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ランクアップ③
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その後、私とホークさん、ビアンカとルージュ、ロッシュさんは宿に戻る。ファングさんは馬車のチケット売場に直行。もちろんビアンカとルージュがしっかり警戒してくれている。ファングさんに不用意に近付く気配はなかった。
「あ、お帰りなさいユイさんっ」
宿の庭でシルフィ達を遊ばせていたエマちゃんがニコニコと手を振る。
「ただいま、アルスさん達は?」
「拾い物してくれてる」
ボス部屋で、ドロップ品拾いだね。
「そうね」
『ユイ、私もボス部屋行ってきていいのですか?』
『いいかしら?』
「ファングさん来るまで、どっちか残ってよ」
大丈夫だと思うけど、念のためにね。ルージュが残ってくれることに。
ルームの向こう、サブ・ドアから、ちゅどーん、ドカーン、景気のいい音が。花子の熱烈歓迎を受ける。よしよしもふもふ。ダイニングキッチンで作業していた母と話していると、ファングさんが急いだ様子で帰って来ていると、ルージュが。
私はホークさんと共に出迎える。
「ファングさん、お帰りなさい、チケット取れました?」
「ああ、明日の二番出発のやつがな」
良かった。時間は既に競売が始まっている時間。なら、そちらに集中しているね。
「後はアルスへの説明だな」
はぁ、とファングさん。
「それなら母がうまい具合に言ってくれて、アルスさん、カルーラに帰る気満々ですよ」
どうやら私達がギルドに行っている間に、母が言い感じにアルスさんを言い含めたみたい。ニンジンの皮を、ピーラーで剥いたアルスさんを、よいしょ、よいしょしながらね。
「おばちゃん、まだまだたくさん野菜切らないといけんのよねー、誰かお手伝いしてくれる人おらんかなー、鷹の目の皆さんは、優衣に着かんといかんしー、上手に皮ば向いてくれる人おらんかなー」
だってさ。そこにフリンダさんが便乗。
「アルスちゃん、ミズサワさんのお母さん困っていらっしゃるわ。いつも美味しいご飯作ってくださるお母さんのお手伝いをしない?」
「えっ、でも、ダンジョンは?」
「あー、誰か手伝ってくれんかなー。手伝ってくれたら、アップルパイも焼ける時間があるのにー」
それにアルスさんの耳がぴこぴこ。
アルスさんは、母のアップルパイが大好物。
「アルスちゃん、ファングが帰って来たら、お世話になってるミズサワさんのお母さんのお手伝いしたいって言ってみたら? カルーラには、帰らなくちゃだけど」
「ミズサワさんの母さんにはいつもお世話になってしね」
「そうだな。きっともっとたくさんあって、いまここにある以上の野菜を、奥さん一人で処理するのは大変だな」
リィマさんとガリストさんも乗ってきた。
「あー、誰か手伝ってくれんかなー」
フリンダさんが、もう一押し。
「アルスちゃん、ミズサワさんもお母さんを心配されているんじゃないかしら? お手伝いしたら、きっと安心されるんじゃないかしら? ファングが帰って来たら、ミズサワさんのお母さんのお手伝いのお話してみたら?」
「うんっ」
てな感じなかなり。母も母で。
「まあ、嬉かね、アルス君、手伝ってくれると。助かるー」
まだ決まってないけど、そんな風に母が言うと、何故かぱぁっ、とアルスさんのテンション上がった。
「ユイちゃんの母ちゃん、俺、いっぱい皮剥くっ」
だ、そうだ。
「そうなのか? 良かった、アルスがごねたらどうしようと思っていたが。テイマーさん、本当に助かる。カルーラに帰ったら、ケイコさんにこき使ってもらうよ」
ホッとした様子のファングさん。
話していると、アルスさんがリィマさん達に連れられてサブ・ドアから姿を表す。
「あっ、ファングだっ」
たたた、と走ってくるアルスさん。
「アルス、ちゃんと出来ていたか?」
「うんっ、あのね、ファング、俺、ユイちゃんの母ちゃんのお手伝いしたいっ」
必死に言い募る様なアルスさん。
「ダメ? ユイちゃんの母ちゃん、困ってる」
こてん。
「そうだな」
ふう、と息をつくファングさん。
「テイマーさんには世話になってるしな。俺達で出来ることをしような」
ファングさんはアルスさんの頭をくしゃ、とする。
「明日の早い馬車で、カルーラに行くぞ。早起き出来るな?」
「うんっ」
話が纏まる。
それからロッシュさんがメンバーを連れてやって来てくれて、バトルジャンキー達のちゅどーん、ドカーンに付き合ってくれた。ファングさん達は早速母の手伝いに入ってくれた。
「優衣達のために、野菜の皮、剥いてくれるかな? まずは、このじゃがいもの皮を剥いてね。おばちゃん、お鍋みらんといけんけん」
「うんっ」
アルスさんはフリンダさんと並んでじゃがいもの皮を、ピーラーで剥いてくれる。ファングさんとガリストさんは大量のキャベツだ。お好み焼きかな?
