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帰る準備③

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 次の日。
 いつもより寝坊したけど、体調はほぼいいかな? めまいも吐き気もないし。ちょっと筋肉痛やけどね。
「ユイさん、大丈夫?」
 エマちゃんが心配そうに来た。後ろでテオ君もだ。
「昨日よりよかよ」
 花がエマちゃんとテオ君の隙間を縫うようにして出てきた。はみはみ、もふもふ、ローリング、と。毎朝だけどかわいか。
『ユイ。どうなのです?』
『ずいぶんいいみたいね』
「心配かけてごめんね」
 ビアンカとルージュにも心配かけちゃった。アレスは仔達を連れて中庭で爆走している。アリスとシルフィ達は日向ぼっこだ。イシスとオシリスは大樹でまったり。
 さて、今日はまずレディ・ロストークの様子を聞きに行かないと。私は大丈夫だけど、ホークさん休みがない。ホワイト目指しているのに、ブラックになりそうや。どこかできちんと休みをいれないと。
 洗面を済ませて、母が作ってくれた朝ごはんを食べる。ふう。お味噌汁が染みる。
「姉ちゃん、どうする?」
 風呂掃除をしていた晃太がやってくる。
「まずはレディ・ロストークや。具合心配やし。ホークさん、休みないしね」
「そうな」
「なあ、優衣」
 話を聞いていた母がお茶を出してくれる。
「レディ・ロストークは、悪阻やないね? 妊娠しているんやろ?」
「そうやね」
 私もそうやないかって思ってた。始祖神様がそんな匂わせるような事を言ってた。

 お嬢さんが楽しみにしている

 って。思い付くのレディ・ロストークしかおらんもん。ホークさんにも聞いたけどほぼそうだろうって。だけど、ちょっと言葉を濁していた。とにかく、レディ・ロストークの様子を実際に見てみないと分からないって。
 ご馳走様、と。
 私は急いで準備。帰りに修道院に行かないと。
 晃太とチュアンさん、ミゲル君、ビアンカとルージュが着いて来てくれた。ノワールもブヒヒン言うので、連れていく。ノワールもレディ・ロストークが心配なんやね。
 ノワールの手綱を引きながら、騎士団の牧場に向かう。
 無事に到着して、近くにいた職人さんに声をかけると、すぐにホークさんを呼んでくれた。
「ユイさん」
 少し汚れてるけど、仕方ないね。着替えはマジックバッグにいれてあるし。
「ホークさん、お疲れ様です」
「ユイさん。体調は?」
「だいぶいいです。レディ・ロストークは?」
「はい」
 ホークさんはちょっと難しい顔。
「おそらく悪阻でしょうが。レディ・ロストークの場合は胎児に問題があるようです」
「胎児って。赤ちゃんが?」
 なんや、不安や。
「はい。予測になりますが、母体となるレディ・ロストークより大きな魔力を宿しているために、体調不良となっているかもしれません」
「それって。ノワールの影響だったりします」
 元々は魔法馬であったけど、バキバキして進化し、この大陸では珍しい戦車馬(チャリオット・ホース)。魔力だって、他の魔法馬に比べてかなりもっている。
「そうでしょうね。まあ、普通の馬が、魔法馬を妊娠した時によくあることなんです」
 ホークさんが続ける。
「しかもレディ・ロストークは初産ですから余計に。もし、一度でも出産経験があれば、これ程にはならなかったはずです」
「そうですか」
 後ろでノワールは、不安そうにぶひひん。
「それでレディ・ロストークは?」
「他の飼育員の対応が良かったようで、俺が来た時には、落ち着き始めていました」
「そうですか」
 良かった。どうやら、パーヴェルさんも毎日来ているって。
「それで、ユイさん。落ち着いたとはいえ、もうしばらくこちらに残りたいのですが………」
 おずおずと遠慮がちに聞いてくる。
「それは構いませんよ。日数的には?」
「そうですね。一週間、いえ、10日」
 仕方なか、レディ・ロストークと赤ちゃんの為や。
「分かりました」
 マジックバッグ内には、数日分のお泊まりセットがあるけど、足りないね。
「また。差し入れに来ますね。今、何か不足分は?」
「大丈夫です」
「ホークさんも、体調気をつけてくださいね」
「はい、ユイさん」
 ホークさんはあわただしく戻っていった。せっかくノワール連れて来たけど、面会は大事を取り、後日となる。
「ぶひひん…………………」
『レディ・ロストーク……………』
『ですって』
 哀愁が、いつも以上に増してる。
「ノワール、仕方ないやん。今は我慢し」
「ぶひひん………………」
 とぼとぼと歩くノワール。
 帰りに修道院に寄り、シスターアモルとの面会予約する。お忙しいのか、9日後や。ただ、受け付けをしてくれた男性が、暖房器具や色々な寄付について、丁寧にお礼を言ってくれた。
 パーティーハウスに戻り、お昼の準備をしていると。
『ねえ、ユイ。ちょっといいかしら』
「ん? なんね?」
 ルージュがアリスを連れてダイニングキッチン前に。
『しばらく、カルーラにいるでしょう』
「そうやね。レディ・ロストークが心配やし。どうしたん?」
『アリスに罠解除の闇魔法指導したいの。だから、ちょっとダンジョン行けないかしら?』
「え?」
『ほら、サブ・ドアさえ繋がれば行けるでしょ?』
「そりゃ、行けるけど」
 本当にそれだけえ?
『やっぱり、実際に罠の解除を見せたいし、実戦させたいのよ』
「ああ」
 百聞は一見に如かず、か。
 うーん。
 確かに罠の解除に関しては、ルージュにいままで丸任せだったしなあ。口頭だけより実戦させた方がいいに決まっている。各リーダーさん達との話し合いのあとに、行ってみるかな、ルーティのダンジョン。
「分かったそうしようかね。ただ、リーダーさん達との話し合いの後で、行けても2、3日よ」
『いいわ。サブ・ドアさえ繋がっていればいつでも行けるわ』
「わふんっ」
 アリスも嬉しそうに尻尾パタパタ。
 なら、明後日の話し合いの後に、ルーティやね。シスターアモルと面会もあるし、ホークさんの差し入れもあるし、忙しか。
「優衣、ルーティ行くと?」
 母が手を拭きながら聞いてくる。
「うん、その予定やけど」
「なら、お母さんもいきたか。エビとか牡蠣とか買いたいんよ」
「ああ、ターコイズシュリンプね」
 ルージュのエビエビわっしょいみたいな掛け声が始まる。やけど、ターコイズシュリンプもオイスターも美味しかったなあ。
「分かった。なら、お母さんも一緒に行こうかね」
 数日間忙しかなあ。
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