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白夜②

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 ご指摘ありがとうございます。



 メキメキメキッ
 バキバキバキバキッ

 生木が悲鳴を上げるような音を立て、黒岩のようなヤマタノオロチが蠢き出す。
 ヤマタノオロチは胴体は1つ、頭が八つ。その頭が絡み合うようになっていみたい。うっ、蛇が蠢くって、いややな。母なら卒倒しそうや。
『起きたのだっ』
 分かっとるよ。うきうきせんと。
 私達は固唾を飲んで窓の外を見つめる。
 確かに7メートルの桶が必要や。多分目だけでも、数メートルありそう。寝起きの瞬きしたのを見たが、輝くような黄金色だ。蛇でなければ、綺麗だとおもえるんだけどね。
 ヤマタノオロチは絡まっていま蔦や木を、その蠢きで落としながら、ゆっくりゆっくりその全容が明らかになる。

 これ、倒せるの?

 でかすぎやしやいかい?

 持ち上げた頭の先がルームの窓からは見えないくらいの位置なんですけど。

 口? ワゴン車丸飲みできそうなんですけど。
  
 ゴ○ラも真っ青なんですけど。

 ヤマタノオロチはゆっくりゆっくり蠢き、すべての頭が解き解れている。あら? 全部の頭、サイズ一緒やないね。
 パチパチと瞬く黄金の目が、眠そうに桶を見つけ、不思議そうに見ている。見ているって、どうして分かるかって事だけと、雰囲気だけね。
 あ、やっと、やっと、ヤマタノオロチが、桶に向かって頭を向ける。
 ああ、時間が止まりそうなくらい、ゆっくり流れているように感じているのは、私だけではないみたい。誰かが、ごくり、と生唾を飲み込む音が響く。皆さん、顔色が悪いが、私にはぴったりとビアンカとルージュが寄り添ってくれるから、比較的に安心感がある。
 しばらく、桶を見ていたが、頭の1つが、ペロリ、と舌で桶の中身を舐める。
 
 ピクリ

 全部の頭が、ピクリ。

 それからがあっという間だった。
 まるで電撃でも受けたような目が醒めて、桶に顔を突っ込んだ。
 頭を突っ込んだ拍子に、中身が溢れたが、お構い無しに飲み出した。
 上手くいきますように、上手くいきますように、上手くいきますように。
 私は無意識に祈る。
 最初は7メートルの桶が空になる。その時点で、異変は起きていた。八つの首がぐでんぐでんになりだした。
 もう効いてきたの? アルコールに弱いって、父の鑑定で出たけど。
 次に5メートル、3メートルの桶、ワイン樽をぐでんぐでんになりながら飲み干していく。ワイン樽はやはり丸飲みだ。
 予定量以上に準備してよかった。ぐでんぐでんだから、いくつかの桶と樽が頭にぶつかり破損し、中身が溢れてしまっていた。
 
 ドシンッ

 頭の1つがひっくり返る。そのまま舌をだらしなくペロリと出ている。ああ、酔っ払い。アレスみたいにガーガー言ってる感じや。

 ドシンッ

 1つ。

 ドシンッ

 1つ。

 ドシンッ

 1つ。
 次々に頭が倒れていく。
 本来であれば、アルコール中毒で致死量並みのアルコールが、あの巨体に入っていく。
 ワイン樽を飲み込んだが、口の端から溢れでている。飲み込みながら、倒れてしまい、特製カクテルが溢れ出している。
 順調やな。
 
 ドシンッ、ドシンッ

 後、1つ。
 ワイン樽を丸飲み、残っていた3メートルの桶をペロペロしていると、そのまま桶を破壊しながら倒れ伏す。
 いよいよや。
「よか?」
『行くのだっ』
『負ケル気ガシナイナ』
『さあ、行くわよ』
「わふわふっ」
 ギラギラしているっ。
 これだけギラギラしているから、心配ないだろうが、私はルームの扉を開ける時に、1つの祈りを。

 神様、どうか、イシスを、アレスを、ルージュを、シヴァを守ってください。

 ごっそり、魔力が抜かれる。
 そうや、今日は神様が見守ってくれてた。
『うん? 力が沸くのだっ』
『主ヨ、何カシタカ?』
『ユイ、無理してない?』
「わふーんっ」
「心配なかよ。神様が私のお願いきいてくれただけやけん。気をつけてよ」
『任せるのだ』
『フフッ、主ハ心配性ダナ』
『ユイ、任せて。今日はエビよ』
「わふわふ、わふーんっ」
 シヴァだけ、ビアンカに尻尾プリプリ。
『シヴァの火魔法を信じているのですよ』
「わふんっ」
 私は扉の向こうに見送った。
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