もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト・スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ

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一時の⑤

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 ぶひひん特急ノワールは順調に進む。
 途中で宿泊したのはディッティのみ。前回出来なかった無料教室の寄付も出来たしね。こちらのギルドでもルーティのダンジョンのドロップ品の買取り希望があり、色々な種類を買い取ってもらった。
 私は時間がある限りディレックスでお買い物。ヤマタノオロチ対策のお酒ね。だいぶ集まったなあ。ディッティに泊まったけど、コテージは使用継続しているから、ちょっと大きめの一軒家タイプの宿にした。町外れだけど庭も広く、仔達ものびのび、シルフィ達も走れるくらいだ。まあ、イシス達グリフォン軍団には、後退りされたりしたけどね。
 桶の作製者となるツヴァイクさんは、朝からお出かけしていた。ツヴァイクさんは毎日何やら作製している。桶を作るための予行練習だね。お昼過ぎても帰って来ないけど、お昼大丈夫かな?
「子供ではないので大丈夫ですよ」
 と、木刀で肩をとんとんしているエドワルドさん。足元には、肩で息をするロッシュさんと、ラーヴさん、シュタインさん。ロッシュさんの盾なんて、明後日の方向に吹っ飛んでるよ。中庭で模擬戦してたけど、手も足も出ない様子。流石ユリアレーナ最強のSランク冒険者やなあ。未成年組は、マデリーンさん指導で魔力訓練だ。
「そうですね。訓練お疲れ様です。お茶でも淹れますよ」
「ご馳走になります」
 私は父と手分けしてお茶の準備。ちなみにホークさんはノワールのお手入れ、チュアンさんとミゲル君は母の洋裁のお手伝いだ。ビアンカとルージュ? 朝早くからサブ・ドアの向こうのルーティダンジョンでちゅどん、ドカンしてる。始祖神様からブースト頂いたイシスとアレスも当然付いていき、オシリスとアリスも付いていった。仔達とシルフィ達はお昼寝。お尻がかわいか。
 ぼろぼろな様子のロッシュさん達には、濡らしたタオルを渡す。
 柚子蜜茶や紅茶、緑茶、リクエストを聞いて渡す。
 私は柚子蜜茶。ふー、あったかい。私の左右には、エマちゃんとテオ君が座る。「ユイさんの隣がいいっ」なんて言われたら脊髄反射でよかよ~。
 頂きながら、お話をする。
 エドワルドさんが、ツヴァイクさんのお出かけ理由を簡単に教えてくれた。元々木工職人のツヴァイクさん。木工って言ってもいろんな物を扱っていたそうだ。どれか1つを極めようとしなかったそうだけど、家庭の事情じゃないかってミゲル君が。同じシーラ出身で、職人系のお家で育ったミゲル君には、分かるんやね。まあ、ツヴァイクさんの事情だもんね。
 で、今は冒険者のツヴァイクさんだけど、こうして町に宿泊したりしたら、必ず昔使っていた道具を持ち向かう先。孤児院だ。建て付けの悪いドア、危なそうな家具の修繕をボランティアとして直しているそうだ。
「ツヴァイクは冒険者になって、どこの国に行っても同じことをして、それが認められてAランクになったんですよ。勿論、盾士としても認められてですけど」
「素晴らしいですね」
 耳が痛かっ。
 私なんて、変に絡まれたくないからお願いして、ランク上げたようなものなのに。
 冒険者のランクが上がるのは、やはり依頼をこなすこと。ある程度真面目にしていたらCくらいは上がる。問題はBランクからだ。これは実力は勿論の事だけど、人柄も査定に入る。新人を巣立たせているか。ギルドからの講師の依頼、相応の社会奉仕的な事をしているか等。そう言えば、カルーラでフェリクスさん達も講師していたなあ。
「エドワルドさんも講師とかして、Sランクに?」
「俺の場合は、ちょっと特殊でして」
 言葉を濁すエドワルドさん。ふれんどこう。
 それにしても、冒険者しながらボランティアの継続って本当に素晴らしいなあ。私なんて、休みの日は、ゴロゴロして、気ままに仔達をもふもふしているだけなのに。よし、今日はツヴァイクさんお疲れ様や。母と相談したら、色々作り始めた。クラーケンのフライにするとき、鍋の蓋でシールドしながら揚げてた。弾くもんね。やけど、いい匂いやあ。
 帰って来たツヴァイクさん、ずらっと並んだ食事に感動したけど、クラーケンの単語にピタッと止まる。
「クラーケンって、その辺に売っとるか?」
 フォーク握ったままエドワルドさんに聞いてる。
「黙って食えよ」
 エドワルドさんは唐揚げにレモンを搾ってる。
「そ、そうじゃな。パクリッ、う、旨いっ、いくらでも入るぞっ、グビグビッ、かーっ、エールと合うーっ」
「たくさん召し上がってくださいね」
 気持ちよく食べてる。見てるこっちも気持ちいい。
 で。
「あの坊主の腹はどうなっておるんじゃ?」
 痩せの大食いハジェル君のぱんぱんになったお腹をみて、物凄く不思議そうな顔をしていた。

 次の日。
 目覚ましのアラームで目が覚める。
 ふう、起きよう。
 カーディガン着て、洗顔して、更に覚醒。本日はパン食で、昨日のうちに麦美ちゃんで買ってある。インスタントスープと飲み物のために、お湯沸かそう。
 中庭を見るとすでにコテージには明かりが点ってる。今日ディッティを出るからね。おお、寒い。暖房暖房。スイッチオン。 
 急に振り返ったほうが、いいような気がした。
 振り返ると、案の定なのか、やっぱりなのか、黒髪イッケメン時空神様。はっ、私、寝間着やっ。
「おはよう。急に来て悪いな」
「いえ、おはようございます」
 最近にしては珍しいなあ。いつも、おーい、って言ってくれてたのに。
 寝間着のままだけど、ぺこり。ぺこり、の間に、フローリングから爪の音がする。ダイニングキッチンとメインルームの境界線で、イシス、アレス、ビアンカ、ルージュ、オシリスにアリスが並んでる。流石、気配を察したんやね。床に頭が着くほど臥している。
「今日は始祖神様には内緒な?」
「あ、はい」
 なんやろ? ちょっとドキドキ。
 イッケメンな時空神様は、表情が少しだけ、感情が消える。それでもイッケメン。
「ディレナス、覚えているか?」
「はい、勿論」
 時空神様のディレナスのワードで、私は一気に嫌な予感が沸き上がる。最近全然思い出さなかったのに。
「勘づいたようだな」
「華憐達、ですか?」
 あの国関連で思い起こすのは、華憐達だけ。確か、無償で治療しているとか聞いたのは、ずっと前。
 時空神様は私の固い声の返答に頷く。
「そうだ。厄災の聖女がディレナスから逃亡した」
 ああ、こちらに来てもうすぐ三度目の年に、もう関わらないと思っていたのに。
 絶対に何か嫌な事が起こりそうや。
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