もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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別行動⑨

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 シルフィ達のスライム部屋デビューが無事に済んで数日後。ケルンさん達がルーティのダンジョンを脱出したのを見送る。アルスさんだけ、残るとごねたけどね。ファングさんに怒られて、しゅんとしていた。母がお重にたっぷりお惣菜を詰めたらニコニコしていた。私はホークさんへの差し入れの準備をして、騎士団所有の牧場に向かう。明後日には帰って来るから、これが最後ね。エドワルドさん、エマちゃんとテオ君、オシリスが付いてきてくれた。ちなみに晃太はチュアンさんとマデリーンさんに付き添われて、ギルドにドロップ品を卸しに行ってる。
 無事に到着し、牧場の人が案内してくれる。放牧地ではノワールが颯爽と走っている。そして、ぴったり張り付いているのは、あの茶色のお母さん馬と、まだらちゃんだ。
 ホークさんが私に気がついて、こちらに走って来る。
「ユイさん」
「ホークさん、お疲れ様です。体調は?」
 ちょっぴり無精髭だけど、ホークさんの顔みると安心する。
「問題ありません」
 良かった。
「ノワールは?」
「順調ですね」
「やっぱり、あの2匹が候補ですか」
「はい。他の雌達は諦めましたね」
 洗濯物や空のわっぱのお弁当箱を受け取り、差し入れを渡す。ノワールにもね。人参やリンゴが入っている。
「助かります。ノワールがよく食べるし、あの2匹も欲しそうにしますので」
 何でも、ノワール用の人参やリンゴを、じーっと見つめて来たそうで、ちょっぴりあげているそうだ。ただ、あの茶色のお母さん馬とまだらちゃんだけね。もう少し持ってくれば良かったかな。
「明後日の夕方には帰りますので」
「はい。ご馳走にしますね。それまでノワールをお願いします」
 ホークさんが嬉しそうに笑う。うん、私もつられて笑顔が浮かんだ。それからホークさんはエドワルドさんと少しお話して、エマちゃんとテオ君とも言葉をかわす。
 私はその間に、ノワールに声をかけたが、来やしない。こっちを向いて、あ、来たの? みたいな顔してあっちに行っちゃった。おのれ、ダンジョン行きたい時だけ、哀愁攻撃するくせに。まあ、でも、散々馬車牽いてくれてるし、よかか。
「じゃあ、ホークさん、私達はこれで」
「はい、ユイさん。エマ、テオ、しっかりな」
「「はい」」
 私達はホークさんに見送られて、牧場を後にした。

「おおっ、立派な桶がっ」
 ツヴァイクさんの桶作業が順調。この短期間で、直径3メートルを越す桶が出来上がる。もちろん幾つか失敗して、廃材になり、最後は薪になっているけど。ちなみに他にお願いして昔ながらのおひつも作ってもらった。神様にカレーとかお供えする時に、皿に富士山みたいに山盛りじゃ風情もあったもんじゃないからね。
「いや、儂の腕ではない。ひたすらに樹の女神様の恩恵じゃ」
「それでも凄いですよ」
 出来立ての桶に飛び込むシルフィ達。好きね。
「それでな。ちと、材料が…………」
 ツヴァイクさんが言いにくそうだ。
「はい。ホークさんが帰って来たら、25階に行きましょう」
「頼みます」
 ホークさんが帰って来たら、ロッシュさんと話し合いだ。今後のダンジョンアタック計画だ。
 桶の為に、スタートを25階からにしてもらわないと。ギルドから依頼のあった羊や山羊のドロップは、日帰りダンジョンアタックで十分に手に入ったしね。
 予定としては25階メインで必要な木材が手に入ってから上層階に行こうかな。
 午後からマアデン君とハジェル君がやってくる。特に予定がない日、基本的にうちに来る。理由は魔力訓練だ。いずれはヤマタノオロチの討伐後に出る、モンスターボックスの掃討の為に、少しでも戦力強化するためにね。魔力訓練はマデリーンさんが請け負い、その後は別々に訓練だ。マアデン君はツヴァイクさんから槍術の指導を受け、ハジェル君はチュアンさんから体術や短剣術を学んでいる。そこにはエマちゃんやテオ君も加わっている。さ、私も頑張らんと。私はひたすら全身に魔力を流した。
 エドワルドさんは冒険者ギルドから、戦闘技術の指導員のお願いが来たけど、丁寧にお断りしていた。
「柄じゃないですし。フェリクスさんのように、的確にアドバイスする自信がありません」
 って。
 それでもいいから、と言われて、しぶしぶアドバイスなしで、ランクがC以上の戦闘職対象の模擬戦を受けてた。ドロップ品を卸しに行った晃太が、興味本意で覗いたら、訓練場にガタイのいい冒険者が大量に転がっていたそうだ。
 さ、今日はホークさんとノワールが帰って来る。
 お疲れ様しないとね。
 ホークさんが好きな麻婆豆腐とフィレ肉になめ茸大根添えて、あ、貝柱の酒蒸しもいるし。ノワールにはたっぷり野菜と果物。ビールもばっちり。しれっと中庭爆走していたアレスがお座りしている。ちゃっかりオシリスもね。
 もう、ちょっとよ。貝柱の酒蒸しを出すと、ぺろり、となくなる。
『足りないのだ~』
「くう~」
「ホークさんとノワールが帰って来てからよ」
『もうすぐ着くのだ~』
「え、そうなん?」
 あわててルームを出て、パーティーハウスを出る。エマちゃんもあわてて着いてきた。
 ホークさんは、あ、本当やっ。
 私の姿にびっくりしたホークさんだけど、ふわっ、と笑う。
 あ、なんや、すごく、お腹のそこから、安心感が沸き上がる。
 わざわざオダリスさんが付き添ってくれている。
 ノワールの手綱を引いて、10日ぶりにホークさんが帰って来た。差し入れに行ったりしていたけど、私はほっとする。
 ちょっぴり無精髭のホークさんが、ノワールと共に到着。
「お帰りなさい」
「只今、戻りました」
 やっぱり、ホークさんおらんとね。
 わざわざ付き添ってくれたオダリスさんにもご挨拶する。
 もし、うまく行けば、年末辺りにかわいか仔馬が生まれるって。まずは無事に妊娠しているかどうかだけど、春祭り過ぎくらいに判明するが、馬に関連した称号を持つホークさんなら、早くに分かるそうだ。それこそ春祭りくらいにね。レディ・ロストークの赤ちゃんもとても楽しみだけど、あの茶色のお母さん馬とまだらちゃんの赤ちゃんも楽しみになってきた。無事に生まれるように、神様にお祈りしよう。
「さ、ホークさん、今日と明日はゆっくりしてくださいね。先にお風呂に入ってください。ノワール、おかえり」
「はい、ユイさん」
「ぶひひんっ」
「リーダー、私、お洗濯する」
「ありがとうエマ」
 パーティーハウスの入り口で、テオ君が待っている。その足元から飛び出したのは花。わがままボディでホークさんの足元でローリングを披露する。
 うん、いつもの日常って感じや。
 ただ、ビアンカやルージュや仔達がいないのは寂しいけど。
 皆頑張っているんや、私もできることをしよう。
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