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お祝いからの⑨

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「う、売れたね…………」
「ですね……………」
 私とミゲル君がぐったり。
 話疲れだ。
 あれから突撃してきた御婦人達と、心暖まるトークをしながら、あれこれ説明。
 途中で、ホークさんまで引っ張り出した。たまたま、ミゲル君が手掛けたシャツを着ていたからね、同じデザインなので、こんな感じですー、と説明。
 男性用のシャツも無事に売れた。それから意外にも端切れコーナーが好評だった。
「ホークさんもお疲れ様です」
「役に立てて良かったです」
 さて、残りはずいぶん少なくなってる。この調子なら、明日は早く片付けかな。
 元気な母と、パーカーさん一家とご挨拶してパーティーハウスへ。
「くうんっ、くうんっ」
 花がわがままボディでお出迎えしてくれる。よしよし、もふもふ。シルフィ達もお出迎えに来てくれた、よしよし、もふもふ。
「おかえりー」
 父がのんびり出てきた。
「ただいま、晃太達は?」
「まだよ」
「そうな。あ、そうや、ねえ、お父さん」
 私は父と話ながらパーティーハウスへ。
 今日会った、ケルンさんの娘さん、シェリデアさんの話をする。
「ケルンさん、そんな大きな娘さんがおるんね」
「エルフ詐欺やからね。で、蛇部屋に挑むと思うんよ。ほら、自動補填矢筒の小型版あるやん」
「うん」
 ホークさんサイズで作った自動補填矢筒、やはり女性のリィマさん、小柄なハジェル君にはサイズが大きいとなり、改良されている。
 この自動補填矢筒は結構な強度もあるが、その分重みもある。小型化するに当たり、その強度問題やら矢の保有数やら、色々問題があり、最近新しく細身の自動補填矢筒が出来上がった。まだ、試作品だけどね。それからモニターをどうしようかって、話になった。もうすぐ私達はカルーラに向かうしね。マーファの騎士団にも、早速幾つか渡してある。ホークさん仕様の自動補填矢筒も大好評だ。後はこの小型化した矢筒の反応を見てからの販売になるって。
「あれば、幾つかクラインの騎士団にモニターばお願いできんかね? しばらくはマーファに滞在して、蛇部屋挑むやろうし」
「そうな。やっぱり、クラインの例の目の障害は被害がひどかな」
「みたいやね。ここまで騎士団派遣しているんやから」
 クラインの目に障害を及ぼす、小さなピンクの花。放つ毒は微量だけど、小さな子供、特に女の子が知らずに摘んで髪に差したり、花輪にしたりしてまともに吸って症状が出ている。吸った毒が微量なら、自力で解毒できるらしいけど。それ以外でも、胎児に悪影響が及ぶことが懸念されている。その小さなピンクの花の駆除を国を挙げて行っているそうだけど、追い付いてないみたい。しかも症状を訴えるのが、バラバラらしい。あそこの地域は落ち着いたら、そっちの地域に患者さんが大量発生。治療に当たって原因究明を探っていた人達までに症状が、少しずつ出ているそうだ。
「でも、いつ渡すん? マーファ出るのもうすぐやん」
「大丈夫」
 どやっ。
「ハルスフォン侯爵様に伝言お願いしたけん」
「侯爵様ば伝言板にしたん?」
「もちろん、タダやないよ」
 どやっ。
 イザベラ様が試着の最中に、ちょっとお話した。最初は大量にあるポーション類をって考えていたら、自動補填矢筒を見たクラインの騎士団の反応がすさまじかったそうで、モニターの提案をしては? ってアドバイス頂いた。エルフって種族的に体格華奢、なので新作の矢筒のモニターに適任かなって思ったりもした。ハルスフォン侯爵様には、カルーラでの用事が済んだら、一度マーファに帰って来てくださいって。
 つまり、ちゅどん、ドカンね。
 私達が、一回冷蔵庫ダンジョン行っただけでも、ユリアレーナの台所と呼ばれるマーファが回ります、ってリティアさんが言ってたし。
 それに、マーファは第二の故郷だしね、私は二つ返事。
「私達が、マーファを出る日も知っとるし、自動補填矢筒の話を聞いたクライン騎士団の食い付き方からして、直ぐに来るでしょうって」
「そうな」
「やから、新作の矢筒、準備してくれる?」
「ん、分かった」
『ユイ、お話終わったのですか? お腹減ったのです』
「あ、ごめんごめん、晃太達おそかね」
 待ったけど、結局、その日、晃太達は帰って来なかった。
 きっとボス部屋きゅるんやられたんやろうなあ。
 イシスやルージュが一緒やから大丈夫やろうけど。

 次の日。
 残った服も無事に売れた。
 完売御礼だ。
 よし、今日はアルコール解禁っ。
 イエーイ、とミゲル君。
 片付けしてから、パーカーさん達とご挨拶する。
「お姉ちゃん、いつ、マーファに帰って来るの?」
「来年かなぁ?」
「早く帰って来てね」
 かわいかなあ。ダイアナちゃんはビアンカにも、きゅうと抱き付く。
 私達がマーファを出発する日は、パーカーさんのお店営業日だからね。改めてご挨拶してパーティーハウスへ。
 流石に今日は晃太達は帰って来る。そのはず。まさか、出発直前なわけないよね。
『ユイ』
「なんね?」
『こちらを伺う気配があるのです、敵意はないのですが』
 あら、珍しい。
 私達は目立つからみられるのは仕方ない。特に私が気絶した姿を目撃され、数日パーティーハウスに籠っただけで死亡や重症説が出たからね。なので、あからさまに意図的にこちらを継続して見てこなければ、気にしない事にした。ちらほら見られるのはいつもの事だけど、ビアンカがこう注意を促すのは珍しい。
 す、と隣にホークさんが並ぶ。
 ちら、と私を見る。
「見られているそうです」
 小声で伝える。
『敵意はないのですが、数が多いのですね。監視している感じなのです。消すのです?』
「やめて、何を? 息の根?」
 なんや久しぶりのやり取りや。
「敵意ないなら、様子ば見て」
「ユイさん」
 後ろに着いたエドワルドさんが小さな声をかけてきた。
「もしかしたら、クラインの騎士団かも。おそらく、昨日の矢筒の件だと思います」
「私が帰り着くのを待ってる感じですか?」
「そうですね」
 エドワルドさん曰く、エルフは弓を扱う事が多い。目がいい種族なので、第一選択する戦術が弓らしい。しかもかなり高確率で弓と相性抜群の風属性魔法を持つ。なので、エルフ=弓術だって。そう言えば、ケルンさんもエリアンさんも弓を使ったなあ。
「弓士としたら、夢の矢筒ですからね」
 実際の弓士であるホークさんがぽつり。
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