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布確保⑩

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「まあ、なんて美しい生地なんでしょう」
 美しいフェリアレーナ様から、美しい頂きましたー。
 あれからお茶とケーキを頂き、例の緑のシルク地とキラキラレース生地を、ハルスフォン侯爵家の皆様にも見ていただく。
 イザベラ様が目配せすると、フットマンさん達が素早くテーブル準備。
 晃太がアイテムボックスから、そのテーブルに出すと、イザベラ様とフェリアレーナ様のお顔が輝く。
 花がなにやら勘違いして、抱えられた母の腕から飛び降りて、お二人のもとに短い足で駆け寄る。
 こらこらっ。
 だけど、花を見てニコニコのお二人共に到着前に花が停車。わんわん。やめて。本当に。私は花とお二人の間に入り、慌てて母が再び花を抱える。
 へこへこ。
 改めてテーブルに並べられたシルク地とレース生地を観賞。
 うん。素敵な生地やなあ。
「鈴蘭の柄ですわね」
 イザベラ様が美魔女のため息。
「はい。こちらのレースの輝きも素晴らしいですわ。レティシア様のドレスにふさわしいですわ」
 フェリアレーナ様にも好評。良かった、良かった。
 ダストン様は父に名誉伯爵についてのお話再開。晃太とセザール様は一緒に聞いてる。
 しばらく観賞してから、テーブルに戻る。
 まだ、ダストン様と父の話が続いている。
 イザベラ様は母とソファーで談笑されている。花はイザベラ様の手をクンクンして納得したのか、大人しく母の膝に座り直している。
 私はフェリアレーナ様とご歓談。
「ミズサワ様。私も『ユイ様』とお呼びしてもよろしいですか?」
 おずおずと綺麗な声で聞いてきたので、私は脊髄反射で縦に頷く。
 こんなに綺麗な方に、ユイ様って……………なんや、ちょっと興奮。
 うふふ、と嬉しそうに微笑むフェリアレーナ様。あははん、美しか。
 新しくお茶を頂きながら、お話。
 話題は新しく加わったアレス達と、魔境に修行の為に籠っているビアンカやルージュ達だ。
「まあ。ウルフの坊や達の修行ですか」
「はい。ビアンカとルージュに言わせたら、私の元にいると休める場所があるから、極限状態を経験させたら一皮剥けるって。本来なら、そんな環境にいるはずの魔物なんですが。元気達は生後一ヶ月から、私達の所にいるので、立派な箱入りで心配で」
 大丈夫かな、元気達。去年の冬は、元気が具合悪くなって大変だったし。コハクは寒がりだし。三人娘も心配。ねえねと泣いてないかな? フェリアレーナ様、そうですか、と静かに同意してくれる。
「それから、新たに加わったのが、ビアンカの兄夫婦になりますアレスとアリス。子供は4匹で」
 私は窓の向こうのアレス達を紹介する。フェリアレーナ様と釣られてセザール様も視線を向ける。
 ゴウンッ
 懲りもせず、べたべたアレスに、再びアリスのパンチが飛ぶ。ウルフパンチ。いや、アーマークイーンウルフだから、クイーンパンチかな? 完全にアッパーみたいに入って、いい音がこちら室内まで響く。
 アレスはにまにましたまま、ひっくり返る。効いてないな、ありゃ。
 本当にやめて。恥ずかしか。間近で見ていたイザベラ様は、何事もなかったように、俯いている母に声をかけている。
 セザール様とフェリアレーナ様は、視線を戻して、見なかった風にしてくれた。
「アレスはフォレストガーディアンウルフで、アリスはアーマークイーンウルフです」
 と、私も見なかったふりしながら紹介した。

「あちらの黒髪の男性は?」
 談笑していると、セザール様がエドワルドさんの事が気になった様子で聞いてくる。エドワルドさんはウインディを撫でている。
