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連載
同郷?①
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「ど、どういう事でしょうか」
深刻、の言葉に私は不安を覚える。
始祖神様はふう、と息をつく。
「此度の件、異世界人が起こした厄災に関連した、偶発的魔物の氾濫(スタンビード)と認識。創世時に律した、神による直接下界介入禁忌・過剰干渉不可の適用外と見なす」
ん? ん? なんや、難しい言葉が。
始祖神様が言っている間、後ろでバタバタ。ちら、と見ると皆さんそれぞれ膝をついている。ビアンカやルージュが、床に頭が着くくらい低くしているから、察してくれたかな。
「ふう、自分で律したとは言え、なんとももどかしいのう」
「始祖神様?」
本当になんやろ?
「お嬢さん」
「あ、はい」
きっと分からない事をいろいろ教えてくれるんやろうね。でも、まだ、ちゃんと報告してない。
「まずは危険な目に合わせて、申し訳なかったの」
あ、あの雨の中、ノワールに騎乗したことかな。
「大変だったのはホークさんやノワールでしたので」
私はただ乗ってただけ。
「で、お嬢さんの疑問に答えたいのじゃが。何から聞きたい?」
「えーっと、まずはあの雨を降らせていたのは? 何故、私達に依頼を? 何故今ごろになってビアンカやルージュが気がついたんですか?」
疑問。
以前、あの王冠山付近をビアンカとルージュが、アレスと共に走っても何も起きなかった。それなのに、何故今回反応があったのか?
何故、始祖神様は私達に、王冠山付近を廻るように指示したのか? こうなるって薄々分かっていたと思うのに。
そして何より、あんなゲリラ豪雨を降らせ、土石流まで発生させたのは何かだ。
「まあ、そうじゃろうな。では、一つずつ話そうかの」
始祖神様は息を着く。
「あの雨を降らせたのは、お嬢さん方がいう王冠山の内側に眠っていたのじゃよ」
眠っていた?
「少し長い話になるが、よいかの?」
「はい」
ならお茶の準備ば。
母が玉露を淹れて準備していた。
それは何千年か前の話。
別の世界から逃げ延びてきた一族があった。まだその時は別の世界からの移民を受けていた頃ね。
その一族は神子と呼ばれる人を筆頭として纏まっていた。彼らは未開の土地を根気よく開拓して、何とか生活。それでもこちらには魔物がいる。その魔物から一族を守っていたのは、連れてきた一匹の蛇だったと。いやや、蛇。
こちらの魔力と波長があったのか、普通サイズの蛇はあっという間に大蛇になり、襲い来る魔物を撃退。食べられる魔物の狩り、開拓に助けになる働き者の蛇で、一族の守り神と崇められていた。初めは30人程の集落だったが、年月が経ち、200人以上となった頃。
「感染症が原因で、呆気なく、な」
もとよりきちんとした感染対策がなされているわけなく、もう、数年も経たずに全滅。
「蛇だけは生き残った。いや、残された、じゃな。だがな、蛇はそれが理解できなかったのじゃよ」
蛇だもん。
「こちらの魔力と相性がよく、短期間に進化を繰り返し、ある程度の知能があったのだがなぁ」
蛇は、一族皆亡くなったのが分からず、それでも集落を守り続けた。何年も、何十年も、何百年も。その間も蛇は進化。すでに蛇と表現していいのかな?
「ある時、一体の魔物が襲ってきた」
それは進化し、強大になった蛇に挑んだ。
「皇帝竜(カイザードラゴン)じゃ」
……………………ん? まさか、ビアンカとルージュの言う、『主様』では? あまりいそうな感じもないし。
始祖神様は手を横にさっと払う。
ダイニングテーブルに現れたのは、近未来のような立体的な地図。すごか、さすが神様。
少し隆起のある地図。
「進化した蛇は、いつものようにかつて一族が住んでいた場所を守ろうと、皇帝竜(カイザードラゴン)と激しくぶつかり合った。その結果」
ぱちん、と指を鳴らす始祖神様。
すると地図は蠢く。まるで爆発でもあったような動き。いや、始祖神様の口振りや、爆発したんやないかな?
