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カルーラへ⑨
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その後、後片付けして、馬車内で小さくルームに入り、交代でお風呂を済ませる。朝ごはんの準備も済ませた。ディレックスは夜遅くまで空いているから便利。
念のため、馬車内で休む事に。久しぶりに花と寝るかね。もふもふ。お尻もふもふ。しかし、花は母の布団に潜り込む。あはははん、花ちゃーん。
「お母さんがよかね、そうよね、ブラッシングやご飯は全部お母さんよね~」
布団に潜り込み、枕に当たり前のように頭を乗せる花に頬擦りする母。くっ、正論っ。
仕方なか諦めて寝るか。ちょっと前まで仔達も布団に入って来たのに、今じゃ一番小さかったヒスイも無理なサイズや。シングルは無理や、せめてダブルくらいやなあ。なんて思いながら、布団をかぶりなおした。
明日、やっとカルーラだ。
次の日。
「おはようございます」
「おはようございますユイさん」
ホークさんがハートマークを飛ばすレディ・ロストークを撫でてる。本当に懐いているのね。
ビアンカとルージュ、仔達はまだ寝てる。元気は変わらず男の子全開。
「ユイさん、おはようございますっ」
「おはようございますっ」
エマちゃんとテオ君が駆けてくる。
「おはよう」
元気やね。よしよし。
さ、朝ごはんの準備するかね。眠そうな晃太が、簡易テーブルを出して、鍋やパンを出している。私はまずはパメラさんのチェックを父と行う。悪化ないようや、良かった。カルーラまで私達の馬車に乗ってもらう。
次はパーヴェルさんと話すことになる。昨日使用したポーション代だ。何を何本使用したか覚えてない。
「そんな訳にはいかない。部下や魔法馬を救ってくれた、タダとはいきません。食事も随分いただきましたし」
「と、言われても何本使ったかなあ? 上級と中級それぞれ、だいたい30本位です。あ、そうだ。全部それをカルーラの孤児院に寄付してください」
パーヴェルさんは、首を傾げる。
「それだけでいいんですか?」
「はい。あ、それから街に入るの待つのが…………」
「それでしたら、我らが同行しますからご心配なく。ギルドまでお付き合いしますよ。貴女は恩人だ、いずれカルーラ領主である父から謝礼があると思います」
なんとパーヴェルさん、カルーラ領主イコスティ辺境伯の息子さん。長男さんだって。
「ありがとうございます」
「それから」
パーヴェルさんはポリポリとほほをかく。
「個人的にお願いがありまして、カルーラで落ち着かれてから、お伺いしても?」
「構いませんが」
なんやろ? は、まさかホークさんの引き抜き? 非常に困る。断固拒否せんと。レディ・ロストークはホークさんに変わらずすり寄ってる。
「はい、数日間しか私達はいませんが」
「それでも」
食い下がるパーヴェルさん。ピシャッと断らんとね。
さ、朝ごはん。
ディレックスのパックのコーンポタージュ。いそいそと皆さん並んでる。私はパメラさんにコーンポタージュとディレックスのライ麦パンを搬送。しきりに恐縮していたけど、しっかり栄養取らんとね。
私達も交代で軽く朝ごはんにする。
母特製サラダモーニングをビアンカとルージュ、仔達も起きてきてもりもりと食べている。
『ねえ、ユイ、今日は何が食べれるのです?』
『エビがいいわ』
「はいはい。でも昨日のオルク変やったね。ビアンカとルージュ見て引かんのは」
『ああ、それならあいつらハイになっていたと思うのです』
「ハイ?」
ペロリ、と口を舐めるビアンカ。
たまに魔の森に住む魔物が混乱して、溢れ出す事があると。俗に言う魔物の氾濫(スタンピード)ね。
「原因は分からないん?」
『知らないのです』
『そうね、分からないわ。私達はハイにはならないもの』
ハイ、つまり混乱する魔物は下級や中級の魔物。ハイになっている時は、まったく食事を取らず、ひたすら破壊行動して大概は餓死するか、寸前で目が覚める。ほとんどが魔の森を出る前に力尽きるが、昨日の様に相手が騎馬隊でも襲いかかる。
ビアンカが念のために、森に逃げ帰ったオルクを始末した後周囲を魔法で調べて巣はあったそうだが、もぬけの殻。本来、知恵の魔物であるオルクは、絶対に巣を無人にしない。
『それに腹を裂いてみたのですが、空っぽだったのです。それも1匹だけではなかったのです』