「あの人は、エドワルドさんです。エドワルド・ウルガーさん」
「ウルガー、あのウルガー三兄弟の?」
「はい。そうです」
 驚いた顔のセザール様。
「首都の貴族間で流れた私の噂を相談したら、冬の間だけ、付き添ってくれることになりまして」
 なんや、空気が、ピシッ、と凍る。
「ユイ様。首都の貴族間で流れた噂とは、まさか」
「はい。知ってます。第二側室とか、相応の伴侶とか。そのせいで、王家の皆さん、ご高齢のミッシェル王太后様にまでご迷惑をおかけしたこと、申し訳なく思っています」
「そんな、ユイ様がお気になさる必要はありませんのよ」
 フェリアレーナ様がそう言ってくれるのが、嬉しい。
 それから、ちょっと沈黙が流れる。
「ユイ・ミズサワ殿」
 そんな沈黙を破ったのはダストン様だ。
「確かにそのような噂が流れたのは紛れもない事実。同じ爵位を持つものとして、お詫び申し上げます」
 一斉に頭を下げる侯爵家の皆様。いやいや、恐れ多いよっ。
「いえいえっ。そんなっ、気にしてませんしっ。エドワルドさんは念のためについてきてくれてるだけですから。サエキ様が戻って来られたら沈静化するでしょうしっ」
 わたわた、と言い訳する私。それでやっと顔を上げてくれた。ほっ。
 それから、名誉伯爵の説明が終わる。
 父が心配なのは、名誉伯爵だからと言って、何やら役職とかに必ず着かなくてはならないとかはないそうだ。現在父はフリーの為、もし、役職とかに着くと、身動きが取れなくなる事を心配していた。名誉の爵位は手続きしないと一代限りのもの。その期間はその人によりけりだけど。爵位をもらう理由となった仕事を続ける限り、それは続く。そして、もう引退します、子供に手続きします、としたら年金の支給が始まる。年金の額は基礎支給額は爵位によって変わる。そしてどれだけ納税したかね。期間は爵位に着いていた月の期間かける1.5
 年金の額は基礎支給額は爵位によって変わる。そしてどれだけ納税したかね。期間は爵位に着いていた月の期間かける1.5ヵ月。12ヵ月爵位に着いたら、18ヵ月貰える。もし、受ける当人、父に支給期間の間に何かあれば、私達家族に支給されるって。遺族年金やね。
 納税率も平民の時より上がるが、年金の額がいいから仕方ないね。父には色々な特許があるため、自動的に毎月そこそこの額が入っている。お世話になってるファベルさんによると、向こう30年くらいは安泰でしょうねって。父の作ったもの以上のものが出てこない限りは、ずっと特許料は入ってくる。
 現在、自動補填矢筒の次を模索している。矢の代わりにポーションとか無理かなって考えているみたい。ただ、薬効とかに影響ないかを、せっせと毎日チェックしている。ポーションって結構荷物になるからね。うちには許容量が不明な晃太のアイテムボックスがあるし、私にもサイズ小さいけどあるし。マジックバッグもあるし。何より、私達がケガする前に、ちゅどん、ドカンだ。それの話をすると、ダストン様、ぴくっ、としてた。自動補填矢筒の辺りから、ぴくっ、ぴくっ、としていたけどね。
「その自動補填矢筒やポーション補給容器の試作品に、是非、我がハルスフォン侯爵騎士団も噛ませて頂けませんか?」
 渋いおじさまダストン様が、食いついてきた。
「いいですよ」
 父はあっさり了承している。
 トントン拍子で話が進んでる。トントン拍子で終わり、ダストン様は私の方に向き直る。
「ユイ・ミズサワ殿」
「はい」
「おそらく、あの布が無事に王家に届けば、中央から貴女にジークフリード王太子殿下とファクル侯爵令嬢の披露宴への出席を求められるでしょう」
 あ、やっぱり来たっ。
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