「衝撃波で、王冠山ができた」
どんな衝撃ー? 山ってそんな理由で出来るのー? 下手したら歴史的な大怪獣合戦やなかったのー?
蠢いていた地図は、王冠山の形を作り動かなくなる。
「決着ははっきりつかず、皇帝竜(カイザードラゴン)に軍配はかろうじて上がったが、なんとか競り勝っただけじゃった。蛇も、その際のキズが原因で仮死状態となり、王冠山の内側で眠りについた」
それが起きたってことやね。だけど、蛇も災難だね、その一族の為に頑張ってさ。
「月日が流れ、王冠山の周囲は森から、魔の森へ、そして魔境となった」
なるほど。イシスが言ってたやつね。なら、今回雨を降らせたのはその蛇になるのかな? いやや、蛇。
「で、その蛇じゃが。従魔達よ、種族の予想はつくかの?」
急に話を振られて、戸惑いの表情を浮かべている。
『私は自信ないのです』
『私も。よく分からない気配でした』
ビアンカとルージュは、分からないみたい。
『イシスよ、分かるか? 我にはだいたいの予想は着くぞっ』
どやややぁっ、なアレス。
『ヒュドラノ亜種カト』
アレスが、がーんっ、みたいな。イシスが言っちゃったけど、同じ考えだったのかな。出し惜しみするからよ。
ヒュドラってたしか、あれよね、首が9もある蛇でしょ? やだあ、さらにやだあ。
「どうしてそう判断したのじゃ?」
始祖神様がイシスに聞く。
「本体ハヒトツ、シカシ、ソレニ付属シタヨウナ首ガ、ヤッツ。首ハソレゾレニ意思ガ有ルヨウデシタ」
ふーん、さすがイシスやなあ、よく分かった…………………
本体が1つで首が8つ? 首が8つの蛇?
え、聞いたことあるんですけどっ。えっ? あれ神話の話でしょ? 違う? めっちゃ、有名な話しなんですけどっ。
「お嬢さん、心当たりは?」
来たーっ。私に振るってことはそんなんやーっ。ちらっと晃太を見ると、似たような顔だ。
「ヤマタノオロチ、ですか?」
「正解」
嘘やろ?
て、ことは、その一族って。
「そう、お嬢さんと同郷じゃ。お嬢さん達にしたら、ずっと昔の先祖かの。その蛇も、向こうにいれば、相応の寿命じゃったんじゃが、こちらの魔力の波長と相性が良すぎたようでなあ。トントン拍子で進化したのじゃよ」
ヤマタノオロチって、神様が、神話に出てくるスサノオノミコトが倒したんやなかったっけ?
「本来ならば、ヤマタノオロチはそのまま王冠山内で眠り続け、静かに朽ち果てるはずだったのじゃが」
ふう、と始祖神様。
「地脈に含まれる魔力が乱れ、その刺激で、ヤマタノオロチが半覚醒しかけてな。そのまま再び眠りにつくか、覚醒するかよく分からんでなあ。だからといって儂らが刺激したら、王冠山どころか周辺一辺を吹き飛ばすからのう」
やめて。
「件の皇帝竜(カイザードラゴン)に神託を下そうかとも思ったのじゃが。絶対大惨事になりそうでなあ」
やめて。
「そこでまずはお嬢さん方にお願いしたんじゃ。複数のエリアボスクラスの魔物が近くにいて、ヤマタノオロチが排除に動き覚醒に近付くか、静観して眠りの体勢に入るか。まあ、結果あれじゃ。ヤマタノオロチの感知範囲外に出たから、今は静かになったがこのままならいずれは覚醒するじゃろう」
下手に刺激せんほうが、良かったんやない?
