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マーファの日常⑩
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あまり眠れず、一夜明けた。
元気はかわらず、短い呼吸をしている。
まだまだ身体が熱く、父の鑑定でも39.8と出た。昨日と同じように、晃太が元気の頭を抱えて、私が内服用ゼリーと混ぜた薬を口に運ぶ。
ぺろり、ぺろり。
良かったっ、ほとんど飲めた。それから元気は予め器に入れていた水に顔を寄せたので、近付けると、少しだけど飲んだ。
「昨日よか、よかかね?」
元気の頭を元の位置を戻す。元気はすぐに丸くなり眠りに入る。
不安そうな晃太。それ以上にビアンカが不安そうだ。
『ユイ、元気はすぐによくならないのですか?』
「おそらく数日はかかるよ」
私は元気の首のバンダナを新しく巻き直す。私と晃太は交代で朝食を取る。神棚に元気の回復祈願をすると。
すまんな、ケガなら力を貸してやれるが、病に関しては力になれない。薬に関しても、お前の父親の鑑定力を信じろ
と、時空神様。
何となく、そうじゃないかと思っていた。
以前ダイアナちゃんやティム君に神への祈りが発動しなかった。もしかしたら、病気とかはどうにもならない事かもって、思っていた。だが、父の鑑定は間違っていない、そう確認した。
でも、この『神への祈り』の発動条件、よく分からん。まあ、そのうち聞いてみよう。
それからも元気を中心に過ごす。吐きはしないが、やはりお腹が緩い。
ルリとクリスが、ビアンカを求めて鳴くので、ルージュと交代して対応。
「がぅぅ、がぅぅ」
『ねえね、げんき、おっきしないの?』
コハクとヒスイも元気の異変を分かっているのだろう、かいかいしていると聞いてくる。
「お熱あるからね」
「がぅ?」
『おねつ~?』
「身体がね、熱くてきついんよ。それで起き上がらんようにして体力を使わんようにしとると。しばらくは遊べんよ」
「がぅー」
『ふーん』
理解してくれたかな?
しばらくして、元気の様子が変わる。
『少し、息が穏やかになってきたのです』
『そうね、そんな感じね』
ビアンカとルージュが眠る元気をのぞきこみながら、ちょっと安堵のため息。
「本当?」
『そうなのです。昨日と比べたらなのですが』
私も元気を見ると、あまり変わりなさそうだけど、ビアンカとルージュが言うならそうなんだろう。薬が効いてきたかな? 昨日より比べたら、だからまだ予断を許せないね。
夕方になり、母がフレアタートルで薄味のおじやを作る。いつも食べる量の半分。そっと元気の顔に近付けると、匂いに起きて少しペロペロしながら食べてくれた。昨日は派手にリバースしたのに。それを見て、私は一気に安心してしまったが、気を引き締める。薬に関しては、内服用ゼリーに混ぜて出すとすべて食べてくれた。食べてくれたが、すぐにまた丸くなる。
「少し、良さそうやね」
心配していた母も、食べたその様子を見て安堵している。
「次はいつも食べる量に戻すね?」
「そうやね。うーん、いや、まだ半分にしとこう。吐いたりしたら元気がきつかろうし」
「分かった」
母は器を持って下がる。
昨日に比べて確かに目に力が入っているし、食べてはいるけど、まだどうなるか分からない。
父が帰って来て、鑑定する。
「熱が38.9やな」
「そうな」
解熱してきているが、昨日に続いて高熱のままだ。このまま熱が続いたら、色々悪さしないだろうか。
