すみません、付き合わせてしまって。ビアンカもルージュも、ごめんね」
『いいのですよ』
『落ち着いた?』
「そうやね」
私は胸に手を当て、白夜に語りかけた。
本当に、一緒に行ってくれる?
ここから離れるのは、寂しくない?
と。
答えは。
否
と、一言。
エコーのかかった声で、初めて声を聞いた。男性のような声だ。
そっか。なら、一緒に行こうかね。
山の向こうに、色んな景色を見ようかね。
「ユイさん、どうされました」
黙ってしまった私に、ホークさんが心配そうに聞いて来た。
「あ、いえ、大丈夫です。うっ、寒っ。か、帰りましょう、風邪引いちゃう。すみません、長々と付き合せてしまって」
「大丈夫ですよ、さ、帰りましょう。足元危ないのでどうぞ」
「いつもいつもすみません」
ホークさんの腕に手をかける。私、こう見えて、たまに自分の足に、自分の足を引っ掛かる事がある。しかもここはホークさんの言うように足場が悪いので転倒率が高い。なので、ホークさんのお言葉に甘えている。街中では恥ずかしいので躊躇うが、ここなら平気。うーん、安心感。と、思ったら、草に足を引っ掛かる。安心感とか思った矢先だよ。
「おっと、ユイさん、大丈夫ですか?」
「本当にすみませんっ」
結局、がっちりホークさんに支えられて、二人三脚のようにほぼ搬送される感じになってしまった。恥ずかしかっ。雰囲気もへったくれもないっ。
父のマジックアイテムや武器類の鑑定が済んだのは、サブ・ドアを繋いで三日後だった。理由としては、数も多いが、父も持ち運びできるシャワーヘッドの開発真っ最中だし、毎日毎日何かしら増えているからだ。何が? 宝箱がだよ。バトルジャンキー達が毎日マジックバッグに色々入れて帰って来るんだよ。宝石や宝飾品はリィマさんがせっせと鑑定してくれている。
「まずはこれは通信用の魔道具やね、電話みたいなやつや」
と、示したのはスノードーム。合計十個もある。スノードームの台座には数字が刻まれていて、個体識別の為が、一つだけ、数字の上に星マークがある。
「どうやって使うと?」
「えーっと、な、まず、この『1』から『2』へ呼び掛けるには、『1』の珠に触れて、指は『2』に当てて魔力を流す」
フムフム。
父が『1』のスノードームに触れて『2』の数字に親指を当てる。すると、『2』のスノードームが点滅。
「優衣『2』ば触って」
「はいはい」
私は『2』のスノードームに触れる。
「もしもし」
『もしもし』
あ、父の声がスノードームから聞こえる。
「な、電話やろ? かける側には相応の魔力がいるし、このスノードームの裏に魔石を入れるところがあって、入れんといかんけどね」
「本当に電話やね」
「ただな、ダンジョン内では通話できんみたい」
「電話やな」
電波が届かない的なやつね。
どうしよっかなあ。あっ。
「ロッシュさん、ラーヴさん、いかがですか? 離れていてもご家族と連絡取れますよ」
戸惑いの二人だけど、ふわ、と嬉しそうな顔。
だけど、待ったをかけたのは、ベテラン冒険者で年長者のケルンさんとフェリクスさん。
「これは貴重な魔道具、そこらの一般家庭においてはいけません」
「そうですね。魔道具欲しさに狙われる可能性が高いですよ」
あ、そうなるのね。なら、仕方ないかあ。ちょっとがっかりしているロッシュさんとラーヴさん。大事な家族が狙われるのはいやよね。
結局、このスノードームはギルドに提出し、どうするか判断やな。
それから解毒や補助魔法のアクセサリー系もあり。ある程度配布する。結構出たので、いくつかはギルドに提出する。
武器類で凄いのが出た。
少しゆっくりしよう、なんて事はない。
毎朝毎朝バトルジャンキー達が、ルーティのダンジョンに行くし、時折第八階層を走り回りに行ってる。第八階層に行くにはあの断崖絶壁の海の向こうに行くか、崖の上にもフィールドが広がるので、アレスが氷で足場を作り、たったか登ってちゅどんドカンしている。向こう岸に行くには、最短ルートはオシリスで移動したところがあるが、かなり離れた場所に、崖が迫り出している場所があり、軽く飛べば飛び越えられる。軽くと言っても、三メートルは空いているし、風はあるし、不安定な場所だから、私には絶対無理。
晃太はマッピング能力を上げるために、時折第八階層に同行している。もちろん、イシスやオシリス、仔達に若手達が付いてますよ。
私はと言うと、まず元集落跡地に花を手向けに行き、周囲を散策。なんだや、引っ掛かる風景だからね。心配だからとビアンカとルージュ、ホークさんも来てくれた。
見つけたのは、岩。
そう、あの神子様がまだアナ○ンダサイズの白夜に、語りかけていたあの場所。
藪に覆われていたが、見つけた。
ビアンカが魔法で草を取り払ってくれた。
なんだか、勝手に感慨深くなり、私は岩に腰かけて、山の向こうに日が沈むまで眺めてしまった。
「ユイさん、日が沈みました、もう帰りましょう」
と、黙ったまま付き合ってくれたホークさんがそっと肩に触れる。
「あ、そうですね。すみません、付き合わせてしまって。ビアンカもルージュも、ごめんね」
『いいのですよ』
『落ち着いた?』
「そうやね」
私は胸に手を当て、白夜に語りかけた。
本当に、一緒に行ってくれる?
