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魔境②

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「はわひゃあはわわわぁぁぁぁッ」
 私の口から、形容し難い悲鳴が上がる。
 だってッ、だってーッ。
 僅かに緑がかった黒光りする蛇の軍団が、小山になってるんやもんっ。まじで勘弁やーッ。
『ふんっ』
  ちゅどどどどどんっ
 ビアンカが連続で放つ雷が直撃。
 魔境に入ってから、こんなんばっかりやーっ。
 今までより少し毛色の違う魔物があらわれる。魔境だからなのかね? でも、本当に勘弁や。昨日も蛇出たやん。もう、よかってーッ。
『しぶといわねっ』
  どかんッ、どかんッ、どかんッ
 ルージュも閃光を放つ。全弾命中。あははん、相変わらず、凄かっ。
 まだ、うねうねしてるぅ。いややあ。いややあ。
 ホークさんが手綱を操り、ノワールが走り抜ける。そのノワールの後ろ、まさにうねうね這って接近する蛇ー。
「ブヒヒヒーンッ」
 ノワールが私達を乗せながら危なげなく魔法を放つ。ひーっ、蛇の頭が、ちょんっと飛ぶーッ。一抱えある頭がーっ。ビアンカとルージュの指導の賜物(たまもの)か、始めは色々ひやひやしたけど、問題なく私達を乗せたまま風蹄(ヴァンオーブ)になれるし、発現系の風の刃を放っている。
  ぼとり。
 私の前に、頭がなくなった蛇、小型ね、私の感覚では普通サイズね。日本の藪とかで見るサイズね。
  ぼとり。ぼとり。ぼとり。
 落ちてくる。
 …………………………………………
 私の喉から、笛のような音がなる。
「ユイさんっ、しっかりーッ」
 ホークさんが叫ぶ。私、意識が飛びそうになる。
 本当に、もう、よかって。

 蛇達が全滅。
 私はルームに駆け込み、トイレできらきらを口から出している。
 食後しっかり休んだのに、さっきの戦闘でノワールはいつものようにジャンプジャンプ、前肢を軸にして横回転、石を踏み台にして縦回転。宇宙飛行士も真っ青だよ。でもって、頭のない蛇がぼとり。
 きらきら、きらきら。
 あー、出たー。
 嗽もする。あー、すっきり。
「ユイさん、もう大丈夫?」
「うん、もう出るのがないけんね」
 エマちゃんが心配してくれる。チュアンさんは洗面器抱えて待機してくれてる。ホークさんとミゲル君は回収している晃太につき、マデリーンさんとテオ君はノワールの装備品を洗ってくれている。
『ねえね~』
 ヒスイまで来てくれた。よしよし、もふもふ。
 外では、晃太が悲鳴を上げながら蛇を回収している。私はホークさんを見る。私がきらきら出したのに、ホークさんは平気そうなんだよね。どんな身体の構造しているんやろ? 不思議。
 疾走しているノワールに騎乗したままルームのドアは開けられない。一度やってみたが、揺れる馬上ですると、その影響か歪んだドアになり、開きやしない。
「もう、いややあ。蛇ー」
 晃太がげんなりした顔でルームに入ってくる。
 あの蛇の革は高級品らしい。革鎧とかに最適なんだって。模様が綺麗なところは、高級財布やバッグ、靴、ベルトになる。知らんがな。私、知らんがな。ワイバーンの装備品あるもん。
 昨日はカマキリのお化けやったね。
 晃太は、いやや、いやや、と言いながら、元気のお尻に頬擦り。
 魔境に入って3週間。何にも遭遇しないこともあるけど、そんなの僅か2日だけ。
 晃太のリストがすごいことになってる。
 その日は、それで終了。
 夕御飯、受け付けやせん。きらきら出したしね。もう魔境に入って何度目やねん。
「姉ちゃん、やっぱり食べれんね」
「ちょっとねえ」
 強制ダイエットになっているが、流石にきつか。母が心配して色々してくれるが、パックのゼリーを少し含むのが精一杯や。
「まあ、明日にはいつものように食べれるよ」
 疲れたので、ゆっくりお風呂に入り、早々と休むことに。私は早く休むのに、ホークさんはノワールの装備品の整備、エマちゃんとテオ君が作った矢のチェック。
 今回の件が終わったら、特別ボーナス払わんといかん気がする。
 お風呂、気持ちがよか。
 うーん、オプションで温泉着かんかなあ。岩盤浴とか、冷や汗やない、汗をかきたい。スーパー銭湯に行ったら、晃太はサウナが好きやし、母は薬草風呂、父は休憩所でいびきかいてたなあ。
 さ、お風呂入ったし、リフレッシュしたし、明日に備えよう。
 
