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一時の⑨
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「はい、確認しました。合計で6612万5000になります」
ウルススさんが私のサインと魔力の済んだ書類を確認する。うん、色んな物が色々売れた。なんで蛇のお肉、需要があるんやろ? しりたくないけど、ウルススさんが教えてくれた。ルーティダンジョンの最下層に出る蛇の肉は、保存食にするには適しているそうだ。ふーん。私には、異世界への扉があるし、異世界のメニューあるし、晃太のアイテムボックス内には、それこそ大量のお肉がある。私達、水澤家は決して口にしないだろう。その晃太は倉庫だ。途中で通過予定の町への搬送品を受け取ってる。これが結構な数と額らしい。
「1%を鷹の目に」
「はい、承知しました」
手早くウルススさんが手続きしてくれた。
手続きしている中で、建設中の無料教室と給食センターの話を聞く。
「完成は来年の秋頃になります」
ニコニコと報告してくれる。今、アルブレンはこの2つの建設が話題みたいだ。仮の無料教室にも通う子供が少しだけど増えていると。やっぱり、1食が大きいみたい。パンとスープの提供だけど、中にはパンを隠して持ち帰る子がいる。理由は家にお腹を空かせた弟妹達の為に持ち帰る為。皆、それが分かっているから、多少は目をつむるって。優しい子がおるね。スープはどうしようもないから、それは食べているけど、足りないんやないかな。そうや、仮の調理場に、お肉寄付しよう。
「そんな子供が少なくなるように、社会を整えるのが、我等大人の使命ですからね」
ウルススさんがそう締めた。かっこいいなあ。
私は挨拶して、晃太と合流。馬車で待っていた両親とエドワルドさん、ツヴァイクさん、山風の皆さんに寄付の説明をすると、快く承諾してくれた。
仮の調理場は以前聞いていたのでスムーズに到着。ドアをこんこんノックする。
「はい、なんで、しょぉぉぉぉぉっ」
ドアを開けた男性の言葉の最後が悲鳴になる。私の後ろにいたビアンカとルージュにね。あははん、新鮮。いつもは、絶句してからのこそこそっ、だもんね。
「急にお訪ねしてすみません。テイマーのユイ・ミズサワです」
ぺこり。
「はっ、あのっ。わ、わたくゅし、せ、責任者の、ライスュと申します。どの様なご用件で?」
かみかみ、やけど、美味しそうな名前。
「はい。実はダンジョンからお肉をたくさん手にする事が出来まして。僅かですが、子供の給食の足しにでもしていただければと思いまして」
「それはっ、ありがとうございますっ」
あまり時間をかけるわけにもいかないので、晃太が指定されたテーブルにてきぱきお肉を出していく。てきぱき出しながらも、ライスュさんにリクエストがないか聞いてる。私は他のスタッフさん達にもご挨拶。どうもどうも。お忙しい時間にすみません。
晃太が出した例の鎧貫通のウサギの骨は、すぐにスープに投入されている。後は地下にある保存庫に入る分のお肉を寄付することができた。みっしりと保存庫にお肉と骨が詰め込まれる。
「たくさんありがとうございますっ」
「「「ありがとうございますっ」」」
ライスュさんとスタッフさん達に見送られて、私達はアルブレンを出発した。
こちらに来て三度目の年末。
我が家の年末はすき焼きとなっている。
お肉は冷蔵庫ダンジョンの21階のお肉。野菜や玉子、豆腐、白滝、冷凍うどん、お酒もいいかな。
カセットコンロに、大皿に野菜、お肉を盛る。
『油淋鶏がいいのです~』
『エビがいいわ~』
『ピザヲ所望スル』
「我が家の年末はすき焼きよ」
相変わらずやね。イシスさんや、あんた本当にぽちゃぽちゃグリフォンになるばい。そのイシスの後ろからぴょこんとオシリスが顔を出して、訴えの姿勢。
『我は旨い肉ならなんでもいいのだ~』
母よ~、とアレスがきゅるんと訴えてる。左右には元気とコハクもきゅるん。後ろからホルスもぴょこんと、顔を出してる。かわいか。