「一度は半覚醒してしまった。遅かれ早かれ覚醒はする。その時、ヤマタノオロチは混乱するじゃろう。周辺は年月が経ち過ぎて、変貌し、そこが一族と過ごした場所とは分からず、這い出す。そうなれば、魔の森は壊滅。魔境も無事にはすまん。周辺の町は瞬時に崩壊し、国すらも飲み込み、この大陸は火の海になるじゃろう」
やめて。絶対やめて。魔境には鼻水君達が。カルーラにはレディ・ロストークやパーヴェルさんやシスター・アモルさんが。リティアさんやタージェルさん、ダイアナちゃん、パーカーさん達の顔が浮かぶ。たくさんの人達の笑顔が浮かぶ。
「そうなった時、ヤマタノオロチと誰が対峙する?」
私はそっとイシスとアレスを見るが、視線を反らされた。厄災クラスのこの2人が無理なら、どうにもできんのかな、ああ、どうしよう。
ああ、うちらには無理やない? どうするん? そもそも地脈の魔力が乱れた原因は?
「現在、ヤマタノオロチと対峙するだけの力があり、神託を下してすぐに動けるのは、皇帝竜(カイザードラゴン)のみ。そうなれば、辺り一帯は吹き飛ぶ、文字通りに」
「どうにもならないのでしょうか?」
それだけは絶対に避けないと。
予想以上に事態が深刻や。
「お嬢さん」
始祖神様が、私に向き合う。
「本来なら別大陸まで逃げなさいと、言うべきなのじゃろう。だが、お嬢さんならそんなことは望まないはず」
無理や、そんなこと。
失いたくないものが、いっぱいあるんやから。
始祖神様が立ち上がる。
「テイマー、ユイ・ミズサワよ」
フルネーム。初めてやない? 神様に名前呼ばれたの?
「この世界の創造主、始祖神より、そなたに神託を下す」
私は反射的に膝をつく。そうせんと、いかん、そんな気がした。
「王冠山に潜む、ヤマタノオロチを退治せよ」
静かに下されたその言葉に、腹の奥が引き締まる。
「もちろん、儂らがサポートしよう。その為の適応外にしたのじゃから」
本来、神様はこちらに干渉できないって、聞いた。限られた人に限られたスキルを通して、ほんの少しだけ。それにはいろいろ理由がある。神様の力を利用して、悪用する人がいるからだ。
「ヤマタノオロチが半覚醒した地脈の魔力の乱れ。それを引き起こしたのは、聖女カレン・ミヤノサワ達が起こした厄災じゃ」
あれから2年経ってもまだ、縁の切れない話になりそうや。
深刻、の言葉に私は不安を覚える。
始祖神様はふう、と息をつく。
「此度の件、異世界人が起こした厄災に関連した、偶発的魔物の氾濫(スタンビード)と認識。創世時に律した、神による直接下界介入禁忌・過剰干渉不可の適用外と見なす」
ん? ん? なんや、難しい言葉が。
始祖神様が言っている間、後ろでバタバタ。ちら、と見ると皆さんそれぞれ膝をついている。ビアンカやルージュが、床に頭が着くくらい低くしているから、察してくれたかな。
「ふう、自分で律したとは言え、なんとももどかしいのう」
「始祖神様?」
本当になんやろ?
「お嬢さん」
「あ、はい」
きっと分からない事をいろいろ教えてくれるんやろうね。でも、まだ、ちゃんと報告してない。
「まずは危険な目に合わせて、申し訳なかったの」
あ、あの雨の中、ノワールに騎乗したことかな。
「大変だったのはホークさんやノワールでしたので」
私はただ乗ってただけ。
「で、お嬢さんの疑問に答えたいのじゃが。何から聞きたい?」
「えーっと、まずはあの雨を降らせていたのは? 何故、私達に依頼を? 何故今ごろになってビアンカやルージュが気がついたんですか?」
疑問。
以前、あの王冠山付近をビアンカとルージュが、アレスと共に走っても何も起きなかった。それなのに、何故今回反応があったのか?
何故、始祖神様は私達に、王冠山付近を廻るように指示したのか? こうなるって薄々分かっていたと思うのに。
そして何より、あんなゲリラ豪雨を降らせ、土石流まで発生させたのは何かだ。
「まあ、そうじゃろうな。では、一つずつ話そうかの」
始祖神様は息を着く。
「あの雨を降らせたのは、お嬢さん方がいう王冠山の内側に眠っていたのじゃよ」
眠っていた?
