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依頼の品⑥

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  バリバリッ
 ドアが朝早くからバリバリッされる。
 私はのそっと起きて、ドアを開ける。
『ボス部屋』
 きゅるん、とアレスが鎮座している。
「…………………アレス君や」
『むふうっ』
 私はがつっ、とアレスの頬っぺたを掴む。
「あんたね、毎日毎日朝早くからボス部屋ボス部屋ってね。今、何時やと思っとん? 4時よ? 分かる? 日も登っとらんのよ?」
 冷蔵庫ダンジョンに入って毎日毎日、朝早くから起こされている。
「あんたはボス部屋でちゅどんどかんすればそれでよかろうけどね。私達はドロップ品拾って、お掃除して、魔境のウルフ達を誘導して、お母さんウルフと赤ちゃんウルフに食べさせてよ」
『むにゅうっ』
 私はアレスの頬っぺたをむにむにする。アレスの緑と青の目に、形相がおかしい私の顔が映ってる。
「ご飯の準備もあるんよ? やっとお風呂と思ったら、寝る前の運動だってちゅどんどかんしてよ、動き足りないって、ウサギ部屋に行ってよ、ちゅどんどかんしたら、あんた片付けもせんと、ガーガー寝てよ。私はね、それからお風呂してよ、米を仕込んでよ、何時に寝てると思っとるん? 下手したら日付変わっとるんよ」
 私は淡々と言いながら、アレスの頬っぺたを更に加速しながらむにむにする。
「私だけやないとよ? 晃太はドロップ品のリストの加筆、ホークさん達は装備品の手入れ。あんたみたいに単体で100匹越えのボス部屋入って平気な人はおらんとよ」
『むふうっ、むにゅうっ』
「皆、あんたみたいに体力おばけやないとっ、疲労困憊ったいっ」
 そう。体力勝負の本職である冒険者の皆さんにも、疲労が滲んでいる。口には絶対出さないけどね。
 むにぃっ、と掴んで離す。途端にぷるぷると頭を振るアレス。
『あ、主よ、怒っているのだ?』
「これが褒め称えていると解釈したら、すぐに強制送還やからね?」
 私のまじのトーンに、アレスは、ひっ。
『ご、ごめんなさいなのだっ、それだけはーっ』
 直ぐに服従の姿勢。
「アレス、今日はお休みにするからね? 分かった? どうしても、動きたいなら中庭ば走り」
『わ、分かったのだ……………』
 返事はしたが、最後の方が小さくなる。
「姉ちゃん」
 振り返るとパジャマ姿の晃太と、そして、ホークさんとチュアンさん。
「あ、ごめん、起こした?」
「よかけど。今日は休みにするん?」
「私はそうしようと思うけど。あんた、アレスに付き合う?」
 バタバタッ、アレスの尻尾が期待を込めて晃太の返答を待つ。
「いや、わいもさすがに休みたか」
 返事が早か。そして、ぺたっ、となるアレスの尻尾。
「ホークさん、よろしいですか?」
「俺達は構いませんが」
 よし、今日はゆっくりしよう。異世界の湯に浸かろう。
 しゅん、と従魔の部屋に戻って行くアレス。私達は7時近くまで二度寝。極楽。
 それから、それぞれのコテージで休んでいる皆さんの所に、エマちゃんとテオ君にお使いに行ってもらう。今日の予定に関するお話があります、と伝えてもらう。良かったら朝御飯ご馳走しますよ、と付け加えて。私は魔境に向かい、今日はボス部屋行けないよ、と言うと、順番だった補佐ウルフとお父さんウルフが、がーん、としていた。お詫びにスコーンとワッフルを食べさせると、上機嫌で食べてた。
 アリスとオシリス、ノワールのご飯も済み。アレスは私を伺うように、おずおずと食べてた。
 全員やって来た。朝御飯だから、まだ武装してない。
「こちらの都合で申し訳ないのですが、今日はお休みにしたいんです。よろしいですか?」
「「全然構いません」」
 と、エドワルドさんとロッシュさんの声が綺麗にハモる。
 良かった。
 後ろでマアデン君とハジェル君が、ほっとした顔。
 それから朝御飯だ。JOY-P(ジョイップ)のモーニングにした。それぞれ好きなメニューを聞いてタップ。店舗ならば飲み物はドリンクバーがあるけど、しかたない。ジュースやコーヒー、紅茶を出す。
 神様にもJOY-P(ジョイップ)のモーニングにして、と。ピッチャーには牛乳、オレンジジュースにして、と。リンゴとバナナを添えて、お祈り。チュアンさんも熱心にお祈りしてくれた。
 目を開けると、モーニングの皿、ピッチャーは空になっていた。
 さ、朝御飯にしようかね。
 私は席につく。
「さ、頂きましょう」
「「「「「頂きまーす」」」」」
 私はパンケーキモーニング。ナイフとフォークで頂きます。
 ふう、久しぶりのゆっくりした朝食、頂きました。
 しかしなあ。アレスがビアンカやルージュ以上にバトルジャンキーだとは思っていたけど、さらに実感。ビアンカとルージュ、魔境のウルフ達が、アレスのへいへいいくぜ行軍を嫌がる意味が分かった気がした。
 これを毎回やられたら、体力もたんわ。
 ちゃんとアレスに言い聞かせよう。
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