398 / 820
連載
道のり⑤
しおりを挟む
次の日。
私は気合いを入れ直す為に冷たい水で、バシャバシャと顔を洗う。うん、スッキリ。
今日あたりから岩山だからね。しっかり餃子の具にならんとね。天気がよく、ここからでもその岩山が見える。ゴツゴツの岩山。みた感じだが、あれだ、テレビでよくみたロッククライミングとかの山や。下手したら世界の秘境スペシャル見たいな番組組まれそうな迫力だ。だけど、これは普通の山ではないはず。ビアンカとルージュがあれを越えて、住んでいた魔境から出たと言っていたから、通れる道があるはず。
………………………ちょっと心配だけど。
朝御飯を済ませ、片付ける。元気が干している最中のバスタオル咥えて走り、ミゲル君とエマちゃん、テオ君が必死に取り返す。若いなあ。
私は装備品チェック。ノワールもよし、ホークさんも準備よし。
「ホークさん、今日もお願いしますね」
「はい、ユイさん」
冷たい水の洗顔でスッキリした私に、ホークさんは通常通りの対応してくれる。
ノワールに乗り、マントを着けて、餃子の完成。
『ユイ、おそらく今日には岩山に入るのです』
『かなり急勾配よ。振り落とされないでね』
「分かった」
『ノワール、常に集中なのですよ』
『風の結界を常に張りなさい』
「ブヒヒンッ」
私はホークさんに通訳。
「分かりました。ユイさん、かなり揺れると思いますが、無理に力まずに」
と、次の言葉に迷う様子だ。あ、わかった、おんぶにだっこね。大人しく餃子の具になろう。
「はい、ホークさんに全て委ねます」
と、頼もしい皮のホークさんに答える。
「ッ」
「?」
あら、ホークさん、一瞬ひきつった気がしたけど。だけど、一瞬で、いつもの皮ホークさんになる。気のせいやね。
『さあ、行くのです』
『出発よ』
「はい、ホークさん、お願いします」
「はい」
「ブヒヒンッ」
どれくらい走ったか、やっと岩山付近に到着する。見上げるような高さの山。ちらほら岩影から蠢く影が。地面はすでに石場だ。
『ロックリザードなのです』
『蹴散らしましょうか?』
「いや、余計な刺激は止めとこ」
いつもなら止める間もなくちゅどん、ドカンだが、今は足場の悪い場所だから、2人とも大人しい。
しかし、この岩山、標高的にどれくらいだろ? 高山病とか心配なんやけど。魔法とかでどうにかならんかな?
ノワールは器用に、凸凹道を走り抜ける。途中で、ビアンカとルージュに色々訴えているようやけど。
『ユイ。少しルート変更するのです』
私は舌を噛みそうなので、頷いて返事をする。
『このままだったら、ユイが体調を崩すとノワールが言っているわ。だから、数日間かかるけど、回り道するって』
『ノワールの灯火の女神様のブーストに従うのです』
私は大きく頷く。頼むばい、ノワールや。
まさかあんな急斜面どうやっていくのか、ものすごく心配だったからありがたい。
ビアンカとルージュなら、数日で走り抜ける距離だが、やはり高山病を恐れて10日かけて走り抜ける。どうしても避けられない戦闘の時は、すぐにルームに避難。ビアンカとルージュがちゅどん、ドカン。このサイのお化けはなんやねん。恐ろしい山羊もなんやねん。晃太が慎重に回収する。サイの革は鎧に、山羊の毛は高級品だと。
『でも、肉がですねー』
『固いし、ちょっと臭いがねー』
と。
いや、あのね。やっぱり国産鶏じゃないと、臭みが、みたいな会話なんやけど。
食べんけどさ。
そしていくら回り道とは言え、ロッククライミングをしなくてはならない場所では、私は完全にホークさんに身を委ねて、目を閉じる。
だって、怖かもんっ。
リアルロッククライミングなんて、自分からでもせんのにっ。体に伝わる振動が物語る、絶対に刮目してはならないと。完全におんぶにだっこや。どんな風にノワールが飛んでいるか分からないが、ルーム内の晃太は、絶叫系がダメなため外を見ない。
