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フィールド型ダンジョン⑲

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 第八階層は寒い。温度もそうだけど、風が強いから体感温度はもっと低い。
 まずは保温効果の高い肌着、ババシャツね。それから薄手の保温効果のあるタイツ。これらはもへじ生活で以前手に入れていた。カシミアが入った薄手のセーターにワイバーンのアームウォーマー、その上に厚めのトレーナーを来てワイバーンのポンチョ。ワイバーンのレギンス。厚めの靴下にワイバーンのブーツ。薄手の手袋の上から滑り止めのある軍手。マスクは二重にして、ネックウォーマーにヘルメット。ホークさんも似たような感じだ。その上にいつもの餃子スタイルだ。
 第八階層にはアリス以外のバトルジャンキー達がいく事になる。アリスは仔達と若手達を連れて、ルーティのダンジョンに向かう。冒険者の皆さんも手分けして向かう。数人はルームに残り、シルフィ達とお留守番しながら、夕御飯の準備をしてくれる。
「姉ちゃん、気をつけてな」
「分かっとうよ。シルフィ達ば頼むね」
「ん」
 晃太がいつものように見送ってくれる。いつもと変わらずチュアンさんの肩を借りてノワールに騎乗する。
 しっかりホークさんがマントで包んでくれる。
 あー、安心感ー。
「ユイさん、お気をつけて」
「ありがとうございます。チュアンさん、後をお願いします」
「はい。ホーク、気をつけて」
「ああ、後を頼む」
 心配そうなエマちゃんとテオ君が、チュアンさんの向こうにいる。私は大丈夫だと、ヘルメット越しに笑顔で浮かべる。私はルームの扉を閉める。
「ホークさん、お願いします。ノワール、頼むね」
「お任せください」
「ぶひひんっ」
 ホークさんが手綱を握る。
『行くのだっ』
『はいはい。先走らないのですよ』
『ノワールのスピードに合わせなさい』
『マッタク、落チ着キノナイ』
「くうっ、くうっ」
 アレスが落ち着きなく尻尾ぷりぷり。ビアンカとルージュも嫌な感じがすると言っていたのに、アレスを諫めながらも、早く行きたいと顔に出ている。イシスは変わらず落ち着き、オシリスはイシスにぴったりだ。いつもと変わらない。それが私に心に余裕を持たせる。
「皆、頼むねっ」
 私の掛け声で、ぶひひん特許ノワールが発進。
 発進して、数分も経たずに、波しぶきが上がる。
 その上がる波しぶきの中に、なにやら無数の陰が。
『気持ち悪いわねっ』
『フンッ』
 ルージュとイシスが光のリンゴを次々に放つ。打ち付ける波に、光のリンゴが吸い込まれていき、弾き出されたのは、ナマコだ。あれだ、ケルンさんが言っていたルーベサンスュだっ。ひーっ、いっぱいーっ。光のリンゴが次々に逆方向に弾いてくれる。後で聞いたけど、このルーベサンスュは、対象に食らいつき、小さな牙から麻痺毒を徐々に注入。ゆっくり対象を麻痺させていき、食らいついたところから溶かしながら食べるんだって。いややなあ。毒は即効性はないが、やっかいなのは食らいつかれたのなら、火傷覚悟の熱を当てるが、強引に引き離す。引き離したら皮膚ごと持っていかれてしまう。聞いただけで痛かっ。
 打ち付けられた波の中に、何匹単位ではない、何十匹潜んでいる。くうっ、いっぱいやーっ。あんまり好きなフォルムではないーっ。
「ぶひひんっ」
 ノワールの嘶き。
 視線をずらすと、カサカサカサと動く船虫みたいなやつ。ひーっ、サイズサイズーッ。そして動き片っ。原付きバイクサイズが、カサカサ、カサカサやって来たっ。
『面倒なのだっ』
『鬱陶しいのですっ』
 アレスとビアンカが水の矢を、ガトリングの様に発射する。お見事、全部命中する。
 ノワールはどんなに波が来ようが、カサカサが来ようが全くぶれることなく進んでいく。頼もしいっ。
 次に来たのは、蜥蜴だけど、一瞬分からなかった。岩に擬態していたみたいで、わずかに動いた時に目がギョロ、と目が動いたので、なんとか気がついた。
『フンッ、ソレデ隠レテイルト思ッテイルノカッ』
 イシスが急降下。擬態していた蜥蜴を鉤爪で頭をつまみ、そのまま大回転。横にね。バッタバッタと擬態蜥蜴が弾き飛ばされていく。オシリスもイシスの真似っこしているが、やはり、夫婦連携がすばらしい。ある程度一ヶ所に追いやったところで、アレスの雷が降り注ぐ。

 ドガガガガガーンッ

 凄い音っ。
 やけどノワールは慣れているのか、全く動じずに駆け抜ける。
『主ヨッ、ソロソロシーサーペントガ出ルゾッ』
 私が無言で、ヘルメット越しにイシスに合図する。イシスに任せる、と。きちんと理解したイシスは翼を広げて高度を取り、シーサーペントの迎撃体制に入る。
 こうして、王冠内部、フィールド型ダンジョン最終階層が始まった。
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