『完全にハイになっていたのね。道理で引かない訳だわ』
う、ご飯後で良かった。
今まさに、混乱を起こす時期なんかね? だけど、ビアンカもルージュも発生条件は分からないって。ちら、とパーヴェルさんにその事を伝えると、物凄い形相になったが、原因不明と伝えると、まさにがっくりしていた。
さ、片付けて、と。
私は馭者台にホークさんと並ぶ。
「では、参りましょう」
レディ・ロストークに跨がったパーヴェルさんを先頭に出発した。
カルーラに問題なく到着、並んでいるのに申し訳ないが追い越す。門番の人達が慌てて動いている。私達の全員の身分証をチェック。
「パーヴェル様、よくぞご無事で」
「帰還した。領主に連絡を」
パーヴェルさんは数人に指示を出して、半数以上は騎士団の詰所に戻る。パメラさんともお別れ。深々と頭を下げていった。結局、チュアンさんはパメラさんにかけた治療魔法の代金を要求しなかった。もし支払うのであれば、主人の私に、と。本来、所属している奴隷が治療魔法を使ったら主人の私が受け取り、そのうち何割か渡すものなんだって。私はチュアンさんが全額受け取るべきだと思うけど、1割でも首を縦に振らない。仕方ない、孤児院の寄付に上乗せしてもらい、チュアンさんには何か甘いものでもチョイスするかね。何人かは領主に報告に走り、残りのパーヴェルさん含む5人ほど私達に付き添いギルドに向かう。
カルーラはマーファクラスに大きいし、行き交う人がたくさんいる。街も活気づいているし、建物もレンガ造りで、まるでヨーロッパの町並みや。行ったことないけど。あちこち露店があり、野菜やパンが並んでいる。
ビアンカとルージュ、仔達にざわざわされたけど、やはりパーヴェルさん達の存在が大きく騒ぎにならなかった。
ギルドに無事到着。ふう。良かった。
パーヴェルさんはわざわざ中まで着いてきてくれた。
カルーラのギルドは大きい。ノワールは付いてきてくれた騎士に預ける。
『ねえね、ねえね、ひすい、眠い~』
いつもなら、朝ごはんのあとの一眠りがなかったもんね。ルリとクリスも眠そう。花は母の抱っこひもの中だ。元気とコハクは探検したそうだが、しっかりリードしています。
ずらりと並ぶ冒険者の皆さん。閉まっていたカウンターが1つ開いて、パーヴェルさんが誘導してくれる。いいのかな? 並んでいる冒険者にペコリペコリ。
「テイマーのミズサワ様。マーファのギルドより連絡を受けております。どうぞ此方へ」
どうやら別室に案内されるようや。
晃太のみ搬送物の為に別行動。チュアンさんとミゲル君がついてくれる。流石に残り皆で行けないので、ギルドのホールで両親と花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君、ルージュと元気、コハク、ヒスイが残る。ビアンカとルリとクリス、ホークさんが着いてきてくれる。
パーヴェルさんはここでお別れかと思ったが、どうやら最後まで付き添ってくれるようや。ホールではあの若い騎士グラメさんと、赤毛の騎士、此方はスタンさんが待ってくれると。
私達は案内されて応接室に案内される。
勧められて、ソファーに腰かける。ホークさんは定位置で立つ。パーヴェルさんは別のソファーに座る。ビアンカはごろり、ルリとクリスはしばらくクンクンして、丸くなる。
直ぐに来たのは、いかにも事務官と言う感じの男性。
「お待たせしましたミズサワ様。事務局長のラソンと申します」
丁寧にご挨拶してくれる。私もご挨拶。
「マーファの冒険者ギルドより連絡を受けております。まずはパーティーハウスの件からで宜しいですか?」
「はい」
「ご希望されているパーティーハウスは庭が広めとお聞きしました。現在2軒ございます」
内容を聞くと、庭と共に建物も大きな物件と、その半分くらいの物件。両方とも倉庫もあれば、魔道具も揃っている。対応もマーファと変わらない。私は後者を選ぶ。聞いたら半分くらいの物件とはいえ、一家4人でも十分な広さのようだしね。
長期使用も出きるから、念のために半年契約する。書類にサインと魔力でよし。
次は、オルクがカルーラの騎士団を襲い、私達が助力したこと。
私はビアンカから聞いた、ハイになっていたこと、巣はもぬけの殻だったこと、全滅させたことを説明。そのハイになる原因が分からない事に、ラソンさんはがっかりしている。
「しかし、ミズサワ様が大討伐に参加していただければ、これ程心強い事はありません」
ラソンさんとパーヴェルさんがうんうんと頷いている。
ん?