悶々としながら、再び同じように毛布を持ち込み、一晩越した。
次の日。
「38.5」
「すっきり下がらんね」
後、薬は今日の朝分を飲んだら、後2回分。
「お父さん、薬の配合はあのままでよか?」
「そうやな。ちょっと待ってな」
うーん、と父が鑑定し、最初の薬の配合を少しだけ変更。
「今の薬がなくなったら、次はこれにしてみて」
「分かった。フレアタートルの肝はやっぱりいるね」
手に入れないと。
元気はおじやと薬は問題なく食べた。自分で顔を上げて食べた。吐きはしないが、やっぱりお腹は緩いまま。そして丸くなる。
『ユイ、元気はどうなるのです? 少し食べれているようなのですが』
「ビアンカ、熱がまだしっかり下がらんけん、薬の配合を変えて見るね。ご飯を食べれるくらいはなっとるけど、出来る手段はすべて出そう」
『分かったのです。ユイに任せるのです』
私は元気の首のバンダナを巻き直す。
「ルージュ、フレアタートルの肝が必要なんよ」
『任せて』
黙って見ていてくれたルージュが赤い目を滾らせて答えてくれる。
母は薬の作成に入り、晃太がフォローに入る。
前回と同じメンバーで、冷蔵庫ダンジョンに向かい、問題が起きる訳もなく、フレアタートルはルージュの前に完敗しドロップ品となる。
肝以外はギルドに回し、リティアさんに挨拶してそそくさと帰る。
帰りながら思う。今回は元気が熱を出したが、ルリやクリス、コハクやヒスイがそうならない可能性はない。そうなれば、やっぱり薬の作成となると、フレアタートルの肝が必要になるかも。元気の体調がよくなったらある程度確保が必要になるかも。今回はたまたま冷蔵庫ダンジョンのあるマーファにいたからすぐに手に入ったけど。もし、『彼女さん』に会いに行ってる途中でなったら、どうしようもない。
元気の容態次第だけど、やはり、手に入れないと。
心配したけど、元気の容態は悪化することなく、徐々に回復した。
初回の薬を飲みきった次の日、元気は自ら従魔の部屋の水呑場まで歩いた。熱が37℃台になると、食欲が戻って来た。
「くぅーん」
『足りないようなのです』
おじやを食べきった元気に、ビアンカは嬉しそうに頬擦りする。
「そうね、足りんね」
母が嬉しそうにおじやを追加する。
お腹はまだ緩いけど、仕方ない。抗生剤効果がある薬やからね。
『ユイ、元気が良くなっているのです、ありがとうなのです』
「いいんよ、私は当たり前の事をしただけよ」
元気は熱が下がり、楽になったのか、従魔の部屋をうろちょろしている。
「元気、しばらくは大人しくしとかんね」
「くぅーん、くぅーん」
ああ、甘えた声だして、もう。
でも、良かったあ、本当に良かったあ。一時はどうなるか不安で堪らなかったけど、本当に良かった。私は元気をよしよしと撫でる。元気は数日前の状態が分からないくらいに、私の前でお腹を出してゴロリ。
ああ、本当に、本当に良かった。
更に数日後、元気はコハクと走り回っている。
ああ、目頭が熱くなりそう。母は隣で鼻を啜る。ルリとクリスは存分にビアンカに甘えている。元気はちょっと痩せてしまったが、食欲は完全に戻り、投薬も止まった。お腹の調子もバッチリ。
「良かったあ、元気」
晃太も走り回っている元気に安心している。
「ずずっ、そうやな。でも、あんな熱が出たんやろうね?」
元気は仔達の中で一番大きいし、まさに元気だし、良く食べるし、体力有り余ってるし。抵抗力がありそうな感じがするんやけど。まあ、私の勝手なイメージかな?
