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一時の④

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 次の日。
 カルーラを出発する。
 パーティーハウスの鍵を返却する。応接室で、わざわざラソノさんが受け取ってくれた。それから初めてましての方が。杖をついたガリガリに痩せた男性だ。なんや顔色悪そうやけど。なんとカルーラの冒険者ギルドマスターさんだと。
「カルーラ冒険者ギルドマスターのアゾスです。挨拶が今となってしまい申し訳ありません」
 と、丁寧に挨拶してくれた。
「いえいえ。パーティーハウスを融通してくれてありがとうございます」
 挨拶したけど、顔色の悪さが気になる。
「あの、体調が悪いのでは?」
 思わず聞いてしまう。
「これでも良くなったんですよ。ミズサワ殿が回してくれたドラゴンのおかげで」
 アゾスさんはつい最近まで病で寝たきり状態だったけど、ドラゴンのポーションで回復。何の病気が分からないけど、やっと歩けるまで回復したそうだ。在宅ワークで何とか繋いでいたけど、いよいよ引退を考えていたところ、マーファで処理されたレッサードラゴンのポーションが回ってきた。
 ドラゴンのポーションで回復した人達からのお手紙はいただくが、実際に回復した人は初めてお会いした。
「本来ならこんな形で接触は許されないのですが、オルクの襲撃から騎士団を援護した事や、ゴブリンの巣、レッサードラゴンの件、ルーティのドロップ品、薪等を進呈して頂いた事、ズロー商会の件。冒険者ギルドマスターとして、挨拶しなくてはならなかったのですが、私がこのような状況でのびのびになってしまって」
 私が体調悪いのでは、なんて聞かなければ、ドラゴンポーションで回復しました、なんて答えなかったそうだ。基本的には、ドラゴンポーションの材料や作成に携わった人達には、それで回復した人達はそれを理由に、直接接触するのはよろしくない。変なクレームを避けるためやろうけど、感謝の気持ちを伝えたい時だけ、お手紙にしたためて、薬師ギルドが仲介してくれる。これはこちらのルールね。
「そうですか。良かったです」
「これから、遅れを取り返します」
 にこり、と笑うけど、顔色が悪いなあ。これから回復するんやろうけど。
 私達は挨拶して、ギルドを後にした。ラソノさんがわざわざ見送ってくれる。
 城門前には、すでにラスチャーニエ、蒼の麓、金の虎、山風が揃っていた。わざわざお見送りに来てくれたんやな。
「お待たせしました」
「いいえ、ミズサワ殿、エドワルドとツヴァイクをお願いします」
 と、ケルンさんが、丁寧に会釈する。エドワルドさんとツヴァイクさんもそれにならい会釈。
「こちらがお願いしているんですから」
 私とケルンさん達の挨拶の間に、晃太がアイテムボックスから馬車を出して、ホークさんがノワールと繋ぐ。
 両親と花が乗り込む。
「さあ、乗ってください」
「お世話になります」
 と、胸に手を当ててエドワルドさんが会釈。かっこいい。
「テイマーさん、お世話になります」
 ツヴァイクさんも律儀にお辞儀する。二人ともしっかり旅装束だ。
「ユイさん、ありがとうございます」
 ロッシュさんが深く感謝してくれる。きっとマシュー君の半成人の事よね。桶の件がなかったら、大事な半成人に父親として参加できなかったからね。
「いいんですよ。さ、乗ってください」
「はい」
 視界の隅でハジェル君のポケットはみはみしている元気。こらこら。荷物を抱えて、山風の皆さんも挨拶して乗り込む。
「ユイさん」
 あ、シュタインさんや。私を見て、嬉しそうやけど。昨日、ホークさんに、ちゅ、てされたので、顔が会わせづらいという感情になるのが、自分でも分からない。
「の、乗ってください」
 視線を下にして、馬車に促す。私の手を取ろうとしたシュタインさん。ドキリ、としたが、然り気無く、ホークさんが後ろから私を引く。
 なんや、バチッ、て音がした気がしたけど。気のせいよね。
「シュ、シュタインさん、乗ってください」
「…………はい」
 シュタインさんが馬車に。なんや、緊張した。シルフィ達も馬車に乗り込んだね。
「ユイちゃん、すぐに、帰ってくる?」
 次に来たのはアルスさん。なんや、捨てられた子犬に見える。猫系の獣人さんなのに。
「こらアルス。テイマーさん、俺達が心配することはないと思うが、気をつけて」
 ファングさんが、アルスさんをたしなめて、挨拶してくれる。金の虎の皆さんにも挨拶。
「ミズサワ殿。春に」
 フェリクスさんとも挨拶。カルーラに残るメンバーで、明日、ルーティのダンジョンに向かうそうだ。丁寧に挨拶してくれる。
「皆さんもお気をつけて」
 私もぺこり。
 名残惜しいが、出発時間となる。
 ヘルメット装着して、私は御者台のホークさんの隣に座る。
 なんと、警備の人達まで、ピシャッと敬礼してくれた。座ったままで申し訳ないけど頭を下げる。
 ホークさんが手綱を操り、がっちりビアンカとルージュ達に守られて、ぶひひん特急ノワールが発進した。
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