夕方、ルームに入り、晃太が地図に書き込みながら、顔を上げる。
「ワイバーンとかおらんよね?」
あ、そうや。カレーの具材のワイバーン。軍隊ダンジョンでしこたま仕入れたからまだまだあるけど。ワイバーンはこういった山に生息しているって聞いた。
『おそらく遭遇はしないのです』
『ワイバーンの巣は、険しい山肌の隙間に巣を作っているのよ』
『私達のルート上には、いないのです』
『向こうも縄張りに無理やり侵入されて攻撃でもされなきゃ、私達に敵対しないわ』
「だよね」
なんせ、軍隊ダンジョンのワイバーンに向かってステーキだ、カレーの具材だ言いながらパタパタ落としていたもんね。
ふいに、外を見ていたら、雨が降りだした。あ、いけん、洗濯物っ。
中庭の天候は、ルームを開けた場所と連動する。中庭で遊んでいた仔達を避難させ、洗濯物を入れる。
かわいか仔達の足を拭き拭き。あははん、元気の足の太かこと。コハクとヒスイは肉球をあまりもみもみすると、嫌がることがあるのでほどほどに堪能。ルリとクリスは大人しくしている。
洗濯物を片付けて、窓の外を見ているビアンカとルージュに声をかける。
「雨、明日には止むかね?」
『そうなのですね』
『山の天候はよく変わるから』
『でも、少し長く降るかもなのです』
『今日の移動はここまでにしましょう』
「分かった」
私はホークさんに振り返る。
「今日の移動はここまでです」
「分かりました。ノワールの手入れに入ります」
「お願いします」
ホークさんは、チュアンさんと晃太でノワールの装備品を外して、ブラッシングや整備を始める。
さて、夕御飯の準備ばしようかね。
私は気合いを入れ直す為に冷たい水で、バシャバシャと顔を洗う。うん、スッキリ。
今日あたりから岩山だからね。しっかり餃子の具にならんとね。天気がよく、ここからでもその岩山が見える。ゴツゴツの岩山。みた感じだが、あれだ、テレビでよくみたロッククライミングとかの山や。下手したら世界の秘境スペシャル見たいな番組組まれそうな迫力だ。だけど、これは普通の山ではないはず。ビアンカとルージュがあれを越えて、住んでいた魔境から出たと言っていたから、通れる道があるはず。
………………………ちょっと心配だけど。
朝御飯を済ませ、片付ける。元気が干している最中のバスタオル咥えて走り、ミゲル君とエマちゃん、テオ君が必死に取り返す。若いなあ。
私は装備品チェック。ノワールもよし、ホークさんも準備よし。
「ホークさん、今日もお願いしますね」
「はい、ユイさん」
冷たい水の洗顔でスッキリした私に、ホークさんは通常通りの対応してくれる。
ノワールに乗り、マントを着けて、餃子の完成。
『ユイ、おそらく今日には岩山に入るのです』
『かなり急勾配よ。振り落とされないでね』
「分かった」
『ノワール、常に集中なのですよ』
『風の結界を常に張りなさい』
「ブヒヒンッ」
私はホークさんに通訳。
「分かりました。ユイさん、かなり揺れると思いますが、無理に力まずに」
と、次の言葉に迷う様子だ。あ、わかった、おんぶにだっこね。大人しく餃子の具になろう。
「はい、ホークさんに全て委ねます」
と、頼もしい皮のホークさんに答える。
「ッ」
「?」
あら、ホークさん、一瞬ひきつった気がしたけど。だけど、一瞬で、いつもの皮ホークさんになる。気のせいやね。
『さあ、行くのです』
『出発よ』
「はい、ホークさん、お願いします」
「はい」
「ブヒヒンッ」
どれくらい走ったか、やっと岩山付近に到着する。見上げるような高さの山。ちらほら岩影から蠢く影が。地面はすでに石場だ。
『ロックリザードなのです』
『蹴散らしましょうか?』
「いや、余計な刺激は止めとこ」
いつもなら止める間もなくちゅどん、ドカンだが、今は足場の悪い場所だから、2人とも大人しい。
しかし、この岩山、標高的にどれくらいだろ? 高山病とか心配なんやけど。魔法とかでどうにかならんかな?
