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白夜⑦

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 よく分からん。
 やけど、今は。
 ルームを開けんと。いつもなら掛け声かけてするが、喉がいかん状態や。
 とうとうイシスが白目剥いて、轟音と共に倒れた。
 私は心の中で叫びながらルームを開ける。
『ユイッ』
「姉ちゃんっ、わっ、あちっ」
「くっ、ユイさんっ」
 皆が飛び出してくる。
『ふんっ』
 ビアンカがまず魔法でルームのドア付近の温度を下げてくれた。
 私は何とか顔を上げると、ホークさんが抱き抱えてくれる。
 皆さん手筈通りに動いてくれる。
 イシス達がヤマタノオロチの後に満身創痍になるのは、分かっていた。なら、どう動くか、だ。
 いつも外で使用している遮断効果のあるシートに、人海戦術で乗せている。もちろん怪我を想定し、エリクサー部隊もいる。
 私は直ぐにホークさんによりルームに搬送される。
「姉ちゃん、飲めるな?」
 晃太がエリクサーを差し出すが、喉が焼けたように痛くて、無理そうだが、とにかく口に含む。少しだけ含むと、すると口腔内が一気に楽になる。あ、これなら飲めそう。
 大丈夫、と目で合図すると、晃太もホークさん、駆けつけてきたエマちゃんがほっとした顔だ。
「ゆっくりっ、ゆっくりっ」
 チュアンさんが声かけながら、ルージュが乗ったシートに治療魔法をかけ、テオ君がエリクサーをふりかけている。シートはビアンカ、エアリーズとトーレスが引き摺っている。
 シヴァのシートはアリスとジェミニ、キャンサーが引き摺っている。シヴァには金の虎の皆さんがついて、エリクサーはリィマさん、治療魔法はフリンダさんがかけている。アレスのシートは元気、コハク、ノワールが引き摺っている。アレスには蒼の麓が付き、ドロテアちゃんがエリクサーをふりかけている。ドーラさんが治療魔法をかけている。イシスはオシリスとホルス、オフィーリア、ヴァルゴがシートを引き摺る。ラスチャーニエが付いてくれて、ケルンさんが治療魔法をかけ、ヒェリさんがエリクサーをふりかけている。
『ユイ、どうなのです?』
 無事にルージュをルームに搬送したビアンカが心配そうに聞いてくる。私はまだ喉が痛いので、大丈夫と頷き、ちびちびエリクサーを飲む。一口毎に痛みが引く。
『コウタ、私は出るのです。おそらく直ぐにボス部屋が始まるのです』
「分かった、気を付けてな」
 晃太が代わりに返事をする。
『ユイ、大人しくしてるのですよ。皆、続くのですっ』
 釘を刺されてしまう。
 ビアンカが仔達、若手達、そしてノワールを引き連れていく。始めは、スライムなどのレベルの低い魔物のはずや。
 そのはず、ただ、このフィールド型ダンジョンは、どうやら通常知られているダンジョンのルールが当てはまってない。
 私はエリクサーを飲む、よし、喉オッケー。
「なあ、姉ちゃん、目、大丈夫な? 見えとる?」
「ユイさん、痛みは?」
「大丈夫ユイさん」
 なんや? なんや? 私の顔を見て心配そうな三人。そんなに見たら、ちょっぴり気になる顎のラインが恥ずかしか。
「目? なんともないけど」
「いや、おかしかって、鏡ば見てって」
「鏡?」
 歩けるのに、ホークさんが洗面所まで連れてってくれた。
 私は鏡を覗く。
 ……………………………
「なにこれーっ」
 私は叫ぶ。
 だってっ、だってっ、だってっ。
 右目だけ、黄金色になってるんやもんっ。
 これ、あれやっ、中二病とかの、痛いやつやないっ? 年齢的に厳しいやつやないーっ。
 あ、エリクサー飲んだら治るかもっ。残りを一気飲み。ふうっ、どうやっ。
 ……………………………
 な、治ってない。
「姉ちゃん、痛いとかないん?」
「いや、全くないんなけど」
 あっ。
 さっきのあれやない? 心当たりがあるには、あるが。今は確認作業の時間がおしい。
「見えるに問題はなか、さ、ボス部屋開始よ、私達も出来ることするよっ」
 気持ちを切り替えんと。
 これからが、長丁場や。
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