リィマさんは宝石類を鑑定してくれている。
私は魔境に向かい、シヴァや錆落としのお母さんウルフ、レベルアップを図るお父さんウルフの誘導をする。バタバタしていたら、晃太達が帰って来て、ケルンさんとフェリクスさんもパーティーメンバーを連れてやって来て、賑やかになる。あ、アレスとシヴァが相変わらず唸り合ってる。もう、見た人が見たら気絶するような恐ろしさがあるからやめて。
ふうっ、あ、もうおやつの時間やっ。
皆さん頑張ってくれてるし、休憩がてらお茶にしよ。銀の槌に、あ、定休日や。
なら、セレクトショップダリアから、と。
えーっと、素材拘りのジェラート、ご贈答用で有名なお店のクッキー、焼き菓子セット、地元の和菓子屋さんの和菓子色々セット、別の和菓子屋さんもチョイス、懐かしか、ここのお饅頭、よく患者さんから頂いたなあ。えーっと。あ、キャンディーみたいな包装された、カラフルなチョコレートのお菓子がある。仔達と若手達には、フルーツどら焼きと、スタンダードのどら焼きにしようかな。あ、このスムージーのセット、確かマデリーンさんがお気に入りだったはず。数は、えっと、間違っちゃった、40をクリアして。
『アイスなのですー』
『私はイチゴね』
『ピザヲ所望スル』
当人達はちょっと押しただけだろうけど、私は液晶に手をついてしまい、色んな包装紙に包まれたお菓子の箱が現れた。個数を間違って40と入力してしまっていたので、大量の箱が並んだ。
「あ、お帰りなさいユイさんっ」
宿の庭でシルフィ達を遊ばせていたエマちゃんがニコニコと手を振る。
「ただいま、アルスさん達は?」
「拾い物してくれてる」
ボス部屋で、ドロップ品拾いだね。
「そうね」
『ユイ、私もボス部屋行ってきていいのですか?』
『いいかしら?』
「ファングさん来るまで、どっちか残ってよ」
大丈夫だと思うけど、念のためにね。ルージュが残ってくれることに。
ルームの向こう、サブ・ドアから、ちゅどーん、ドカーン、景気のいい音が。花子の熱烈歓迎を受ける。よしよしもふもふ。ダイニングキッチンで作業していた母と話していると、ファングさんが急いだ様子で帰って来ていると、ルージュが。
私はホークさんと共に出迎える。
「ファングさん、お帰りなさい、チケット取れました?」
「ああ、明日の二番出発のやつがな」
良かった。時間は既に競売が始まっている時間。なら、そちらに集中しているね。
「後はアルスへの説明だな」
はぁ、とファングさん。
「それなら母がうまい具合に言ってくれて、アルスさん、カルーラに帰る気満々ですよ」
どうやら私達がギルドに行っている間に、母が言い感じにアルスさんを言い含めたみたい。ニンジンの皮を、ピーラーで剥いたアルスさんを、よいしょ、よいしょしながらね。
「おばちゃん、まだまだたくさん野菜切らないといけんのよねー、誰かお手伝いしてくれる人おらんかなー、鷹の目の皆さんは、優衣に着かんといかんしー、上手に皮ば向いてくれる人おらんかなー」
だってさ。そこにフリンダさんが便乗。
「アルスちゃん、ミズサワさんのお母さん困っていらっしゃるわ。いつも美味しいご飯作ってくださるお母さんのお手伝いをしない?」
「えっ、でも、ダンジョンは?」
「あー、誰か手伝ってくれんかなー。手伝ってくれたら、アップルパイも焼ける時間があるのにー」
それにアルスさんの耳がぴこぴこ。
アルスさんは、母のアップルパイが大好物。
「アルスちゃん、ファングが帰って来たら、お世話になってるミズサワさんのお母さんのお手伝いしたいって言ってみたら? カルーラには、帰らなくちゃだけど」
「ミズサワさんの母さんにはいつもお世話になってしね」
「そうだな。きっともっとたくさんあって、いまここにある以上の野菜を、奥さん一人で処理するのは大変だな」