ノワールは器用に、凸凹道を走り抜ける。途中で、ビアンカとルージュに色々訴えているようやけど。
『ユイ。少しルート変更するのです』
私は舌を噛みそうなので、頷いて返事をする。
『このままだったら、ユイが体調を崩すとノワールが言っているわ。だから、数日間かかるけど、回り道するって』
『ノワールの灯火の女神様のブーストに従うのです』
私は大きく頷く。頼むばい、ノワールや。
まさかあんな急斜面どうやっていくのか、ものすごく心配だったからありがたい。
ビアンカとルージュなら、数日で走り抜ける距離だが、やはり高山病を恐れて10日かけて走り抜ける。どうしても避けられない戦闘の時は、すぐにルームに避難。ビアンカとルージュがちゅどん、ドカン。このサイのお化けはなんやねん。恐ろしい山羊もなんやねん。晃太が慎重に回収する。サイの革は鎧に、山羊の毛は高級品だと。
『でも、肉がですねー』
『固いし、ちょっと臭いがねー』
と。
いや、あのね。やっぱり国産鶏じゃないと、臭みが、みたいな会話なんやけど。
食べんけどさ。
そしていくら回り道とは言え、ロッククライミングをしなくてはならない場所では、私は完全にホークさんに身を委ねて、目を閉じる。
だって、怖かもんっ。
リアルロッククライミングなんて、自分からでもせんのにっ。体に伝わる振動が物語る、絶対に刮目してはならないと。完全におんぶにだっこや。どんな風にノワールが飛んでいるか分からないが、ルーム内の晃太は、絶叫系がダメなため外を見ない。
夕方、ルームに入り、晃太が地図に書き込みながら、顔を上げる。
「ワイバーンとかおらんよね?」
あ、そうや。カレーの具材のワイバーン。軍隊ダンジョンでしこたま仕入れたからまだまだあるけど。ワイバーンはこういった山に生息しているって聞いた。
『おそらく遭遇はしないのです』
『ワイバーンの巣は、険しい山肌の隙間に巣を作っているのよ』
『私達のルート上には、いないのです』
『向こうも縄張りに無理やり侵入されて攻撃でもされなきゃ、私達に敵対しないわ』
「だよね」
なんせ、軍隊ダンジョンのワイバーンに向かってステーキだ、カレーの具材だ言いながらパタパタ落としていたもんね。
ふいに、外を見ていたら、雨が降りだした。あ、いけん、洗濯物っ。
中庭の天候は、ルームを開けた場所と連動する。中庭で遊んでいた仔達を避難させ、洗濯物を入れる。
かわいか仔達の足を拭き拭き。あははん、元気の足の太かこと。コハクとヒスイは肉球をあまりもみもみすると、嫌がることがあるのでほどほどに堪能。ルリとクリスは大人しくしている。
洗濯物を片付けて、窓の外を見ているビアンカとルージュに声をかける。
「雨、明日には止むかね?」
『そうなのですね』
『山の天候はよく変わるから』
『でも、少し長く降るかもなのです』
『今日の移動はここまでにしましょう』
「分かった」
私はホークさんに振り返る。
「今日の移動はここまでです」
「分かりました。ノワールの手入れに入ります」
「お願いします」
ホークさんは、チュアンさんと晃太でノワールの装備品を外して、ブラッシングや整備を始める。
さて、夕御飯の準備ばしようかね。
1,749
お気に入りに追加
7,674
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。