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連載

開花①

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 ご指摘ありがとうございます。


 バタバタの数日後。
 平行して、桶の製作作業、お酒やジュースの投入作業も行われる。
 フライパンの作成依頼も済んだ、シスター・アモルとの面会も無事に出来た。お元気そうで良かった。あの白狼の少年や他の子供達が心配だったが、おまかせしている立場なので、聞きにくかった。修道院で保護されている子供達の情報はそう簡単に聞き出せないものだ。しっかり守ってくれているんやろう。ただ、最後にシスター・アモルが「皆、元気ですよ」と小さく呟いてくれたので、ほっとした。本当に聞こえるかどうかの小さな声で。
 良かった、本当に良かった。
 ホークさんはレディ・ロストークの様子を見に行った。私も行きたかったが、悪阻がきつく、一時危ない状況だった、初産のレディ・ロストークを変に刺激したくないしね。我慢我慢。ノワールも念のためにお留守番。
「ブヒ、ブヒヒヒン……………」
 出かけるホークさんの後ろ姿を、いつもに増して哀愁攻撃していた。
「安定していますね。お腹の子も順調の様です」
 良かった良かった。良かったねノワール。
 ノワールはブヒヒヒン、と嬉しそうだ。
『ユイ~、ダンジョンなのです~』
『アレスが鬱陶しいわ~』
「わふーん」
 でれでれとスキンシップしてくるアレスに辟易している様子のビアンカ、ルージュ、アリス。
「あんたらね、アレスを出汁にダンジョンでちゅどんドカンしたいだけやない?」
 そう、アレスは動いてないとダメなタイプ。よく仔達やシルフィ達と遊んでいるし、若手達とも走っている。中庭では、走り疲れた若手達が死んだように倒れている。もう、馴染みの光景や。なので、アレスはアレスであちこち走り回り、四六時中、ベタベタしてない。
『バレたのです』
『でも、身体がなまってしまうわ』
「わふん、わふーん」
 まあ、ルーティのダンジョン、そろそろ改修終わっているはず。行ってみようかね。私もたまに『主よ、ダンジョンダンジョン』と冷たい鼻先を押し付けられてるし。それに地図の作成依頼があれば、晃太の冒険者ランクを上げるチャンスや。出来れば、Dランクまで上げたいって。ケルンさんやフェリクスさんが口添えしましょうか、と言ってくれたが、最後の手段にしたいって。ケルンさんとフェリクスさんは優れた指導力がある冒険者としての経歴があるので、一言あれば、晃太のランクが上がるって。
「コウタ殿の潜在魔力量的には既にCランクは確実ですよ」
「ただ、実績がないだけですからね。支援魔法はなかなか評価が難しいですからね」
 今まで色んな依頼を捌いているが、全て私の名前てサインしている。晃太の純粋な実績は軍隊ダンジョンと冷蔵庫ダンジョンの作図、そして移動の際のアイテムボックスを使用した搬送だけ。それに支援魔法は、大器晩成で日の目をなかなか見れない魔法の為に、目に見えて直ぐに評価されにくいそうだ。
「ギルドで個人ではなく、複数人で組んで行う模擬戦があれば、スムーズですが」
 これはパーティーメンバーではなく、その場で参加した冒険者が数人で、団体戦を行う。臨機応変と言うか、判断力や適応能力を見るものだ。
 フェリクスさんが言うが、あまりオススメしません、と。
「コウタ殿の支援魔法は群を抜いています。それを実感したら欲しいメンバーですよ。未だにフリーならば、パーティーに勧誘されますよ。しかもあれだけのアイテムボックスもお持ちですし、私だって勧誘したいくらいですから」
 隣でケルンさんまでうんうん。あら、ファングさんとロッシュさんまで。
 あら、晃太が照れてる。
 そんなこんなで数日後。
 ケルンさん達の転移石の様子が変わった。元の色に戻った。父の鑑定ではピンクは15階の入口、青は12階の入口と変わらない感じだ。
 ギルドでルーティのダンジョンの様子を聞くと、やっと改修が終わったそうだ。
 私がルーティのダンジョンに向かう事を伝えると、向こうのギルドに連絡してくれるって、ありがたい。
 両親と花はカルーラに残ることになる。念のため、パーティーハウスの奥の寝室に、サブ・ドアを登録する。
 ルーティのダンジョンにしばらく籠る予定なので、カルーラに残る両親と花の為に、大量の買い物は済んだし。
 今回は、私達を含め、山風、金の虎、蒼の麓、ラスチァーニエと大所帯で挑む。私には、ルームもあるしね。問題はルーティのダンジョンがどんなふうに改修されたか、だけどね。長命の冒険者の皆さん曰く、数日以内で改修されたので、そこまで大きく変わらないでしょうと。ダンジョンの中が大きく様変わりするなら、数ヶ月かけて改修するって。クラインのラシーヌダンジョンと、シーラにあるスフィーダと言うダンジョンがそんな風に改修された歴史がある。ラシーヌは色んな薬草が取れる、ポーションダンジョンに比べたら葉っぱ系と言うより根っこが薬になるものが種類が豊富。勿論、色んな魔物もでるので、挑むにしても順番待ちだし、冒険者ランクが低いと入れない。スフィーダダンジョンは、元は住人の避難場所くらいのものが、100年前にいきなり一年の改修。その後三階層から一気に十二まで階層が増えた、ある程度の薬草も採れる、食べられる魔物もでるので中堅の冒険者が挑むダンジョンになっている。色んなダンジョンあるんやなあ。
「うーん」
 と、晃太が以前手に入れたルーティのダンジョンの地図を広げる。
「どうしたん?」
「いやな、ルーティのダンジョン広かろ? なんかもっと効率的に出来んかなって」
「歩くと、広いもんね……………ノワール、乗ったら?」
「はあ?」
「ほら、ノワール乗ったら歩かんでよかやん。危ない所も軽々よ」
「あ、そうやなあ、考えるよ」
 うーん、と悩んでいる。
『ユイ、ユイ、行くのです』
『早く行きましょう』
『主ヨ、行コウゾ』
『主よ、ダンジョンなのだ』
「くぅっ、くぅっ」
「わふんっ」
「ブヒヒヒーン」
 仔達も大合唱だ。
 はいはい、かわいかね。
「気を着けるんよ」
 両親と花に見送られて、ぶひひん特急ノワールが発進した。
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