リィマさんとガリストさんも乗ってきた。
「あー、誰か手伝ってくれんかなー」
フリンダさんが、もう一押し。
「アルスちゃん、ミズサワさんもお母さんを心配されているんじゃないかしら? お手伝いしたら、きっと安心されるんじゃないかしら? ファングが帰って来たら、ミズサワさんのお母さんのお手伝いのお話してみたら?」
「うんっ」
てな感じなかなり。母も母で。
「まあ、嬉かね、アルス君、手伝ってくれると。助かるー」
まだ決まってないけど、そんな風に母が言うと、何故かぱぁっ、とアルスさんのテンション上がった。
「ユイちゃんの母ちゃん、俺、いっぱい皮剥くっ」
だ、そうだ。
「そうなのか? 良かった、アルスがごねたらどうしようと思っていたが。テイマーさん、本当に助かる。カルーラに帰ったら、ケイコさんにこき使ってもらうよ」
ホッとした様子のファングさん。
話していると、アルスさんがリィマさん達に連れられてサブ・ドアから姿を表す。
「あっ、ファングだっ」
たたた、と走ってくるアルスさん。
「アルス、ちゃんと出来ていたか?」
「うんっ、あのね、ファング、俺、ユイちゃんの母ちゃんのお手伝いしたいっ」
必死に言い募る様なアルスさん。
「ダメ? ユイちゃんの母ちゃん、困ってる」
こてん。
「そうだな」
ふう、と息をつくファングさん。
「テイマーさんには世話になってるしな。俺達で出来ることをしような」
ファングさんはアルスさんの頭をくしゃ、とする。
「明日の早い馬車で、カルーラに行くぞ。早起き出来るな?」
「うんっ」
話が纏まる。
それからロッシュさんがメンバーを連れてやって来てくれて、バトルジャンキー達のちゅどーん、ドカーンに付き合ってくれた。ファングさん達は早速母の手伝いに入ってくれた。
「優衣達のために、野菜の皮、剥いてくれるかな? まずは、このじゃがいもの皮を剥いてね。おばちゃん、お鍋みらんといけんけん」
「うんっ」
アルスさんはフリンダさんと並んでじゃがいもの皮を、ピーラーで剥いてくれる。ファングさんとガリストさんは大量のキャベツだ。お好み焼きかな?
リィマさんは宝石類を鑑定してくれている。
私は魔境に向かい、シヴァや錆落としのお母さんウルフ、レベルアップを図るお父さんウルフの誘導をする。バタバタしていたら、晃太達が帰って来て、ケルンさんとフェリクスさんもパーティーメンバーを連れてやって来て、賑やかになる。あ、アレスとシヴァが相変わらず唸り合ってる。もう、見た人が見たら気絶するような恐ろしさがあるからやめて。
ふうっ、あ、もうおやつの時間やっ。
皆さん頑張ってくれてるし、休憩がてらお茶にしよ。銀の槌に、あ、定休日や。
なら、セレクトショップダリアから、と。
えーっと、素材拘りのジェラート、ご贈答用で有名なお店のクッキー、焼き菓子セット、地元の和菓子屋さんの和菓子色々セット、別の和菓子屋さんもチョイス、懐かしか、ここのお饅頭、よく患者さんから頂いたなあ。えーっと。あ、キャンディーみたいな包装された、カラフルなチョコレートのお菓子がある。仔達と若手達には、フルーツどら焼きと、スタンダードのどら焼きにしようかな。あ、このスムージーのセット、確かマデリーンさんがお気に入りだったはず。数は、えっと、間違っちゃった、40をクリアして。
『アイスなのですー』
『私はイチゴね』
『ピザヲ所望スル』
当人達はちょっと押しただけだろうけど、私は液晶に手をついてしまい、色んな包装紙に包まれたお菓子の箱が現れた。個数を間違って40と入力してしまっていたので、大量の箱が並んだ。
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