上 下
629 / 845
連載

カルーラで合流③

しおりを挟む
 ご指摘ありがとうございます。



 明日はカルーラに到着する。
 中庭では、桶に焼酎とジュースの投入作業が順調に進んでいる。私とホークさんは馭者台に座っているので、晃太をはじめ、残りのメンバーがやってくれている。脚立に上り、ペットボトルの横にナイフを入れてドバドバ一気に入れている。入れる量が多いからね。ケガだけはしないようにお願いした。
「ユイさん、今日はここまでにしましょう。明日の昼前にはカルーラに到着します」
「はい」
 ノワールはホークさんの言うことはよく聞く。ゆっくり停車。
「ビアンカ、ルージュ、近くに他に誰もおらんかね?」
『いないのですね』
『そうね』
 よし、いいかな。
 ホークさんがまず降りて、私は手を借りて降りる。ふう、流石に日が落ちると肌寒い。
『ねえね、ヒスイ、お腹減った』
『ルリも~』
『クリスも~』
『我はボス部屋~』
「アレス」
『あ、はいなのだ。ごめんなさいなのだ』
 もう。
 暇さえあれば、サブ・ドアに繋がるウサギ部屋に行ってるやん。朝なんて、起きて直ぐにちゅどん、ドカン。朝ごはん終わってちゅどん、ドカン。出発準備が終わった頃にちゅどん、ドカン。お昼休みでもルーム入って直ぐにちゅどん、ドカン。お昼ごはん終わってちゅどん、ドカン。でもって夕ごはんの前にちゅどん、ドカン。夕ごはん終わってちゅどん、ドカン。寝る前までにちゅどん、ドカン。勘弁して欲しい。確かに若手達や魔境のシヴァやお母さんウルフ、お父さんウルフ、補佐ウルフ達のレベルアップもあるけど、大変なのよ。最近なんて、常に移動の生活なので、ルーム内でサブ・ドアを開けっ放しにして、魔境から馴れたシヴァ達がチョロチョロやってくる。で、ウサギ部屋に挑んでいる。この度、ビービー鳴るけどね。ルーム内に両親と晃太がいる時だけよ、と約束したら、きちんと守っている。帰り間際、母がおやつまであげるので、順番待ちして待ってるみたい。
「さあ。入ってー」
 イシスグリフォン飛行部隊も降りてきた。たまーに、何かしらぶら下げて来るけど、今日はない。若手達はオフィーリアを先頭に二列で進んでいるのでそのままストップ。
 ルームを開けて入り、私は従魔の足拭きをタップ。ノワールはホークさんが誘導してくれる。花がダイニングキッチンから出てきて、ぽちゃぽちゃボディでお出迎えしてくれる。あはははん、かわいか、ぽちゃぽちゃ。ローリングする花を撫でていると、肩をちょい、と押される。ビアンカとルージュだ。
『ねえ、ユイ、アレスではないのですが、おもいっきり動きたいのです』
『そうね。たまに意識飛ぶくらい戦いたいわ』
 きゅるん。
 いや、内容が物騒なんやけど。
 最近、ビアンカやルージュは仔達や若手達を優先している。基本的に援護や指導ね。アレスは若手達にはお構い無しにボス部屋突っ込んでいる。
『『ユイ~』』
 きゅるん。きゅるん。きゅるん。
 ビアンカとルージュのきゅるんは久しぶりやな。
「アレスと魔境ば走ったら?」
『『それは嫌』』
 あのね。
『主ヨ、私モ行キタイゾ、ピザヲ所望スル』
 イシスもずいっ、とやってくる。イシスはきゅるん、ではない、ぎゅるん、だけどね。
 まあ、いっか。私達の生活は、ビアンカやルージュ達のちゅどん、ドカンのおかげやし。
「分かった。晃太ば呼ぶかね」
 中庭の作業が丁度終わったみたい。わあ、ロッシュさん真っ赤だけど。
 にいに、と三姉妹が寄っていくので、晃太は口を尖らせてもふもふ。
「晃太、ごめんけど、ウサギ部屋に付き合ってやって」
「よかけど。ウサギのドロップ品とんでもない数なんやけど。さっき、ご褒美のやつまで出たんよ」
 当日七回ボス部屋挑んで出現率30%のやつね。
「付き合ってやって。何が出たん?」
「罠があるけん、そのままアイテムボックス。他にも罠付きの宝箱が4つあるんよ」
「なら、罠はアリスに解除してもらうけん。ボス部屋付き合ってやって」
「はあ、分かった」
 ビアンカとルージュの鼻息が首にかかって仕方ない。イシスの視線が突き刺さる。
 晃太はため息付きながら、サブ・ドアへ。ビアンカとルージュが晃太にキャッキャウフフと張り付いている。アレスはボス部屋に行きたそうだが、ビアンカとルージュ、イシスに睨まれてすごすごと下がる。それで大人しくしているわけがない。仔達と若手達、そしてオシリスとノワールを引き連れて、サブ・ドアの向こうに広がる18階のフィールドに駆け出していく。あるだけのマジックバッグを首から下げておく。勿体ないしね。この階層で出る猪のお肉は角煮すると美味しいんだよね。
「ご飯できたら帰って来てよ」
『分かったのだっ。続けっ、甥っ子、姪っ子よーっ』
 バーッ、とアレス達が飛び出していく。見送って、さ、夕ごはんの準備を、と。
 
