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白夜③

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 見送って。
 私は素早くエリクサーを一気飲み。
「ユイさんっ、どうしましたっ」
 ホークさんがびっくりしている。
 私はもう一度、祈りを。神への祈りを発動する。そうだ、私は戦闘では全く役に立たないが、これなら出来る。
「神様、イシスを、アレスを、ルージュを、シヴァを守ってください」
 回復した魔力がごっそり抜かれる。
 レベル上げてて良かった。私の魔力保有量は、ビアンカとルージュを助けた時から、格段に増えている。それに本日は効果抜群のはず。
 神様が見守ってくれているのだから。
 窓の外で、イシス達が既に近くにいるのに、ヤマタノオロチはピクリともしない。アルコールが効いているんや。
 神への祈り、第二弾発動後。
『我は魔の森の守護神、フォレスト『ガーディアン』ウルフ』
 低いアレスの声が響き渡る。いつもと感じが違う。
『あれは、アレスが使う戦闘モードの中でも最強なのです』
 窓から見ていたら、ビアンカが説明してくれる。
『雷雲よ、我の言葉に従いここに来たりて、天空を埋め尽し、地を這うすべてを砕け』
 アレスの白い毛並みに二色のラインが浮かび上がる、二色と言って緑だが、薄い緑と濃い緑だ。二色なんて初めて見た。複雑に、それでも繊細に絡む様に浮かび上がっている。
『母様でも、イシスでも成し得なかったのです。複合型戦闘モード』
「複合型?」
『風と雷なのです』
『戦闘モード 風雷帝(アヴェルス・エンペラー)』
 アレスの周りの空気がビリビリと鳴るのが、こちらにまで響く。
 ルージュとシヴァが続く。ルージュは火炎姫火炎(フレアジャンヌ)。いつもより気合い入ってる。浮かぶ赤い薔薇の花びらが分厚い。そしてシヴァは。
『我は牙持ちものの王、アーマーキングウルフ』
 ビアンカが通訳してくれる。
『舞い上がれ炎よ、敵を灰塵にする吐息を、今こそ我に与えよ』
 シヴァの戦闘モードをしっかり見るのは初めてや。シヴァの白い毛並みに、赤い、いやそんな生易しい色やない。紅蓮や。
『滾れ、我が愛の名の元に』
 シヴァッ、格好いいっ。
『戦闘モード 紅蓮武者(エリクリスィ・ヴォルフ)』
 白い毛並みに紅蓮の炎が巻き付き、まるで甲冑のようになる。
 凄かっ、窓越しでも、熱気が伝わりそうやっ。
 あ、イシスが一歩前に出る。
 相変わらず雄大に構えている。それを嫌みに感じないのは、イシスが強者として上に立つだけの力と、そして風格を備えているから。
『私ハ、大空ノ覇者、エンペラーグリフォン』
 イシスの戦闘モードや、きっと風乙女(シルフィリア)ではないはず。
『アレスのあの戦闘モードですら抑える、イシスの最強の戦闘モードなのです』
 イシスの身体に浮かぶのは、神々しい光のライン。
『光ヨ、我ノ歌ヲ輝カセヨ。我ハ願イヲ奉ル。神ノ御前二祈リヲ届ケルタメ、今ココデ高ラカニ謳オウ』
 くわっ、イシス、眩しっ。
『戦闘モード 聖光の歌姫(サンクトゥス・ディーヴァ)』
 イシス、眩しっ。
 眩しい中で、イシスで翼を広げた、次の瞬間、イシスが消えた。
 えっ?
 
 ザグンッ

 ヤマタノオロチの首の1つが、弾き飛んだ。
 あの何メートルもある極太の首がっ。その遥か彼方で、光の軌跡を描きながら、戦闘機真っ青のイシスが滑空している。
『ふんっ、させないわよっ』
 既に肉が盛り上がり始めた断面に、ルージュが容赦ない火炎放射を繰り出す。
 くわっ、炎も眩しっ。
 
 ザグンッ

 再び、ヤマタノオロチの首が弾けるように、変な方向に向く。皮一枚で繋がった首は、目をかっぴらき、のたうち回る。
 そののたうち回る向こうで、ヤマタノオロチの上を駆け抜けるのはアレスだ。ち、みたいな顔。多分、イシスみたいに首をちょん、できなかったからかな? 十分凄かよっ。
 素早くフォローに入るのはシヴァだ。皮一枚で繋がっていたが、くっつけようと肉が盛り上がって来ている。予想以上のスピードで。
「ガウッ」
 シヴァがその盛り上がりを見せる所に飛び込んでいき、爆発音。そう、爆発音。赤い炎が吹き出し、爆撃でもあったように、皮一枚で繋がっていた首が、ぷちり、とさようなら。
 ルーム内に歓声が上がる。
 私だって歓声を上げる。
 やっぱり凄かっ、うちのバトルジャンキー達は凄かっ。
 これなら、いけるっ。
 
 こうしてヤマタノオロチとイシス達の戦闘が口火を切った。
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