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道のり⑤

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 次の日。
 私は気合いを入れ直す為に冷たい水で、バシャバシャと顔を洗う。うん、スッキリ。
 今日あたりから岩山だからね。しっかり餃子の具にならんとね。天気がよく、ここからでもその岩山が見える。ゴツゴツの岩山。みた感じだが、あれだ、テレビでよくみたロッククライミングとかの山や。下手したら世界の秘境スペシャル見たいな番組組まれそうな迫力だ。だけど、これは普通の山ではないはず。ビアンカとルージュがあれを越えて、住んでいた魔境から出たと言っていたから、通れる道があるはず。
 ………………………ちょっと心配だけど。
 朝御飯を済ませ、片付ける。元気が干している最中のバスタオル咥えて走り、ミゲル君とエマちゃん、テオ君が必死に取り返す。若いなあ。
 私は装備品チェック。ノワールもよし、ホークさんも準備よし。
「ホークさん、今日もお願いしますね」
「はい、ユイさん」
 冷たい水の洗顔でスッキリした私に、ホークさんは通常通りの対応してくれる。
 ノワールに乗り、マントを着けて、餃子の完成。
『ユイ、おそらく今日には岩山に入るのです』
『かなり急勾配よ。振り落とされないでね』
「分かった」
『ノワール、常に集中なのですよ』
『風の結界を常に張りなさい』
「ブヒヒンッ」
 私はホークさんに通訳。
「分かりました。ユイさん、かなり揺れると思いますが、無理に力まずに」
 と、次の言葉に迷う様子だ。あ、わかった、おんぶにだっこね。大人しく餃子の具になろう。
「はい、ホークさんに全て委ねます」
 と、頼もしい皮のホークさんに答える。
「ッ」
「?」
 あら、ホークさん、一瞬ひきつった気がしたけど。だけど、一瞬で、いつもの皮ホークさんになる。気のせいやね。
『さあ、行くのです』
『出発よ』
「はい、ホークさん、お願いします」
「はい」
「ブヒヒンッ」
 
 どれくらい走ったか、やっと岩山付近に到着する。見上げるような高さの山。ちらほら岩影から蠢く影が。地面はすでに石場だ。
『ロックリザードなのです』
『蹴散らしましょうか?』
「いや、余計な刺激は止めとこ」
 いつもなら止める間もなくちゅどん、ドカンだが、今は足場の悪い場所だから、2人とも大人しい。
 しかし、この岩山、標高的にどれくらいだろ? 高山病とか心配なんやけど。魔法とかでどうにかならんかな?
 ノワールは器用に、凸凹道を走り抜ける。途中で、ビアンカとルージュに色々訴えているようやけど。
『ユイ。少しルート変更するのです』
 私は舌を噛みそうなので、頷いて返事をする。
『このままだったら、ユイが体調を崩すとノワールが言っているわ。だから、数日間かかるけど、回り道するって』
『ノワールの灯火の女神様のブーストに従うのです』
 私は大きく頷く。頼むばい、ノワールや。
 まさかあんな急斜面どうやっていくのか、ものすごく心配だったからありがたい。
 ビアンカとルージュなら、数日で走り抜ける距離だが、やはり高山病を恐れて10日かけて走り抜ける。どうしても避けられない戦闘の時は、すぐにルームに避難。ビアンカとルージュがちゅどん、ドカン。このサイのお化けはなんやねん。恐ろしい山羊もなんやねん。晃太が慎重に回収する。サイの革は鎧に、山羊の毛は高級品だと。
『でも、肉がですねー』
『固いし、ちょっと臭いがねー』
 と。
 いや、あのね。やっぱり国産鶏じゃないと、臭みが、みたいな会話なんやけど。
 食べんけどさ。
 そしていくら回り道とは言え、ロッククライミングをしなくてはならない場所では、私は完全にホークさんに身を委ねて、目を閉じる。
 だって、怖かもんっ。
 リアルロッククライミングなんて、自分からでもせんのにっ。体に伝わる振動が物語る、絶対に刮目してはならないと。完全におんぶにだっこや。どんな風にノワールが飛んでいるか分からないが、ルーム内の晃太は、絶叫系がダメなため外を見ない。
 夕方、ルームに入り、晃太が地図に書き込みながら、顔を上げる。
「ワイバーンとかおらんよね?」
 あ、そうや。カレーの具材のワイバーン。軍隊ダンジョンでしこたま仕入れたからまだまだあるけど。ワイバーンはこういった山に生息しているって聞いた。
『おそらく遭遇はしないのです』
『ワイバーンの巣は、険しい山肌の隙間に巣を作っているのよ』
『私達のルート上には、いないのです』
『向こうも縄張りに無理やり侵入されて攻撃でもされなきゃ、私達に敵対しないわ』
「だよね」
 なんせ、軍隊ダンジョンのワイバーンに向かってステーキだ、カレーの具材だ言いながらパタパタ落としていたもんね。
 ふいに、外を見ていたら、雨が降りだした。あ、いけん、洗濯物っ。
 中庭の天候は、ルームを開けた場所と連動する。中庭で遊んでいた仔達を避難させ、洗濯物を入れる。
 かわいか仔達の足を拭き拭き。あははん、元気の足の太かこと。コハクとヒスイは肉球をあまりもみもみすると、嫌がることがあるのでほどほどに堪能。ルリとクリスは大人しくしている。
 洗濯物を片付けて、窓の外を見ているビアンカとルージュに声をかける。
「雨、明日には止むかね?」
『そうなのですね』
『山の天候はよく変わるから』
『でも、少し長く降るかもなのです』
『今日の移動はここまでにしましょう』
「分かった」
 私はホークさんに振り返る。
「今日の移動はここまでです」
「分かりました。ノワールの手入れに入ります」
「お願いします」
 ホークさんは、チュアンさんと晃太でノワールの装備品を外して、ブラッシングや整備を始める。
 さて、夕御飯の準備ばしようかね。
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