「そりゃ、あんだけ、雪の中で走り回っていたけんやない?」
「そうやったけ?」
晃太の言葉で記憶を引っ張り出す。
確かに前日大雪だった。
元気は興奮してずっと外で遊んでいた。コハクやヒスイ、ルリとクリスはちょっと遊んで満足して、暖かい従魔の部屋で大人しくしてたけど。去年はまだ今より小さいから捕まえたけど、現在はちょっと厳しい。なんせ足は速いし、パワーはあるし、体力あるし。なんとか室内へ誘導したけど、知らないうちにドアをこじ開けて、中庭に出てるし。それを何度か繰り返し、毎回元気は雪でびちゃびちゃ。
「あー………………」
そう言えば、雪の中で、腹出して寝てたよ。ビアンカも嗜めてたなあ。
「あー、そうやったねえ………………」
母も思い当たったようだ。
原因はそれかなあ。
「中庭のドア、この時期はカギを常にかけるようにしようかね」
私がぽつり。中庭は仔達が好きに遊んでもらおうと、カギをかけないようにしていたけど。
「「そうやな」」
晃太と母の返事は早かった。
私はすぐに鷹の目の皆さんにも協力を仰いだ。
話している最中に、元気は雪がしっかり残る中庭に飛び出していく。あ、カギ、壊れてるっ。
せっかく良くなったのにっ。
「元気、戻っておいでっ」
『元気戻るのですっ』
「わんわんっ」
走り回る元気。ビアンカもあわてて追いかける。そして見つける雪だるま。
記念に作ってみたんだけど、元気はへっへ言って雪だるまを見ている。
「元気、また、熱がね……………」
追い付いた私が言うと、元気は一際大きな声で吠える。
「わんわんっ」
ぼすうっ
元気が何か白いのを発射し、雪だるまの頭が吹っ飛ぶ。
「『……………え?』」
私とビアンカが止まる。
「わんわんっ」
ぼすうっ
第2弾、雪だるまの下の部分まで吹っ飛ぶ。
元気はそれを見て、満足したように私とビアンカに振り返り、尻尾ぷりぷり。
「ビアンカさん、今、元気は何の魔法を使ったん?」
『こ、氷の魔法なのです………………』
確か、ビアンカがなかなか覚醒しなくて、半ば諦めていて、神様がブーストくれた時をきっかけで使えるようになったはず。え? 確か、水の属性魔法があったら覚醒する、上位魔法よね? え? これ、普通なん? 水属性魔法が覚醒してから、氷属性魔法やないと? 違う? 下手したら覚醒せんって聞いた気がする。
「これ、普通なん?」
『んな訳ないのですーっ』
ビアンカが吼える。
『元気は、色々規格外ね』
見ていたルージュもなんとも言えない顔だ。
『ビアンカ、元気の魔力操作の訓練を継続しないと。才能だけは、おそらくフォレストガーディアンウルフの中でも桁外れのはずよ。暴発したら大変』
『そ、そうなのですね。元気、こっちに来るのです』
ビアンカが言うが素直に来るわけない。
仕方ない、食パンをちらつかせると、ダッシュできた。完全に元気に戻ったなあ。でも、新たな問題?があるようや、ビアンカが頭を抱えてる。幼い魔力操作でいくつも属性魔法があると、混乱する原因だって。
体調見ながら、元気の魔力操作指導しているけど、なかなか言うこと聞かずに、ビアンカが雷を落としたのは、数日後だった。
元気はかわらず、短い呼吸をしている。
まだまだ身体が熱く、父の鑑定でも39.8と出た。昨日と同じように、晃太が元気の頭を抱えて、私が内服用ゼリーと混ぜた薬を口に運ぶ。
ぺろり、ぺろり。
良かったっ、ほとんど飲めた。それから元気は予め器に入れていた水に顔を寄せたので、近付けると、少しだけど飲んだ。
「昨日よか、よかかね?」
元気の頭を元の位置を戻す。元気はすぐに丸くなり眠りに入る。
不安そうな晃太。それ以上にビアンカが不安そうだ。
『ユイ、元気はすぐによくならないのですか?』
「おそらく数日はかかるよ」
私は元気の首のバンダナを新しく巻き直す。私と晃太は交代で朝食を取る。神棚に元気の回復祈願をすると。
すまんな、ケガなら力を貸してやれるが、病に関しては力になれない。薬に関しても、お前の父親の鑑定力を信じろ
と、時空神様。
何となく、そうじゃないかと思っていた。
以前ダイアナちゃんやティム君に神への祈りが発動しなかった。もしかしたら、病気とかはどうにもならない事かもって、思っていた。だが、父の鑑定は間違っていない、そう確認した。
でも、この『神への祈り』の発動条件、よく分からん。まあ、そのうち聞いてみよう。
それからも元気を中心に過ごす。吐きはしないが、やはりお腹が緩い。
ルリとクリスが、ビアンカを求めて鳴くので、ルージュと交代して対応。
「がぅぅ、がぅぅ」
『ねえね、げんき、おっきしないの?』
コハクとヒスイも元気の異変を分かっているのだろう、かいかいしていると聞いてくる。
「お熱あるからね」
「がぅ?」
『おねつ~?』
「身体がね、熱くてきついんよ。それで起き上がらんようにして体力を使わんようにしとると。しばらくは遊べんよ」
「がぅー」
『ふーん』
理解してくれたかな?
