もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

文字の大きさ
上 下
701 / 851
連載

白夜④

しおりを挟む
「神様っ、シヴァの火魔法の力を上げてっ」
 私は神への祈りを発動。
 やはり首を二つも落とされて、ヤマタノオロチは黙っていなかった。
 残りの首をまさに鎌首を上げる。まだ、半覚醒以下のようだ。
 それぞれ最強戦闘モードのイシスとアレスが攻撃の手を休めず、次の首を切り飛ばす。ルージュが全くの狂いなく1メートルを超す火の玉を繰り出し、切断面に命中させていく。
 そんな中、一つの首が、ルージュを丸飲みしようと迫っていた。大きく開いた口に飛び込んでいくのは、全身から炎を迸らせたシヴァだ。おそらく体内から炎で攻撃するつもりだろうが、私に沸き上がる嫌な予感。とっさに神への祈りを発動する。魔力が引き抜かれた瞬間、シヴァの身体、飲み込まれる。
 一瞬肝が冷えたが、飲み込んだ、首、黒い肌が一ヶ所だけ、赤く色付いた。

 ボウンッ

 赤い、と認識したら、その箇所が一気に膨れ上がり、破裂する。血を撒き散らしながら飛び出してくるのはシヴァだ。ああ、良かった。シヴァは全くスピードを緩めず駆け抜けていく。かろうじてくっついていたところに、ルージュの容赦ない火の玉が直撃。完全に落ちる。
 イシスとアレスが首を落とし、シヴァとルージュの火魔法が炸裂していく。
 凄い、さすが、そう思ったが、予想以上にエグい光景。
 お酒でベロベロに酔わせて、動きが鈍くなった所をぼこぼこにする。仕方ないとはいえ、よく考えたら、まるで卑怯者のようなやり方。
 だが、ここでヤマタノオロチを抑えないと、いずれ這い出す。そうなれば、この辺一体が大惨事になる。
 分かっている、分かっている事だ。
 ここで、私達が失敗したら、どれだけの被害が出るか。
 分かっていたのに。
 目の前で、必死に戦ってくれているイシス達を見ながら、怪我をして欲しくないと言う思いと、ぼろぼろになっていくヤマタノオロチに、私は言い難い感情が浮かぶ。
 かつて、魔境のウルフの巣を襲いながら、同族を撤退させるために、たった一匹残ったワゴン車蜘蛛。ビアンカとルージュの立て続いた攻撃に耐えていた、あのワゴン車蜘蛛が脳裏に過る。

 もし、ヤマタノオロチと共にこちらに来た人達が今も生き繋いでいたら、こうにならなかった?

 こんな痛々しい事に、ならなかった?

 今も、穏やかに人々と生きていた?

 そんな考えが、一瞬、頭を過った。
 なんだろう、胸元が熱い。
 熱い、熱い、熱い。
 あ、物理的に熱かっ。
 咄嗟に服の上から握るのは、始祖神様から頂いた、お守り。神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)だ。
 チェーンを引っ張り出すと、確かに熱を持っている。
 なんで? 石が熱を?
 始祖神様が言っていた、これは移住してきた人達のまとめ役のような人、神子が持っていた。これは始祖神様が作った寸分違わぬ偽物、つまり、本物だと。
「あと一つやっ」
 晃太が声を上げた瞬間。
 私の視界が、真っ白になった。

 え?
 白い世界で、私のすぐそばを誰かが走り抜ける。違う駈けていく。
「みこさまーっ」
 小さな子供達、黒い髪、薄茶の服の子供達が走り抜けていく。薄茶の服は、まるで弥生時代のような印象を受ける。
 白い世界が、徐々に視界が開けていく。色が入っていく。まるで映画の特殊効果みたいに。白い世界、無機質な世界から、息ずく世界に。
 足元が、土の地面に草が生え、あちこちに木製の家が立っている。なんというか、昔話に出てくるような集落だ。
 子供達の姿を目で追うと、丈の長い白い装束を身に纏った黒髪の女性が。
「みこさまっ、あげるっ」
 子供達は手にした野花を女性に差し出している。
「まあ、ありがとう。まさか、村の外にいってないわよね?」
 女性がにこやかに受けとるが、聞くと分かりやすく動揺する子供達。
「まっ、外に出たのねっ。なんて危ない事を」
 優しく叱責する女性。
「だってえ」
 と、ぶー、となる子供達。
「何もなかったからいいけど、次にしたら一晩、蔵にいれますからね」
「「「はーいっ」」」
「はい、約束よ。さ、行きなさい」
 子供達が再び走る。
 見送るその女性の胸元には、神秘の紫水晶が光っている。
「神子様っ、神子様っ」
 そこへ、若い男性が駈けてくる。
「神子様っ、○○様がお帰りですっ。大物を仕留めておられますっ」
「直ぐに行きます」
 これって何? 何の光景?
 今ここで関連するとした、ヤマタノオロチと一緒にこつらに来た人達との記憶? つまり、ずっと昔の光景見てるの?
 あの女性が神子で、あの神秘の紫水晶(ミスティック・アメジスト)が本物なら、まさか。
 神子様と呼ばれた黒髪の女性は、全く私には気がつかず。隣を通りすぎていく。私は反射的に女性の後ろ姿を追う。
 この先には、歓声を上げる村人達、私と同じ背丈があるような猪だ。猪は事切れている。その側にいるのは、映画で見た。アナ○ンダの様な大型の白蛇だった。
しおりを挟む
感想 673

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。

しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹 そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる もう限界がきた私はあることを決心するのだった

「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」

ねむたん
恋愛
侯爵家の令嬢リリエット・クラウゼヴィッツは、伯爵家の嫡男クラウディオ・ヴェステンベルクと婚約する。しかし、クラウディオは婚約に反発し、彼女に冷淡な態度を取り続ける。 学園に入学しても、彼は周囲とはそつなく交流しながら、リリエットにだけは冷たいままだった。そんな折、クラウディオの妹セシルの誘いで茶会に参加し、そこで新たな交流を楽しむ。そして、ある子爵子息が立ち上げた商会の服をまとい、いつもとは違う姿で社交界に出席することになる。 その夜会でクラウディオは彼女を別人と勘違いし、初めて優しく接する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。