母が揚げ物をたくさん揚げている。年越しそば用の天麩羅ね。最後の貝柱を使ってのかき揚げがいい匂い。定番のエビ。ルージュの『エビ、エビ、エビ~』の掛け声。牛蒡のかき揚げ、豚のロース、クラーケン、温泉卵、ドラゴンのスジ煮。後はとろろ昆布に、セレクトショップダリアの高級さつまいもも天麩羅になる。
『ばあば~、甘い匂いがする~』
『るり、たべちゃい~』
『くりちゅも~、あまいの~』
三人娘も甘えた声で母におねだり。
「もう、かわいかね~」
と、さつまいもの天麩羅を1枚ずつ。三人娘は熱いので慎重。それをみて三人衆も慎重に。だけど、がっつくメンバー。
『あっついのですーっ』
『熱いわっ』
『熱イナッ』
『熱いのだーっ』
「ぐうーっ」
大人よね? 従魔の部屋で、大人しくしているアリスには、ふーふー、と。
「「「「くぅーんっ」」」」
シルフィ達まで来るけど、ダメよ、まだおっぱいでしょうもんっ。赤ちゃんなのにパワー半端ないっ。もふもふっ。
さつまいもの天麩羅は、無事にアリスがぱくり。
「美味しい?」
「わふんっ」
花の尻尾と比べ物にならない程にデカイ尻尾がパタパタ。お気に召して頂いたようやな。
そうこうしていると、すき焼きパーティーの時間に。しっかり従魔ズにはすき焼き丼にした。ビアンカとルージュの丼には、白滝がましましのましまし。
『美味しいのですっ』
『肉もいいわねっ』
ばれてない。
「テオ君、エマちゃん、皆さん呼んできて」
「「はーい」」
今回、マーファに帰るにあたり、コテージの使用料を頂いている。マーファまで約1ヶ月。朝と昼は自炊。もし、お昼で異世界のメニュー使用時は500頂き、夕御飯はこちらが提供。いつものパターンね。エドワルドさんとツヴァイクさんからは15万。山風からは30万頂いている。これはいずれ寄付に回すことにした。
ルーム内に、すき焼きの薫りが漂う。
カセットコンロの上のは、すぐに食べられるように作ってある。おかわり用のお肉や野菜もろもろオッケー、と。
「ユイさん、皆さんお連れしましたっ」
エマちゃんとテオ君が、皆さんをご案内。
「わあっ、めっちゃいい匂いっ」
「よ、涎出てきたっ」
うん、反応上々。
「うちの年末はすき焼きなんよ。さ、食べ方はね」
簡単にカセットコンロとすき焼きの説明。分からなかったら言ってもらうようにする。だって皆さん食べたそうだもん。
私はチューハイ、両親と晃太、ホークさん、ミゲル君はビール。マデリーンさんは赤ワイン、チュアンさんとテオ君、エマちゃんはお茶。
エドワルドさんとツヴァイクさん、山風成人組はビール。マアデン君とハジェル君はお茶ね。きゅーん、な視線が来るけど、ルーム内では、二十歳未満は未成年です。
「では、今年一年ありがとうございます。来年も色々お願いします」
父の音頭で。
「頂きます」
「「「「「「頂きまーすっ」」」」」」
まずは、21階のお肉。玉子を絡めて、ぱくり。うん、安定の美味しさ。うどんも味が染み込んで美味しい。ちゃんと、ずー、って文化は説明してますからね。
「うまっ。この甘味のあるスープが、野菜に染み込んでっ、あちっ、うまっ」
「かーっ、どれも絶品ーっ」
エドワルドさんとツヴァイクさんはビールグビグビ。
「はあ、本当にユイさん所の食事は美味しいなあ」
「あつっ、酒が進むし、いくらでも入るな」
しみじみとロッシュさんとラーヴさん。フォークが止まらない。
「とても美味しいです」
シュタインさんが、にこっ、と私に言ってくる。あ、いかん、白滝食べよ。
「お前、肉ばっか食うなよっ」
「モグモグ、野菜も食べてるっす」
「器から肉が溢れてるじゃんっ」
仲良し。
何だかんだと、皆さん和気藹々とすき焼きを楽しんだ。アルコールも進む。従魔の部屋から、ジー、と視線が来るけど、無視。
意外と肉の次に人気になったのは冷凍うどんだった。味が染み込んで美味しいからね。私もずー、と。
最後にドラゴンのお肉を出す。
「お一人様、2枚ですよー」
と、お皿に盛って出す。私の両の手のひらサイズだ。
「綺麗な肉ですね」
「そうじゃな。透き通る、赤い宝石のようじゃな」
ドラゴンですもん。綺麗な鰹の刺身のような、透明感のあるお肉。
「年末の特別仕様です」
