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変わらないもの⑩

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 ギルドに到着すると、山風も金の虎の皆さんも勢揃いしていた。
 慣れた仔達がわーっと寄っていく。
「あ、ユイさんっ」
「ユイさーん」
「ユイちゃんっ」
 未成年組がわーっとやって来た。アルスさんだけ、ファングさんとガリストさんががっちり確保。その向こうで、ふわっ、と笑顔のシュタインさん。ドキリ。いかん、今は依頼のお話せんと。シュタインさんは寄っていったルリとクリスを、ん、て顔したけどすぐにニコニコと撫で始める。
「むーっ」
「「むーっ、じゃない」」
 相変わらずほほえましいなあ。
「皆さん、お呼び立てしてすみません」
「いえ、何がありましたか?」
 と、コハクを撫でていたロッシュさんが聞いてくるので、ホークさんとファングさんとケルンさんとロビーの隅っこでお話。ビアンカとルージュががっちり壁になってくれる。
「実はですね。アレスがゴブリンジェネラルとレッサードラゴンを獲って来て」
「「あ、はい」」
 察しが良かなあ。ロッシュさんとファングさん。
「それでご都合よければ、付き合って頂けると」
「勿論ですよユイさん」
「参加させてもらうさ」
 あっさり了承してくてれる。今使用している宿とか大丈夫って思ったけど、既にチェックアウトしていると。
 それから分け前の相談。
 山風と金の虎も補助パーティーに加わる為、報酬が少し下がってしまう。だけどジェネラルがいる時点でゴブリンポーンやルークやナイトが相応にいるはず。なので、補助パーティーとなった3つのパーティーには、ゴブリンとポーン、ルーク、ナイトの討伐料を割り勘してもらう。
「いいんですか? ユイさんの取り分少なくなりますよ」
 ロッシュさんが心配してくれる。
「そこは大丈夫です。レッサードラゴンが三匹もいますから」
 でしたね、と、ロッシュさんとファングさん。
 それからコテージの使用料や食事の説明。
「はい、それで問題ないです」
「俺も」
 では、行きましょうかね。
 ハジェル君のポケットはみはみしている元気を回収。
 窓口で、補助パーティーの追加を申請。よし、いいかな。
 ノワールの馬車に乗り、森に向かう。回りに他に冒険者がいないかビアンカやルージュに確認してもらう。
『いないのですよ』
『そうね』
「ありがとう、ホークさんお願いします」
「はい」
 ここからはノワールに騎乗だ。これの方が確実に早いからね。
「コハク、レッサードラゴンがおった場所分かるね?」
「がうっ」
 任せろみたいな顔だ。頼りにしてるよ。
 晃太達がシルフィ達を抱えて、ルームに入る。申し訳ないが、ロッシュさんの肩を借りてノワールに乗る。ホークさんがマントを出して、私を包み、はい餃子の出来上がり。
 ノワールがいつもの調子で走り出した。

 しばらくして他の魔物に遭遇することもなく、レッサードラゴンと遭遇した場所に到着。うわあ、地面が抉れて、木々が薙ぎ倒されている。
「ビアンカ、ゴブリンの巣と、レッサードラゴン探れる?」
『任せるのです』
『我もするぞっ』
 ビアンカにぴったり張り付いてくるアレスを、前肢で押し返し、ビアンカは集中。
『調律モード 森の導き手(フィローニア)』
 ビアンカの白い毛並みに浮かぶ、枝葉の模様。同時にアレスも同じような模様が浮かぶ。さすがフォレストガーディアンウルフやね。
 しばらくして、模様が消える。
『ゴブリンの巣は分かったのですが、レッサードラゴンはいないのですね』
『うむ、そうだな』
 ビアンカとアレスによると、ゴブリンの巣はここから北に、かなり進まないといけない。ノワールの足でも明日の早くても昼過ぎに到着すると。
『ただ、手前あたりに、警戒のゴブリンがいるのです。巣もかなりの規模なのです』
『我がいれば、直ぐに殲滅できるのだ』
 厄災クラスが気軽に言う。だけど、これは依頼なので、耳の切り取りが必要だ。今は時期的に日が早く落ちるから、今から行っても真っ暗や。
『ヌシヨ』
「なんね。イシス」
『私ハ、レッサードラゴンヲ探ッテ来ルゾ。オソラク森ノ奥ニ逃ゲ込ンダハズ。人ノ巣ニ近付ク距離ニ居ナケレバ良イノダロウ?』
「そうやね。お願いできる?」
『任セロ』
 イシスは単独でレッサードラゴンの追尾だ。オシリスとホルスは私達に付いてきてくれる。ゴブリンの撃ち漏らしがあったらいけないからね。グリフォン飛行遊撃部隊だ。で、ゴブリンの巣だ。
「うーん、明日は警戒の手前まで進んで、明後日、一気にいった方がいいですかね?」
 私はホークさんと、ルームから出てきた各リーダーさんとも説明、相談。
「そうですね。日が暮れると、色々厄介ですから」
 とケルンさん。ファングさんもロッシュさんも異論なし。明後日一日は、ゴブリンの巣にかかるかな。
「イシス。予定としては3日後に合流でもよか?」
『ソウダナ。出来レバ、5日ハ欲シイ』
「よかよ。イシスの都合に合わせるけん、お願いね」
『分カッタ』
 イシスは翼を広げて、ぶわっと飛び立つ。ぶわっふ、風圧凄かっ。イシスは数回旋回してから飛び立っていった。
 それから直ぐに移動、とはならず。切り倒された木々の回収だ。薪になるからね。孤児院や修道院に寄付しよう。それからギルドが時折だけど、低階層の住民に、不定期だけどパンの配布や冬の時期は燃料となる薪の提供をしている。同時に職業斡旋や、相談窓口を設け、橋渡しの役割をしている。なので、私はこの薪の一部を提供しようと思っている。木魔法が使えるビアンカとアレスが、ちょちょいのちょい、と魔法を駆使してくれる。あっという間に薪になる。皆さん手分けて、束ねてくれる。
「皆さん、ありがとうございます」
 いえいえ、と、快く返事をしてくれる。
 さて、いいかな。かなり薪が調達出来た。
「なあ、姉ちゃん、さっきから静やない?」
 と、小枝をまとめていた晃太がぽつり。
 さっと、周囲を確認。
 あ、アレスと三人衆がおらんっ。
 気が付いた瞬間、森の奥の方で、ちゅどん、どかん。
『はあ、変わってないのですね』
『よく、こうやって母様に叱られていたわね』
 と、呆れるビアンカ、ちょっと懐かしそうなルージュ。
 私は晃太と顔を見合せて、ため息。昨日、レッサードラゴンとゴブリンジェネラルを確認して、この依頼なのに。仕方ない、私はビアンカとルージュにSサイズのマジックバッグを首に下げる。
「ごめんけど、回収ばしてきて」
『分かったのです』
『直ぐに帰ってくるわ』
 帰って来るまでの間に、出来るだけ薪になりそうなのを集める。小さな枝でも、立派に燃料やからね。
 結局、マジックバッグを膨らませたビアンカとルージュが帰って来たのは、時間が経ち、ノワールの移動は僅かしかできなかった。
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