「少し長い話になるが、よいかの?」
「はい」
ならお茶の準備ば。
母が玉露を淹れて準備していた。
それは何千年か前の話。
別の世界から逃げ延びてきた一族があった。まだその時は別の世界からの移民を受けていた頃ね。
その一族は神子と呼ばれる人を筆頭として纏まっていた。彼らは未開の土地を根気よく開拓して、何とか生活。それでもこちらには魔物がいる。その魔物から一族を守っていたのは、連れてきた一匹の蛇だったと。いやや、蛇。
こちらの魔力と波長があったのか、普通サイズの蛇はあっという間に大蛇になり、襲い来る魔物を撃退。食べられる魔物の狩り、開拓に助けになる働き者の蛇で、一族の守り神と崇められていた。初めは30人程の集落だったが、年月が経ち、200人以上となった頃。
「感染症が原因で、呆気なく、な」
もとよりきちんとした感染対策がなされているわけなく、もう、数年も経たずに全滅。
「蛇だけは生き残った。いや、残された、じゃな。だがな、蛇はそれが理解できなかったのじゃよ」
蛇だもん。
「こちらの魔力と相性がよく、短期間に進化を繰り返し、ある程度の知能があったのだがなぁ」
蛇は、一族皆亡くなったのが分からず、それでも集落を守り続けた。何年も、何十年も、何百年も。その間も蛇は進化。すでに蛇と表現していいのかな?
「ある時、一体の魔物が襲ってきた」
それは進化し、強大になった蛇に挑んだ。
「皇帝竜(カイザードラゴン)じゃ」
……………………ん? まさか、ビアンカとルージュの言う、『主様』では? あまりいそうな感じもないし。
始祖神様は手を横にさっと払う。
ダイニングテーブルに現れたのは、近未来のような立体的な地図。すごか、さすが神様。
少し隆起のある地図。
「進化した蛇は、いつものようにかつて一族が住んでいた場所を守ろうと、皇帝竜(カイザードラゴン)と激しくぶつかり合った。その結果」
ぱちん、と指を鳴らす始祖神様。
すると地図は蠢く。まるで爆発でもあったような動き。いや、始祖神様の口振りや、爆発したんやないかな?
「衝撃波で、王冠山ができた」
どんな衝撃ー? 山ってそんな理由で出来るのー? 下手したら歴史的な大怪獣合戦やなかったのー?
蠢いていた地図は、王冠山の形を作り動かなくなる。
「決着ははっきりつかず、皇帝竜(カイザードラゴン)に軍配はかろうじて上がったが、なんとか競り勝っただけじゃった。蛇も、その際のキズが原因で仮死状態となり、王冠山の内側で眠りについた」
それが起きたってことやね。だけど、蛇も災難だね、その一族の為に頑張ってさ。
「月日が流れ、王冠山の周囲は森から、魔の森へ、そして魔境となった」
なるほど。イシスが言ってたやつね。なら、今回雨を降らせたのはその蛇になるのかな? いやや、蛇。
「で、その蛇じゃが。従魔達よ、種族の予想はつくかの?」
急に話を振られて、戸惑いの表情を浮かべている。
『私は自信ないのです』
『私も。よく分からない気配でした』
ビアンカとルージュは、分からないみたい。
『イシスよ、分かるか? 我にはだいたいの予想は着くぞっ』
どやややぁっ、なアレス。
『ヒュドラノ亜種カト』
アレスが、がーんっ、みたいな。イシスが言っちゃったけど、同じ考えだったのかな。出し惜しみするからよ。
ヒュドラってたしか、あれよね、首が9もある蛇でしょ? やだあ、さらにやだあ。
「どうしてそう判断したのじゃ?」
始祖神様がイシスに聞く。
「本体ハヒトツ、シカシ、ソレニ付属シタヨウナ首ガ、ヤッツ。首ハソレゾレニ意思ガ有ルヨウデシタ」
ふーん、さすがイシスやなあ、よく分かった…………………
本体が1つで首が8つ? 首が8つの蛇?
え、聞いたことあるんですけどっ。えっ? あれ神話の話でしょ? 違う? めっちゃ、有名な話しなんですけどっ。
「お嬢さん、心当たりは?」
来たーっ。私に振るってことはそんなんやーっ。ちらっと晃太を見ると、似たような顔だ。
「ヤマタノオロチ、ですか?」
「正解」
嘘やろ?
