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布確保①

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 次の日。
 午前中はのんびり。
 ディレックスにお買い物に行ったり、魔境のお母さんウルフと赤ちゃんウルフのお世話をしたり。鼻水君や補佐ウルフ達も元気そうだ。はいはい、おやつね。疑いもなくパクパク食べてる。
 ツヴァイクさんはせっせと作業している。アレスは心配したけど、大人しく見ている。
 鷹の目の皆さんは、エドワルドさんと戦闘訓練だ。手も足も出ない感じ。マデリーンさんがガチに魔法使って攻撃しているのに、片手で撃ち落としている。どうやったら火の矢を叩き落とせるんやろう? ホークさんは簡単に足を払われるし、チュアンさんは腕を捕まれたと思ったらひっくり返されてるし。ミゲル君はいつの間にか模擬刀取られてるし。エマちゃん、テオ君はまったく相手にされてない。悔しそうだけど、危ないから下がって欲しいと思うのは、私だけかな?
 一休みしていると、本日の移動販売車が。
 ホットドッグや。
 本日のお昼やね。
 メニューを見ると、プレーンとチョリソー、ベジタブル。トッピングがあり。それからドリンク。
 アレスとアリス、オシリスの分を確保。
 エドワルドさんに相手にされなかった、エマちゃんとテオ君は、ちょっぴり、ぷー。仕方ないやん。
「ほら、何にすると?」
 私が声をかけると、機嫌が直ったかな。
「私、プレーンでミートソース。オレンジジュース。あ、チーズもトッピングしたいっ」
「俺もそれっ」
「はいはい」
 私もそれにするかね。ドリンクはホットレモネードにしよう。
 晃太と父はチョリソーに定番ケチャップ、刻んだ玉ねぎトッピング。母はプレーンにミートソース。ホークさんはプレーンにサルサソース。チュアンさんとミゲル君はチョリソーにミートソース、刻んだ玉ねぎ。マデリーンさんはベジタブルにアボカド追加。ドリンクを好きに頼んでもらう。エドワルドさんはプレーンにサルサソースにアボカド追加。ツヴァイクさんはチョリソーにミートソース、チーズを追加。寒いなか、外ではふはふ言いながら食べるのもいいね。
 ちょっと足りないかな? でも、もう1つは多いし。よし、2つ目はアレスと半分個にした。
 それぞれ好きに追加で食べてる。
 ふう、満腹。しばらくしたら移動販売車がなくなっていた、品切れね。
 昼御飯の後は、ハルスフォン侯爵様の使者の方と、オダリスさんが来るので準備。身だしなみオッケーかな。失礼のないように、ワンピースにして、髪もいいかな。お茶もいいし。
「アレス、じっとしとってね」
『分かっているのだ。ふわあっ』
 凄か牙。アレスは興味なしと言わんばかりに、ソファーの近くでゴロリ。オシリスもゴロリ。アリスはシルフィ達と奥の部屋で寝ている。
『主よ、来たのだ』
 お尻を向けたアレスが教えてくれる。オシリスも片目を開けている。私はホークさんに視線を送り、一緒に玄関に。
 ドアを開けると、ちょうど到着した馬車と馬の一団。馬にはオダリスさんが騎乗している。
 タイミングよく出てきた私達にびっくりしている。
 馬車から出てきた身なりのよさそうな、中年男性が降りてきて、姿勢を正してぺこり。
「ミズサワ様。本日はハルスフォン侯爵家使者として参りました。第二執事、マテオと申します」
 ご丁寧にどうも。
 す、とマテオさんの隣に並んだのはオダリスさん。
「ミズサワ殿。この度は接見の許可を頂きありがとうございます。マーファ騎士団を代表して参りました、オダリスです」
「お久し振りです。どうぞ中へ」
 寒いしね。
 マテオさんとオダリスさんだけが中に。
 居間にご案内する。
 すうっと、頭を上げたオシリスにはびくっとされた。両親と晃太が立ち上がり、会釈する。ホークさん達冒険者はしっかり武装している。居間にはホークさん、チュアンさん。エドワルドさんとツヴァイクさんも待機してくれている。マデリーンさんはお茶の係。ミゲル君、エマちゃん、テオ君はアリス達の部屋の前で待機だ。
