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帰る準備④

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 各パーティーのリーダーさんが、御用聞きの冒険者に伴われて来た。
「ミズサワ殿。こちらを」
 ケルンさんが代表してお土産を渡してくれる。綺麗な包みに覆われ、リボンで飾られた紅茶の缶だ。ブドウの入ったカルーラ特産の紅茶だと。
「ありがとうございます。さ、皆さん、どうぞ」
 パーティーハウスにご案内。
 花が皆さんの手をはみはみした後、歓迎のローリングを披露。仔達もぷりぷりとご挨拶。その後、ミゲル君が食パンで、ルームに誘導する。ビアンカとルージュは近くでごろり。
 本日はホークさんがいないのでチュアンさんが定位置に立つ。ソファーに腰掛けると、マデリーンさんがお茶とお茶請けを出してくれる。本日のお茶請けは、セレクトショップダリアの御贈答用の焼き菓子と果物だ。彩り豊かだ。
「ミズサワ殿、体調は?」
 座って直ぐにフェリクスさんが聞いてくれた。
「はい。すっかり大丈夫です」
 食欲ばっちりです。
 で、これからの事だ。
 現在、大討伐の休息時期。それぞれの予定の確認をする。
 特にギルドから講師依頼の来る高ランクの人の予定だ。
「我々ラスチャーニエは予定はありません」
 もっふもっふとリスのケルンさん。
「今のところ、我々蒼の麓もありません」
 紅茶を傾けていたフェリクスさんも。
 金の虎もなし、と。
「で、マーファに戻る予定なんですけど。こちらの都合で申し訳ないのですが、出発はホークさんが戻って来てからになります」
「エドワルドもツヴァイクも問題はないかと」
 ケルンさんがもっふもっふ。それでも手を伸ばそうとするので、フェリクスさんが止めてる。
「俺達もです。ユイさん、そのレディ・ロストークって」
「パーヴェルさんの愛馬で」
 私はレディ・ロストークの説明をする。
「かなり気性の荒い魔法馬だったのでホークさんでも調教に半年もかかって。調教後の今はカルーラ騎士団のパーヴェルさんの愛馬になってます」
 ふと、フェリクスさんが手を止める。
「パーヴェルとは、イコスティ辺境伯のご子息ですか?」
「え? お知り合いですか?」
「本人との面識はありませんが、彼の両親のイコスティ辺境伯夫妻と少し」
 流石Sランク冒険者で長命な人やなあ。人脈すごか。
「そのパーヴェルさんのお願いもあって、レディ・ロストークのお相手にノワールをって。レディ・ロストークは、他の雄馬を近付けさせなかったようなんですけど、ノワールとは相性良かったみたいで。私も楽しみなんです。ただ、お腹の赤ちゃんの魔力が多いみたいで、それでレディ・ロストークが悪阻で体調悪くなったみたいです」
 へー、と私の拙い説明で納得してくれたのはファングさんとロッシュさん。
 だけど、ん? と止まるのはケルンさんとフェリクスさん。
「なあ、フェリクス。魔法馬って、悪阻あったか?」
「聞いた事ありません。確か、馬が魔法馬を宿したらそうなると聞きましたが」
「あー、多分、ノワールの種族の問題でなっているみたいです」
 昨日も心配で、様子を見に行って、ホークさんから更に詳しく聞いた。
「ノワール君の種族? 魔法馬ですよね?」
 ロッシュさんがレーズンサンドを手にしながら確認するように聞いてくる。
「始めは魔法馬だったんですけど、進化したんです。戦車馬(チャリオット・ホース)なんです」
 私の普通の感覚だと、犬とかならミックスとかになるけど、魔物は違う。レディ・ロストークは魔法馬、ノワールは上位種の戦車馬(チャリオット・ホース)。同じ馬でも魔物である。この間で子供が出来た場合は、どちらかの種族になる。高確率で母親の種族になる。アレスとアリスの仔達であるシルフィ達がいい例だ。シルフィだけフォレストガーディアンウルフ。イフリィ、ノーム、ウインディはアーマナイトウルフ。元々母親のアリスはアーマナイトウルフ。進化してアーマークイーンウルフになり、アレスの伴侶となった。なので、イフリィ達三匹は、母親の進化前の種族なんだろうって、ビアンカとルージュが。