「あの、私達は大討伐には参加しませんよ」
「「はい?」」
声が重なる。
「あのミズサワ様、この時期に此方にいらっしゃったのは、大討伐ではないのですか?」
「何の目的でカルーラに? しかも長期間こちらに滞在されますよね?」
なんだろう、必死のようだけど。
『敵意はないのですが、ひどく焦っているのです』
理由は分からないけど、そうなんだろう。魔物の間引き作業ね。大々的にするらしいけど。
「ちょっと知り合いに会いに」
まさか魔境にビアンカとルージュの知り合い『彼女さん』に会いに行きますとは言えない。言えないけど、お二人の形相が凄いことになってて、納得してくれなさそう。
なんとかごまかそう。
「あー、大討伐には参加しませんが、しばらくは魔の森には籠りますよ」
嘘でない。
それを聞くと、納得したような、してないような。
『ユイ、元気達の鍛練とでも言ったら納得するかもなのです』
ナイスアイディアッ。
「実は元気達、従魔の仔達の鍛練もありまして、はい」
誤魔化し誤魔化し。
「成る程そうでしたか」
ラソンさんは納得。
「それで長期に?」
パーヴェルさんは、ふーん、みたいな。
「はい、4~5カ月予定です。私達は付き添いですね」
ふーんなパーヴェルさんは、なんとか納得してくれた。
「その鍛練期間で出来れば間引きをしていただけませんか? 今回のオルクの件があります。スタンピードの可能性を少しでも排除したいのです」
確かに、あんなハイになったオルクや魔物が出てきたら大惨事や。
「ビアンカ、どう?」
『ハイになっているやつの排除なのですね。いいのですよ』
「分かりました」
私の答えに、ラソンさんは安心した様子。
それから今回の助力した件で、後日、領主より謝礼が出るそうだ。オルクには魔石を有しているものは、買取してくれる。
明後日には査定が出るそうだ。
時間を確認して、しばらくして晃太が合流したので、パーティーハウスに向かうことになった。
念のため、馬車内で休む事に。久しぶりに花と寝るかね。もふもふ。お尻もふもふ。しかし、花は母の布団に潜り込む。あはははん、花ちゃーん。
「お母さんがよかね、そうよね、ブラッシングやご飯は全部お母さんよね~」
布団に潜り込み、枕に当たり前のように頭を乗せる花に頬擦りする母。くっ、正論っ。
仕方なか諦めて寝るか。ちょっと前まで仔達も布団に入って来たのに、今じゃ一番小さかったヒスイも無理なサイズや。シングルは無理や、せめてダブルくらいやなあ。なんて思いながら、布団をかぶりなおした。
明日、やっとカルーラだ。
次の日。
「おはようございます」
「おはようございますユイさん」
ホークさんがハートマークを飛ばすレディ・ロストークを撫でてる。本当に懐いているのね。
ビアンカとルージュ、仔達はまだ寝てる。元気は変わらず男の子全開。
「ユイさん、おはようございますっ」
「おはようございますっ」
エマちゃんとテオ君が駆けてくる。
「おはよう」
元気やね。よしよし。
さ、朝ごはんの準備するかね。眠そうな晃太が、簡易テーブルを出して、鍋やパンを出している。私はまずはパメラさんのチェックを父と行う。悪化ないようや、良かった。カルーラまで私達の馬車に乗ってもらう。
次はパーヴェルさんと話すことになる。昨日使用したポーション代だ。何を何本使用したか覚えてない。
「そんな訳にはいかない。部下や魔法馬を救ってくれた、タダとはいきません。食事も随分いただきましたし」
「と、言われても何本使ったかなあ? 上級と中級それぞれ、だいたい30本位です。あ、そうだ。全部それをカルーラの孤児院に寄付してください」
パーヴェルさんは、首を傾げる。
「それだけでいいんですか?」
「はい。あ、それから街に入るの待つのが…………」
「それでしたら、我らが同行しますからご心配なく。ギルドまでお付き合いしますよ。貴女は恩人だ、いずれカルーラ領主である父から謝礼があると思います」
なんとパーヴェルさん、カルーラ領主イコスティ辺境伯の息子さん。長男さんだって。
「ありがとうございます」
「それから」
パーヴェルさんはポリポリとほほをかく。