しばらくして、元気の様子が変わる。
『少し、息が穏やかになってきたのです』
『そうね、そんな感じね』
ビアンカとルージュが眠る元気をのぞきこみながら、ちょっと安堵のため息。
「本当?」
『そうなのです。昨日と比べたらなのですが』
私も元気を見ると、あまり変わりなさそうだけど、ビアンカとルージュが言うならそうなんだろう。薬が効いてきたかな? 昨日より比べたら、だからまだ予断を許せないね。
夕方になり、母がフレアタートルで薄味のおじやを作る。いつも食べる量の半分。そっと元気の顔に近付けると、匂いに起きて少しペロペロしながら食べてくれた。昨日は派手にリバースしたのに。それを見て、私は一気に安心してしまったが、気を引き締める。薬に関しては、内服用ゼリーに混ぜて出すとすべて食べてくれた。食べてくれたが、すぐにまた丸くなる。
「少し、良さそうやね」
心配していた母も、食べたその様子を見て安堵している。
「次はいつも食べる量に戻すね?」
「そうやね。うーん、いや、まだ半分にしとこう。吐いたりしたら元気がきつかろうし」
「分かった」
母は器を持って下がる。
昨日に比べて確かに目に力が入っているし、食べてはいるけど、まだどうなるか分からない。
父が帰って来て、鑑定する。
「熱が38.9やな」
「そうな」
解熱してきているが、昨日に続いて高熱のままだ。このまま熱が続いたら、色々悪さしないだろうか。
悶々としながら、再び同じように毛布を持ち込み、一晩越した。
次の日。
「38.5」
「すっきり下がらんね」
後、薬は今日の朝分を飲んだら、後2回分。
「お父さん、薬の配合はあのままでよか?」
「そうやな。ちょっと待ってな」
うーん、と父が鑑定し、最初の薬の配合を少しだけ変更。
「今の薬がなくなったら、次はこれにしてみて」
「分かった。フレアタートルの肝はやっぱりいるね」
手に入れないと。
元気はおじやと薬は問題なく食べた。自分で顔を上げて食べた。吐きはしないが、やっぱりお腹は緩いまま。そして丸くなる。
『ユイ、元気はどうなるのです? 少し食べれているようなのですが』
「ビアンカ、熱がまだしっかり下がらんけん、薬の配合を変えて見るね。ご飯を食べれるくらいはなっとるけど、出来る手段はすべて出そう」
『分かったのです。ユイに任せるのです』
私は元気の首のバンダナを巻き直す。
「ルージュ、フレアタートルの肝が必要なんよ」
『任せて』
黙って見ていてくれたルージュが赤い目を滾らせて答えてくれる。
母は薬の作成に入り、晃太がフォローに入る。
前回と同じメンバーで、冷蔵庫ダンジョンに向かい、問題が起きる訳もなく、フレアタートルはルージュの前に完敗しドロップ品となる。
肝以外はギルドに回し、リティアさんに挨拶してそそくさと帰る。
帰りながら思う。今回は元気が熱を出したが、ルリやクリス、コハクやヒスイがそうならない可能性はない。そうなれば、やっぱり薬の作成となると、フレアタートルの肝が必要になるかも。元気の体調がよくなったらある程度確保が必要になるかも。今回はたまたま冷蔵庫ダンジョンのあるマーファにいたからすぐに手に入ったけど。もし、『彼女さん』に会いに行ってる途中でなったら、どうしようもない。
元気の容態次第だけど、やはり、手に入れないと。
心配したけど、元気の容態は悪化することなく、徐々に回復した。
初回の薬を飲みきった次の日、元気は自ら従魔の部屋の水呑場まで歩いた。熱が37℃台になると、食欲が戻って来た。
「くぅーん」
『足りないようなのです』
おじやを食べきった元気に、ビアンカは嬉しそうに頬擦りする。
「そうね、足りんね」
母が嬉しそうにおじやを追加する。
お腹はまだ緩いけど、仕方ない。抗生剤効果がある薬やからね。
『ユイ、元気が良くなっているのです、ありがとうなのです』
「いいんよ、私は当たり前の事をしただけよ」
元気は熱が下がり、楽になったのか、従魔の部屋をうろちょろしている。
「元気、しばらくは大人しくしとかんね」
「くぅーん、くぅーん」
ああ、甘えた声だして、もう。
でも、良かったあ、本当に良かったあ。一時はどうなるか不安で堪らなかったけど、本当に良かった。私は元気をよしよしと撫でる。元気は数日前の状態が分からないくらいに、私の前でお腹を出してゴロリ。
ああ、本当に、本当に良かった。
更に数日後、元気はコハクと走り回っている。
ああ、目頭が熱くなりそう。母は隣で鼻を啜る。ルリとクリスは存分にビアンカに甘えている。元気はちょっと痩せてしまったが、食欲は完全に戻り、投薬も止まった。お腹の調子もバッチリ。
「良かったあ、元気」
晃太も走り回っている元気に安心している。
「ずずっ、そうやな。でも、あんな熱が出たんやろうね?」
元気は仔達の中で一番大きいし、まさに元気だし、良く食べるし、体力有り余ってるし。抵抗力がありそうな感じがするんやけど。まあ、私の勝手なイメージかな?