て、ことは、その一族って。
「そう、お嬢さんと同郷じゃ。お嬢さん達にしたら、ずっと昔の先祖かの。その蛇も、向こうにいれば、相応の寿命じゃったんじゃが、こちらの魔力の波長と相性が良すぎたようでなあ。トントン拍子で進化したのじゃよ」
ヤマタノオロチって、神様が、神話に出てくるスサノオノミコトが倒したんやなかったっけ?
「本来ならば、ヤマタノオロチはそのまま王冠山内で眠り続け、静かに朽ち果てるはずだったのじゃが」
ふう、と始祖神様。
「地脈に含まれる魔力が乱れ、その刺激で、ヤマタノオロチが半覚醒しかけてな。そのまま再び眠りにつくか、覚醒するかよく分からんでなあ。だからといって儂らが刺激したら、王冠山どころか周辺一辺を吹き飛ばすからのう」
やめて。
「件の皇帝竜(カイザードラゴン)に神託を下そうかとも思ったのじゃが。絶対大惨事になりそうでなあ」
やめて。
「そこでまずはお嬢さん方にお願いしたんじゃ。複数のエリアボスクラスの魔物が近くにいて、ヤマタノオロチが排除に動き覚醒に近付くか、静観して眠りの体勢に入るか。まあ、結果あれじゃ。ヤマタノオロチの感知範囲外に出たから、今は静かになったがこのままならいずれは覚醒するじゃろう」
下手に刺激せんほうが、良かったんやない?
「一度は半覚醒してしまった。遅かれ早かれ覚醒はする。その時、ヤマタノオロチは混乱するじゃろう。周辺は年月が経ち過ぎて、変貌し、そこが一族と過ごした場所とは分からず、這い出す。そうなれば、魔の森は壊滅。魔境も無事にはすまん。周辺の町は瞬時に崩壊し、国すらも飲み込み、この大陸は火の海になるじゃろう」
やめて。絶対やめて。魔境には鼻水君達が。カルーラにはレディ・ロストークやパーヴェルさんやシスター・アモルさんが。リティアさんやタージェルさん、ダイアナちゃん、パーカーさん達の顔が浮かぶ。たくさんの人達の笑顔が浮かぶ。
「そうなった時、ヤマタノオロチと誰が対峙する?」
私はそっとイシスとアレスを見るが、視線を反らされた。厄災クラスのこの2人が無理なら、どうにもできんのかな、ああ、どうしよう。
ああ、うちらには無理やない? どうするん? そもそも地脈の魔力が乱れた原因は?
「現在、ヤマタノオロチと対峙するだけの力があり、神託を下してすぐに動けるのは、皇帝竜(カイザードラゴン)のみ。そうなれば、辺り一帯は吹き飛ぶ、文字通りに」
「どうにもならないのでしょうか?」
それだけは絶対に避けないと。
予想以上に事態が深刻や。
「お嬢さん」
始祖神様が、私に向き合う。
「本来なら別大陸まで逃げなさいと、言うべきなのじゃろう。だが、お嬢さんならそんなことは望まないはず」
無理や、そんなこと。
失いたくないものが、いっぱいあるんやから。
始祖神様が立ち上がる。
「テイマー、ユイ・ミズサワよ」
フルネーム。初めてやない? 神様に名前呼ばれたの?
「この世界の創造主、始祖神より、そなたに神託を下す」
私は反射的に膝をつく。そうせんと、いかん、そんな気がした。
「王冠山に潜む、ヤマタノオロチを退治せよ」
静かに下されたその言葉に、腹の奥が引き締まる。
「もちろん、儂らがサポートしよう。その為の適応外にしたのじゃから」
本来、神様はこちらに干渉できないって、聞いた。限られた人に限られたスキルを通して、ほんの少しだけ。それにはいろいろ理由がある。神様の力を利用して、悪用する人がいるからだ。
「ヤマタノオロチが半覚醒した地脈の魔力の乱れ。それを引き起こしたのは、聖女カレン・ミヤノサワ達が起こした厄災じゃ」
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