教えたら食べないかもしれないから、内緒。
「な、何の肉ですか?」
アルコールで真っ赤になってるロッシュさん、なんとなく勘づいた様子だけど。
「もし当てたら、更に2枚追加しますよ~」
って、誤魔化す。
すき焼き鍋で軽く火を通す。鷹の目の皆さんも慣れた手つきで煮ている。
さて、私もぱくり。
あははははーん、上品な甘さー、溶けるー。2枚はせこかったかなあ。すぐに無くなったよ。
「わい、もうちょっと食べたか」
と、こちらも真っ赤な晃太がリクエスト。
「そうやね。もうちょっと出そうかね。お父さんとお母さんは?」
「お父さんももうちょっとかな」
「お母さんはお腹一杯や」
『私も食べたいのですー』
『私もー』
しれっと来たリクエスト。散々すき焼き丼食べたろうに。ちゃんとドラゴンのお肉だって入れてたのよ。
「ビアンカ、ルージュ、年越しそばあるけん、我慢し」
『『ぶー』』
仔達も。
「わふんっ」
「がるうっ」
『『『ぶー』』』
はいはい。かわいかね。
「皆さん、どうします?」
鷹の目の皆さんに確認。遠慮してたけど、おかわりね。来年もお世話になるからね。
「皆さん、分かりました?」
振り返ると、エドワルドさんとツヴァイクさんが、あー、みたいな感じ。分かったかな。反対に、山風は大にぎわいだ。
「う、旨いっ。や、柔らかいっ、旨いっ」
「溶けるみたいだっ、あ、甘味があるっ」
「……………な、無くなった……………」
「美味しいっ、なにこれ、美味しいっ」
「足りないっすーっ」
大興奮。
「ミズサワ殿、まさかと思いますが、ドラゴン、ですか?」
エドワルドさんがおずおずと聞いてくる。同意するようにツヴァイクさんがそっと挙手。大興奮の山風の皆さんが、ピタリと止まる。
「山風の皆さんは?」
ぴしっ、と手を上げたのはハジェル君。
「エドワルドさんと一緒っす」
はい、正解。
「あ、なら俺もっ」
マアデン君はも挙手。
残りの山風ビール組もおずおずと挙手。
「はい。皆さん正解ですよー。お肉ですよー」
「「わーいっ」」
と、素直に喜んだのは未成年2名。
悩む仕草のビール組。だけど、お肉出したら素直に食べてました。
すき焼きは、残ること無く綺麗に捌けました。
ウルススさんが私のサインと魔力の済んだ書類を確認する。うん、色んな物が色々売れた。なんで蛇のお肉、需要があるんやろ? しりたくないけど、ウルススさんが教えてくれた。ルーティダンジョンの最下層に出る蛇の肉は、保存食にするには適しているそうだ。ふーん。私には、異世界への扉があるし、異世界のメニューあるし、晃太のアイテムボックス内には、それこそ大量のお肉がある。私達、水澤家は決して口にしないだろう。その晃太は倉庫だ。途中で通過予定の町への搬送品を受け取ってる。これが結構な数と額らしい。
「1%を鷹の目に」
「はい、承知しました」
手早くウルススさんが手続きしてくれた。
手続きしている中で、建設中の無料教室と給食センターの話を聞く。
「完成は来年の秋頃になります」
ニコニコと報告してくれる。今、アルブレンはこの2つの建設が話題みたいだ。仮の無料教室にも通う子供が少しだけど増えていると。やっぱり、1食が大きいみたい。パンとスープの提供だけど、中にはパンを隠して持ち帰る子がいる。理由は家にお腹を空かせた弟妹達の為に持ち帰る為。皆、それが分かっているから、多少は目をつむるって。優しい子がおるね。スープはどうしようもないから、それは食べているけど、足りないんやないかな。そうや、仮の調理場に、お肉寄付しよう。
「そんな子供が少なくなるように、社会を整えるのが、我等大人の使命ですからね」
ウルススさんがそう締めた。かっこいいなあ。
私は挨拶して、晃太と合流。馬車で待っていた両親とエドワルドさん、ツヴァイクさん、山風の皆さんに寄付の説明をすると、快く承諾してくれた。
仮の調理場は以前聞いていたのでスムーズに到着。ドアをこんこんノックする。
「はい、なんで、しょぉぉぉぉぉっ」
ドアを開けた男性の言葉の最後が悲鳴になる。私の後ろにいたビアンカとルージュにね。あははん、新鮮。いつもは、絶句してからのこそこそっ、だもんね。