「そりゃ、あんだけ、雪の中で走り回っていたけんやない?」
「そうやったけ?」
晃太の言葉で記憶を引っ張り出す。
確かに前日大雪だった。
元気は興奮してずっと外で遊んでいた。コハクやヒスイ、ルリとクリスはちょっと遊んで満足して、暖かい従魔の部屋で大人しくしてたけど。去年はまだ今より小さいから捕まえたけど、現在はちょっと厳しい。なんせ足は速いし、パワーはあるし、体力あるし。なんとか室内へ誘導したけど、知らないうちにドアをこじ開けて、中庭に出てるし。それを何度か繰り返し、毎回元気は雪でびちゃびちゃ。
「あー………………」
そう言えば、雪の中で、腹出して寝てたよ。ビアンカも嗜めてたなあ。
「あー、そうやったねえ………………」
母も思い当たったようだ。
原因はそれかなあ。
「中庭のドア、この時期はカギを常にかけるようにしようかね」
私がぽつり。中庭は仔達が好きに遊んでもらおうと、カギをかけないようにしていたけど。
「「そうやな」」
晃太と母の返事は早かった。
私はすぐに鷹の目の皆さんにも協力を仰いだ。
話している最中に、元気は雪がしっかり残る中庭に飛び出していく。あ、カギ、壊れてるっ。
せっかく良くなったのにっ。
「元気、戻っておいでっ」
『元気戻るのですっ』
「わんわんっ」
走り回る元気。ビアンカもあわてて追いかける。そして見つける雪だるま。
記念に作ってみたんだけど、元気はへっへ言って雪だるまを見ている。
「元気、また、熱がね……………」
追い付いた私が言うと、元気は一際大きな声で吠える。
「わんわんっ」
ぼすうっ
元気が何か白いのを発射し、雪だるまの頭が吹っ飛ぶ。
「『……………え?』」
私とビアンカが止まる。
「わんわんっ」
ぼすうっ
第2弾、雪だるまの下の部分まで吹っ飛ぶ。
元気はそれを見て、満足したように私とビアンカに振り返り、尻尾ぷりぷり。
「ビアンカさん、今、元気は何の魔法を使ったん?」
『こ、氷の魔法なのです………………』
確か、ビアンカがなかなか覚醒しなくて、半ば諦めていて、神様がブーストくれた時をきっかけで使えるようになったはず。え? 確か、水の属性魔法があったら覚醒する、上位魔法よね? え? これ、普通なん? 水属性魔法が覚醒してから、氷属性魔法やないと? 違う? 下手したら覚醒せんって聞いた気がする。
「これ、普通なん?」
『んな訳ないのですーっ』
ビアンカが吼える。
『元気は、色々規格外ね』
見ていたルージュもなんとも言えない顔だ。
『ビアンカ、元気の魔力操作の訓練を継続しないと。才能だけは、おそらくフォレストガーディアンウルフの中でも桁外れのはずよ。暴発したら大変』
『そ、そうなのですね。元気、こっちに来るのです』
ビアンカが言うが素直に来るわけない。
仕方ない、食パンをちらつかせると、ダッシュできた。完全に元気に戻ったなあ。でも、新たな問題?があるようや、ビアンカが頭を抱えてる。幼い魔力操作でいくつも属性魔法があると、混乱する原因だって。
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