「個人的にお願いがありまして、カルーラで落ち着かれてから、お伺いしても?」
「構いませんが」
なんやろ? は、まさかホークさんの引き抜き? 非常に困る。断固拒否せんと。レディ・ロストークはホークさんに変わらずすり寄ってる。
「はい、数日間しか私達はいませんが」
「それでも」
食い下がるパーヴェルさん。ピシャッと断らんとね。
さ、朝ごはん。
ディレックスのパックのコーンポタージュ。いそいそと皆さん並んでる。私はパメラさんにコーンポタージュとディレックスのライ麦パンを搬送。しきりに恐縮していたけど、しっかり栄養取らんとね。
私達も交代で軽く朝ごはんにする。
母特製サラダモーニングをビアンカとルージュ、仔達も起きてきてもりもりと食べている。
『ねえ、ユイ、今日は何が食べれるのです?』
『エビがいいわ』
「はいはい。でも昨日のオルク変やったね。ビアンカとルージュ見て引かんのは」
『ああ、それならあいつらハイになっていたと思うのです』
「ハイ?」
ペロリ、と口を舐めるビアンカ。
たまに魔の森に住む魔物が混乱して、溢れ出す事があると。俗に言う魔物の氾濫(スタンピード)ね。
「原因は分からないん?」
『知らないのです』
『そうね、分からないわ。私達はハイにはならないもの』
ハイ、つまり混乱する魔物は下級や中級の魔物。ハイになっている時は、まったく食事を取らず、ひたすら破壊行動して大概は餓死するか、寸前で目が覚める。ほとんどが魔の森を出る前に力尽きるが、昨日の様に相手が騎馬隊でも襲いかかる。
ビアンカが念のために、森に逃げ帰ったオルクを始末した後周囲を魔法で調べて巣はあったそうだが、もぬけの殻。本来、知恵の魔物であるオルクは、絶対に巣を無人にしない。
『それに腹を裂いてみたのですが、空っぽだったのです。それも1匹だけではなかったのです』
『完全にハイになっていたのね。道理で引かない訳だわ』
う、ご飯後で良かった。
今まさに、混乱を起こす時期なんかね? だけど、ビアンカもルージュも発生条件は分からないって。ちら、とパーヴェルさんにその事を伝えると、物凄い形相になったが、原因不明と伝えると、まさにがっくりしていた。
さ、片付けて、と。
私は馭者台にホークさんと並ぶ。
「では、参りましょう」
レディ・ロストークに跨がったパーヴェルさんを先頭に出発した。
カルーラに問題なく到着、並んでいるのに申し訳ないが追い越す。門番の人達が慌てて動いている。私達の全員の身分証をチェック。
「パーヴェル様、よくぞご無事で」
「帰還した。領主に連絡を」
パーヴェルさんは数人に指示を出して、半数以上は騎士団の詰所に戻る。パメラさんともお別れ。深々と頭を下げていった。結局、チュアンさんはパメラさんにかけた治療魔法の代金を要求しなかった。もし支払うのであれば、主人の私に、と。本来、所属している奴隷が治療魔法を使ったら主人の私が受け取り、そのうち何割か渡すものなんだって。私はチュアンさんが全額受け取るべきだと思うけど、1割でも首を縦に振らない。仕方ない、孤児院の寄付に上乗せしてもらい、チュアンさんには何か甘いものでもチョイスするかね。何人かは領主に報告に走り、残りのパーヴェルさん含む5人ほど私達に付き添いギルドに向かう。
カルーラはマーファクラスに大きいし、行き交う人がたくさんいる。街も活気づいているし、建物もレンガ造りで、まるでヨーロッパの町並みや。行ったことないけど。あちこち露店があり、野菜やパンが並んでいる。
ビアンカとルージュ、仔達にざわざわされたけど、やはりパーヴェルさん達の存在が大きく騒ぎにならなかった。
ギルドに無事到着。ふう。良かった。
パーヴェルさんはわざわざ中まで着いてきてくれた。
カルーラのギルドは大きい。ノワールは付いてきてくれた騎士に預ける。
『ねえね、ねえね、ひすい、眠い~』
いつもなら、朝ごはんのあとの一眠りがなかったもんね。ルリとクリスも眠そう。花は母の抱っこひもの中だ。元気とコハクは探検したそうだが、しっかりリードしています。
ずらりと並ぶ冒険者の皆さん。閉まっていたカウンターが1つ開いて、パーヴェルさんが誘導してくれる。いいのかな? 並んでいる冒険者にペコリペコリ。
