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王冠山へ④

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『暇なのです~』
『暇だわ』
『暇ダ』
 ビアンカとルージュ、イシスがだらだらしている。アレスは仔達と中庭を爆走している。オシリスは中庭の大樹に止まり、まったりしている。
「仕方ないやん」
 現在ルームを開けた位置は、ヤマタノオロチの感知内の為、気軽に走れない。
「魔境にでも行く?」
 サブ・ドアの1つは魔境に繋がっているからね。
『もうすぐお昼なのです』
『そうね、今日は何かしら?』
『私ハピザガイイ』
「あんたらね」
 ゴロゴロしながら言う。横着やね。
 朝御飯だってたらふく食べたろうに。
 中庭では冒険者の皆さんが訓練をしている。ただし、ホークさん以外ね。ホークさんはさっきまで騎乗していたノワールのお手入れだ。
 で、私はお昼の準備をしていた母の手伝い。
 久しぶりにホットプレートで、ホットケーキを焼くことに。小さい頃、父が仕事でいない日のお昼によく焼いてくれた。
「懐かしかなぁ」
 と、晃太が牛乳とホットケーキミックスをせっせと混ぜている。あの時はバターと蜂蜜で食べてたけど。あれからうん十年も経ってる。ホットケーキの付け合わせは、バターと蜂蜜だけではないと学んでいるっ。どやっ。
 まあ、カフェうららのパンケーキが参考なんだけどね。
 訓練していたチュアンさんやマデリーンさん達が、準備の手伝いに入ってくれる。
 私は付け合わせの準備。ハムやベーコン、ウインナー、卵。ホットケーキを焼きながら、同時に好きに焼いて貰おう。後はみつよしのサラダと、セレクトショップダリアの御贈答の生ハム、ローストビーフ。あ、チーズ類と温泉卵もいるかな。バナナや缶詰の桃等果物もカット。生クリームはミゲル君がハンドミキサーで作ってくれている。その足元で花がすがり付いている。ジャムも出して、と。ルージュの『エビ~』と言う掛け声でシーフードも準備する。うーんと悩んで、まずはセレクトショップダリアの御贈答のスモークサーモン。ダンジョンの貝柱。晃太のアイテムボックスに保存してある殻を剥いて、すぐに調理できるようにしているエビを出す。あ、白身魚いいかも。鱈も出してもらう。なんや、めっちゃ豪華や。私は何にしようかな。
『いい匂いなのです』
『エビがいいわ』
 そわそわしているビアンカとルージュ。母がホットケーキを焼きはじめている。
『デキタラ呼ンデクレ、私ハピザガイイ』
 イシスはごろりん。
「あのね」
 最近ゴロゴロ率が高いイシス。狩りをしなくても、三食出るから楽と、呟いているのを私は知っている。そのうち、ぽっちゃりグリフォンになるばい。
 もう、とおもいながら大量のホットケーキが出来上がる。焼いていると、視線を感じる。
「ユイちゃん、俺も食べたい」
 キラキラアルスさんのパーカーの裾を、ビアンカとルージュが咥えて止めていた。中庭の向こうで訓練途中のファングさんとリィマさんが走ってきてる。
「ユイちゃん、ユイちゃんの母ちゃん、俺も食べたい」
 ダメ? こてん、と首を傾げるアルスさん。か、かわいか。
「なんね、一緒に食べるね?」
 母がニコニコしながら言うと。
「うんっ」
 かわいかっ。
 だけど、アルスさんだけって訳にはいかないからね。マアデン君とハジェル君も羨ましそうな顔だしね。結局、各パーティーのリーダーさんとお話しして、お代の500Gを貰い、ホットケーキパーティーだ。私は不足分の買い物に向かう。ある程度の材料は母と晃太のアイテムボックスにあるけど、ホットケーキミックスと卵が足りない。温泉卵も念のためにね。あ、市販の四角いチーズも、と。それからセレクトショップダリアからも追加して、と。
 皆さんが手伝ってくれたので、思ったより早く準備が整う。人手があるっていいね。ちょっとホットケーキ、タイミングがずれて崩れたり、焦げがちょっぴりあるけど、ご愛嬌。
 ホットケーキを山盛り。ハムやベーコン、エビ等の添え物してと。イシスはチーズを乗せてピザ風味にした。わあ、豪華やー。材料費はかかるが、ビアンカやルージュ達が満足するまでうららのパンケーキ食べたらもっとお金がかかるからね。節約しなくても、お金はあるけど、たまにはこうやってわいわい料理するの楽しい。
「ご飯よー」
 と、中庭から呼ぶと、土煙を上げて、アレスと仔達が帰ってきた。
『いい匂いなのだっ』
「わふんっ、わふんっ」
「がるぅっ、がるぅっ」
『ねえね、ひすい、お腹減った~』
『るり、あまいの~』
『くりちゅも~』
「くるっ、くるっ」
 大合唱や。はいはいかわいかね。
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