ここから離れるのは、寂しくない?
と。
答えは。
否
と、一言。
エコーのかかった声で、初めて声を聞いた。男性のような声だ。
そっか。なら、一緒に行こうかね。
山の向こうに、色んな景色を見ようかね。
「ユイさん、どうされました」
黙ってしまった私に、ホークさんが心配そうに聞いて来た。
「あ、いえ、大丈夫です。うっ、寒っ。か、帰りましょう、風邪引いちゃう。すみません、長々と付き合せてしまって」
「大丈夫ですよ、さ、帰りましょう。足元危ないのでどうぞ」
「いつもいつもすみません」
ホークさんの腕に手をかける。私、こう見えて、たまに自分の足に、自分の足を引っ掛かる事がある。しかもここはホークさんの言うように足場が悪いので転倒率が高い。なので、ホークさんのお言葉に甘えている。街中では恥ずかしいので躊躇うが、ここなら平気。うーん、安心感。と、思ったら、草に足を引っ掛かる。安心感とか思った矢先だよ。
「おっと、ユイさん、大丈夫ですか?」
「本当にすみませんっ」
結局、がっちりホークさんに支えられて、二人三脚のようにほぼ搬送される感じになってしまった。恥ずかしかっ。雰囲気もへったくれもないっ。
父のマジックアイテムや武器類の鑑定が済んだのは、サブ・ドアを繋いで三日後だった。理由としては、数も多いが、父も持ち運びできるシャワーヘッドの開発真っ最中だし、毎日毎日何かしら増えているからだ。何が? 宝箱がだよ。バトルジャンキー達が毎日マジックバッグに色々入れて帰って来るんだよ。宝石や宝飾品はリィマさんがせっせと鑑定してくれている。
「まずはこれは通信用の魔道具やね、電話みたいなやつや」
と、示したのはスノードーム。合計十個もある。スノードームの台座には数字が刻まれていて、個体識別の為が、一つだけ、数字の上に星マークがある。
「どうやって使うと?」
「えーっと、な、まず、この『1』から『2』へ呼び掛けるには、『1』の珠に触れて、指は『2』に当てて魔力を流す」
フムフム。
父が『1』のスノードームに触れて『2』の数字に親指を当てる。すると、『2』のスノードームが点滅。
「優衣『2』ば触って」
「はいはい」
私は『2』のスノードームに触れる。
「もしもし」
『もしもし』
あ、父の声がスノードームから聞こえる。
「な、電話やろ? かける側には相応の魔力がいるし、このスノードームの裏に魔石を入れるところがあって、入れんといかんけどね」
「本当に電話やね」
「ただな、ダンジョン内では通話できんみたい」
「電話やな」
電波が届かない的なやつね。
どうしよっかなあ。あっ。
「ロッシュさん、ラーヴさん、いかがですか? 離れていてもご家族と連絡取れますよ」
戸惑いの二人だけど、ふわ、と嬉しそうな顔。
だけど、待ったをかけたのは、ベテラン冒険者で年長者のケルンさんとフェリクスさん。
「これは貴重な魔道具、そこらの一般家庭においてはいけません」
「そうですね。魔道具欲しさに狙われる可能性が高いですよ」
あ、そうなるのね。なら、仕方ないかあ。ちょっとがっかりしているロッシュさんとラーヴさん。大事な家族が狙われるのはいやよね。
結局、このスノードームはギルドに提出し、どうするか判断やな。
それから解毒や補助魔法のアクセサリー系もあり。ある程度配布する。結構出たので、いくつかはギルドに提出する。
武器類で凄いのが出た。
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