 ホークさん曰く、ノワールは本来ならば、魔法馬から進化したらその1つ上の属性魔法を持つ(属性)魔法馬になるのが、通常なんだけど、すっ飛ばして戦車馬(チャリオット・ホース)になった。レディ・ロストークのお腹の赤ちゃんは、父親のノワールの影響を受け、母親の魔法馬より上位種の可能性が高い。だから魔力が母体より多く、母体のレディ・ロストークはその魔力の流れを正そうとして、無意識の内に悪阻、体調不良となった。これが出産経験があれば、胎児の魔力を流すコントロールはしやすいのだけど、レディ・ロストークは初産でまったくの未経験でこうなった。現在、魔力のコントロールの為に、ホークさん、飼育員さん、パーヴェルさんが神経を尖らせている。
「ホークさんの話では、赤ちゃんは属性のある魔法馬の可能性が高いそうです」
(属性)魔法馬は戦車馬(チャリオット・ホース)と魔法馬の中間位置にある。おそらくそうだろうって。まあ、産まれてみないと最終的にはわからないけど。
 私の説明で、ケルンさんとフェリクスさんが、止まる。
「え。ミズサワ殿の魔法馬、戦車馬(チャリオット・ホース)なんですか?」
 リスのケルンさん、ほっぺたの位置戻ってる。
「はい。進化しまして」
「道理で、やけに迫力のある体躯だと思っていましたが」
 はあ、と息をつくフェリクスさん。
「ジューバが滅びてから、この大陸で魔法馬より上位が産まれるとしたら、まだ先の話。進化の理由は? まさか、称号持ちの彼の影響ですか?」
「まあ、それはきっと」
 そっと指差す先にはビアンカとルージュ。我関せずと、寝てる。あんだけちゅどんドカンして、ノワールだってバキバキしたしね。
「色々戦闘を繰り返した結果かと」
「ハハハ」
 乾いた笑みのフェリクスさん。
「まあ、魔法馬の話はいいとして。ミズサワ殿、ギルドに出発の報告に行きませんか?」
 ピンクと緑色がマーブル模様になってるパウンドケーキを手にしたケルンさんが聞いてくる。
「早めにエドワルドとツヴァイクの同行を伝えた方がいいかと」
「そうですね」
「今日にでも行きましょう。この後で、私が2人を連れてギルドに向かいますので」
「はい、ギルド前で」
 よしよし、マーファに帰る準備が進むね。
「テイマーさんは出発までカルーラに?」
 苺をせっせと食べていたファングさんが何気なく聞いてくる。
「いえ、明日からルーティのダンジョンに行きます。アリスの闇魔法の指導の為に、3泊予定ですけれど。ノワールがいるので、早く移動出来ますし」
「「ですね」」
 と、ファングさんとロッシュさん。
「あ、そうや、前回ラスチャーニエと蒼の麓は不参加でしたね。ご一緒しません?」
「「是非に」」
 わあ、揃った。何気なく言っただけなのに。こうして3泊4日のルーティダンジョンツアーに、Aランクの冒険者パーティーが加わった。やけど、楽しみ。不謹慎かも知れないが、蒼の麓もAランクの冒険者パーティー。どんな戦闘するんやろ。野次馬野次馬。
 コテージの使用料は3泊4日なので、3万頂く。朝昼は自炊で、夕御飯は提供。もし、お昼異世界のメニューを希望されたらお一人様500頂く事に。
 ドロップ品の取り分も決める。晃太の支援魔法を受けての戦闘も引き受けてもらえたので、その時のドロップ品や宝箱はすべて進呈。こちらのちゅどん、ドカン、バキバキはこちらで。ルームの扉の向こうから『ダンジョン』の掛け声が聞こえる。
 明日の9時城門前と決まり、お話し合いは終了。
 皆さんをお見送りして、私は冒険者の格好になる。晃太とチュアンさん、ミゲル君、珍しくイシスがついてくれてギルドに向かう。
 さ、大根大根。ホークさんに言われたけど、不安そうに、ね。大根大根。ああ、不安や。
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