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帰宅しましょう⑤

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「えーっと、ミズサワ様、そちらは…………」
 冒険者カードを提示すると、後ろにいるアレス、アリス、ホルスを示される。
「あ、新しい従魔です」
 赤ちゃん達も見せんといかんかな?
 馬車から赤ちゃん達をちらり、と見せると、わぁと声が上がる。かわいかですからね。すう、とアリスが馬車の前に、アレスは更にその前に。
「赤ちゃん達の両親です」
「あ、あ、そうですか…………まずは従魔登録をお願いします。数名同行しますので」
「ありがとうございます」
 警備の人が数人着いてくれて、冒険者ギルドに向かう。案の定アレスは、キョロキョロしているが、ビアンカとルージュのおかげでおとなしい雰囲気。ホルスもキョロキョロしているが、仔達とくっついて歩いている。アリスはとってもおとなしい。
 何より注目を浴びているのはホルスだ。ウルフ系は案外テイムされることがあるらしく、ビアンカも数日カルーラで姿を見せていたので、アレスとアリスは、そこまでではない。だけど、グリフォン自体が珍しく、魔境とかにしかいない、ドラゴン同様にお話の世界の魔物だ。なので、二度見、三度見される。
 イシスやオシリスが来たらどうなることやら。
 来たとき以上の視線を浴びて、冒険者ギルドに。
 ノワールは入れないので、警備の人が手綱を持ってくれる。まず、晃太が馬車から降りて、バギーを出す。シルフィ達を乗せると、それを見た人達から悲鳴があがる。
「きゃー、かわいいっ」
「ちっさーいっ」
「触りたーいっ」
 鼻がぐいん、と伸びる。悲鳴をあげても近づくことはない。警備の人達も然り気無く間に立ってくれる。
 バギーは晃太が押して、そのままギルドに。アリスがきゅうきゅう鳴いて、バギーから身を乗り出すシルフィ達に優しく鼻で、ちゅ。晃太も落ちないように、そっと支える。
 ギルドに入ると、ざわっ、とされる。皆、おんなじ顔だ。
 なんか増えてる。
 だけど、バギーのシルフィ達には、好意的な視線だ。アリスがちらり、と牙を見せる。まあ、母性本能だね。
 早めに切り上げて帰ろう。窓口が1つ開き、誘導される。
 私とホークさんで向かう。
「到着報告と、新しい従魔登録を」
「はい。こちらの書類に必要事項のご記入を」
 対応してくれたのは、ベテランそうな女性職員さん。
 私は必要事項を記入する。
 フォレストガーディアンウルフ1体、幼体1体。アーマークイーンウルフ1体。アーマーナイトウルフ幼体3体。エンペラーグリフォン1体、と。
 ベテラン女性職員さんは、それを見て一瞬止まるが、直ぐに手続きしてくる。
 さ、今日は帰ろう。
「あの後日、魔物を持ち込んでもよろしいですか? 従魔が色々獲りまして」
「今からでもよろしいですが」
「両親が心配なので、明日伺います」
「では、お待ちしております」
 ベテラン女性職員さんは、丁寧に頭を下げる。私もぺこり。
 そそくさと、ギルドを後にする。
 警備の人がわざわざパーティーハウスまで付き合ってくれた。
「わんわんっ」
 花がパーティーハウスから飛び出してくる。あはははんっ、ぽちゃぽちゃボディっ。あ、いかん。
「ありがとうございます。わざわざ付いてもらって」
 私は馬車を降りて、警備の人にお礼を伝える。
「職務ですので」
 そう言って、一礼して帰っていった。見送って。
「花ちゃん、ただいまぁ」
 あはははんっ、このぽちゃぽちゃボディ。安心するぅ。
「おかえり」
 母も出てきた。仔達がわっ、と群がる。もふもふ。ホルスだけはどうしたものかと、思案している。
「さ、入ろう」
 私はパーティーハウスに入り、ルージュが直ぐに魔法のカーテンを広げる。確認して、ルームを開ける。
『ふうっ、疲れたのだ。よし、走るぞっ、わーはっはっはーっ。続け甥っ子どもーっ』
 え? 疲れているんやないの?