「急にお訪ねしてすみません。テイマーのユイ・ミズサワです」
ぺこり。
「はっ、あのっ。わ、わたくゅし、せ、責任者の、ライスュと申します。どの様なご用件で?」
かみかみ、やけど、美味しそうな名前。
「はい。実はダンジョンからお肉をたくさん手にする事が出来まして。僅かですが、子供の給食の足しにでもしていただければと思いまして」
「それはっ、ありがとうございますっ」
あまり時間をかけるわけにもいかないので、晃太が指定されたテーブルにてきぱきお肉を出していく。てきぱき出しながらも、ライスュさんにリクエストがないか聞いてる。私は他のスタッフさん達にもご挨拶。どうもどうも。お忙しい時間にすみません。
晃太が出した例の鎧貫通のウサギの骨は、すぐにスープに投入されている。後は地下にある保存庫に入る分のお肉を寄付することができた。みっしりと保存庫にお肉と骨が詰め込まれる。
「たくさんありがとうございますっ」
「「「ありがとうございますっ」」」
ライスュさんとスタッフさん達に見送られて、私達はアルブレンを出発した。
こちらに来て三度目の年末。
我が家の年末はすき焼きとなっている。
お肉は冷蔵庫ダンジョンの21階のお肉。野菜や玉子、豆腐、白滝、冷凍うどん、お酒もいいかな。
カセットコンロに、大皿に野菜、お肉を盛る。
『油淋鶏がいいのです~』
『エビがいいわ~』
『ピザヲ所望スル』
「我が家の年末はすき焼きよ」
相変わらずやね。イシスさんや、あんた本当にぽちゃぽちゃグリフォンになるばい。そのイシスの後ろからぴょこんとオシリスが顔を出して、訴えの姿勢。
『我は旨い肉ならなんでもいいのだ~』
母よ~、とアレスがきゅるんと訴えてる。左右には元気とコハクもきゅるん。後ろからホルスもぴょこんと、顔を出してる。かわいか。
母が揚げ物をたくさん揚げている。年越しそば用の天麩羅ね。最後の貝柱を使ってのかき揚げがいい匂い。定番のエビ。ルージュの『エビ、エビ、エビ~』の掛け声。牛蒡のかき揚げ、豚のロース、クラーケン、温泉卵、ドラゴンのスジ煮。後はとろろ昆布に、セレクトショップダリアの高級さつまいもも天麩羅になる。
『ばあば~、甘い匂いがする~』
『るり、たべちゃい~』
『くりちゅも~、あまいの~』
三人娘も甘えた声で母におねだり。
「もう、かわいかね~」
と、さつまいもの天麩羅を1枚ずつ。三人娘は熱いので慎重。それをみて三人衆も慎重に。だけど、がっつくメンバー。
『あっついのですーっ』
『熱いわっ』
『熱イナッ』
『熱いのだーっ』
「ぐうーっ」
大人よね? 従魔の部屋で、大人しくしているアリスには、ふーふー、と。
「「「「くぅーんっ」」」」
シルフィ達まで来るけど、ダメよ、まだおっぱいでしょうもんっ。赤ちゃんなのにパワー半端ないっ。もふもふっ。
さつまいもの天麩羅は、無事にアリスがぱくり。
「美味しい?」
「わふんっ」
花の尻尾と比べ物にならない程にデカイ尻尾がパタパタ。お気に召して頂いたようやな。
そうこうしていると、すき焼きパーティーの時間に。しっかり従魔ズにはすき焼き丼にした。ビアンカとルージュの丼には、白滝がましましのましまし。
『美味しいのですっ』
『肉もいいわねっ』
ばれてない。
「テオ君、エマちゃん、皆さん呼んできて」
「「はーい」」
今回、マーファに帰るにあたり、コテージの使用料を頂いている。マーファまで約1ヶ月。朝と昼は自炊。もし、お昼で異世界のメニュー使用時は500頂き、夕御飯はこちらが提供。いつものパターンね。エドワルドさんとツヴァイクさんからは15万。山風からは30万頂いている。これはいずれ寄付に回すことにした。
ルーム内に、すき焼きの薫りが漂う。
カセットコンロの上のは、すぐに食べられるように作ってある。おかわり用のお肉や野菜もろもろオッケー、と。
「ユイさん、皆さんお連れしましたっ」
エマちゃんとテオ君が、皆さんをご案内。
「わあっ、めっちゃいい匂いっ」
「よ、涎出てきたっ」
うん、反応上々。
「うちの年末はすき焼きなんよ。さ、食べ方はね」
簡単にカセットコンロとすき焼きの説明。分からなかったら言ってもらうようにする。だって皆さん食べたそうだもん。