「テイマーのミズサワ様。マーファのギルドより連絡を受けております。どうぞ此方へ」
どうやら別室に案内されるようや。
晃太のみ搬送物の為に別行動。チュアンさんとミゲル君がついてくれる。流石に残り皆で行けないので、ギルドのホールで両親と花、マデリーンさん、エマちゃんとテオ君、ルージュと元気、コハク、ヒスイが残る。ビアンカとルリとクリス、ホークさんが着いてきてくれる。
パーヴェルさんはここでお別れかと思ったが、どうやら最後まで付き添ってくれるようや。ホールではあの若い騎士グラメさんと、赤毛の騎士、此方はスタンさんが待ってくれると。
私達は案内されて応接室に案内される。
勧められて、ソファーに腰かける。ホークさんは定位置で立つ。パーヴェルさんは別のソファーに座る。ビアンカはごろり、ルリとクリスはしばらくクンクンして、丸くなる。
直ぐに来たのは、いかにも事務官と言う感じの男性。
「お待たせしましたミズサワ様。事務局長のラソンと申します」
丁寧にご挨拶してくれる。私もご挨拶。
「マーファの冒険者ギルドより連絡を受けております。まずはパーティーハウスの件からで宜しいですか?」
「はい」
「ご希望されているパーティーハウスは庭が広めとお聞きしました。現在2軒ございます」
内容を聞くと、庭と共に建物も大きな物件と、その半分くらいの物件。両方とも倉庫もあれば、魔道具も揃っている。対応もマーファと変わらない。私は後者を選ぶ。聞いたら半分くらいの物件とはいえ、一家4人でも十分な広さのようだしね。
長期使用も出きるから、念のために半年契約する。書類にサインと魔力でよし。
次は、オルクがカルーラの騎士団を襲い、私達が助力したこと。
私はビアンカから聞いた、ハイになっていたこと、巣はもぬけの殻だったこと、全滅させたことを説明。そのハイになる原因が分からない事に、ラソンさんはがっかりしている。
「しかし、ミズサワ様が大討伐に参加していただければ、これ程心強い事はありません」
ラソンさんとパーヴェルさんがうんうんと頷いている。
ん?
「あの、私達は大討伐には参加しませんよ」
「「はい?」」
声が重なる。
「あのミズサワ様、この時期に此方にいらっしゃったのは、大討伐ではないのですか?」
「何の目的でカルーラに? しかも長期間こちらに滞在されますよね?」
なんだろう、必死のようだけど。
『敵意はないのですが、ひどく焦っているのです』
理由は分からないけど、そうなんだろう。魔物の間引き作業ね。大々的にするらしいけど。
「ちょっと知り合いに会いに」
まさか魔境にビアンカとルージュの知り合い『彼女さん』に会いに行きますとは言えない。言えないけど、お二人の形相が凄いことになってて、納得してくれなさそう。
なんとかごまかそう。
「あー、大討伐には参加しませんが、しばらくは魔の森には籠りますよ」
嘘でない。
それを聞くと、納得したような、してないような。
『ユイ、元気達の鍛練とでも言ったら納得するかもなのです』
ナイスアイディアッ。
「実は元気達、従魔の仔達の鍛練もありまして、はい」
誤魔化し誤魔化し。
「成る程そうでしたか」
ラソンさんは納得。
「それで長期に?」
パーヴェルさんは、ふーん、みたいな。
「はい、4~5カ月予定です。私達は付き添いですね」
ふーんなパーヴェルさんは、なんとか納得してくれた。
「その鍛練期間で出来れば間引きをしていただけませんか? 今回のオルクの件があります。スタンピードの可能性を少しでも排除したいのです」
確かに、あんなハイになったオルクや魔物が出てきたら大惨事や。
「ビアンカ、どう?」
『ハイになっているやつの排除なのですね。いいのですよ』
「分かりました」
私の答えに、ラソンさんは安心した様子。
それから今回の助力した件で、後日、領主より謝礼が出るそうだ。オルクには魔石を有しているものは、買取してくれる。
明後日には査定が出るそうだ。
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