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マーファの日常③

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 午後からアトリスさんの工房に向かう為に、差し入れのお菓子を詰める。
 こちらでも気軽に食べられているのは、クッキーやパウンドケーキ、スコーン等の焼き菓子だ。中にはナッツやドライフルーツ、紅茶等が入り、種類も色々ある。
 高級菓子は砂糖がまぶされたフルーツゼリー、そしてショコラだ。この2種類は秋のグーテオークションの時に首都をオスヴァルトさんが案内してくれた時に見た。ゼリーは使われている砂糖が高級品。ショコラはカカオがアルガン同様に南の国からの輸入品だと。ショコラのお店を外から覗いたが、なんとびっくり1粒1000からだ。JOY-Pでランチして、ミニパフェ食べれちゃう。
 なので、気軽に食べて貰えるように、焼き菓子中心に詰める。もへじ生活、銀の槌、セレクトショップダリアから、母がバランスよく配置する。匂いに釣られて、足元で花が母の足にすがりついてる。アトリスさんから工房に勤めている人数聞いたので、皆さんに行き渡るように、ね。アトリスさんの工房は、見習い含めて現在23名。
『いい匂いなのです』
『一口食べたいわ』
 ソワソワとしているビアンカとルージュ。母が出したのは糖質カットのロールパン、1個。
『『ぶーぶー』』
 母が知らん顔。
「わんわんっ」
「がうぅっ」
『ばぁば~』
『おやつゅ~』
『ひすい、おなかへった~』
「もうすぐご飯やからね~」
『私達と違うのですっ』
『対応が違うわっ』
「なんね、その尻の肉は?」
 仔達は成長期だからね。最近、毎日こんな感じ。賑やかや。ウィスキーボンボンを気持ち少し入れる。お菓子を詰め終えて、お昼を済ませて、ノワールを連れてアトリスさんの工房に向かう。仔達はお昼寝しているので、チュアンさんとマデリーンさんが残ってくれる。
 直ぐに工房の裏庭で、ノワールに仮で作った馬具を装着。迫力満点。仮の装備なのに。ホークさんが手綱を握ってくれている。軽く闊歩する。私もノワールの横に付いて歩く。
「ノワール、どうね? どこか痛いとかない?」
「ぶるぶるっ」
『右後ろ足の脛の所が擦れているそうなのです』
「ぶるぶるっ」
『腹に当たる金具が、気持ち悪いって』
 私はアトリスさんに通訳する。すかさずアトリスさんがチェックし、改善点を書き出していく。それを繰り返す。軽くジャンプもしたりして、細かくチェックを繰り返していく。
「はい、確認しました。これを微調整し、最終チェック後、作製に入ります」
「お願いします」
「所でテイマーさん、魔法馬に何かありましたか? 以前と少し違うように感じるのですが」
 アトリスさんによると、付いている筋肉とかは変わりないようだが、何となく、本当に何となく以前とは違うように感じたと。流石馬具に関してマーファ一の職人さん。
「進化したんです。魔法馬から戦車馬(チャリオット・ホース)になりまして」
「なんと、戦車馬(チャリオット・ホース)ですか、これは珍しい。なかなかこちらの大陸では産まれませんからね。私も初めて拝見しました」
「みたいですね」
 私にはよく分からないし。毎日ノワール見てるからね。
「微調整して、次の確認までに1ヶ月頂けますか? それが無事にすめば、本製作に入ります」
「はい」
 それから私はアトリスさんに差し入れのお菓子が詰まった箱を渡す。
「皆さんで召し上がってください」
「ありがとうございます。皆、喜ぶでしょう」
 アトリスさんはニコニコして、後ろにいた見習いさんに箱を渡す。見習いの男の子もニコニコしている。喜んで貰えたようで良かった。あ、いけん。
「アトリスさん」
 私はアトリスさんに耳打ち。ウィスキーボンボンの説明をする。
「そんな高級な菓子を…………」
「手に入れやすいルートがあるんです。ご内密に」
 冒険者って言うのは独自の販売ルートを持つことがある。なるほどみたいなアトリスさん。
 ワイバーンの革も販売し、残りは大小合わせて15枚ほど残る。これらはすべてギルドに卸すことになる。緑の旗が翻り、冒険者達が多かったけど、リティアさんが直ぐに来てくれた。それも滞りなく済んだ。リティアさんがニコニコしていたから、よかとしよう。
 さ、帰って、近々行く冷蔵庫ダンジョンの為に、下拵えしますかね。まずは明日はスライム部屋でしょ。それから準備して、ホークさんの鎧を受け取って。あ、ダイアナちゃんにもお年玉を。
『ねえ、ユイ』
『ダンジョン行きたいのです』
「はあ? 明日、行くやん」
『だってスライムでしょ?』
『つまらないのです』
「やけどさあ、ほら、近々行くしさあ」
 晃太も似たような感じで、顔に出てる。
『体が鈍りそうだわ』
『思いっきり走りたいわ』
「ブヒヒンッ」
 きゅるん、きゅるん、哀愁攻撃。きゅるん、きゅるん、哀愁攻撃。
 はあ、仕方なか。
 結局、遅くならないと言う条件で、冷蔵庫ダンジョンに。20階をちゅどん、ドカン、バキバキ。時間がないので2回挑戦で終了。見てません、目玉なんて見てません。宝箱は1回目はピンク色の大粒の宝石が3粒、晃太のアイテムボックスに入れると、モルガナイトだと。2回目は模様の入った石が2個。あ、これは。
「転移石ですかね?」
「恐らくそうだと思います」
 私の手元を見ていたホークさんも同意見のようだ。ただ、はっきりは分からないから、父の鑑定待ちやね。でも、ビアンカとルージュがいれば必要ないかな。
「さ、帰りましょう」
 ぶーぶー言うビアンカとルージュを嗜めて、脱出用魔法陣で出る。
 明日にでも今回のドロップ品、ギルドに持っていこうかね、なんて思っていると。
『ユイ、来るのです』
『いつもの雌よ』
「リティアさんやろうもん」
 ビアンカとルージュの注意の直ぐ後に、リティアさん華麗にすっ飛んできた。ギルドに行き蛇のドロップ品なのですべて提出。ただ、転移石についてはどうするか相談だ。効果によっては1つくらい提出しよう。査定は軍隊ダンジョンからの査定と一緒で構わないと伝えておく。宝石に関しては直ぐにタージェルさんが査定してくれた。
「素晴らしい透明度、そしてこのサイズ。やはりミズサワ様がお持ち頂くものは本当に心躍ります」
 と、ニコニコタージェルさん。
「3粒で、600万です」
 本当、ちょっとダンジョン行っただけでこの額。詐欺よね、真面目に冒険者している人達にしたら。でも、頂きます、ビアンカとルージュとノワールのシャンプー代や。
 挨拶して、暗くなり出した中をパーティーハウスに戻る。うう、寒か。
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