私はチューハイ、両親と晃太、ホークさん、ミゲル君はビール。マデリーンさんは赤ワイン、チュアンさんとテオ君、エマちゃんはお茶。
エドワルドさんとツヴァイクさん、山風成人組はビール。マアデン君とハジェル君はお茶ね。きゅーん、な視線が来るけど、ルーム内では、二十歳未満は未成年です。
「では、今年一年ありがとうございます。来年も色々お願いします」
父の音頭で。
「頂きます」
「「「「「「頂きまーすっ」」」」」」
まずは、21階のお肉。玉子を絡めて、ぱくり。うん、安定の美味しさ。うどんも味が染み込んで美味しい。ちゃんと、ずー、って文化は説明してますからね。
「うまっ。この甘味のあるスープが、野菜に染み込んでっ、あちっ、うまっ」
「かーっ、どれも絶品ーっ」
エドワルドさんとツヴァイクさんはビールグビグビ。
「はあ、本当にユイさん所の食事は美味しいなあ」
「あつっ、酒が進むし、いくらでも入るな」
しみじみとロッシュさんとラーヴさん。フォークが止まらない。
「とても美味しいです」
シュタインさんが、にこっ、と私に言ってくる。あ、いかん、白滝食べよ。
「お前、肉ばっか食うなよっ」
「モグモグ、野菜も食べてるっす」
「器から肉が溢れてるじゃんっ」
仲良し。
何だかんだと、皆さん和気藹々とすき焼きを楽しんだ。アルコールも進む。従魔の部屋から、ジー、と視線が来るけど、無視。
意外と肉の次に人気になったのは冷凍うどんだった。味が染み込んで美味しいからね。私もずー、と。
最後にドラゴンのお肉を出す。
「お一人様、2枚ですよー」
と、お皿に盛って出す。私の両の手のひらサイズだ。
「綺麗な肉ですね」
「そうじゃな。透き通る、赤い宝石のようじゃな」
ドラゴンですもん。綺麗な鰹の刺身のような、透明感のあるお肉。
「年末の特別仕様です」
教えたら食べないかもしれないから、内緒。
「な、何の肉ですか?」
アルコールで真っ赤になってるロッシュさん、なんとなく勘づいた様子だけど。
「もし当てたら、更に2枚追加しますよ~」
って、誤魔化す。
すき焼き鍋で軽く火を通す。鷹の目の皆さんも慣れた手つきで煮ている。
さて、私もぱくり。
あははははーん、上品な甘さー、溶けるー。2枚はせこかったかなあ。すぐに無くなったよ。
「わい、もうちょっと食べたか」
と、こちらも真っ赤な晃太がリクエスト。
「そうやね。もうちょっと出そうかね。お父さんとお母さんは?」
「お父さんももうちょっとかな」
「お母さんはお腹一杯や」
『私も食べたいのですー』
『私もー』
しれっと来たリクエスト。散々すき焼き丼食べたろうに。ちゃんとドラゴンのお肉だって入れてたのよ。
「ビアンカ、ルージュ、年越しそばあるけん、我慢し」
『『ぶー』』
仔達も。
「わふんっ」
「がるうっ」
『『『ぶー』』』
はいはい。かわいかね。
「皆さん、どうします?」
鷹の目の皆さんに確認。遠慮してたけど、おかわりね。来年もお世話になるからね。
「皆さん、分かりました?」
振り返ると、エドワルドさんとツヴァイクさんが、あー、みたいな感じ。分かったかな。反対に、山風は大にぎわいだ。
「う、旨いっ。や、柔らかいっ、旨いっ」
「溶けるみたいだっ、あ、甘味があるっ」
「……………な、無くなった……………」
「美味しいっ、なにこれ、美味しいっ」
「足りないっすーっ」
大興奮。
「ミズサワ殿、まさかと思いますが、ドラゴン、ですか?」
エドワルドさんがおずおずと聞いてくる。同意するようにツヴァイクさんがそっと挙手。大興奮の山風の皆さんが、ピタリと止まる。
「山風の皆さんは?」
ぴしっ、と手を上げたのはハジェル君。
「エドワルドさんと一緒っす」
はい、正解。
「あ、なら俺もっ」
マアデン君はも挙手。
残りの山風ビール組もおずおずと挙手。
「はい。皆さん正解ですよー。お肉ですよー」
「「わーいっ」」
と、素直に喜んだのは未成年2名。
悩む仕草のビール組。だけど、お肉出したら素直に食べてました。
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