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帰宅しましょう⑧

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 明日からノワールに付き添うホークさんの為に、私のBサイズのマジックバッグに色々詰め込む。
 ノワールには野菜と果物ね。冷蔵庫ダンジョンでたくさん手に入れておいて良かった。ホークさんには食事は出るが、スープと硬めのパン。寝床は控え室でちゃんとベッドもある。奴隷に対しては破格の扱いだそうだ。食事が出るが、足りないからね。補食だ。幾つかのわっぱのお弁当に、バランスよく、食事を入れていく。かしわの醤油唐揚げ、ポテトサラダ、私の焼いた卵焼き、クラーケンとインゲン豆の炒め物、貝柱のバター焼き、キュウリのハム巻き、野菜炒め。異世界のメニューからもチョイス。時間停止だから、出来立ての状態。冷えたノンアルコールビールも入れてばっちり。後は着替えやお風呂がないから身体を拭くためのボディーウェットティッシュ。こんなもんかね。
 次の日、朝からハートマークを飛ばすノワールと共に、迎えの人とホークさんはパーティーハウスを出た。
「ホークさん、ノワールをお願いします」
「はいユイさん。チュアン、後は頼む」
「分かった」
 皆でお見送り。
 さ、パーティーハウスに戻ろう。振り返ると、らんらんとした目で、
『ユイ』
『散歩に行きたいわ』
 ビアンカとルージュの鼻面が迫る。
「今日くらいゆっくりしようよ」
『身体が鈍るのです』
『走りたいわ』
『よし、妹達よ、我と行こうぞっ』
 アレスが割って入ってくる。途端にビアンカとルージュが左右にそっぽ向く。
「はあ、ちょっと考えよう」
 ここがマーファなら何とかなるが、まだ来て日が浅いカルーラで爆走されると困る。
 一旦パーティーハウスに入り、ルームに。ホルスを新たに加えた仔達は、わーっ、と中庭に走り出していった。
『ねえねえ、ユイ、散歩に行きたいのです~』
『いいでしょう? アレスはルームに置いていくから~』
『わーっはっはっはー、恥ずかしがりやだなっ』
 ビアンカとルージュは、アレスを無視している。
 うーん、どうしようかなあ。ダンジョンの上級者向けで人気のないエリアなら、走ってもらってもいいけど。
「うーん、魔境に行くね? サブ・ドアあるけど。ドラゴンの解体明日なんやけど。シスター・アモルの面会もあるし、鼻水君にドラゴン食べさせたいし」
『そうだったのです。明日ドラゴンなのですね』
『元々は鼻水が獲った獲物ね』
『妹よ、妹よ、我と、きゃいんっ』
 ビアンカとルージュのパンチが飛ぶ。きゃいんっなんて言ってるが、効いてないんだよね。よよよ、と倒れて母の足元に踞る。
『ぐすんっ、妹がっ妹がっ恥ずかしがりやなのだっ』
「よしよし。ビアンカ、ルージュ、お兄さんなんやから、優しくしてやらんね」
『お母さんっ、騙されてはいけないのですっ』
『そうよっ、私達のパンチなんて効きやしないんだからっ。物理的にどうにかできるのイシスだけよっ』
『母よ~』
 ブーイングを巻き起こすビアンカとルージュ。アレスは母の前でお腹を出して甘えの姿勢。母はアレスをよしよし。花がやきもち焼いているが、アレスの近くに寄れず吠えも出来ずにうろうろしている。収拾がつかず、ちょっとカオスな感じになったが。結局、今日はカルーラ付近を軽く散歩するだけと釘を刺す。
 お昼過ぎから総出で出かける。シルフィ達はバギーにのせて、のんびり移動。ホルスはゆったり旋回しながら着いてくる。途中の屋台で、アレスが何度も振り返るので、ビアンカとルージュが抑制してくれた。
 城門を出て、しばらく歩きシートを敷く。ホークさんがいないので、ちょっと不安だけど、気のせい。
『さぁっ、我と共に往くぞーッ。わーっはっはっはーっ』
「わんわんっ」
「がるうっ」
「クルッ」
 メンズ三人衆は嬉々としてアレスに着いていき、ビアンカとルージュはため息着きながら続く。三人娘も着いていき。アリスとシルフィ達は残る。私達はのんびりシートでまったり。季節は秋、過ごしやすい。シルフィ達はぽてぽて歩き、あはははん、かわいか、お尻がかわいか。花は脱走防止にリードを装着し、シルフィ達とは問題なく過ごしている。鷹の目の皆さんは魔力訓練を始めるので、私と晃太も参加する。
 最近、ミゲル君が属性魔法の訓練に熱心だ。やはり水属性のあるシーサーペントの剣を、いいコンディションで扱いたいそうだ。ミゲル君の属性は水と土がある。水の武器強化や身体強化をしたら、更なる攻撃力になるので、熱心に訓練している。エマちゃんとテオ君も触発されたのか、指導員のマデリーンさんの元、せっせと訓練している。
 私も頑張らんとね。
 父が何か設計している。
「なんば描きようと?」
「ん? ほら、サブ・ドアの向こうのお母さんウルフ達がおるエリアがあるやん。そこに暖房器具と水呑場を設置出来んかねって」
 魔境の冬は厳しい。寒さに耐えられない小さなウルフは命を落とす。これがあれば、多少は違うはずと。父は昔ながらの円柱の暖房器具をベースに、石油の代わりに魔石を燃料にすると。誤って倒れて火事とか心配だが、火事になる前に水魔法が使えるウルフもいるため、今回はとりあえず暖かくなる機能を着けて、足元をしっかりした造りにして設置したいと。設置しても数日間はチェックに行くそうだ。お母さん達のエリアに立ち入るには、イシスを父が説得している。もう冬は近いから。早急に設置したいと。水呑場は常に水が出るような仕組み。排水の為の溝は、ビアンカの魔法でどうにかなる。びば、魔法。
「よし、出来た。これで良かろう。明日、鍛治師ギルドに制作依頼ばせんと」
「出きるとすぐに?」
「話は持って行っとるからね。後は設計図待ちやったんよ」
「そうな。お母さんウルフと赤ちゃん達の為やもんね。お金、大丈夫な?」
「ん、大丈夫や」
 私の出きるのは燃料の魔石確保かな。ビアンカとルージュに頑張ってもらうしかないけど。私も頑張らんと、ぼちぼちレベルばあげんとね。
「きゅうっ」
「ん。なんね? シルフィ」
「きゅうっ、きゅうっ」
 私の膝に乗り上げるシルフィ。あはははーん、かわいかあ。イフリィとノームとウエンディまで来た、あはははははーん、たまらーんっ。もふもふー。
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