 マテオさんとオダリスさんがあらためてご挨拶する。
「お座り下さい」
 私達も着席する。
 まず話を切り出したのはマテオさんだ。
「この度、リュウタ・ミズサワ様の名誉伯爵の敍爵を、ハルスフォン侯爵邸で執り行われる運びになり」
 難しい言葉が並ぶが、簡単に纏めると、父の名誉伯爵をいただくのは、あの素敵なハルスフォン侯爵様のお家でって。日程は山風の皆さんと、冷蔵庫ダンジョンに行く前日だ。お迎えの人が来るけど、もちろん私達家族も一緒に。アレス達もね。鷹の目の皆さんも、ハルスフォン侯爵家の前まではいいって。本当は貴族街だから、奴隷は入れないのだけど、私の戦闘奴隷だから許してくれた。
 特に私達は問題ない。
 あ、いけない、例の布の事を匂わせないと。
「あのマテオさん」
「はい」
 えーっと、視線をさ迷わせる私に、マテオさんは不思議そう。
「また、冷蔵庫ダンジョンに、行くんです」
「はい」
「そしたら、また、綺麗な布が出たりするかもー」
 私の視線は明後日に向く。
「はい?」
 マテオさんは首を傾げる。
「フェリアレーナ様の花嫁衣装も素敵でしたー。また、寄贈したいなー、なんて」
「……………承知しました」
 良かった、繋がった。マテオさんはそれ以上は言わないけど、微笑みを浮かべている。晃太が大根と呟く。
 さ、次は。
「ミズサワ殿。話の場を受けて頂きありがとうございます」
「いえ、ノワールの事でしたね」
「はい。そうです。どうか騎士団所属の魔法馬のお相手を願えないでしょうか? もちろん相応の支払いもいたします」
 何やら必死な様子。
 ノワール、種馬扱いやな。それが優秀な魔法馬の雄らしいけど。なんや、うーん。ノワールにそれとなく聞いたら、当人は戸惑いのぶひひん。アレスに通訳お願いしたら、会って見ないと、分からないって。
「私としては、こちらの条件をのんでいただけたら」
「はい。もちろん」
「まずは、ノワールの意思の尊重。ノワールが嫌ならこの話はなしです」
「はい」
「私達は敍爵後に冷蔵庫ダンジョンに行きます。当然ノワールも連れていきます。もし、ノワールと雌を会わせるのならその後です」
「はい」
 オダリスさんはしっかり頷く。
「そして、お相手となる雌の魔法馬の条件は、出産経験があること」
 少し、オダリスさんが戸惑い。
「これはいずれ世間に知られると思いますが、ノワールは既に魔法馬ではありません。上位種に進化しています。もし、ノワールのお相手をするなら、魔法馬より上位種かもしくは出産経験がないと、母体となる雌がもちません」
 オダリスさんはなんとなく分かっていたのだろう、落ち着いている。だけど、話を聞いていたマテオさんが、驚いている。この大陸では魔法馬はいるけど、上位種はいない。魔法馬の上位種が産まれ育てていたジューバはもうない。あれから魔法馬以上の上位種は産まれていないからだ。
「そして、ノワールが雌馬のお相手をするなら、ホークさんの同行が条件です」
「彼の?」
 オダリスさんはホークさんをちらり。
「そうです。同行がダメなら、このお話はなしです」
 私ははっきり言い切る。
「分かりました。その条件でお願いします。冷蔵庫ダンジョンから、戻られたら、再び使者を出します」
 それでノワールが騎士団所有の牧場に向かう事になる。ノワールが上位種になっている事は、箝口令ではないが、出来れば話さないで欲しい事をお願いする。報酬の話も済み、これでノワールの件は終了。これでお話終了だけど、もう1つ。こちらからね。ルーティの鎧貫通ウサギのお肉や骨がたくさんあるし、ワイン樽もあるし。騎士団の食堂に寄付したいことを伝えると、喜んで貰えた。そのまま晃太が向かう事になる。
 ノワールを馬車に繋ぎ、ホークさんとミゲル君が同行。オシリスも付いていった。
 マテオさんとオダリスさん達を見送り、私は息を吐き出す。
 なんや、毎日忙しか。
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