もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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開花④

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「晃太、大丈夫な?」
「………………わい、もう、ノワールいやや」
 撃沈している晃太。
 ルーティのダンジョン初日、ノワールに初めて騎乗した晃太がダメージを負った。デリケートな問題なので、当たらんでおこう。
「なんでホークさんは無事なんやっ」
 変なクレームを出す晃太。ホークさんは困った顔してノワールのブラッシングしている。
 色々ダメージ食らった晃太だけど、やはりノワールで広大にあちこち目視出来たのが、マッピングに効果があったみたい。その日から、夜中、自室に籠って作図をしている。
 晃太は次の日からノワールではなく、オシリスに変更して、上空からフィールドを確認している。細かい所は、徒歩で移動して近くで確認している。ある程度の情報を得たらルームで作図を集中している。
 時折薬草採取グループが情報を持ってくるし、フィールド爆走組からも情報が来るしね。
「きゅうん、きゅうん」
 ウインディが私の足元に走ってくる。よしよし、もふもふ。アリスのスパルタ指導で半泣きだ。以前ルージュが使った黒いバスケットボールでの訓練だ。シルフィはわんわん言って黒いバスケットボールと戯れている。姉妹でこうも違うかね。イフリィとノームは黒いバスケットボールに遊ばれている。ほのぼの。
「わふんっ」
 アリスがウインディを連れていく。
「きゅーんっ、きゅーんっ」
 頑張ってウインディ。
 さ、私は魔境のシヴァ達の誘導だね。錆び落としのお母さんウルフ達も待っているしね。
 ルームを開けようとしたら、冒険者の皆さんが訓練していた所から悲鳴があがる。
「うわああぁぁぁっ」
 ハジェル君の悲鳴だ。
 えっ、どうしたんやろっ。
 慌てて向かうと、ハジェル君が両手を押さえて倒れている。
「えっ、ハジェル君っ」
 本当にどうしたんやろっ。
 ロッシュさん達も駆けつけている。ヒーラーであるチュアンさんも駆け寄ってる。私も駆け寄ると、ハジェル君は両手に切り傷が出来ている。ざっくり斬れてるっ。
「ど、どうしたんっ」
「い、痛いっす…………」
 見ただけで痛そうなのは分かる。チュアンさんが治療を初めて、フリンダさんも加わる。すー、と切り傷が塞がっていく。
「ううっ、痛いっす」
 切り傷が塞がったが、急速にふさぐと痛みが残るって言ってた。
「時期に痛みが引くから、しばらく待て」
「他にキズはない?」
 チュアンさんとフリンダさんが確認している。
「はいっす…………」
「ハジェル語尾、ありがとうございます」
 ロッシュさんがチュアンさんとフリンダさんにお礼を言ってる。
「ハジェル君どうしたん?」
 私は腕を庇うようにしていたハジェル君に聞く。
「いつもみたいに、魔力を流しながら弓を引いていたら、急に魔力が流れて、噴き出した感じで」
 ハジェル君が座り直す。
「多分、コントロール出来なくって、気がついたら。こうなっていたっす」
「なんでケガする程の魔力が出たかね?」
「さあ? ああ、痛いっす」
 腕を庇うハジェル君。心配そうに転がった弓を拾うのはマアデン君だ。
「君、もしかしたら、属性魔法が発現したんじゃないか?」
 話を聞いていたエリアンさんが思案顔だ。
「え? 属性? でも、俺、調べてもらった時はなかったっす」
「たまにいるんですよ。無属性魔法の発現と同時に属性魔法を発現する事がね。特にエルフの血筋を引く混血児は、その発現率が高い。痛みが引いたらケルン殿に、調べて貰った方がいいでしょう」
 エリアンさん曰く、純粋な人族なら千人に一人。だけど、エルフや魔族の血筋があると、その可能性が百人に二、三人の割引で出るって。フェリクスさんもそのパターンだったみたい。もともと闇属性があったが、無属性を発現させた時に、土属性も同時に発現したって。ロッシュさんが真剣にエリアンさんの話を聞いてる。ケルンさんは薬草採取部隊として、出てるし。
「ハジェル、立てるか?」
 シュタインさんも心配そうだ。ハジェル君もうんうん唸っている。どうしよう、アリスに呼びに言って貰おうかな?
「うーん、うーん」
 唸るハジェル君。
 大丈夫かな? エリクサーを取り出してみると。
「あれ?」
 と、すっとんきょうな声を上げるハジェル君。
「どうしたん、エリクサー飲む?」
「あ、大丈夫っす、なんか痛みがすーっと引いて、流石治療魔法っすね」
 と、笑顔を見せるハジェル君。痛みが引いたんや、良かった良かった。
 今度顔を見合わせるのはチュアンさんとフリンダさんだ。
「そんなに急激に引くわけないが」
「ええ、結構深いキズだったし」
 よく分からない様子の2人。
 治療魔法が効いただけやないんかね?
 エリアンさんが思案顔だ。
 
 ぱんっ、ぼんっ、ぼんっ、ぱんっ。

 次はなんやっ。
 弾けるような音が響く。
 振り返ると、黒いバスケットボールが次々に破裂している。
 なんや、なんや。
 シルフィがわんわん吠えると、黒いバスケットボールが真っ二つ。イフリィがわんわん吠えると、真っ赤な赤い炎が黒いバスケットボールを直撃。ノームがわんわん吠えると土の塊が黒いバスケットボールを直撃。
 ま、まさか、まさか。
「きゅうーんっ」
 逃げるウインディが情けない声を上げると、水の塊が黒いバスケットボールを直撃している。
 アリスが感慨無量の顔で、シルフィ達を見守っている。そうか、そろそろシルフィ達も生後一年かあ。兄妹揃って……………あ、土煙がっ。
 キキキキキィィィィィッ。
 ド派手なカーアクションばりの動きで急停車したのはアレスだ。
「げふふっ」
『娘よ、息子よっ、力が覚醒したのだなっ』
 げふふっ、げふふっ。
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