 ちゅどん、ちゅどん、ちゅどーん。
 ドカン、ドカン、ドカカカカカーンッ。
 ちゅどん、ドカン、ちゅどーん、ドカカカカカーンッ。

 ウサギ部屋から早速いい音が響く。
 もうやってるの?
 晃太とドロップ品拾いに山風の皆さんが付き合ってくれるって。ありがたい。
「お母さん、私、宝箱チェックするけどよか?」
「よかよ。今日は鍋やしね。もうだいたい出来とるよ」
「ありがとう」
 さ、私はホークさんに付き添われて、中庭でアリスの宝箱チェックだ。父ものんびりやって来た。チュアンさん達は夕御飯の準備、シルフィ達のブラッシング。エドワルドさんとツヴァイクさんは中庭に見学できた。
 並んだ宝箱は5つ。
「アリス、お願いね」
「わふんっ」
 アリスは並べられた宝箱の罠解除に入った。
しおりを挟む
感想 661

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

無能と蔑まれた七男、前世は史上最強の魔法使いだった!?

青空一夏
ファンタジー
ケアニー辺境伯爵家の七男カイルは、生まれつき魔法を使えず、家族から蔑まれて育った。しかし、ある日彼の前世の記憶が蘇る――その正体は、かつて世界を支配した史上最強の大魔法使いアーサー。戸惑いながらも、カイルはアーサーの知識と力を身につけていき、次第に自らの道を切り拓く。 魔法を操れぬはずの少年が最強の魔法を駆使し、自分を信じてくれる商店街の仲間のために立ち上げる。やがてそれは貴族社会すら揺るがす存在へと成長していくのだった。こちらは無自覚モテモテの最強青年になっていく、ケアニー辺境伯爵家の七男カイルの物語。 ※こちらは「異世界ファンタジー × ラブコメ」要素を兼ね備えた作品です。メインは「異世界ファンタジー」ですが、恋愛要素やコメディ要素も兼ねた「ラブコメ寄りの異世界ファンタジー」になっています。カイルは複数の女性にもてますが、主人公が最終的には選ぶのは一人の女性です。一夫多妻のようなハーレム系の結末ではありませんので、女性の方にも共感できる内容になっています。異世界ファンタジーで男性主人公なので男性向けとしましたが、男女関係なく楽しめる内容を心がけて書いていきたいです。よろしくお願いします。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

精霊王の愛し子

百合咲 桜凜
ファンタジー
家族からいないものとして扱われてきたリト。 魔法騎士団の副団長となりやっと居場所ができたと思ったら… この作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。