 次の日。
 きらきら率が高いから、朝昼は軽くにしている。
『ユイ、もうしばらくしたら着くのです』
『後、数日ってとこね』
「順調?」
『そうなのですね』
『今のところはね』
「良かった」
 願わくば、居てください、『彼女さん』。
 今までの行程を考えて、家族会議を開きました。
 まあ、この道を行くなら、私の精神と身体が持たない。それにホークさん達、鷹の目の皆さんの拘束が続いてしまうからね。
 なので、『彼女さん』に会えなかったり、ご助力頂けなければ、現在カルーラで登録しているサブ・ドアを解除して、魔境のどこかで登録しようと言うことになった。それならサクッとこちらに来れるしね。
 進んだり、止まったりを繰り返す。時空神様の言う通り、無理せず。たまに仔達の実戦での戦闘訓練もする。凄いスピードで走りよってくる蜥蜴の集団。サイズ、壁にへばり着いてるサイズやないのよ。鰐やないのあれー?
 森の中はフォレストガーディアンウルフの元気、ルリ、クリスの得意フィールド。まあまあ魔法が当たる当たる。コハクもヒスイも負けてない。身軽に跳躍して、ベビージャガーパンチで一撃。鷹の目の皆さんも、晃太の支援魔法スキルアップのために、展開している。ホークさんはノワールに乗るため、弓で援護のみ。前線ではチュアンさんとミゲル君が立っている。ビアンカとルージュは見守る位置だ。ノワールと私はルームに避難。ノワールは走り回ると、蜥蜴なんてほぼ壊滅しちゃうから、体力の温存目的もある。私はノワールに揺られるだけで、毎日くたくたになるので。
 よし、終わったね。
 蜥蜴は牙は矢尻の材料になるし、革もこちらも鎧やブーツになる。回収して、一休み、出発。
 ノワールに騎乗して進むこと、更に数日。
『ユイ、森の様子がおかしいのですッ』
『エリアボスの間に、侵入者がいるわッ』
「えっ? でも『彼女さん』は?」
 進んでいると警告するビアンカとルージュ。だけど、エリアボスである『彼女さん』はかなり強いはずよね?
『いないのですッ』
『兄もいないわっ』
 あのたまに会話で扱いが雑なフォレストガーディアンウルフのお兄さんも? え、なんで? それに主である『彼女さん』がいない間に侵入者? 不味くない?
「戦況はっ?」
『同族達が交戦しているようなのですっ』
『恐らく敵は蜘蛛よ、かなりの数が侵入しているわっ』
『同族が押されているのですっ、血の匂いがするのですっ』
「救助に行ってッ、ルージュ、光のリンゴばっ」
 私達の回りにスイカサイズの光が多数浮かぶ。
「行ってッ」
『行くのですッ』
『ユイ、危ないなら、知らせるわっ、その時はルームに入ってっ』
 ビアンカとルージュが加速して、森の中を爆走していった。
「ホークさんっ」
「ユイさん、しっかり掴まってくださいっ」
「お願いしますっ」
 ホークさんが手綱を操り、ノワールも加速した。
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