 アレスは、元気とコハクを引き連れて、中庭に飛び出して爆走を始める。ホルスはゆったりと飛行して大樹に止まる。
「よかの?」
『ルームの中なのです』
『大丈夫でしょ』
「なら、よかけどさ」
 ホークさんがノワールを誘導してくれる。アリスはシルフィ達と従魔の部屋に。早速お乳をあげてる。
 母が早速夕飯の準備に入る。父は3人娘をもふもふ。晃太は花を追いかけてデレデレしている。
 はあ。やっぱり落ち着くなあ。

 次の日。
 朝御飯を済ませて、ゆっくりしてからギルドに向かう。私と晃太、ホークさんとチュアンさん、ビアンカとで向かう。帰りは修道院に寄って、シスターアモルと面会予約をする。
 アレスはルームの中庭だ。ルージュもおるしね。それにアレスは何故か母の言葉に従順。おいで、と言うと、すぐにやってきて臥せている。これは元気が出来ない。コハクはなんだかんだと芸達者な所があるけど。
 警報器もあるし、ルージュの魔法のカーテンも広げてもらったしね。
 ギルドに着くと、直ぐに職員さんが応接室に案内してくれた。
 ソファーに腰かけ、ビアンカはゴロリ。ホークさんとチュアンさんはソファーの後ろに待機する。直ぐに事務局長のラソノさんがやって来た。
「お待たせしました」
「いいえ」
 直ぐに来てくれたしね。
「それで、何をお持ちに? 倉庫に参りましょうか?」
「いや、あまりにも多いので」
 晃太がそっとリストを差し出す。
「拝見させていただきます」
 ラソノさんがリストを受け取り見る。
 そして、かつて見た、リティアさんの様に顔の彫りが音を立てたように異常に深くなる。
「ミズサワ様」
「はい」
「こちらのリスト、あまり見かけない名前ばかりなのですが……………あ、」
 ラソノさんが言葉を中途半端に言葉を切る。あ、気が付きました? 一番したの方のリスト名。
「こ、この、ドラゴン×2は?」
「ちょっと手に入りましたので」
 鼻水君のビアンカへの献上品や。ビアンカの許可もあるし、解体したら一部のお肉は鼻水君にステーキにして食べさせようと思っている。
 ラソノさんのお顔がピキピキ言ってる。
「解体出来ますか? 出来たらお肉は欲しいのですが。あ、革、革ください、チュアンさんの装備品にっ」
 後ろで超小声で私には勿体無いですっ、と。でもさ、前線で戦うチュアンさんに、もうちょい装備品欲しい。
「お肉と革ですか。革の加工できる職人は、ユリアレーナでは首都にしかおりません。レッサードラゴンならなんとか出来る者はおりますが。首都以外なら、シーラにいますね。シーラは職人関係は他国に追随されぬ程揃っていますから」
「なるほど………………なら、玄武の革」
「私には勿体無いですっ」
 チュアンさんが小声ではっきり呟く。
「とりあえず」
 ラソノさんが、こほん、と自分を落ち着かせる為に息をつく。
「これらは吟味させて買い取りさせて頂きます。全ては無理ですので。まずは1体ドラゴンを解体しましょう。そのドラゴンの内臓は確実に買い取りさせて頂きます」
「よろしくお願いします」
 晃太が、ラソノさんの案内で倉庫にチュアンさんと向かう。
 応接室には、私とホークさん。入れ違うように、お茶を出してくれた。頂きます。ふーふー、と。
「ユイさん」
 冷ましていると、ホークさんが、ソファーの後ろから覗き込むように言って来た。
「はい、なんですか?」
「特別ボーナス、いいですか?」
「え? 決まりました?」
 今?
「はい。シーラに行きたいのです」
「シーラに?」
「はい」
 ホークさんは頷く。
「シーラにはマデリーンの姉でもある先代サブ・リーダーがいます。そして先代リーダーのワゾーもです。おそらく、マデリーンの身を案じているはずですし。俺自身も伝えないといけないことがあります。それに、ミゲルには、両親や兄弟達がいます。いくら家出したとは言え、今は戦闘奴隷となっています。手紙を出しているとは言え、身を案じているはずです」
 もともとあのワイン護衛の後、スライムダンジョンに挑み、それからシーラに、なんて話をしていたそうだ。
 そうやね。鷹の目の皆さんの中で、ご両親、兄弟が存命しているのはミゲル君だけ。シーラに手紙を出しているが、久しぶりに来た手紙に戦闘奴隷やってます、なんてあったら心配しとるはず。書いたかとか分からないけど。5年くらい帰っていないそうだ。交通手段が馬車しかないこちらの世界ではあたり前だけど。
「そうですね。きっとマデリーンさんのお姉さんも、ミゲル君のご家族も心配してますね。行きましょうシーラ。神様から頼まれた事が済んだら行きましょう」
「ありがとうございます、ユイさん」
 ほっとした表情のホークさん。
「でも、それでいいんですか? シーラにはその内って考えていたし。特別ボーナスにならない気がするんですが」
 だって、マデリーンさんとミゲル君の故郷だし、落ち着いたら行こうかなって思っていたし。
「今は、それしか思い付かないんです」
 ホークさんは眉を少し下げて答える。
「うーん。神様の依頼が済んでからでいいですか?」
「はい」
「私としては足りない気がするので、他に欲しいのあったら言ってください」
「はい、ユイさん」
『ユイ』
 私もほっとしていると、頬に冷たい感覚が。ビアンカが鼻面を押し付けていた。お目目キラキラ。
 嫌な予感。
『シーラには『試練のダンジョン』があったのです』
「やっぱりっ。あんたね、あんまりお兄さんの事、言えんばいっ」
『行きたいのです。きっとルージュもそう言うのです』
 きゅるんっ、きゅるんっ、きゅるーんっ。
「か、帰って、ルージュが同じ意見やったらね」
 まあ、自身がバトルジャンキーだと自覚のあるルージュが、嫌だわ、なんて言うことはないだろうけど。
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