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連載

カルーラへ①

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 カルーラへの出発の日。
 私は朝早めに起きて、バシャバシャと顔を洗った。いつもは泡でぽわっとしながらするけど、今日は気持ちを切り替える為にバシャバシャ。冷たい水ですっきり。よし、オッケー。
 パーティーハウス内に忘れ物がないか確認して、鍵を冒険者ギルドに返却。リティアさんはいないので、わざわざストヴィエさんが受け取ってくれた。
「道中お気をつけて」
「ありがとうございます。リティアさんによろしくお伝えください」
「必ず。カルーラの冒険者ギルドにはパーティーハウスの件は伝えています」
「ありがとうございます」
 挨拶してギルドを出る時、タージェルさんが見送りに来てくれた。
「ミズサワ様、どうぞお気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
 城門前には、ダイアナちゃんを連れて、パーカーさんとフィナさんが。
「お姉ちゃんっ」
 ぱーっと走って来るダイアナちゃん。きゅうと抱き付いて来たので、きゅうと抱き締める。かわいか。
「ミズサワさん、お気をつけてください」
「こらダイアナ。ミズサワさん、どうかお気をつけて」
「お姉ちゃん、早く帰って来てね」
 わざわざここまでダイアナちゃんを連れて、夫婦で見送りに来てくれた。ありがたい。嬉しか。話をしている間に、ホークさんとチュアンさんがノワールと馬車を繋ぐ。うちの両親もパーカーさん夫婦と挨拶を済ませる。ダイアナちゃんは私に抱き付いて、いつ帰って来るの? 早く帰って来てねと繰り返す。かわいか。本当にかわいか。名残惜しいが出発だ。
 馭者台には私とホークさんが座る。仔達は並走だ。その内、馬車内でルームを開けて、入れよう。
「お姉ちゃんっ、早く帰って来てねっ」
 ダイアナちゃんが手を振る。うっ、昨日に続いて目頭がっ。
「来年には帰って来るようにするからね」
 出来るだけスムーズに『彼女さん』に会えるようにしたいなあ。
 ノワールが進む寸前、す、と警備の人達が並び私達に一礼する。既に馭者台に座っていたので、慌ててそのままで頭を下げる。
 初めてマーファに来たときに対応してくれた、警備の人が一歩前に。
「テイマー殿、ハルスフォン伯爵様より言付かっております。お見送りに行けず申し訳ない、どうかお気をつけて、と」
 わあ、ありがたい。
 ハルスフォン様、きっとお忙しいだろうに、わざわざ伝言を頂いた。
「ありがとうございます」
 色んな人に見送られて、いざ、私達はマーファを出発した。

 アルブレンまでは問題なく1週間で到着した。
「お帰りなさい、テイマーさん」
 お元気そうなバラダーさんが迎えてくれた。お帰りなさいか、嬉しか。アルブレンの住民の皆さんも、何度も来ているので騒ぎにならず。あのウサギ肉の屋台に、ビアンカとルージュと仔達がきゅるんと並ぶので、出来るだけの大量発注。
 冒険者ギルドに到着報告。ウルススさんが対応してくれた。晃太は搬送物の提出の為に別室に。ルージュとチュアンさん、マデリーンさんが付き添う。その間に宿の案内所に向かう。あのおばあちゃんが座っていた。ヒスイを見てまあ美人さんになってと、鼻がぐいっと伸びる。運良く、あのログハウスが空いていた。3泊することになる。ノワールを休ませたいし、ビアンカとルージュから散歩ビームが来たので、滞在が決まった。
 晃太達と合流し、ログハウスに移動しながら、屋台により、大量にあちこちで購入する。
「今日はいまから森には行かんよ。暗くなるけんね。明日よ」
『『ぶーぶー』』
「わうーん」
「がうぅ」
『ぷー』
『ぷー』
『ぷー』
 くっ、かわいかっ。しかし、今日はだめ。
 ブーイングが飛ぶが、ダメよ。
 ログハウスに移動して、その日は屋台飯で済ませた。

 次の日。
 ビアンカとルージュは朝早くから仔達を引き連れて、森に向かって出発した。ビアンカとルージュにはSサイズのマジックバッグ、元気とコハクにはAサイズのマジックバッグをぶら下げる。
「あんまり遅くならんよ」
『分かったのです』
『行くわよ、皆』
「わんわんっ」
「がるぅ」
「わんわんっ」
「わうーん」
「がうぅ」
 ………………………………………
 爆走していくかわいかお尻を見送り、私は停止。
 ヒスイがっ、ヒスイがっ、がうぅって言ったーっ。
 にゃんにゃん言ってたヒスイがーっ。
 いや、成長に伴うものやろうけどさっ、仕方ないことやけどさっ。にゃんにゃんヒスイがーっ。あああぁぁぁぁ、がうぅって、がうぅって、言ってたーっ。
 いつまでも小さいままやないけど、ちょっとなあ、にゃんにゃん言ってたヒスイが。最近、ルージュの顔立ちに近くなってきている。いつかルージュみたいな猛獣特有の声になるだろうけどさ、なんだか、寂しかあ。
 お尻、もう見えないや。足も早くなったなあ。成長したけど、ほっとしなくてはいけないのは分かっているけど、やっぱり寂しかあ。
 私は勝手に寂しくなりながらも、見送った後、あちこち訪問する。
 まずは無料教室だ。
 伺うと、なんと建て直し最中だ。
 近くに仮の教室があり、あの女性教師が来てくれた。
「まあ、テイマー様っ。お久し振りです」
 嬉しそうに駆け寄ってきて、あれからの事を説明してくれた。
 元々5つあった教室のうち3つが統合されることになり、少し大きな教室を作ることになったと。それで遠くから通わなくてはならない子達には、スクールバスならぬスクール馬車が出ることになったと。そして給食センターを併設していると。給食センター、それの原型はマーファでもうじき完成する給食センターを参考にして建設されることになったと。思ったより大掛かりになってる。お金、足りたかな? 女性教師の話だと、教室と給食センターの建立後、周囲を区画整理するそうだ。前々から、ちょっと不便だったので、話が進んでいると。
「完成には時間はかかりますが、今から子供達が楽しみにしています。給食の試験運用は始まり、通ってくる子供が増えているんです」
 やはり1食だけでも、しっかり食べられるのは大きいようだ。現在はパンは幾つかのパンやさんが持ち回りで担当し、仮の調理場でスープを作って出していると。今は週2回通ううち、後半の日に給食があり、授業後食べて帰るスタイルだと。もちろん前半の授業を受けた子が対象だ。ウルススさんとバーズさんが頑張ってくれているようだ。
「まだまだ問題点はありますが、みな一丸となって対応しています」
 女性教師の顔は輝いている。
 思いつきで行った寄付がいいほうに向かっているようや、良かった。後で、お菓子かなんか、差し入れようかな。
 私は挨拶して、無料教室を後にして、教会の孤児院に向かう。
 屋根がすっかり新しくなった孤児院。ただ、子供達はビアンカとルージュ達がいないので、ちょっと不服そう。かわいかね。
 対応してくれたシスターさんがしきりに感謝してくれた。あれから、元は私が稼いだお金でないが、ビアンカとルージュに寄付の事は話している。
 マーファの春祭りで購入した小銭入れに、大金貨30枚。服や靴、下着に靴下、シーツにタオル、文具類や食器類に調理器具、生活に必要だと思えるものを寄付。
 シスターさんは最初は感謝が極まるって感じだったけど、晃太のアイテムボックスから際限なく出てくる品々に、固まっていたけどね。
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